
【レポート】 セッション 「JLL's Journey to Data-Driven Precision with Alteryx, Databricks, and Power BI(JLLの事例:Alteryx、Databricks、Power BIを活用したデータ精度の向上)」 – Alteryx Inspire 2025 #AlteryxInspire
こんにちは、業務効率化ソリューション部のikumiです。
2025年5月12日(月)~5月15日(木)まで、アメリカ・ラスベガスでAlteryxの年次カンファレンスイベント「Inspire 2025」が開催されました。
当エントリではオンデマンドでも公開されている「JLL's Journey to Data-Driven Precision with Alteryx, Databricks, and Power BI(JLLの事例:Alteryx、Databricks、Power BIを活用したデータ精度の向上)」 のレポートをお届けします。
セッション概要
概要
JLL's Global Internal Audit transformed operations using Alteryx, integrating analytics into most audits. Our Alteryx-TeamMate connector, Databricks, &Power BI enhanced audit precision, automation, & data-driven decisions.
JLLのグローバル内部監査チームは、Alteryxを活用することで業務を大きく変革し、ほとんどの監査業務に分析を組み込みました。AlteryxとTeamMateのコネクタに加え、DatabricksやPower BIを活用することで、監査の精度向上、自動化の推進、そしてデータに基づく意思決定を実現しています。
スピーカー
- Tony Castillo 氏
- Director of Innovation & Data Analytics at JLL
セッションレポート
アジェンダ
- はじめに
- GIAにおけるAlteryx革命
- 革新的なAlteryxアプリケーション
- まとめ(質問)
1. はじめに
- JLLについて
- JLLは不動産および投資運用におけるグローバルリーダーとなっている会社である
- 世界80カ国以上で11万人を超える従業員を抱えており、広範な不動産サービスを提供している
- JLLは「世界でもっとも倫理的な企業」に18年連続で選ばれるなど、数多くの賞を受賞している
- こういった実績からも、内部監査部門が企業レピュテーションを守るための重要な役割を担っていることがわかる
- グローバル内部監査部門のビジョン: ブランド保護とビジネスの繁栄
- ミッション: クライアント、従業員、地域社会、株主の利益のために、JLLの企業価値の向上に貢献する
- データ分析の目的: データドリブンな意思決定をサポートし、監査精度を向上させる
2. GIAにおけるAlteryx革命
- JLLの内部監査におけるデータ分析ユースケースは以下の3カテゴリーに分類される
- 「Dynamic Risk Sensing(動的リスク検知)」
- 「Audit Analytics(監査分析)」
- 「Audit Operations(監査運用)」
- 「Audit Analytics(監査分析)」での事例
- 監査指摘事項の対応管理業務では、従来のデータ分析環境に多くの課題があった
- そこにAlteryxとPower BIを統合し単一の信頼できるデータソースを構築したことで、より正確で迅速なレポートを提供できるようになった
- 初期段階のレポーティングフローは、既存の監査ツールではテーブルが作成できないので、AlteryxがBIとの橋渡しの役割を担っていた
- まずはAlteryxでBI用のテーブルを作成し、長期的にはデータウェアハウス上で作成するテーブルのモデルとしても利用していた
既存ツールからのデータ抽出フロー
- ワークフローの要となっているのが、既存ツールからのデータ取得の部分で、マクロツールを作成
- 既存ツールのAPIには2000行の制限があり、これを回避するために反復マクロを使用した
- ポイントとしては、APIのアクセストークンはマシンの環境変数として保存することで、セキュリティを担保すること
- データ取得マクロの全体にはメッセージツールやコメントを活用し、エラーが起きたときに原因を特定しやすいように設計
- メッセージツールでは、環境変数のチェック、APIレスポンスステータスの表示、GETコールで使用されたURLやテーブル名の表示といったメッセージを表示
- 優先度「高」に設定することで、ネストされたマクロであってもメッセージが確認できるようになる
レポーティングワークフロー
- 次に、レポーティングワークフローについて
- コンテナ(5)では、各テーブルから集めたフィールド名などを一元管理することで、他システムとの連携がしやすくなっている
- AlteryxとPower BIの連携で工夫した箇所は、Power BIの条件付き書式機能の応用
- Alteryx側で事前にカラーコードを作成し、それをPower BIで背景色として適用することで、複数のテーマを編集するのではなく一括管理が可能になった
- また、リスク評価を「high」「medium」「low」でソートしたい場合、アルファベット順でソートすると「high」「low」「medium」になってしまう
- そのため、事前にソートツールとレコードIDツールを使ってソート用のフィールドを作成するなどの工夫もしている
3. 革新的なAlteryxアプリケーション
- データの信頼性を評価するためのアプリケーションユースケース
- 監査担当者のデータリテラシーのばらつきや、データ品質のばらつきが大きな課題としてよく挙げられている
- この課題に対し、データ品質評価プロセスを見直し、リテラシーが低い人でも分析できるツールを提供した
- Intelligence Suiteを使用してデータのプロファイリングを行い、結果を.pcxml(コンポーザーファイル)で出力
- それをAlteryx Serverにアップロードすることで、視覚化されたレポートが確認できるようになる
- さらに、.pcxml 出力により、様々なフォーマットでダウンロードできるのがユーザーにとっても使いやすい点となっている
※補足:コンポーザーファイルとはAlteryxのデータ出力形式をレポートの形式で保存するもの
- また、Word文書を構造化データに変換するアプリケーションも活用
- コミュニティでマクロファイルをダウンロードできるため、自分たちで活用できるようになっている
4. まとめ(質問)
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セッション中に上がった質問
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質問: Power BIに出力することを選んだ理由は何ですか?Tableauなど他のツールへの出力は試しましたか?
- 回答: Tableauも検討しましたが、長期的なライセンス費用が課題でした。Power BIは実質的に無料で利用できるため、迅速に導入できました。
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質問: Power BIでの条件付き書式設定の制限を克服するため、Alteryxでカラーコードを生成するとのことでしたが、Power BIの条件式で対応しなかった理由はありますか?
- 回答: 条件式は一時的な解決策としては良いですが、チーム全員が条件式を書けるわけではないので、運用に課題がありました。ロジックをデータモデルの一部としてAlteryxで一元化することで、下流のユーザーが関数を書かなくてもテーマに沿った分析が可能になります。
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質問: AlteryxとPower BIで設定する関数での機能分担のバランスはどのように取っていますか?
- 回答: プロトタイピング段階ではPower BIの関数で計算をしますが、最終的には計算をAlteryxのデータモデルに組み込むようにしています。これはメンテナンス性を考慮しているのと、Power BIファイルの容量増加を防ぎ、ファイル側で同じ計算を何度も作り直す手間を省くためでもあります。
さいごに
以上、 「JLL's Journey to Data-Driven Precision with Alteryx, Databricks, and Power BI(JLLの事例:Alteryx、Databricks、Power BIを活用したデータ精度の向上)」 のセッションレポートでした。
JLL社では、Alteryxの便利な機能を存分に活用されている良い事例だと感じました。特に監査対応ではガバナンスが大事になるため、データの品質チェックレポートの部分では参考になる方が多いのではないでしょうか。Alteryx上での可視化はやや使いづらいと感じる方も多いかもしれませんが、.pcxml をうまく利用されていて私も感心しました。