
Amazon Connect 双方向SMSを本番運用する前に確認したいAWS End User Messaging SMSのポイントを整理してみた
はじめに
Amazon Connect では、AWS End User Messaging SMS で取得した SMS 対応の送信元を使って、顧客とエージェントが SMS でやりとりできます。
本記事では、以下の構成を前提に、Amazon Connect 双方向SMSを本番運用する前に確認したい AWS End User Messaging SMS 側のポイントを整理します。
- SMS は日本国内から日本国内への利用を想定する
- SMS 送信元は日本国内向けショートコードを前提にする
- 顧客と Amazon Connect のエージェントが SMS でやりとりする
- 音声通話ではなく、SMS チャネルを利用する
Amazon Connect の SMS セットアップドキュメントでは、本番稼働モードで SMS を使用する前の確認事項として、AWS End User Messaging SMS 側の準備が案内されています。
また、SMS は AWS だけで完結するものではなく、通信キャリアを経由して顧客の端末に届きます。そのため、本番運用では AWS End User Messaging SMS のベストプラクティスにある、キャリア監査、スロットル、ブロック、無効化された電話番号への送信抑止といった観点も確認しておく必要があります。
前提
本記事では、日本国内向けショートコードを送信元として、日本国内の携帯電話番号を持つ顧客と Amazon Connect の双方向 SMS を利用する構成を対象とします。
AWS End User Messaging SMS の国別対応表によると、日本ではショートコードおよび双方向 SMS がサポートされています。一方、日本向けのロングコードはサポートされていません。
また、日本では Sender ID も利用できますが、Sender ID は双方向 SMS に対応していません。
Sender IDs do not support two-way SMS messaging.
Sender ID は双方向 SMS メッセージングをサポートしません。https://docs.aws.amazon.com/sms-voice/latest/userguide/phone-number-types.html
Amazon Connect で顧客からの SMS を受信し、エージェントが SMS で返信するには、双方向 SMS に対応した送信元が必要です。そのため、本記事ではショートコードを利用する前提で説明します。
なお、ショートコードは、そのショートコードが割り当てられた国の受信者に対してのみ使用できます。
You can only use short codes to send messages to recipients in the same country where the short code is based.
ショートコードは、そのショートコードが属する国と同じ国の受信者にのみメッセージを送信できます。https://docs.aws.amazon.com/sms-voice/latest/userguide/phone-numbers-request-short-code.html
本番移行前に確認すること
Amazon Connect の SMS セットアップでは、本番利用前に AWS End User Messaging SMS 側のアカウント状態、電話番号、使用クォータ、オプトアウト設定を確認する必要があります。
本記事では、日本国内向けショートコードを使った双方向 SMS という前提で、確認ポイントを整理します。
SMS/MMS サンドボックスモードから移行する
AWS End User Messaging SMS の新しいアカウントは、SMS/MMS または音声サンドボックスに配置されます。
サンドボックスは検証用の制限付き環境です。本番顧客に SMS を送る運用では、サンドボックスのままではなく、本番送信できる状態にしておく必要があります。
AWS End User Messaging SMS のサンドボックスドキュメントでは、サンドボックスについて以下のように説明されています。
新しい AWS エンドユーザーメッセージング SMS アカウントは、SMS/MMS または音声サンドボックスに配置されます。サンドボックスは、 AWS のお客様および受信者の双方を詐欺や不正使用から保護します。
https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/sms-voice/latest/userguide/sandbox.html
Amazon Connect 双方向SMSでは、顧客が SMS を送信し、エージェントが SMS で返信します。本番環境で実際の顧客とやりとりするには、検証済み番号だけに送れる状態ではなく、本番顧客の電話番号に送信できる状態であることを確認します。
確認することは以下です。
- 利用する AWS リージョンで SMS/MMS サンドボックスから移行済みか
- 本番顧客の電話番号に SMS を送信できる状態か
- 検証用の電話番号にしか送れない状態のままになっていないか
- 本番開始前に、実際の送受信テストを実施しているか
Amazon Connect 側でフローやキューが正しく動いていても、AWS End User Messaging SMS 側がサンドボックスのままだと、本番顧客への送信に影響する可能性があります。
本番用ショートコードの状態を確認する
本番で利用する日本国内向けショートコードが、AWS End User Messaging SMS と Amazon Connect の両方で利用可能な状態になっていることを確認します。
Amazon Connect で双方向 SMS を利用する場合、ショートコードを取得しているだけでは不十分です。顧客からショートコード宛てに送信した SMS が Amazon Connect に連携され、エージェントから同じ送信元を使って返信できる必要があります。
本番開始前には、少なくとも以下を確認します。
- 本番用のショートコードが、対象の AWS アカウントおよびリージョンで利用可能な状態であること
- ショートコードの利用目的が、本番で送信する内容と一致していること
- Amazon Connect に対象のショートコードが取り込まれていること
- 顧客からショートコード宛てに送信した SMS が、Amazon Connect のコンタクトフローに連携されること
- エージェントから顧客へ SMS を返信できること
- 検証時と本番時で、送信元ショートコード、送信先国、利用目的が変わらないこと
- オプトアウト用キーワードと応答メッセージが、想定どおりに設定されていること
新たにショートコードを取得する場合は、キャリアへの登録や承認に時間がかかることがあります。また、承認前のショートコードでは送信できません。本番開始日が決まっている場合は、必要な申請や確認を早めにすべきです。
一方、すでにショートコードを取得済みで、Amazon Connect を使った双方向 SMS の送受信テストも完了している場合は、改めて申請する必要はありません。ただし、本番開始前に、実際の本番相当の条件で送受信できることを再確認しておくと安心です。
使用クォータが利用要件に合っているか確認する
AWS End User Messaging SMS には、毎月 SMS、MMS、音声メッセージの送信に使用できる金額を定める使用クォータがあります。
AWS End User Messaging SMS の使用クォータ変更ドキュメントでは、以下のように説明されています。
使用クォータにより、毎月 AWS End User Messaging SMS を介した SMS、MMS、音声メッセージの送信に使用できる金額が設定されます。
https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/sms-voice/latest/userguide/awssupport-spend-threshold.html
本番運用で SMS 送信量が増えると、使用クォータに到達する可能性があります。使用クォータを超えるコストが発生すると判断された場合、AWS End User Messaging SMS による送信に影響する可能性があるため、本番前に想定利用量に対して十分な使用クォータになっているか確認すべきです。
AWS End User Messaging SMS のショートコードリクエストドキュメントでは、SMS/MMS を初めて利用する場合は、ユースケースの想定需要に合った月間 SMS/MMS spending threshold をリクエストするよう案内されています。
If you're new to SMS and MMS messaging with AWS End User Messaging SMS, you should request a monthly SMS and MMS spending threshold that meets the expected demands of your SMS and MMS use case.
AWS End User Messaging SMS で SMS/MMS メッセージングを初めて利用する場合は、SMS/MMS ユースケースの想定需要に合った月間 spending threshold をリクエストする必要があります。
https://docs.aws.amazon.com/sms-voice/latest/userguide/phone-numbers-request-short-code.html
Amazon Connect 双方向SMSでは、顧客からの問い合わせに対してエージェントが返信するため、単純な一斉配信ではなくても、問い合わせ件数ややりとりの回数に応じて SMS 送信数が増えます。
見積もり時は、以下を確認します。
- 月間の想定問い合わせ件数
- 1 問い合わせあたりの平均返信数
- 1 メッセージあたりの文字数
- 日本語メッセージによるメッセージパーツ数
- ピーク時の問い合わせ増加
- 自動応答やテンプレート返信の有無
- 異常送信時の費用影響
AWS End User Messaging SMS 側では、CloudWatch メトリクスとして TextMessageMonthlySpend を確認できます。月間予算や使用クォータに近づいたことを検知するため、CloudWatch アラームを設定しておくと運用しやすいです。
例えば、以下のような考え方です。
Warning
→ 月間予算の 80% に到達
Critical
→ 月間予算の 100% または使用クォータに近い値に到達
しきい値は、利用要件、月間予算、現在の使用クォータ、想定するメッセージパーツ数に応じて調整します。本記事では日本国内向け SMS を前提にしていますが、SMS の料金や送信レートは送信先国や送信元番号の種類によって変わるため、実際の値は Service Quotas、AWS End User Messaging SMS のコンソール、公式料金ページで確認してください。
オプトアウトリストを確認する
SMS では、顧客が SMS の受信を拒否することがあります。
AWS End User Messaging SMS には、送信してはいけない宛先を管理するオプトアウトリストがあります。Amazon Connect 双方向SMSでは顧客とエージェントが会話するため、顧客が SMS で受信拒否の意思を示した場合の扱いをあらかじめ決めておく必要があります。
AWS End User Messaging SMS では、デフォルトでは、顧客が STOP などのオプトアウトキーワードを送信元のショートコードへ返信すると、その宛先がオプトアウトリストに自動追加されます。
AWS End User Messaging SMS のオプトアウトリストに関するドキュメントでは、受信者が送信元に STOP キーワードで返信した場合、セルフマネージドオプトアウトを有効にしていない限り、宛先番号がオプトアウトリストに自動追加されると説明されています。
When a destination number replies to an origination number with the keyword
STOP, they are automatically added to an opt-out list, unless you enabled the self-managed opt-out option.宛先番号が送信元番号に
STOPキーワードで返信すると、セルフマネージドオプトアウトを有効にしていない限り、オプトアウトリストに自動的に追加されます。https://docs.aws.amazon.com/sms-voice/latest/userguide/opt-out-list.html
オプトアウトリストに登録された宛先へ、そのリストに関連付けられた送信元からメッセージを送信しようとしても、AWS End User Messaging SMS は送信を試みません。
また、オプトアウトするには、受信者が AWS End User Messaging SMS がメッセージ配信に使用したものと同じロングコードまたはショートコードに返信する必要があります。
To opt out, the recipient must reply to the same long code or short code that AWS End User Messaging SMS used to deliver the message.
オプトアウトするには、受信者は AWS End User Messaging SMS がメッセージ配信に使用したものと同じロングコードまたはショートコードに返信する必要があります。
https://docs.aws.amazon.com/sms-voice/latest/userguide/opt-out-list-keywords.html
ショートコードを利用する場合、オプトアウト用のキーワードや応答メッセージは、ショートコードのリクエスト時に定義します。AWS End User Messaging SMS のキーワードに関するドキュメントでは、ショートコードのリクエスト時に定義したキーワードと応答が、ショートコードのプロビジョニング時にキャリアへ登録されると説明されています。
デフォルトでは、STOP や HELP などの予約されたオプトアウトキーワードおよびヘルプキーワードは、AWS End User Messaging SMS 側で処理されます。顧客がこれらのキーワードを送信すると、AWS End User Messaging SMS が自動的に応答し、そのメッセージは Amazon Connect に転送されませんし。エージェントのコンタクトコントロールパネル(CCP)にも表示されません。
顧客が STOP を送信した場合は、その顧客がオプトアウトリストに追加され、それ以降のメッセージ送信がブロックされます。STOP を使った送受信テストを実施した後に顧客へ返信できなくなった場合は、AWS End User Messaging SMS のオプトアウトリストを確認します。
セルフマネージドオプトアウトを有効にすると、STOP や HELP などのキーワードメッセージを Amazon Connect に転送し、フローで処理できます。
ただし、この場合は、AWS End User Messaging SMS による予約キーワードへの自動応答と、STOP を送信した顧客のオプトアウトリストへの自動追加が行われません。利用者側で STOP および HELP に応答し、オプトアウト要求を記録したうえで、オプトアウト済み顧客への送信を防止する必要があります。
Amazon Connect でセルフマネージドオプトアウトを使用する場合は、顧客からのオプトアウト要求を処理し、オプトアウトした顧客へのエージェントからのメッセージ送信をブロックするための Lambda 関数やフローブロックを設定します。
確認することは以下です。
- オプトアウトリストの登録状況を確認しているか
- オプトアウト済みの顧客への送信を防止できるか
- デフォルトでは、
STOPやHELPなどの予約キーワードが AWS End User Messaging SMS 側で処理され、Amazon Connect やエージェントの CCP に転送されないことを理解しているか - セルフマネージドオプトアウトを有効にしている場合、予約キーワードへの応答、オプトアウト要求の記録、オプトアウト済み顧客への送信防止を実装しているか
- 顧客が受信拒否の意思を示した場合の対応手順を定めているか
また、自由文で「SMS は不要です」「今後は送らないでください」といった意思表示があった場合、自動でオプトアウトリストに追加されるとは限りません。このような自然文も受信拒否の意思として扱う場合は、エージェントの対応手順を定め、顧客管理システムなどで受信拒否の状態を管理します。
本番運用中に気をつけること
次に、本番運用中の注意点です。
本番移行前の確認事項は、主に「送信できる状態か」を確認するものです。一方で、本番運用中は「送信し続けても問題ない運用になっているか」を確認する必要があります。
SMS は通信キャリアを経由して顧客端末に届くため、AWS 側の設定だけでなく、キャリアや AWS End User Messaging SMS 側の監査、スパム判定、送信先リストの品質も考慮します。
送信制限につながらない運用を設計する
SMS は、AWS End User Messaging SMS だけで完結するものではなく、通信キャリアを経由して顧客の端末に配信されます。そのため、Amazon Connect 側でコンタクトフローやキューが正常に動作していても、送信内容や送信頻度、送信先の管理状況によっては、SMS の送信がスロットリングまたはブロックされる可能性があります。
AWS End User Messaging SMS のベストプラクティスでは、通信キャリアが大量送信者を継続的に監査し、未承諾メッセージを送信していると判断した送信元をスロットリングまたはブロックする場合があると説明されています。また、AWS End User Messaging SMS 側でも、未承諾メッセージを送信しているように見える場合は、送信機能が制限されることがあります。
Additionally, mobile phone carriers continuously audit bulk SMS and MMS senders and throttle or block messages from originators that they determine to be sending unsolicited messages.
The AWS End User Messaging SMS team routinely audits SMS and MMS message, and might throttle or block your ability to send messages if it appears that you're sending unsolicited messages.
https://docs.aws.amazon.com/sms-voice/latest/userguide/best-practices.html
Amazon Connect の双方向 SMS は、問い合わせに対する個別対応が中心であっても、自動応答、定型文、繁忙時の問い合わせ集中などにより、短時間の送信数が増える場合があります。送信量だけでなく、顧客が想定していない内容を送ることや、オプトアウト済みの宛先に送ることも、送信品質や苦情につながる要因になります。
本番運用では、少なくとも以下を確認します。
- SMS での連絡について、顧客の同意を取得していること
- 送信目的と内容が、顧客への案内およびショートコードの申請内容と一致していること
- オプトアウト済み、または受信拒否の意思を示した顧客を送信対象から除外できること
- 短時間に大量の同一メッセージを送らないこと
- 自動応答やテンプレート返信が、意図せず繰り返し送信されないこと
- エージェントの自由入力について、個人情報、URL、禁止事項、受信拒否への対応などのルールを定めていること
特に、問い合わせ対応を用途として申請したショートコードから、顧客の同意を得ていない販促メッセージを送るなど、申請時の利用目的と異なる運用は避ける必要があります。
送信制限が発生した場合に備え、Amazon Connect のフローやエージェント設定だけでなく、送信内容、送信先、送信量、オプトアウト状況も確認できる運用にしておくことが重要です。
無効化された電話番号への送信を避ける
本番運用では、送信先電話番号の品質も重要です。
AWS End User Messaging SMS のベストプラクティスでは、送信先電話番号が有効な携帯番号であることを検証するべきと説明されています。
AWS End User Messaging SMS accepts valid requests to send SMS messages and attempts to deliver them. For this reason, you should validate that the phone numbers that you send messages to are valid mobile numbers.
AWS End User Messaging SMS は有効な SMS 送信リクエストを受け付け、配信を試みます。そのため、送信先の電話番号が有効な携帯番号であることを検証する必要があります。
https://docs.aws.amazon.com/sms-voice/latest/userguide/best-practices.html
無効化された電話番号とは、以前は利用されていたものの、現在は解約、停止、または別の利用者に割り当てられている可能性がある電話番号です。
このような番号に SMS を送り続けると、主に 2 つの問題があります。
1 つ目は、不要な送信コストです。
意図した顧客に届かない番号に送信しても、SMS 送信処理に対する課金が発生する場合があります。Amazon Connect 双方向SMSでは、顧客対応のたびに返信 SMS が発生するため、古い電話番号が残っていると無駄なコストにつながる可能性があります。
2 つ目は、スパム判定や苦情につながるリスクです。
電話番号が別の利用者に再割り当てられている場合、その現在の利用者は自社からの SMS に同意していない可能性があります。その番号に送信すると、未承諾メッセージとして扱われるリスクがあります。
日本国内向けの Amazon Connect 双方向SMS運用では、以下を検討します。
- 顧客からの申告や配信結果をもとに、電話番号を定期的に更新する
- 配信失敗が続く番号や、長期間利用していない番号を見直す
- オプトアウトや苦情があった番号を送信対象から除外する
- SMS で連絡できない場合の代替連絡手段を用意する
無効化された電話番号への送信を完全に防ぐことは困難ですが、送信先リストを放置せず、継続的に見直すことが重要です。
まとめ
Amazon Connect の双方向 SMS を本番運用する前に確認したい、AWS End User Messaging SMS 側のポイントを整理しました。
本番移行前には、SMS/MMS サンドボックスからの移行、本番用ショートコードの状態、使用クォータ、オプトアウト設定を確認します。
本番運用中は、キャリアや AWS End User Messaging SMS による監査、スロットリングやブロック、無効化された電話番号への送信に注意が必要です。
Amazon Connect のフローやキューが正常でも、SMS 側の設定、使用クォータ、送信内容、送信先の管理に問題があると、顧客とのやりとりに影響する可能性があります。日本国内向けショートコードで双方向 SMS を運用する場合は、Amazon Connect の設定だけでなく、AWS End User Messaging SMS 側の準備と運用ルールもあわせて確認することが重要です。








