【レポート】DataRobotを活用したマーケティング・オペレーション最適化事例と全社的な利活用拡大に向けた取組み – AI Experience 2019 Tokyo #aiexperiencetokyo

【レポート】DataRobotを活用したマーケティング・オペレーション最適化事例と全社的な利活用拡大に向けた取組み – AI Experience 2019 Tokyo #aiexperiencetokyo

Clock Icon2019.12.04

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

2019年11月20日(水)、ザ・プリンス パークタワー東京にてDataRobot, Inc.主催の「AI Experience 2019 Tokyo」が開催されました。

本エントリでは、東京ガス株式会社 笹谷 俊徳 氏・龍崎 響 氏によるセッション「DataRobotを活用したマーケティング・オペレーション最適化事例と全社的な利活用拡大に向けた取組み」をレポートします。

目次

 

セッション概要

登壇者

  • 東京ガス株式会社 笹谷 俊徳 氏
  • 東京ガス株式会社 龍崎 響 氏

セッション概要

東京ガスではバリューチェーンの様々な領域でDataRobotを活用した予測を活用しています。本講演では、マーケティング・オペレーション最適化を中心とする活用事例と、基盤整備・人材育成を通じた全社的なAI民主化・利活用拡大に向けた取組みについてご紹介します。

 

セッションレポート

 

東京ガスについて

まずは東京ガスについてのご紹介と課題についてご紹介がありました。

  • エネルギー自由化、低炭素化、省エネ、デジタル化推進など、会社を取り巻く事業環境が激しく変化している
  • 異業種との境界が不明瞭になってきている
    • このような背景があり、従来のビジネスモデルからの進化・パラダイムシフトが求められている
  • 環境によって扱う分析テーマも変化するため、それに合わせて部門も変化した
  • 自分たちがデータ分析するだけではなく、各事業部でかかえるデータ分析課題をそれぞれが解決していけるように支援をしたいがリソースは限られている
    • このような課題がある中、DataRobotに出会う

 

DataRobotの導入経緯

これまでのデータ分析は生産性・スピード・ノウハウの3点で課題が存在していました。

  • 生産性
    • 一定の工数がかかる、高まる期待に対して少人数では対応しきれない
  • スピード
    • 数週間かかることもあるが、マーケティング部門ではすぐに活用できなくては意味がない
  • ノウハウ
    • 分析を専門にした会社ではないため、新卒で入社してたまたま配属されたひとが担当している状況。このため、分析スキルがまちまちになってしまう

モデル構築の生産性・スピードを高めて質の標準化を測ることで課題を解決させるべく、DataRobotを導入。実施できなかった案件の機会損失を考えれば投資効果は十分にあると判断されたそうです。

DataRobot導入のポイントとして、マーケティング分析基盤の進化を挙げられていました。

散逸していた各業務システムのデータを統合して「BIを使うことでデータ分析を誰でもできる」を実現するマーケティング分析基盤を整備されてきました。これによりPDCAの高速化・企画担当社自身が分析を行うことによる分析とマーケティングの融合を経てデータによる意思決定は浸透していきましたが、BIによる見える化・記述統計による意思決定の次のステップとして、「起きている事象をモデル化」「そこから何が起こるか予測する」を企画担当者自身が行えるようにする基盤への進化の必要性が発生しました。

このような背景からツールを探索し、DataRobot導入の決め手となったのは以下の3点。

  • 生産性の高さ
    • データサイエンティストが数ヶ月かけてつくったモデルと遜色ない精度を達成
  • ユーザビリティ
    • 企画担当者が実際に使用して利用可能であることを確認
  • 既存環境との整合性
    • 既に様々な基盤がある中、「なんでもできる」ツールよりも、DataRobotのようにモデル構築に特化したツールの方が連携の見通しが立ちやすい

導入からおよそ1年で9部署へ導入、2309個のプロジェクトが作成され、日々拡大しているとのこと。

 

活用事例ご紹介

東京ガスでは、分析専門部署と各事業部門の両輪でDataRobotを活用されています。

  • 分析専門部署
    • 多くのモデルを素早く作る
    • 事業部門への支援・基盤提供
  • 各事業部門
    • シチズンデータサイエンティスト・ビジネスユーザー
    • 各事業部門で生じた分析課題に取り組む
    • 分析経験がなくても業務知識を活かし、DataRobotを使ってモデル構築する

特に、分析経験が無いが課題意識を持ったユーザーが課題解決に取り組めることがDataRobotの良いポイントとして挙げられていました。

具体的な活用事例について、マーケティングとオペレーションの2点をあげられました。

  • マーケティング
    • マーケティング施策の成功確率を高める
    • 顧客を深く理解し、one to oneマーケティングを実現
  • オペレーション
    • 今後起こることを予測し、最適なアクションを決定
    • 故障予測など

今回中心として話されていたのは、ガスだけではなく電気や住宅設備など、暮らしにまつわるサービスを総合的に提供するように変化した東京ガス株式会社ならではのマーケティング事例でした。

マーケティングが抱える課題

  • エネルギー自由化に伴って電気・ガス・サービスの営業が重要になる中、1100万件の顧客の多様化するニーズに対し、「誰に」「何を」「どのように」おすすめすべきか?
    • これに対してDataRobotを利用してスコアリングによる営業効率化を実施
    • 過去の実績をもとに施策に反応してもらえそうな顧客を推定・スコアリング

一口にマーケティングと言っても、マーケティングする商材・チャネル・キャンペーンソースも異なるため、多種多様なモデルを作成する必要があり、マーケティングを行う企画担当者自身が必要な分析を行うことが理想です。DataRobotではモデルの構築は簡単にできますが、学習用データの整備には労力が必要となります。そこでDataRobotとマーケティング分析基盤を連携することでプロセスの半自動化を推進する、スコアリング用のデータマートをマーケティング基盤上に作成された取り組みについてご紹介されていました。

  • BIにとって使いやすいデータ形式とモデル構築に適したデータ形式はことなるため、モデル構築に適した形式をデータマートとして集約
  • モデル構築用のデータマートには過去からの断面を保持して目的変数よりも前の時点の説明変数を使用し、予測に使えないデータを紛れ込ませてしまうリーケージを意識せずモデル化を行える

上記のような取り組みの先にあるステップとして、「誰に」「何を」「どのように」おすすめするかの仕組みである360度の顧客理解とレコメンデーションを挙げられていました。

DataRobot導入による効果として挙げられていたのは以下のポイント。

分析部門

  • 圧倒的な生産性
    • 簡単にモデルを構築できるため、思考停止にならないよう注意が必要
    • DataRobotの導入により浮いた時間を、課題設定の是非・より良いデータの収集方法・結果をどう解釈するかの検討に注力する意識改革が必要
  • チーム内の協働がスムーズに
    • DataRobotの画面を見ながら議論が可能
  • 実装も簡単にできるようになった
    • ITの側面を支えるパートナー(株式会社NTTデータ)の存在は不可欠

各事業部門

  • 初心者でも簡単に使える
  • 分析に興味を持ってもらえるようになった
    • データ分析の一番おいしいところである、分析結果を眺めてどうするか考えるという点をDataRobotによってすぐに味わえる
    • 分析経験がなくてもリーケージや特徴量の作り方などを自然に議論するようになった
  • ただし、データサイエンティストがレビューをするサポート体制・データ準備の体制は必要

 

全社的な利活用拡大に向けて

スピーカーは龍崎氏にバトンタッチし、今後DataRobotを全社的に利用し、誰もが簡単にデータにアクセスして自由に分析するための課題についてお話しされました。

課題としてあげられているのは以下の通り。

  • データのサイロ化(システムの課題)
  • スケーラビリティの限界(システムの課題)
  • データオーナー制(組織の課題)
  • 人材不足(人の課題)

この課題に対応するようなデータ分析基盤の開発されているとの紹介がありました。システムを作るだけでは課題の解決には至らないため、データガバナンスを担う部署の作成も検討されているとお話されていました。そういった役割は従来であればIT部門に任せていたところ、戦略的にデータを活用していくという観点から、ガバナンスを担っていくところも戦略部が対応していくとのこと。

また、デジタル化・競争力強化を牽引する人材の育成を目指し、レベルや目的に応じた研修プログラムの開発を進めているとのご紹介がありました。中でもデータ分析基礎研修に力を入れており、文系理系関係なく入社2年目の社員は大学教授を招いて統計的な表現、多変量解析の基礎を学んでいくそうです。

データ分析だけでなく、デジタルイノベーションを見据えた研修プログラムとして、データ分析の周辺知識も得られる取り組みを整備しているとのご紹介がありました。

最後に、AIもゆくゆくはコモディティ化していく中、違いを生むのは「データ」「人」「仲間」であるとの紹介をされていました。

 

まとめ

東京ガス株式会社の事例セッションのレポートでした。DataRobotの導入により、それまで分析経験のなかった社員もシチズンデータサイエンティストとして分析の議論ができるようになったというような、副次的に教育効果も得られたというお話が印象的でした。実際の事例はもとより、こういったデータドリブンな文化の醸成に関しても興味深いお話を聞くことができました。

Share this article

facebook logohatena logotwitter logo

© Classmethod, Inc. All rights reserved.