新機能「アプリ内通話/ウェブ通話/ビデオ通話」の料金体系を整理してみた – Amazon Connect アドベントカレンダー 2023

使い方によっては大幅に安くなる!?
2023.12.09

みなさん、こんにちは!
福岡オフィスの青柳です。

本記事は「Amazon Connect アドベントカレンダー 2023」の9日目の記事です!

「Amazon Connect アドベントカレンダー 2023」は、弊社クラスメソッド、ギークフィードさん、スカイアーチHRソリューションズさんの有志が募ってチャレンジしている企画です。

はじめに

re:Invent 2023において、Amazon Connectの新機能「アプリ内通話/ウェブ通話/ビデオ通話」が発表されました。

電話回線を使わずに音声通話・ビデオ通話ができるということで「もしかすると利用料金が安くなる?」と期待したのですが、AWS公式の料金ページを一目しても料金の計算方法がイマイチ分かり辛かったので、整理してみました。

なお、AWSのリリース情報や公式ドキュメントでは「アプリ内通話、ウェブ通話、ビデオ通話」という表現がされていますが、実際には「アプリ内通話/ウェブ通話」という機能において「音声のみでの通話」「音声とビデオを使った通話」が行えるものだと認識しています。

また、「アプリ内通話」と「ウェブ通話」の呼称は「モバイルアプリのWebコンポーネントとして埋め込む」のが前者、「PC等のWebブラウザからアクセスする」のが後者であり、本質的には同じものであるという認識です。

本記事では以降、当該機能を「アプリ内通話/ウェブ通話」あるいは単に「ウェブ通話」と表現します。

料金体系 (料金単価)

AWS公式Webサイトの「料金」ページを見てみます。

https://aws.amazon.com/connect/pricing/

記事執筆時点 (2023.12.09) では日本語ページに「アプリ内通話/ウェブ通話」機能の料金は掲載されていません。 表示言語を「English」に切り替えて確認しましょう。


Amazon Connectの利用料金は、「音声サービス料金」と「テレフォニー料金」という大きく2つの料金で構成されています。 新機能「アプリ内通話/ウェブ通話」においても、これらの料金体系の枠は変わりません。

音声サービス料金

今回追加された「アプリ内通話/ウェブ通話」の料金は「音声サービス料金」の枠に分類されています。 (赤文字が追加された料金体系です)

音声サービス料金は各リージョンで共通となっています。

  • Amazon Connect音声サービス利用料 : 0.018 USD/分
  • アプリ内通話/ウェブ通話利用料
    • 音声利用料 : 0.01 USD/分
    • ビデオ利用料 : 0.015 USD/分 (※1)

※1 アプリ内通話/ウェブ通話のビデオ利用料金は、顧客側・エージェント側でそれぞれ発生します。 つまり、顧客側とエージェント側の両方でビデオをオンにした場合、料金は2倍発生するということです。

テレフォニー料金

テレフォニー料金は、従来の「電話回線を使った通話」で発生する料金体系であり、ここには変更はありません。

テレフォニー料金は「どのリージョンを使うか」「どの国の電話番号を使うか」によって異なる価格が設定されています。 (以下は東京リージョンで日本の電話番号を使用した場合の料金単価です)

  • 通話料 (受信時)
    • 直通ダイヤル (050/03) : 0.003 USD/分
    • 料金無料通話 (0120/0800) : 0.08 USD/分
  • 電話番号利用料
    • 直通ダイヤル (050/03) : 0.10 USD/日
    • 料金無料通話 (0120/0800) : 0.48 USD/日

料金の計算方法

ズバリ、下図の通りです。

「アプリ内通話/ウェブ通話」機能における料金の計算方法について、ポイントは以下の通りです。

  • アプリ内通話/ウェブ通話においても「Amazon Connect音声サービス利用料」は発生する
  • テレフォニー料金は発生しない
  • 音声のみの通話の場合は「アプリ内通話/ウェブ通話」の「音声利用料」のみ発生する
  • ビデオ通話を利用する場合は「音声利用料」に加えて「ビデオ利用料」が発生する
  • ビデオ利用料は「顧客」「エージェント」のそれぞれに発生する
    • 注) 「顧客に対して料金の請求が行われる」という意味ではありません。あくまでAWS利用者側に発生する料金です。

料金の計算例

「従来の電話回線を使用した通話」「アプリ内/ウェブ通話」のそれぞれで料金を計算してみます。

なお、「アプリ内/ウェブ通話」機能ではインバウンド通話 (顧客からAmazon Connectへの通話) のみ利用可能でアウトバウンド通話は行えませんので、今回はインバウンド通話の料金のみを算出・比較しています。

従来の「電話回線」を使用した通話の場合

1分間の通話で発生する料金は以下の通りです。

電話番号の種類 1分間に発生する料金 内訳
直通ダイヤル
(050/03)
0.021 USB/分 Connect音声サービス利用料: 0.018 USD/分
通話料 (直通ダイヤル): 0.003 USD/分
料金無料通話
(0120/0800)
0.098 USD/分 Connect音声サービス利用料: 0.018 USD/分
通話料 (料金無料通話): 0.08 USD/分

通話料金に加えて、電話番号の維持費用が発生します。 (1ヶ月=30日として、1番号を維持する場合の月額料金を算出してみます)

電話番号の種類 1番号あたりの月額料金
直通ダイヤル
(050/03)
3 USD
(0.10 x 30)
料金無料通話
(0120/0800)
14.4 USD
(0.48 x 30)

例として、以下の条件下での月額料金を試算してみます。

  • 1回あたりの平均通話時間: 5分
  • 1ヶ月の通話件数: 10,000件
  • 電話番号の数: 10個

月額料金 (試算例):

  • 直通ダイヤル (050/03) の場合:
    • (0.021 x 5 x 10,000) + (0.10 x 30 x 10) = 1,080 USD (約156,600円: 1ドル=145円換算)
  • 料金無料ダイヤル (0120/0800) の場合:
    • (0.098 x 5 x 10,000) + (0.48 x 30 x 10) = 5,044 USD (約731,380円: 1ドル=145円換算)

「アプリ内通話/ウェブ通話」を使用した場合

1分間の通話で発生する料金は以下の通りです。

通話の種類 1分間に発生する料金 内訳
音声のみ利用 0.028 USB/分 Connect音声サービス利用料: 0.018 USD/分
音声利用料: 0.01 USD/分
ビデオも利用
(顧客またはエージェントの一方のみ)
0.043 USD/分 Connect音声サービス利用料: 0.018 USD/分
音声利用料: 0.01 USD/分
ビデオ利用料: 0.015 USD/分
ビデオも利用
(顧客およびエージェントの両方)
0.058 USD/分 Connect音声サービス利用料: 0.018 USD/分
音声利用料: 0.01 USD/分
ビデオ利用料: 0.015 x 2 = 0.03 USD/分

電話回線を使った通話の場合と同様に、以下の条件下での月額料金を試算してみます。

  • 1回あたりの平均通話時間: 5分
  • 1ヶ月の通話件数: 10,000件

月額料金 (試算例):

  • 音声のみ利用の場合:
    • 0.028 x 5 x 10,000 = 1,400 USD (約203,000円: 1ドル=145円換算)
  • ビデオも利用する場合 (顧客またはエージェントの一方のみ):
    • 0.043 x 5 x 10,000 = 2,150 USD (約311,750円: 1ドル=145円換算)
  • ビデオも利用する場合 (顧客およびエージェントの両方):
    • 0.058 x 5 x 10,000 = 2,900 USD (約420,500円: 1ドル=145円換算)

おわりに

今回は、Amazon Connectの新機能「アプリ内通話/ウェブ通話」を利用する際の料金についてまとめてみました。

従来の「電話回線」を使った通話と、新しい「アプリ内通話/ウェブ通話」の料金を比較した場合、電話番号が「直通ダイヤル (050/03)」であれば従来の方が少し安価であることが分かりました。

しかし、「料金無料通話」との比較では「アプリ内通話/ウェブ通話」の方が大幅に安くなります。 「アプリ内通話/ウェブ通話」は顧客側で料金が発生しないため (インターネット通信で必要な費用は除く)、「料金無料通話」を「アプリ内通話/ウェブ通話」で置き換えることで顧客へ負担を掛けずにサービス提供者側のコストを下げることができるかもしれません。

また、ビデオを利用した通話に関しても、音声のみの通話よりも料金が高くなるのは当然ですが、従来の「電話回線」では不可能であった新たな顧客体験の創出やエージェントの業務効率化が実現できる可能性を考えると、そこまで高いものでもないという見方もできるかもしれません。

これからは、従来の「電話回線」を使った通話、新しい「アプリ内通話/ウェブ通話」、双方の「向いているシチュエーション」や「コスト面」を考慮しながら、それぞれの方式を選択すると良さそうです。