(レポート) [ユーザー事例に学ぶ ~モバイルファーストが切り拓くマーケティング戦略~] パーソナルデバイスでの「データvs体験型消費」の関係

2016.12.21

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はじめに

こんにちは。宮嶋です。
2016年11月25日(金)TKP 品川カンファレンスセンター ANNEX にて「ユーザー事例に学ぶ ~モバイルファーストが切り拓くマーケティング戦略~」を弊社主催で開催いたしました。
本投稿では、スターバックス コーヒー ジャパン株式会社 デジタル戦略本部 デジタルマーケティング部 部長 長見 明氏による 「パーソナルデバイスでの「データvs体験型消費」の関係」についてレポートしたいと思います。

イベント概要

テクノロジーの発展に合わせて、お客様とのコミュニケーションのあり方が大きく変わりつつあります。モバイルは、お客様の身近にある最も深く繋がることができるツールであり、その重要性は増すばかりです。
本セミナーでは、無印良品で「MUJI Passport」の立ち上げを手掛けた後、オイシックス株式会社に移籍した奥谷 孝司氏にデジタルマーケティング全体の未来について、ユーザー様事例として株式会社すかいらーく マーケティング本部 小林 克明氏、スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 デジタル戦略本部 長見 明氏にモバイル マーケティングの取り組みについて、それぞれお話しいただきました。

イベントHP:https://dev.classmethod.jp/news/20161125/

セッション内容

消費の多様化、パーソナル化、IT化、ビッグデータ、体験型消費 ―― 時代を語るキーワードが乱立するなか、デジタル戦略はなにを目指せばよいのか?
スターバックスでは、どのように時代の変化を解釈し、デジタル戦略・マーケティング戦略に落とし込んでいるのか、その足跡とその背景にある洞察をご紹介します。

セッション講師

スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 デジタル戦略本部 長見 明氏

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レポート

長見さんの経歴

  • PR会社(新卒・2年半)
  • フリーランス(6年半)
    • PRを中心にリサーチから広告企画、イベント・制作物まで
  • WEBコンサルティング会社(2年)
  • スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社(10年)
    • 2006年 Starbucks Discoveries コミュニケーション マネージャー兼 WEB担当
    • 2008年 WEB/CRMチーム マネージャー
    • 2010年 WEB/CRMグループ マネージャー
    • 2015年〜 デジタルマーケティング部 部長

デジタル戦略本部でやっていること

  • オウンドメディア
  • ソーシャルメディア
  • スターバックス カード
  • オンラインサービス
  • 商品・コーヒー豆など素材の調査

Mobile First

ウェブサイトのアクセス

  • 16年度、スマホのアクセスが8割強
  • PCが拡大するのではなく、ガラケーからスマホへという流れが出来た
  • 会員の獲得については長見さんが入社した当初から現在にかけて10万弱から200万くらいに増加
  • アプリが登場したこともあり、最近はWEBからアプリに流れている

ソーシャルメディア

  • 日本でスターバックスのTwitterアカウントはランキング7位
    • フォロワー数は約300万人
  • Facebookアカウントは14位

→人気タレント・他大手サービスと並び上位にランクインしている。

力を入れるメディアはTwitterが良いと感じている。

新しいサービス・プロダクト

  • Starbucks Card
  • Mini Starbucks Card
  • Mobile Starbucks Card
  • Starbucks Touch
  • Starbucks eGift
  • Starbucks eTicket
  • Online Store

  • さあ、次は何を提供しよう?

既存の機能を新しいサービスにどう紐付けるかが課題だった。
そこでアプリでの戦略を考える。

アプリ

  • 今では寝る前でもスマホを使う
    →スマホは人々の生活に溶け込んでいるメディアである
  • 自社メディアの強化としてアプリを提供
  • 顧客が24時間使っているスマホに入り込めるようあの手この手で施策を考えた
  • 現在日本で100万強ダウンロードされている
  • アプリの開発を始める前に、最初にWEBの機能を充実させた
  • WEBの機能やコンテンツのうち7割くらいをアプリに採用

お客様の変化

  • 顧客の接触メディア
    • 2010年・・・TV : Internet = 172.8 : 102.6
    • 2015年・・・TV : Internet = 152.9 : 169.0

5年前までは TV >インターネットだったが、現在では逆転している
自社メディアを強化する必要がある

  • 顧客の購買行動
    • 非現金決済・・・2014年は85兆円、2018年には100兆円まで伸びると予想されている
    • EC市場・・・2014年は13兆円、2021年には26兆円まで成長すると言われている
    • 電子マネーやクレジットの普及により現金が消えると言われていた

コマースを強化する必要がある

  • 購買行動の見える化
    • インターネットの普及で外へ出かけなくなる
    • 女性の社会進出でモバイルワーク化が進む

顧客の購買行動を見える化するためにデータの活用を強化する必要がある
例えば購買データやCRMデータなど。

データ vs 体験型消費

モノに溢れ、情報が溢れている世の中にどう価値を提供していくのか

長見さんが最近気になることは「カボチャ」

  • 野菜としてのカボチャ
    • 店舗に並んでいるカボチャを顧客が買いに行く。
    • この「買いに行く」という行為は重労働。かなり時間を使う
    • そこでお買い物を自動化すると便利になる。

お買い物の自動化?

  • 最近では公共料金を支払うかのように、定期購入ができるようになっている。

では、自動化することにより浮いた時間で何をしようか?

  • その時間を使って別のカボチャが買える
    • 別のカボチャ=カボチャを使った体験=ハロウィン
    • 去年の渋谷のハロウィンイベントでは1,340億円ほどの利益があったと言われている
    • ここには一人あたりどれくらいお金をつぎ込んでいるのだろう?

→野菜を買う行為を自動化した事で、“体験”を顧客が買える時間が生まれた

モノ(目に見える)よりも、「体験」できるコト(目に見えない)に力を入れたサービスが
顧客に利用されている傾向があると思われる。

モノよりコトが今の時代の象徴なのではないか?

トレンド考察

背景は、インターネットの普及経済・社会の成熟
キーワードは、多様化細分化「量」と「質」の二極化

社会

個人を重視する傾向

  • 個人が活躍できる仕組み
    • 起業しやすい環境
    • フリーランスの増加
  • 一人家族化
  • 個人単位の管理が構造化
    • マイナンバー
    • 1to1マーケティング
  • 個人の陰としての匿名性

情報発信

全員がメディアに

  • ツールが充実
    • SNS
    • スマホ
    • 高性能カメラ
  • インフルエンサーも多様化・細分化
    • テレビなどマスメディアの影響力は低下している

情報収集

テレビでの情報収集が減少。それに代わりインターネットが主役に

  • 「量」の検索
    • リアルタイム
    • マイクロコンテンツ
    • テキスト+写真
    • オンデマンド動画

→情報の量が膨大になり情報を受ける方法も沢山あるため、情報への感度が高い人と低い人で得られる情報の量に差が生まれやすい

  • 「質」のキュレーション
    • 選別された情報
    • ニーズに合ったキュレーターをフォローできる

→情報量・発信元が増加したことで、その人に合った方法でより質の良い情報を得ることが出来るようになった

消費行動

モノよりコト

  • 物に溢れた社会
    • 価格に見合う価値
  • 消費しきれない情報量
    • 鮮度・量よりも精度
  • お買い物は合理的に
    • ECの伸張
    • 出かけない買い物
  • 体験・充実した時間を買う
    • ハロウィンなどのイベントによる大量消費
    • 劇場型のエスカレートした消費が求められるようになるのではないか
  • ネットにない情報=新しい情報

この傾向に対して必要なことは?

消費が多様化・細分化

  • Personalized Marketing
    →「部」で実施していたクオリティのマーケティングを「課」で高速に展開するマーケティングのこと
    展開するには組織の動きが重要
  • オウンドメディアの強化

お買い物の自動化・合理化

  • IT活用による利便性の提供

心の充実を渇望する消費者

  • ユニークな「体験」の創出
  • 更に、その「体験」へのきっかけづくり

感情を揺さぶられないものは吸い込まれない。感情を動かせるのは人しかない。
モノに感動しても、その感動するモノを作るのは人である。

まとめ

体験型消費といえば渋谷のハロウィンイベントが記憶に新しいですね。
集団でコスプレしたり、その様子をSNSに発信したりする様子はまさにトレンド考察の話のままです。
「パリピ」という言葉が生まれたりイベントの様子がニュースでも取り上げられたりするほどの社会現象にもなっています。

顧客の感情を揺さぶるような体験を考えるには、より密接に顧客と距離を近づける必要があるわけで、
そういった意味でも顧客が常備しているモバイルでの動きをリサーチすることは戦略として非常に有効なんだと改めて感じました。

そういえば、イベント戦略としてハロウィンに加えて次はイースターにちなんだ購買体験の企画が日本国内で進められていると聞いたことがあります。
イースターはコスプレなどよりは、イースターエッグなどモノに近い体験になるのではと私は考えています。
また新しい体験型消費の価値が創出されることになりそうだなと感じました。

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