[アップデート] AWS Elemental MediaTailor にライブ配信の広告抑制機能が追加されました!

AWS Elemental MediaTailorにAD Break Suppression(広告抑制)機能が追加されました
2020.04.22

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こんにちは、大前です。

AWS Elemental MediaTailor に掲題のアップデートがありましたので、お知らせします。

AWS Elemental MediaTailor ad break fill preference for live streaming

 

数行まとめ

  • "Avail suppression mode" と "Avail suppression value" を指定する事で広告挿入の抑制が行われるよ
  • ライブ配信の最新時点から指定した時間範囲内で視聴しているユーザに対してのみ広告挿入がされるよ

どんなアップデートか

(前提)MediaTailor おさらい

MediaTailor は AWS MediaServices の1つであり、サーバサイド広告挿入を実現するサービスです。

 

MediaTailor は、MediaPackage や MediaStore、S3 といったオリジンから広告挿入箇所が示されたコンテンツを受け取ります。

広告挿入部分は、SCTE-35 という規格を用いて示されます。

AWS Elemental MediaConvert出力に SCTE-35 マーカーを含める

 

その上で、以下の流れでサーバサイド広告挿入が行われます。

  1. ユーザは MediaTailor が払い出すエンドポイントに対してコンテンツをリクエスト(一般にはCDNを経由する事が多いと思います)
  2. MediaTailor はリクエストをして来たユーザ情報などを元に、外部の AD Server(広告決定サーバ)に挿入する広告をリクエスト
  3. AD Server は、リクエスト内容を元に適切な広告を MediaTailor に返却
  4. MediaTailor は、AD Server から返却された広告を SCTE-35 で示された箇所に挿入する
  5. ユーザには、広告が挿入済みのコンテンツが返却される

 

これが、MediaTailor を使用した広告挿入の大まかな流れになります。

アップデート概要

今回のアップデートにより、指定した時間範囲外でライブ配信を視聴しているユーザには広告を表示させない事が可能となります。

 

ライブ配信は、設定によりリアルタイムで最新のコンテンツを視聴するだけでなく、追っかけ再生の様に少し遅れてコンテンツを視聴させる事も可能です。

普段からライブ配信を観ている方はイメージしやすいと思います。

 

一方で、コンテンツには適宜広告が挿入されるポイントが定義されているため、視聴を開始するタイミングに関わらずそのポイントでは広告が再生される事になります。

 

今回のアップデートは、ライブ配信の最も進んだポイント(公式ドキュメントだと Live edge と表現されている)から指定した時間よりも前のコンテンツを再生しているユーザに対しては広告を挿入しない事が可能になる機能です。

 

MediaTailor 上でのパラメータとしては、以下の 2つが追加されています。

  • Avail suppression mode ... 広告抑制機能(本アップデートの機能)を使用するかどうか
    • "OFF" か "BEHIND_LIVE_EDGE" を指定
    • "BEHIND_LIVE_EDGE" を指定すると機能が有効となる
  • Avail suppression value ... 広告挿入の対象となる時間範囲
    • HH:MM:SS 形式で指定する

MediaTailor 上での設定のほか、クライアントからのリクエストに上記パラメータを含める事で広告抑制を行うことも可能です。

 

また、現時点では HLS のみ対応となっています。

At this time, ad suppression is only available for HLS manifests.

 

公式ドキュメントにて、3つの例が挙げられているのでそれぞれ順に確認してみます。

Ad Suppression

例1 : 広告抑制をしない場合

これは従来の動作となり、最新のコンテンツを取得していても、追っかけ再生をしていても、同様に広告が挿入されます。

引用(https://docs.aws.amazon.com/mediatailor/latest/ug/ad-behavior-live.html)

例2 : 時間範囲の指定値を Live Edge に一致させる場合

例2 からは、本アップデートを使用した例となります。

Avail suppression value を "00:00:00" と指定する事で、Live Edge にいるユーザ(最新コンテンツを視聴しているユーザ)を含め、一切広告挿入が行われなくなります。

引用(https://docs.aws.amazon.com/mediatailor/latest/ug/ad-behavior-live.html)

 

例3 : Live Edge より後ろに値を設定する場合

こちらは、Avail suppression value を "00:45:00"(45分)とした場合の例です。

最新時点(Live Edge)から見て、45分の範囲内でライブ配信を視聴しているユーザに対してのみ広告の挿入が行われます。

引用(https://docs.aws.amazon.com/mediatailor/latest/ug/ad-behavior-live.html)

 

ユースケース

公式ドキュメントに記載されているものとしては、ライブイベントが開催されている間は広告を配信せず、ライブイベント終了後に広告を挿入させる様なケースが説明されています。

音楽や、スポーツといったライブイベントを視聴しているのに突然広告が挿入されたら確かにユーザとしてはあまり良い気分はしないですよね。

ユーザ体験を向上させ、結果として広告の価値も高める事が出来る機能が追加されたという事なのではないでしょうか。

おわりに

AWS Elemental MediaTailor の新機能である広告抑制機能を紹介しました。

 

MediaTailor 周りはまだまだキャッチアップ出来ていないなぁと感じる今日この頃です。。

以上、AWS 事業本部の大前でした。