Amazon ConnectのACD機能について

2018.03.25

事業開発部の酒匂です。今回は、Amazon ConnectのACD機能について書いていきたいと思います。

ACD機能とは

Automatic Call Distributionの略でして、着信呼を自動的にコールセンターのオペレータに配分する機能です。ACDは昔からある機能で、いくつか種類があり、代表的なものにスキルベースルーティング(Skill Based Routing)があります。

Amazon Connectでも、スキルベースルーティングを使用することができます。

スキルベースルーティングとは

例えば、コールセンターで以下の業務を行なっているとします。

  • 問い合わせ受付
  • 契約手続き受付

コールセンターには、両方の業務を対応できるオペレータと、どちらか片方だけを対応できるオペレータがいるとします。

この場合、コールセンターで以下のように電話を受けられるようにすると、効率的にコールセンターを運営できます。

  • 両方の業務を対応できるオペレータ
    • 「問い合わせ受付」、「契約の受付」に関する内容の電話を受けられるようにする
  • どちらか片方の業務を対応できるオペレータ
    • 「問い合わせ受付」、「契約の受付」のうち、自分が対応できる内容の電話を受けられるようにする

また、オペレータにとっても自分が対応できない内容の電話を受けないで済むので、精神的な負担が無くなります。

これらを実現するための機能がスキルベースルーティング機能です。

ちなみに、何の要件の電話がかかってきたのかを判断するには、受付の電話番号を受けておくか、コールプロンプト機能やIVR機能でメニュー選択をできるようにしておく必要があります。

Amazon Connectでの設定方法

Amazon Connectには、「スキル」というものは存在していないのですが、似たようなものとして「キュー(Queue)」があります。

オペレータとキューの関係は以下のようになっております。

  • オペレータ
    • ルーティングプロファイル
      • キュー (例:問い合わせ受付)
      • キュー (例:契約手続き受付)
      • キュー (例:返品交換受付)
  • ルーティングプロファイルは、1つもしくは複数のキューを束ねたもの
  • ルーティングプロファイルは、1人のオペレータに1つだけ設定できる。
  • ルーティングプロファイルは複数のオペレータに同じものを設定することが可能。オペレータごとに定義すると管理が複雑になるので、グループ単位に設定する運用にする。
  • キューには、スキルレベルに該当する設定は無し。

優先度のみを設定した例

下記は、3つのキューに順番に優先度を設定し、遅延 (秒)は設定していないパターンです。

この場合、オペレータが受付可の状態になったタイミングで、「問い合わせ受付」のキューと「契約手続き受付」のキューに待ち呼が発生している場合、「問い合わせ受付」の呼が着信します。「問い合わせ受付」のキューに待ち呼が発生していない場合は、「契約手続き受付」の呼が着信します。「返品交換受付」の場合も同様です。

設定項目 説明
名前        設定するキュー(queue)。
優先度       キュー(queue)の優先順位を設定します。番号が小さい方が優先度が高くなります。同じ数字を設定することも可能です。
遅延(秒)       着信コール(呼)がオペレータにルーティングされるまでの最小待ち時間。

ちなみに、待ち呼が発生していない状態で着信が発生した場合の動きについては、以下のようになりました。

  • 下記のルーティングプロファイルを用意する。
ルーティングプロファイル1:「問い合わせ受付」キューのみを設定

ルーティングプロファイル2:「問い合わせ受付」キューと「契約手続き受付」キューを設定

試した内容
  1. 「ルーティングプロファイル1」をオペレータ1に、「ルーティングプロファイル2」をオペレータ2に付与する。
  2. オペレータ2を受付可の状態にする。
  3. 次に、オペレータ1を受付可の状態にする。
  4. 問い合わせキューに着信するように架電する。

→オペレータ2は「問い合わせ受付」キューの優先度は2ですが、受付可にしている時間が長いオペレータ2に着信しました。

優先度と遅延(秒)を設定した例

今度は、「契約手続き受付」キューに遅延 (秒)を10秒設定しました。

この場合、オペレータが受付可の状態になったタイミングで、「問い合わせ受付」のキューと「契約手続き受付」のキューに待ち呼が発生している場合、前者の呼が着信します。

「問い合わせ受付」のキューに待ち呼が発生していなくて、「契約手続き受付」のキューに待ち呼が発生している場合、待ち時間が10秒を過ぎると着信します。これは例えば、メインスキルが「問い合わせ受付」で、バックアップスキルとして「契約手続き受付」を持つオペレータ(or オペレータのグループ)がいる場合、「契約手続き受付」のキューに待ち呼が発生したらすぐに受けるようにするのではなく、これ以上待たせてしまうとサービスレベルが下がってしまうという判断が入るところまでは受けないようにして、メインスキルの業務に専念してもらいたい場合に設定します。

スキルレベルに応じたルーティングをする場合はどうするか?

例えば以下のようなことをしたい場合にどうするか?という話です。
スキルレベルとは、能力の優劣という意味ではなく、着信の優先度の意味として使っております

  • トレーニングのため、新人に優先的に着信させたい。
  • VIP顧客が架電してきた時に、ベテランオペレータが空いていたら、そっちに優先的に着信させたい。
  • 同じスキルを持つオペレータの中で、優先的に着信させるグループとそうでないグループとに分けたい。

案1:コールフロー側にロジックを入れる

  • 「問い合わせ受付」キューと「問い合わせ受付2」キューを作成し、前者に優先的に着信させる。
  • 「問い合わせ受付」キューに空きがあるかどうかをチェックし、空きがある(=true)場合、そこへ着信させる
  • 「問い合わせ受付」キューに空きが無い場合は、「問い合わせ受付2」キューへ着信させる。
この案を採用した場合に考えられるデメリット
  • キューレポートが業務としては「問い合わせ受付」なのに、「問い合わせ受付」キューと「問い合わせ受付2」キューに分かれてしまう。
  • 「問い合わせ受付2」キューに空きがない場合は、そこで待ち呼にさせるのか?それとも「問い合わせ受付」キューで待ち呼にさせるのかを決める必要があり、コールフローが複雑になっていく恐れがある。
  • ルーティングプロファイルだけではルーティングを制御できず、コールフローも変更しないと制御できなくなってしまう。

デメリットがありますので、この案を採用する場合は、よく検討が必要かと思います。
(複雑なことをしようとしないという選択が重要です)

案2:(実現不可)ルーティングプロファイルで制御する

ご参考までですが、先に受付可にしたオペレータに着信する為、以下のようにしても実現できません。

新人用ルーティングプロファイル

一般用ルーティングプロファイル

試した内容
  1. 一般用ルーティングプロファイルを設定したオペレータを受付可の状態にする
  2. そのあとに新人用のルーティングプロファイルを設定したしたオペレータを受付可の状態にする
  3. 電話をかける

一般用ルーティングプロファイルを設定したオペレータに着信する

プライオリティー・キューイングについて

待ち呼が発生した場合、通常は並んでいる順に着信していきますが、以下のような場合に順番を先頭にしたいなどといったニーズがあるかと思います。

  • VIP顧客は優先的に対応したい。
  • お客様からの電話を受けて応対していたが、別の担当チームに転送することになった。もし転送先が待ち呼だった場合、なるべくお客様をお待たせしないで電話を繋ぎたい。

amazon connectでは呼の優先度の設定ができるので、例えば以下のように設定します。

通常のインバウンドフローの場合

呼の優先度を「3」にしておきます。

転送のインバウンドフローの場合

呼の優先度を「1」にしておきます。数字の小さい方が優先度が高くなります。

試した内容
  1. 「契約手続き受付」キューに待ち呼を発生させておきます。
  2. 「問い合わせ受付」キューに着信させ、応答し、「契約手続き受付」キューに転送し、待ち呼にします。
  3. 「契約手続き受付」キューに応答できるオペレータを受付可にします。

→「問い合わせ受付」キューからの転送呼が着信することを確認

おわりに

Amazon Connectは、複雑というよりはシンプルなルーティングを設定することが基本方針だと思いますので、それを前提にコールフローの設計を行うのが良いかと思いました。