
2025 dbt Launch Showcaseでの発表内容まとめ
さがらです。
現地時間2025年5月28日に2025 dbt Launch Showcaseが開催されました。
このイベントに合わせて今後のdbtのビジョンはもちろん、多くの新機能が発表されました。
この2025 dbt Launch Showcaseで発表された内容を、本記事でまとめます。
対象の情報
ウェビナー本編の情報と、以下の公式ブログを参考にしております。記事上の画像もこれらの情報から引用しております。
今後の製品名・機能名について
これまで、dbt Coreとdbt Cloudに分けられた製品名で提供されていましたが、今後、製品名は「dbt」に統一されます。
この変更の背景としては、2024年のCoalesceで発表された「One dbt」のビジョンがあります。
また各機能名についても、一部機能に名称変更が行われた上で、簡潔で説明的な機能名となります。以下は一例です。
- dbt Explorer ⇛ dbt Catalog
- dbt上のカタログ機能
- IDE ⇛ dbt Studio
- エディターや実行環境含む統合開発環境
- dbt Canvas ※新機能
- ノーコードのドラッグ&ドロップ操作でdbtのModel開発が行える機能
- dbt Insights ※新機能
- アドホックにクエリを実行しながら探索的なデータ分析を行える機能
新しいクエリエンジン「dbt Fusion」
2025年1月にdbt Labsが買収したSDFをベースにした、新しいクエリエンジン「Fusion」がリリースされました。(2025年5月29日時点ではパブリックベータ。)
dbt Fusionの特徴としては、以下の内容が挙げられます。
- dbt Coreよりも高速なParseとCompile
- 特にParseは現時点で約30倍高速化されているとのこと
- 開発者エクスペリエンスの向上
- コードの入力と同時にエラーが表示されるように
- コンパイル後のSQL自体の検証も、ウェアハウスにクエリを発行せずに検証可能に
- 開発環境向けのローカル実行 ※今後提供予定の機能
- 基盤となるプラットフォームの機能を完全にエミュレートし、接続先のデータプラットフォームに接続することなくコードを実行できるようになるとのこと
- state-aware orchestrationによるコスト削減 ※Enterpriseプラン以上のユーザーが利用可能
- state-aware orchestrationにより、Fusionがジョブの実行時に新しいレコードを確認し、変更が必要なModelだけがビルドされるようになる
- これにより、ジョブ実行時のコンピューティングコストが節約され、実行時間が短縮される(記事によると平均10%のコスト削減が見込まれるとのこと)
- PIIの自動分類 ※今後提供予定の機能
- 個人情報のカラムが変換される場合も含めて、下流のデータでも自動でPIIを検知できるように
- クロスプラットフォームのワークロード実行 ※今後提供予定の機能
- Fusionがサポートするあらゆるデータプラットフォームにおいて、dbtで作成されたパイプラインを再度移行する必要がなくなる
dbt Fusionエンジンへのアップグレードに伴う注意事項は、以下のドキュメントにまとめられています。
dbt Fusionのリポジトリはこちらとなります。
公式のチュートリアルも公開されています。
dbt Coreとdbt Fusionのライセンスの違い
これまでdbtは「dbt Core」として提供されてきましたが、「dbt Fusion」はdbt Coreとは完全に独立したエンジンとなり、ライセンスも異なります。
- dbt Core
- 引き続き、「Apache 2.0」ライセンスとして提供
- 今後も新規コードを提供。直近では、Multi dialect SQLの解析を行えるANTLR文法、Rustベースのdbt-jinjaなど
- dbt Fusion
- 「ELv2」ライセンスとして提供
- Managedサービスとして他者に製品提供はできない
- ライセンスキーによって保護されている機能を削除・隠蔽することはできない
- 「ELv2」ライセンスとして提供
Fusionエンジンで利用できる公式のVS Code拡張機能
Fusionエンジンの公開に合わせて、dbt Labs社公式のVS Code拡張機能もリリースされました。(2025年5月29日時点ではパブリックベータ。)
このdbt Labs社公式のVS Code拡張機能の特徴として、以下の内容が挙げられます。
- dbt Fusionの利用が前提となる拡張機能
- IntelliSense
- モデル名、カラム名、マクロ名、関数の自動補完機能
- Hover previews
- カラムの種類とスキーマの詳細が表示される
- Automatic refactoring
- モデル名、カラム名の名前を変更する場合、自動でプロジェクト全体の参照が更新される
- go-to-definition
- クリックすることで対象のモデルを定義しているコードにすぐに画面遷移できる
- inline CTE previews
- 複数のCTEが含まれるSQLでも、特定のCTEだけをプレビューできる
- カラムレベルのリネージ表示
ノーコードでModel開発が行える「Canvas」
ノーコードでModel開発が行える「Canvas」が新機能としてリリースされました。(一般提供)
GUI上でワークフローを作るように、加工したいデータを決めて、結合・集計・フィルタリング・計算式の定義・並べ替え、といった一般的なデータ加工をGUIベースの操作で行うことが可能です。
また、作成したワークフローはSQLに変換でき、そのままGitリポジトリにコミット~プルリクエスト発行までCanvasの画面上で行うことが出来ます。
さらに、Copilot機能も提供されているため、自然言語でリクエストした内容を元にワークフローを作成・修正することも可能です。
今後の機能アップデートとしては、以下を予定しています。
- Window関数や高度なフィルタ式などの追加のSQL操作のサポート
- Googleスプレッドシートなどの他のソースからデータをウェアハウスに接続してインポート
- Canvasで直接、Unit Test含めたdbtテストを定義する
公式ドキュメントも公開されています。
アドホックにクエリを発行して探索的なデータ分析を行える「dbt Insights」
アドホックにクエリを発行して、簡易的なチャートも作成できる「dbt Insights」が新機能としてリリースされました。(Enterpriseエディションを契約中の方向けにプレビュー)
下図は実際の機能の利用画面となります。dbt Copilotも利用できるため、AIのサポートを受けながらクエリを作成し、探索的にデータ分析を行える機能となっております。
公式ドキュメントも公開されています。
dbt MCP Server
先月公開されたdbt MCP Serverについても言及がありました。(ベータ提供、OSSのリポジトリを公開中)
MCPはLLMやAIエージェントにコンテキストを提供するための標準として急速に普及しつつあり、dbt MCP Serverを使用すると、dbtプロジェクトのモデル、メトリクス、テスト、リネージをAIシステムに連携することができます。
まだベータ提供ではありますが、AIに自律的な開発を行わせることが昨今の技術トレンドとしてある現在、AIによるdbtの開発においてdbt MCP Serverは必須の要素となってくると思います。
dbt Catalogの機能強化
dbt Catalog(旧称dbt Explorer)に機能強化が行われ、テーブルやビューなどのSnowflakeアセットをdbt内で直接検索・探索できるようになります。(現在はプレビュー機能)
他のデータプラットフォームとの統合についても、近日中に開始予定とのことです。
時系列でModelごとのコストを確認できるCost management dashboard
コスト管理を行えるダッシュボードが提供されます。(Snowflake用途はプレビュー、他のプラットフォームについては近日中に提供予定)
下図が実際の画面となりますが、時系列でdbtのどの処理にどれだけのコストがかかっているかを確認できるだけでなく、各Modelごとにどれだけの処理時間とコストがかかっているか、FusionのState-aware orchestrationによりどれだけのModelビルドを節約できているか、も確認できるようになっております。
SCIM によるユーザー管理の簡素化
dbtはSCIMをサポートし、OktaやEntra IDなどのIdPを介した自動ユーザープロビジョニングとデプロビジョニングを提供します。(Oktaでは一般提供、その他のIdPではプレビュー)
最後に
2025 dbt Launch Showcaseでの発表内容をまとめてみました。
特に新しいクエリエンジンであるFusionについて、SDFの特徴を盛り込んだ機能だけでなく今後提供予定の機能の概要がわかり、とてもテンションが上がる内容でしたね!
Canvasも、これまでSQLに敷居が高いと感じていたユーザーにdbtの開発体験の良さを経験してもらえる機能だと感じました。
また個人的には、state-aware orchestrationやcost management dashboardがコスト管理・削減にとても役立ちそうなので、1ユーザーとして嬉しいですねw
各新機能については別途ブログを書いていこうと思っていますので、お楽しみに!