アクセシビリティの未来 についてアクセシビリティの祭典で対談しました #accfes #GAAD #a11y
はじめに
2019年5月16日、"Global Accessibility Awareness Day(GAAD)" に開催されたアクセシビリティの祭典に、クラスメソッドはゴールドスポンサーとして協賛しました。
その祭典で「アクセシビリティの未来を考える」というセッションで対談しました。
対談にあたっては、事前に大まかなアウトラインを話し合い、その内容について意見をまとめていました。この記事では、そうした経緯であらかじめ準備していたネタをご紹介します。
対談セッションの様子。写真提供:株式会社ルート・シー様
事前検討内容
未来はどのようになるのか?
未来を考える時、最大の問題は日本の人口減少だと思います。
国土交通省国土計画局の資料によれば、2050年には
- 日本の人口は9515万人(2016年は1億2,693万人)
- 65歳以上の高齢者の割合を示す高齢化率は39.6%(2016年は27.3%)となり、約2.5人に1人が高齢者に
- 生産年齢人口(15〜64歳)は4,930万人(2016年は7,656万人)
- 65歳以上の者1人に対して1.3人(2016年 2.3人)の現役世代
特に、15歳から64歳までの生産年齢人口の現象がもたらす影響として:
- 防衛、警察、消防、流通など人数が前提のシステムの維持が困難に
- 国内マーケットの縮小
- GDP低下、マーケット縮小によるグローバル・サービスの日本対応の遅れ
- 税収の低下 → 公的サービスの低下(職員数減少、議会の維持が困難)
- 消滅自治体の出現
- 都市への人口集中の加速
- 単身世帯の増加、外に出ない高齢者の増加
などが挙げられると思います。
アクセシビリティの未来とは?
生産年齢人口の低下に対して、2つのアプローチが考えられます:
- 従来人手で行われていた作業ものをロボットやAIで代替する(例: Amazon Roboticsによるアマゾン フルフィルメントセンターの自動化など)
- 高齢者、障害者、世界中の人の力を借りることでサービスを維持する(生産年齢人口の定義そのものを変える)
- 出来るだけ多くの障害者が納税できるほど活躍できる社会に
- 高齢者のノウハウを活かしつつ、無理なく働ける仕組み作り
「高齢者、障害者、世界中の人の力を借りることでサービスを維持する」について:
生産年齢人口の低下に関するソリューションとして、KDDI株式会社のauのサイトに遠隔存在技術で旅行!? ロボット×VRで小笠原観光! | 5G VR・ARというサイトが参考になりました。
このロボットの名は「MODEL H」。背後に見える絶景は小笠原諸島・父島の港だ。今「ハーイ」と左手をあげているが、実はここから約1000km離れた東京・竹芝ふ頭で、操縦者がまったく同じポーズを取っているのだ。操縦者が右手をあげればロボットも右手をあげるし、操縦者が左を向けばロボットも左を向く。
また「テレイグジスタンス」という概念が紹介されています:
テレイグジスタンスの意味は「遠隔存在」。離れた場所にいるロボットと操縦者である人間が感覚を共有する、いわば“憑依”のような概念。
これは、1,000km離れた竹芝ふ頭から、小笠原諸島の父島にあるロボットを5Gネットワーク経由でVRを使って動かし、観光する実証実験です。このように、人間の感覚器をネットワークとアバターロボットを使って「拡張する」構成をとることができれば、その途中で変換や補正をかける可能性が出てきます。すなわち:
- 高齢者がアバターを動作させる際、少ない力でロボット側に大きな力を発揮させることで、高齢者であっても肉体を使う労働が可能に
- 視覚に障害があっても、アバターロボットがみた景色を音声で説明することができれば、視覚障害者も「見る」ことができる
- 日本国外に住んでいる人であっても、ロボットを通して自動翻訳された日本語で会話ができれば日本語を習得せずとも働くことができる
このような「感覚器の拡張」においては、途中経路のネットワークの品質が大変重要ですが、5Gネットワークには高速、大容量化、超低遅延、超大量接続、超高信頼性などの特徴があるので、近い将来には感覚器の伝達にも利用できることが期待されます。
このコンセプトに関して、東京大学名誉教授 舘 暲先生はHAPTIC DESIGNというサイトのインタビューに回答しておられる際の資料が参考になりました。
高齢者でも経験を活かした仕事ができるようになります。目が見えにくくなっていても、ロボットの身体を借りれば見えやすくなる。仮に手が震えていても、ロボットの身体ならすっと動く。障害がある人でも、障害にあわせたインターフェイスによって残存機能を使ってコントロールが可能になる。「新しい自分の身体を持つ」そんな夢のようなことが、テレイグジスタンスで可能になるのです。
また、昨年には実際に障害当事者がカフェのロボットOriHimeを動作させて接客するというテスト分身ロボットカフェ「DAWN ver.β」も立ち上げられました。
このOriHimeのような、ログインできる共用のモビルスーツが各地にあり、自宅から、職場や海外にあるモビルスーツにログインして利用することができ、かつ前述のような、利用する人の特性によって補強、補正、変換を行うことできれば、従来にもまして高齢者や障害当事者の就労機会が増えることが期待されます。これにより、従来の生産年齢人口(16歳〜64歳)の定義そのものを変えることができるものと考えます。
今から何をしておくべきか
- WebじゃないプラットフォームやUIは、今度どんどん増えることを意識する
- ECサイトなどでよく議論される「Webとアプリ」の比較を持ち出すまでもなく、Web以外のプラットフォームやUIは今後増加すると思われます。従って、これらの分野においてもアクセシビリティのノウハウを蓄積し、実装の際には意識していく必要があると考えます。
- 「Webの」アクセシビリティの内容をしっかりおさえる
- モバイルアプリに止まらず、Web以外の新たなプラットフォームのアクセシビリティについても、基礎的な内容はWebアクセシビリティと変わりません。そのため、まずはWCAGをはじめとするWebアクセシビリティの基礎はしっかりとおさえる必要があると思います。
- アクセシビリティの概念を「Web以外の」業界にも広げていく
- 例えば建築分野では「バリアフリー新法」などによって、高齢者・障害者への対応は罰則付きで対応が求められます。しかし、Webやその他情報通信分野では、対応が任意か認識がない場合も多くみられます。
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