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[Twilio+Zabbix] アラートを Twilio Functions 経由で音声通話通知する最小構成
概要
企業のサーバ運用やインフラ監視の現場において、システム障害や異常検知時に即座に担当者へ通知を届けることは、安定したサービス提供のために欠かせない要件です。中でも、メールやチャット通知では気付きにくい夜間や緊急時には、「電話による音声アラート通知」の確実性が高く評価されてきました。
しかし、従来この種の電話通知を自社システムに組み込むためには、
- 専用の音声発信サーバや PBX 機器の構築・運用
- サードパーティの高額な通知サービスの利用
- 電話 API への直接連携に伴うセキュリティ管理やコード保守
といった運用・コスト両面でのハードルがつきまとっていました。特に自前で音声通知を実現しようとすると、API キーや認証情報の管理、サーバの脆弱性対策、運用負担の増大など、実装担当者にとっては無視できない課題です。
本記事では、これらの課題を解決する手段として、Zabbix が検知したアラートを Twilio Functions を経由して自動的に電話で通知する構成について詳しく解説します。Twilio Functions は Twilio 社が提供するサーバレス実行環境であり、従来必要だった中間サーバの構築や API シークレットの外部露出を回避しつつ、セキュリティと運用性の両立を図れるのが特徴です。
この構成を採用することで、「必要最小限のコスト・工数で、セキュアかつ柔軟な音声通話通知」 を実現でき、実務現場における監視・アラート運用の信頼性を大きく向上させることができます。
対象読者
- 監視アラートの「本当に気付いてほしい通知」を電話で飛ばしたいエンジニア
- Zabbix で音声通知をやりたいが、余計なサーバやコードは極力持ちたくない方
- Twilio の運用経験はあるが、セキュアな Webhook や API 運用に悩んでいる方
- 通知の確実性を最重視するインフラ運用担当
なぜ「Twilio Functions」が良いのか?
- Twilio の公式サーバレス環境で、余計なサーバ構築が不要
- API キーやシークレットを外部に置かず安全
- Webhook 認証やロジックも柔軟に書ける(Node.js)
- Zabbix → Twilio Functions の直結でシンプル
システム構成図
本構成では、Zabbix による障害検知から電話による音声アラート通知までを最小構成・サーバレスで完結させることを重視しています。各コンポーネントの役割と連携の流れは下記の通りです。
[Zabbix]
│(障害検知時)
│
└─[Webhook/HTTP POST]─→ [Twilio Functions]
│
└─[Twilio Voice API経由で発信]─→ [担当者の電話]
構成要素の説明
-
Zabbix(監視システム)
監視対象ホストやサービスに障害が発生した際、「メディアタイプ」として Webhook(HTTP POST)通知を外部エンドポイントに送信します。 -
Twilio Functions(サーバレス実行環境)
Zabbix からの Webhook リクエストを受け取り、その内容(例:通知先電話番号や障害内容メッセージ)をもとに Twilio Voice API を呼び出して音声通話を開始します。API キーや認証情報は Functions の環境変数内に保持でき、セキュアに運用可能です。 -
Twilio Voice API
指定された電話番号に対して自動音声発信を行います。通知内容は TwiML(Twilio Markup Language)を用いて、テキスト読み上げや録音音声の再生など柔軟に制御可能です。 -
担当者の電話
通知先として指定された電話番号に発信され、リアルタイムで障害アラートを音声で受け取ることができます。
構成のポイント
- 中間サーバ・スクリプト不要で、サーバレス構成により管理・運用コストを最小化できます。
- API キーや認証情報は Twilio Functions の環境変数で閉じるため、セキュリティリスクが低減します。
- Zabbix から直接 Twilio Functions を呼び出すだけなので、設定・保守の手間も最小限です。
構築&検証の流れ
1. 事前準備
- Twilio アカウント を公式サイトから取得します
- Voice 対応の Twilio 電話番号 を購入します
2. Twilio Functions で Webhook エンドポイント作成
-
Twilio コンソール の Functions でサービスを作成します。 function (例:webhook)を作成し、下記のコードを入力します。
exports.handler = async function(context, event, callback) { const client = context.getTwilioClient(); const to = event.to; const msg = event.message || 'Zabbix alert!'; try { const call = await client.calls.create({ to: to, from: context.TWILIO_PHONE_NUMBER, twiml: `<Response><Say language="ja-JP">${msg}</Say></Response>` }); return callback(null, { status: 'ok', callSid: call.sid }); } catch (err) { return callback(err); } };
-
Twilio Function コンソールの「Encironment Variables」欄で環境変数
TWILIO_PHONE_NUMBER
の値を Twilio で購入した番号に設定します。(例:+10123456789) -
Function の鍵マークをクリックして API を公開します。
-
変更を反映するには 「Save」 と 「Deploy All」 ボタンを押します。
-
Copy URL をクリックしてエンドポイント URL を控えておきます。
3. Zabbix側の設定
「Alerts > Media Types」で Webhook(HTTP POST)を作成します
- Type: Webhook
- Parameters > to: 対象とする電話番号(例:
+819012345678
) - Parameters > message: 「障害発生」や
{ALERT.MESSAGE}
などの通知内容 - Parameters > url: 取得したエンドポイント URL
- Scripts:
try { params = JSON.parse(value); var req = new HttpRequest(); var url = params.url + '?to=' + encodeURIComponent(params.to) + '&message=' + encodeURIComponent(params.message); var response = req.post(url, ''); Zabbix.log(4, '[Twilio Webhook] Response: ' + response); return 'Sent to Twilio Function: ' + response; } catch (error) { Zabbix.log(3, '[Twilio Webhook] Error: ' + error); throw 'Twilio Webhook failed: ' + error; }
4. 動作検証
-
Zabbix コンソールの「Test」 で電話が鳴るか確認します
送信に成功したら Response 欄で、「CA」から始まる callSid が取得できていることを確認します。
-
Twilio コンソールの「Monitor > Logs > Calls」から通話履歴を確認可能です
まとめ
本記事では、Zabbix と Twilio Functions を組み合わせたサーバレスな音声通話アラート通知システムの実装手順を解説しました。このアプローチにより、従来の運用で課題となっていた中間サーバや認証情報の管理負荷を排除しつつ、障害発生時の即時性・確実性の高い電話通知を実現できます。
主な利点をあらためて整理すると:
- サーバレス運用により、余計な管理コストや運用リスクを最小化
- API キーやシークレット類を Twilio Functions 環境内に隔離し、Zabbix 側に残さない設計でセキュリティを強化
- Webhook 通知経由で柔軟に通知先やメッセージ内容を制御可能
- Twilio の高信頼な音声通話 API により、確実に障害アラートを伝達
この仕組みは、夜間や休日のオンコール体制や、重要度の高いインフラサービスの即時アラートに特に有効です。またサーバレスのため、検証やスケールにも柔軟に対応できる点も大きなメリットです。
参考リンク
おわりに
障害通知の本質は「誰よりも早く、確実に担当者へ伝えること」にあります。 本記事で紹介したサーバレス型の Zabbix×Twilio 音声通話通知構成は、最小限のコストと労力で、この要件を高度に満たす現代的なソリューションです。PoC・検証はもちろん、実運用に進める場合も極めて容易です。 まずは小規模な検証環境で動作を確認し、運用フローやセキュリティポリシーに応じて本番システムへ展開してください。
「通知が届かなかった」という最悪のリスクを排除するためにも、ぜひこの仕組みを一度体験してみてください。