[新機能] Amazon S3 Tablesの自動レプリケーションに対応しました

[新機能] Amazon S3 Tablesの自動レプリケーションに対応しました

2025.12.03

クラウド事業本部の石川です。Amazon S3 Tablesがレプリケーションサポートを発表になりましいた。

Amazon S3 Tablesは、S3上に格納されたApache Iceberg のデータに対するメタデータ管理をAWSがフルマネージドで提供するサービスですが、クロスリージョンやクロスアカウントへのレプリケーションをサポートしました。

https://aws.amazon.com/jp/blogs/aws/announcing-replication-support-and-intelligent-tiering-for-amazon-s3-tables/

Amazon S3 Tablesの自動レプリケーションとは

従来、データレイクのテーブルを別リージョンや別アカウントにレプリケートする場合、汎用S3ストレージ上のIcebergのメタデータ同期、オブジェクトレプリケーション、更新の追跡などを自前で構築・運用する必要があり、複雑で手間がかかっていました。

自動レプリケーション機能は、Amazon S3 Tables上でIcebergテーブルの一貫性のあるリードレプリカを自動で、かつ簡単に維持することを可能にします。

Amazon S3 Tablesの自動レプリケーションで可能になること

Amazon S3 Tablesのレプリケーションサポートは、ソーステーブルに加えられたすべての更新を、指定された宛先(デスティネーション)のテーブルバケットに自動で複製し、一貫性を維持します。

  1. 完全な一貫性の維持
    • データのオブジェクトだけでなく、Apache Icebergのスナップショット親子関係を維持したまま、時系列順にすべての更新が複製されます。宛先レプリカテーブルでもソースと同じくIcebergのタイムトラベルや監査要件をサポートします。
  2. 設定の簡素化
    • AWS Management Console、API、またはAWS SDKを通じて、ソースのテーブルバケットと宛先のテーブルバケットを指定するだけで設定が完了します。
  3. 自動同期
    • 一度設定すれば、S3 Tablesサービスが継続的に更新を監視し、通常数分以内にレプリカテーブルに反映されます。
  4. 多様なレプリケーション
    • クロスリージョンやクロスアカウントへのレプリケーションをサポートします。
  5. 独立した設定
    • レプリカテーブルは、ソーステーブルとは独立した暗号化ポリシーや保持ポリシーを持つことができます。

利用者は面倒なカスタム同期ロジックの構築から解放され、フルマネージドの仕組みでデータの一貫性と可用性を高めることができます。

ユースケース

自動レプリケーション機能は、以下の実務的な課題を解決し、データアーキテクチャに柔軟性をもたらします。

  1. グローバルデータセットの構築と低遅延クエリ:
    • 地理的に分散したチームや拠点がデータを利用する場合、データソースに最も近いリージョンにレプリカを配置することで、クエリレイテンシーを最小限に抑え、分析パフォーマンスを向上させます。
  2. データ保護とディザスタリカバリ(DR):
    • 本番環境とは別のリージョンやアカウントにリードレプリカを保持することで、万が一のリージョン障害やオペレーションミスが発生した場合のDR対策として機能します。
  3. コンプライアンス要件への対応:
    • 特定の国や地域のデータ主権、セキュリティ監査などのコンプライアンス要件に基づき、データを特定のリージョンやアカウントに複製・隔離する必要がある場合に役立ちます。
  4. データ共有と分離:
    • データの書き込み元(ソースアカウント)と、分析やBI利用を行う先(分析アカウント)を分離し、セキュリティとコスト管理を容易にするクロスアカウントデータ共有基盤として活用できます。

他との比較・使い分け

S3 Tablesのレプリケーションは、Icebergテーブルの一貫性をサービスに委ねる点において、従来のS3 CRRや自前実装とは一線を画します。Icebergの先進的な機能(タイムトラベルなど)をレプリカ側でも確実に利用したいデータエンジニアにとって、これが最善の選択肢となります。

機能 S3 Tables 自動レプリケーション Amazon S3 CRR (クロスリージョンレプリケーション) カスタムIceberg同期ロジック
対象 S3 Tables (Icebergテーブル) S3オブジェクト全般 Icebergテーブル(自前実装)
メタデータ同期 自動で一貫性を維持 非対応 (データオブジェクトのみ複製) 自前で実装・運用が必要
タイムトラベル レプリカ側で利用可能 利用不可 自前実装の品質に依存
運用負荷 極めて低い (設定のみ) 低い (オブジェクトレベル) 高い (構築・監視・障害対応)
推奨ユースケース IcebergテーブルのDR、グローバル分析基盤、データ共有 Icebergではないファイルデータの複製、S3バケット全体のDR 特殊な要件や低コスト追求時のみ

制約事項

本機能を利用する上で留意すべきいくつかの制約事項があります。

  • リードオンリー

    • 宛先(デスティネーション)に作成されるレプリカテーブルはリードオンリーです。データ更新は必ずソーステーブルに対して行う必要があります。
  • 同期遅延

    • 更新は通常「数分以内」に複製されますが、ニアリアルタイムではありません。大量のデータ更新があった場合や、リージョン間転送の状況によっては遅延が発生する可能性があります。
  • 料金体系

    • 宛先テーブルにおけるストレージコスト(S3)
    • レプリケーション実行時のS3 TablesへのPUTリクエスト料金
    • テーブル更新(コミット)およびオブジェクト監視の料金
    • クロスリージョンレプリケーションの場合、S3から宛先リージョンへのデータ転送費用

最後に

Amazon S3 Tablesのレプリケーションサポートは、Icebergテーブルの運用における課題であったデータの一貫性を維持したIcebergテーブルのグローバル展開とDR対策を、フルマネージドで実現する画期的なアップデートです。AWSデータエンジニアにとって、データの一貫性維持という課題から解放され、ビジネス価値の高い分析基盤の設計・改善に集中できる環境が整いました。

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https://aws.amazon.com/jp/blogs/aws/announcing-replication-support-and-intelligent-tiering-for-amazon-s3-tables/

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