
AIは1on1を代替できるのか?人事の私が感じたAIにできること、人にしかできないこと
「AIが1on1をしてくれる時代が来るのでは?」
最近、そんな話を聞くようになりました。
私は人事として15年間、社員との1on1や採用面接、キャリア支援に携わってきました。
現在は、国家資格キャリアコンサルタントと国際コーチング資格を活かし、社外でも一人ひとりとの対話を通じた支援を行っています。
生成AIが広がってからは、普段のコーチングやキャリアコンサルティングのセッションでも対話の仕事にAIはどう活かせるかを考え、AIと壁打ちをしながら気づいたことがあります。
それは__AIは1on1を完全に代替できなさそう__ということです。
でも、人にしかできない対話の質を高めるためのパートナーにはなれると感じています。
今回は、私が実際に試している1on1でのAI活用方法をご紹介します。
※実際にAIを活用する際は、氏名や部署名など個人を特定できる情報は入力せず、内容を匿名化することが大前提です。
人にしかできない「対話」がある
AIって本当に優秀ですよね。
情報を整理して、言語化してくれて、自分では気づかなかった視点を返してくれる。
今では私にとって欠かせない壁打ち相手になっています。
でも、1on1という「対話」そのものは、AIが完全に代替することは難しいものだ、と思っています。
- ふとした瞬間に表情が少し曇る
- 言葉に詰まって沈黙になる
- 「大丈夫です!」という言葉とは裏腹に表情が硬い
こういった相手の表情のわずかな変化、言葉にならない間、その場の空気を読み取って関わっていくことはAIにはできません。
そして、1on1で相手が求めているのは、正しい答えだけではないということです。
自分に向き合い、自分を理解しようとしてくれている。
その実感があるからこそ、本音で話せるようになり、信頼関係が生まれていきます。
だから私は、AIに1on1を任せるという発想ではなく、
人にしかできない対話の質を、AIでどこまで高められるかという視点で活用しています。
面談時間以外にAIを取り入れる
多くの方がこのような悩みを抱えているのではないでしょうか。
- 1日に何件も1on1が入っていて、振り返る時間が取れない
- 「なんとなく気になる」が整理できないまま次の面談に突入してしまう
- 相手の本音や伝えたいことを、自分の解釈だけで判断してしまっている気がする
私も同じでした。
そこで取り入れたのが、「面談時間」ではなく、「事前準備」と「振り返り」にAIを使うという方法です。
事前準備:「今日は何を大切に聴こうか」を整理する
1on1の質は、実は面談が始まる前からある程度決まっています。
私は面談前に、これまでの面談メモを見返しながらAIと壁打ちをしています。
例えば、
- 前回から続いているテーマは何か
- 今回確認した方がよいことは何か
- 相手が大切にしている価値観は何か
- どんな問いが相手の考えを広げそうか
AIが答えをくれるというより、自分の思考を整理する時間です。
この時間があるだけで、「今日はここを丁寧に聴こう」という軸を持って1on1に臨めるようになりました。
面談中:AIではなく、目の前の相手を見る
面談中はAIを開きません。事前に準備しているからこそ、目の前の相手に集中できます。
例えばコーチングでは、「今、この瞬間」の相手の話に注意を向けて聴く姿勢が重視されます。
話の内容だけではなく、表情や声のトーン、沈黙の長さまで含めて聴いていきます。
「この話は前回のテーマとつながっているな」 「今日はここを深掘りしてみよう」
事前準備で整理できているからこそ、面談中は集中しやすくなったと感じています。
ちなみにAIが考えた質問をそのまま使うこともありません。
その場で相手の言葉を受け止めながら、自分の言葉で問いかける。これは、人だからこそできる役割だと感じています。
振り返り:一番効果を感じたのはここ
実際に使ってみて、一番効果を感じたのは振り返りでした。
「経験学習サイクル」という考え方があります。
経験したことを振り返り、意味づけをし、次の行動につなげることで、人は経験から学びます。
しかし現実には十分な振り返りの時間を確保できていません。
そこで私は、面談後にAIへこんな問いを投げています。
- 今回の1on1を要約してください
- この方の主訴は何だったと思いますか
- 次回深めると良いテーマは何でしょうか
- 私の質問で改善できそうな点はありますか
AIの回答を鵜呑みにすることはありませんが、「その見方もあるのか」と自分の解釈を客観視するきっかけになります。
一人で振り返るよりも、経験→内省→概念化のサイクルを回すスピードが格段に上がりました。
AIを使う時に気をつけていること
AIを使う中で、一つだけ意識していることがあります。
判断はAIに任せない。
相手を理解するのは自分です。AIは相手のことを知りません。
だから私は、
- AIの回答を鵜呑みにしない
- 違和感があれば、自分の感覚を大切にする
- 最終的な判断と関わりは自分で行う
この3つを意識しています。
AIに任せているのは「判断」ではなく、「思考の整理」です。
最後に
「何を聞こうか」ではなく、「この人にとって、どんな問いが役立つだろう。」
そんな視点で1on1を考えられるようになりました。
質問が変わると、相手が話す内容も変わります。
そして、1on1の質も少しずつ変わっていきます。
AIは、人の代わりに対話する存在ではなく、人がより良い対話をするための準備や振り返りを支えてくれる、
心強いパートナーにはなれると思っています。
もし1on1の質をもっと高めたいと思っているなら、まずは面談後の振り返りからAIを取り入れてみてはいかがでしょうか。
AIを使うかどうかではなく、人と向き合う時間を増やすために、AIをどう使うか。
そんな視点が、これからの1on1にはますます大切になっていくのではないかと感じています。



