Zendesk 2025年8月アップデート: 業務効率化と AI 機能の強化

Zendesk 2025年8月アップデート: 業務効率化と AI 機能の強化

Zendesk の 2025年8月アップデート情報をまとめました。管理・運用効率化、AI・自動化機能の進化、コミュニケーションチャネルの拡充という3つの軸で展開された主要なアップデート内容を詳しく解説します。

はじめに

Zendesk の 2025年8月のアップデート情報をまとめました。主にカスタマーサポート業務の効率化と AI 機能の強化を中心としたアップデートが行われています。特に、AI エージェントがメールと Web フォームチャネルに対応し、より幅広いシナリオで活用できるようになったこと、チケット承認機能の追加によりワークフロー管理が強化されたこと、そしてリアルタイム監視ダッシュボードの導入により業務の可視化が向上したことは注目ポイントです。カスタマーサポート業務の自動化推進、エージェントの生産性向上、そして管理者の運用効率化という3つの軸で展開されており、組織全体のカスタマーサービス品質向上に寄与することを目的としています。

対象読者

  • 新機能の導入と設定を担当する Zendesk 管理者
  • 日常的に Zendesk を使用してカスタマー対応を行うカスタマーサポート担当者
  • Zendesk の運用最適化と効率化を推進するシステム運用担当者

参考

管理・運用効率化機能の強化

管理業務の効率化と運用品質の向上を目的として、管理センター、ワークフォースマネジメント、セキュリティの3つの領域において機能が強化されました。

管理センターの機能拡張

管理センターにおいて、エージェント管理とアカウント管理の効率化を支援する2つの機能が追加されました。

  • コメント下書きモードのデフォルト設定
    従来、各エージェントが個別に設定する必要があった下書きモードを、管理者がすべてのエージェントに対してデフォルトで有効化できるようになりました。この機能により、誤送信の防止とコメント品質の向上を実現できます。特に、新人エージェントの研修期間や、重要なカスタマーとのやりとりにおいて、品質管理の観点から有効な機能です。

    1. 管理センター > オブジェクトとルール > チケット > 設定 を選択
    2. コメント > ドラフトモードをデフォルトで有効にする を有効化
      ドラフトモードをデフォルトで有効にする
  • 機能管理ページの新設
    Zendesk Suite 向けに、現在のプランの機能、アクティブなトライアル、主要なアドオンを一元管理できる機能管理ページが追加されました。これにより、アカウントの透明性が向上し、管理が容易になります。契約更新時の検討材料としても活用できるため、コスト最適化の観点からも有用な機能です。

    1. 管理センター > アカウント > 機能 を選択
      機能管理ページ

ワークフォースマネジメント (WFM) の改善

ワークフォースマネジメント機能において、業務効率化を支援する5つの機能が追加されました。

  • 組織別レポート機能
    履歴レポートを組織別にグループ化およびフィルタリングできるようになり、部門横断的な業務分析が可能になりました。

    1. グループ化
      グループ化
    2. フィルタリング
      フィルタリング
  • 手動アクティビティ追加機能
    管理者が一般タスクや未追跡時間などのアクティビティを、エージェントのアクティビティタイムラインに直接追加できるようになりました。
    アクティビティ追加

  • スケジュール変更の復元機能
    スケジュールを最後に公開した状態に戻し、シフトに加えたすべての変更をリセットできる機能が追加されました。
    スケジュール変更の復元

  • 週間スケジュール複製機能
    チーム、グループ、場所、またはすべてのエージェントのシフトを1週間分まとめて複製できるようになりました。

  • 外部アクティビティ追跡機能
    Zendesk 外でのエージェントの時間追跡が可能になり、指定した URL への訪問時間を自動的に記録できます。

セキュリティ機能の強化

セキュリティ面では、データ保護とアクセス制御の強化を目的とした3つの機能が追加されました。

  • ファイルアップロード制限機能
    許可されたファイルタイプのリスト以外のファイルのアップロードを制限できるようになりました。これにより、マルウェアの侵入リスクや不適切なファイル形式によるシステム障害のリスクを軽減し、セキュリティガバナンスを強化できます。

    1. 管理センター > オブジェクトとルール > チケット > 設定 を選択
    2. 添付ファイル > 許可するファイルタイプ を 推奨されるファイルタイプのみ に設定
      ファイルアップロード制限機能
  • 高度な暗号化機能の拡張
    「高度なデータプライバシーとデータ保護」アドオンを使用するユーザーに、メールアドレスや X ハンドル、Facebook ID などのソーシャル ID の暗号化機能が提供されました。

  • データマスキング機能 (EAP)
    個人を特定できる情報 (PII) へのアクセス制御を強化するデータマスキング機能の本番環境での早期アクセスプログラム (EAP) が開始されました。名前、メールアドレス、電話番号などの機密情報へのアクセスを、エージェントの権限に応じて制御できるため、内部統制の強化とコンプライアンス対応に有効です。

Zendesk AI の強化

AI 技術を活用した自動化機能において、機能拡張と改善が行われました。

AI エージェントの機能拡張

  • Essential プランでのチャネル拡張
    AI エージェント Essential において、メールチャネルと Web フォームチャネルでの利用が可能になりました。これらの AI エージェントは、関連するヘルプセンターのコンテンツに基づいて回答を生成し、記事への直接リンクも含めることで、自動解決率の向上を実現します。従来の Web Widget に加えて、より幅広いカスタマーサポートシナリオで AI エージェントを活用できるようになります。

  • カスタム指示機能の追加
    従来 Advanced プランでのみ提供されていたカスタム指示機能が Essential プランでも利用可能になりました。これにより、デフォルトのオプション以外の方法で AI エージェントの動作を制御でき、ブランドに適した応答の生成が可能です。企業固有のトーンやスタイルを AI エージェントに反映させることで、一貫した体験を提供できます。

    1. 管理センター > AI > AIエージェント > AIエージェント を選択
    2. AI エージェントを選択し 手順 タブ > 手順を作成
      手順を作成1
    3. 名前と手順 (AIエージェントがすべきこと、すべきでないことの説明) を入力
      手順を作成2
  • セグメント機能の強化
    Advanced プランでは、類似した特性を持つカスタマーにターゲットを絞った会話フローを作成できるセグメント機能が追加されました。ロケール、言語、カスタマータイプなどに基づいてセグメントを作成し、条件設定ブロックの一部としてダイアログで使用したり、エージェント AI を使用する AI エージェントの検索ルールで活用できます。

Support における AI 機能強化

Support 機能において、AI を活用した業務効率化機能が強化されました。

  • コミュニケーションガイドライン機能
    オートアシストと文章書き直しツールの動作を制御するブランド固有のガイドラインを定義できるようになりました。これにより、Copilot AI ツールの提案がブランドのトーンと一致し、一貫性のあるカスタマーコミュニケーションを実現できます。

    1. 管理センター > AI > エージェントCoplilot > 文書作成ツール を選択
    2. コミュニケーションガイドライン にチェックを入れ、 ガイドラインを管理 から追加
      コミュニケーションガイドライン
  • 概要:Copliot ページの機能強化
    新しい推奨タイプ、追加言語、実行可能な推奨事項、却下された推奨事項へのフィードバック機能が追加されました。
    概要:Copliot ページ

  • インテリジェントトリアージの改善
    エンティティ値の同義語定義機能により、エンティティ検出の精度が向上し、より信頼性の高いワークフローの構築が可能になりました。例えば、「返品」 「返金」 「キャンセル」などの類似した意味を持つ単語を同一エンティティとして認識させることで、分類精度の向上を実現できます。

  • インテリジェントトリアージの目的提案機能
    毎週新しい目的が自動提案される機能により、長期的な設定のメンテナンスと改善が容易になりました。目的の候補は管理センターの「目的」ページに直接表示されるため、継続的な改善サイクルを効率的に回すことができます。

  • オートアシストのアクション連携機能
    標準アクションとアクションフローをプロシージャーに直接リンクできるようになりました。

  • エージェント向け直接指示機能
    コンテキストパネルのナレッジセクションで、オートアシストがエージェントに直接指示を提供できるようになりました。

コミュニケーション・チャネルの拡充

カスタマーとのコミュニケーション手段の多様化と品質向上を目的として、メッセージング、音声通話、ナレッジベースの各機能において改善がありました。

Zendesk Support 機能の強化

  • チケット承認機能
    チームメンバーや登録されたエンドユーザーに対して、エージェントワークスペースから直接承認リクエストを送信できるようになりました。

  • モバイルアプリでのサイドカンバセーション対応
    iOS および Android モバイルアプリで、チケットのメールベースのサイドカンバセーションを表示し、返信できるようになりました。

メッセージング機能の改善

メッセージング機能において、セキュリティ強化と機能拡張が実施されました。

  • IP アドレス禁止機能
    特定の IP アドレスからのメッセージングチャネルへのアクセスを禁止できるようになりました。禁止された IP アドレスからのエンドユーザーは、AI や人間のエージェントとの会話が完全にブロックされます。スパムや不正利用の防止、セキュリティインシデントへの迅速な対応において有効な機能です。

  • Web Widget でのヘルプセンター認証
    Web Widget にヘルプセンター認証を設定できるようになりました。ヘルプセンターにサインインしているエンドユーザーによる Web Widget とのインタラクションには、自動的にユーザーのサインイン ID が適用されます。

  • エージェント終了メッセージングセッションのルーティング改善
    オムニチャネルルーティングロジックが更新され、セッション終了後にルーティングチャネルがメッセージングからメールに変更されたチケットのみがルーティング対象となりました。

  • 会話非アクティブ時のリマインダー機能
    メッセージングの会話が非アクティブになったときに、エンドユーザーにリマインダーを送信できるようになりました。非アクティブ時のリマインダー設定は、管理センターのキャパシティの解放設定で管理できます。

  • メッセージング目標追跡機能
    特定のカスタマーアクションを追跡できる新しいメッセージング目標機能が追加されました。目標をエージェントグループに割り当てることで、どの会話が完了目標に導いたかを追跡し、各エージェントがアクションの実行に責任を持つ頻度を確認できます。

  • リッチテキストフォーマット対応
    Web およびモバイルメッセージングチャネルのリッチテキストフォーマットオプションがチケットコメントでサポートされるようになりました。

Zendesk Talk の強化

  • 最大キューサイズの拡張
    Professional および Enterprise のお客様が音声設定で設定できる最大キューサイズが60から1,500に拡張されました。

Zendesk Guide の拡張

  • 記事の複数配置機能
    1つの記事を作成し、ヘルプセンター内のすべてのブランドで最大10個の異なるセクションに配置できるようになりました。記事のコンテンツの更新はすべての配置に自動的に反映されるため、コンテンツの作成と管理は一度で済みます。多ブランド展開している企業や、複数のカテゴリにまたがる情報を効率的に管理したい場合に有効です。

    1. ナレッジベース管理コンソール > 記事 を選択
    2. 配置する記事を選択し、 記事の設定 > 配置 から配置するセクションを追加
      記事の複数配置機能

Zendesk Explore / Zendesk QA の強化

データ分析と品質管理の向上を目的として、新しいダッシュボード機能とリアルタイム監視機能が追加されました。

新しいダッシュボード機能

分析機能において、AI 活用状況とリアルタイム業務監視のための2つのダッシュボードが追加されました。

  • Zendesk Copilot: エージェント生産性ダッシュボード
    エージェントが Copilot AI とどのようにやりとりしているかを明確に把握できる新しいダッシュボードが利用可能になりました。Copilot AI ツールの採用状況、エンゲージメント状況、生産性への影響を詳細に分析できます。この情報により、使用状況の追跡、ワークフローの最適化、生産性の向上を効果的に推進できます。

    1. 分析 > ダッシュボード > Zendesk Copilot: Agent productivity を選択
      Zendesk Copilot: エージェント生産性ダッシュボード
  • リアルタイム監視ダッシュボード
    さまざまなチャネルからのデータを組み合わせて、ビジネスの可視化を提供する新しいリアルタイム監視ダッシュボードが追加されました。リアルタイムビューと履歴ビューの両方を組み合わせることで、業務の現状把握と傾向分析を同時に行えます。

品質保証機能の改善

  • Zendesk QA SLA スポットライト機能
    Zendesk QA での会話のスポットライトインサイトおよび会話フィルターとして、SLA が追加されました。この機能により、SLA 違反の会話をすばやく特定し、Zendesk Support の SLA ポリシーに基づいてさらなる分析やレビューを行うことができます。

インテグレーション機能の拡張

  • Workday インテグレーションの管理機能強化
    Zendesk Support の Workday インテグレーションにおいて、管理機能が利用できるようになりました。管理者は、エージェントや人事担当者に表示される Workday データをカスタマイズできるようになります。

  • Shopify アプリのダークモード対応
    Zendesk Support 用 Shopify アプリがダークモードと完全に互換性を持つようになりました。

まとめ

2025年8月の Zendesk アップデートでは、AI 機能の大幅な拡張、管理・運用効率化の強化、コミュニケーションチャネルの拡充という3つの主要な軸で、50を超える新機能と改善が提供されました。

Zendesk は継続的な機能改善を通じて、カスタマーサポート業務のさらなる効率化と品質向上を推進しています。今回のアップデートで示された AI 機能の拡張と自動化の推進は、今後も重要なテーマとして発展していくでしょう。定期的な機能アップデート情報の確認と、新機能の段階的な導入により、Zendesk の価値を最大限に活用していくことをおすすめします。

この記事をシェアする

facebookのロゴhatenaのロゴtwitterのロゴ

© Classmethod, Inc. All rights reserved.