【iOS 27】売場の写真を「欠品あり」「欠品なし」に仕分けてから本部へ送る

【iOS 27】売場の写真を「欠品あり」「欠品なし」に仕分けてから本部へ送る

大手チェーンストアの店舗スタッフが毎日送る棚の写真。その確認作業に本部は膨大な時間を費やしています。iPhone内のAIで欠品の見立てを一次判定し、本部の負担を減らす仕組みを試してみました。
2026.09.26

こんにちは。リテールアプリ共創部で事業企画を担当しているかめだです。

開店前や巡回のたびに、大手チェーンストアの店舗スタッフは売場の棚を撮って本部に送ります。本部の担当者は届いた写真を一枚ずつ開き、欠品がないか、指示どおりに商品が並んでいるかを目で確認します。店舗数が多いチェーンほど、この確認作業だけで多くの時間を使っていると聞きます。

コーナン商事では、1店舗平均で約8万SKUの商品を取り扱い、パート・アルバイトを含めて約50人のスタッフが働いているとされています。光洋(80店舗、2021年2月時点)の事例では、店舗からの売場写真の報告に「一回の報告に30分かかることもある」とされ、従来はエクセルに写真を貼り付けてメールで送る部門もあれば、LINEで送る企画もあるなど、複数の方法が並行して使われていたと報告されています。

店舗スタッフがすでに業務用のスマートフォンを手にして働く環境も、大手チェーンでは広がっています。イオンリテールは2025年5月から約390店舗に「オールインワンデバイス」を実装し、2025年度に約1万台、2026年度までに計約5万台を店舗スタッフに配布する計画を進めています。

こうした環境が整いつつあるなら、店舗で撮った時点で「欠品あり」か「欠品なし」かをその場で見立てておければ、本部が先に見る量を絞れるのではないかと考えてみました。写真の見た目をAIモデルに見立てさせ、決められた選択肢から選ばせるところまでを、店舗のiPhoneの中で終わらせる設計です。本記事は活用シーンの仮説で、実装・実証はこれからです。

欠品の見立てを、なぜクラウドのAIに任せてこなかったのか?

クラウドのAIでも見立てはできます。それでも、この記事で端末内の処理を選ぶ理由は、呼び出す回数の多さです。

全国の店舗スタッフ全員が、開店前や巡回のたびに何枚も棚を撮るとすると、チェーン全体では1日に何万枚もの棚の写真が生まれます。クラウドのAIに一枚ずつ見立てさせると、この枚数がそのまま呼び出し回数になり、費用は写真の枚数に比例して増え続けます。なので、端末の中で見立てを終える設計なら、この呼び出しごとの費用は増えません。ただし、端末の調達や開発・運用にかかる費用は別に必要です。

支給端末の対応比率が低い店舗が多い、電波が十分で送る写真の枚数もそもそも少ない、端末の調達・運用にかかる費用がクラウドの従量課金を上回る。このいずれかに当たるなら、端末内を選ばず、クラウドのAIを使う運用のほうが合っています。

iPhoneの中のAIは、何を答え、何を答えないのか?

iPhoneの中のAIが答えるのは、棚の写真を見て「欠品あり」か「欠品なし」かの二択だけです。どの商品が欠けているかの特定や、発注するかどうかの判断はさせません。

文字を読むこと自体は、これまでも端末の中でできました。今回変わったのは、写真をそのままAIモデルに渡し、棚の見た目から欠品があるかどうかを見立てさせ、その見立てを本部への報告の仕分けにまで使えるようになったところです。こんな感じで、写真を渡すだけで見立てまで終わらせる設計にしています。アプリから呼ぶ端末内のモデルに写真をそのまま渡せるようになったのは iOS 27 からです(Attachment で画像をプロンプトに添付する(Foundation Models の画像入力))。

AIに答えさせる選択肢は、あらかじめ「欠品あり」「欠品なし」の二つに決めておきます。自由な文章で答えさせると、店舗ごとに表現がそろわず、本部側も同じ基準で読み取れなくなるためです。判定が難しい写真は「欠品なし」に寄せず、二択のうちどちらかを選ばせたうえで、そのまま本部の確認対象に残す設計にします。

画像の理解は、棚に空きがあるかどうかのような粗い見立てには向きますが、何百という商品を一つずつ見分けたり、値札やPOPに書かれた文字を読んだりする細かい作業には向きません。値札やPOPの文字を読む確認が要るなら、それは端末内の文字認識ツールの範囲にし、AIモデルには読み取らせません(AI にツールを持たせる(OCRTool・バーコード・端末内検索))。

確定するのはスタッフ、本部が開くのは「欠品あり」の写真だけ

店舗スタッフが棚を撮ると、AIがその場で「欠品あり」か「欠品なし」かを見立て、結果を画面に出します。確定するのはスタッフで、AIではありません。見立てを確認し、違っていればその場で直し、問題がなければ送信ボタンを押して確定します。

本部の売場管理担当者が優先して開くのは、「欠品あり」と確定された写真です。「欠品なし」の写真も記録として残し、必要になれば開けるようにしますが、先に見るのは「欠品あり」の分だけにします。見立てに誤りが混ざる以上、「欠品なし」に残る見逃しはゼロにはできません。なので、試す間は本部が全件を見て見逃しの割合を数え、運用に入ってからも「欠品なし」の写真を抜き取りで確認する手順を残します。それでも、すべての写真を同じ順番で確認するより本部が先に見る量を絞れるのなら、導入する意味はあると考えています。

どの商品が欠けているかは、誰がどこで判断するのか?

AIモデルが見立てるのは「欠品あり」か「欠品なし」かまでです。どの商品が欠けているかの特定は、本部の担当者が「欠品あり」の写真を開き、棚割表と見比べて判断します。発注するかどうかの判断も、本部の担当者か既存の発注の仕組みが担います。

ここは設計しながら、けっこう迷いました。写真とその売場の棚割データをAIに照合させ、欠けている商品名まで挙げさせるパターンも考えてみました。それでも、AIモデルの見立ては二択にとどめ、商品の特定は人と既存の棚割データに任せることにしました。そのほうが、見立てに誤りが起きたときの影響を「欠品あり・なしの見逃しと誤検知」だけに絞れます。棚割データの正確さや更新のタイミングに、AIモデルの判定結果が引きずられずに済みます。

端末の中で見立てる範囲はどこまでか?

さて、AIに渡すのは、その場で撮った1枚の棚の写真だけです。棚割データや他の売場の写真は渡しません。写真は大きいほど処理に時間がかかるので、通路をまたいで何枚も撮る場合も、写真ごとに見立てを出してから、スタッフの画面にまとめて並べます。

対応端末・費用などの共通の前提は、iPhoneの中でAIが動くと、どの業界の何が変わるのか(Apple Intelligence 業界別活用マップ) の「どの業務にも共通する前提」にまとめています。同じチェーンでも、店舗や導入時期によって支給端末の世代がそろっていない例があると聞きます。対応していない店舗には、これまでどおり写真を撮って本部に送るだけの運用を残します。

1店舗、欠品の見立てだけで始める

最初は1店舗、欠品の影響が大きいカテゴリーを1つ選んで始めます。陳列崩れやPOPの設置状況は対象に含めず、「欠品あり」「欠品なし」の二択だけに絞ります。棚割データとの照合や発注判断は2段階目とし、初回の試作には含めません。

期間は棚割の切り替わりをまたがない数週間にし、その間は本部が全件を見て、AIの見立てと人の判定の違い(見逃しと誤検知)を数えます。

継続するかどうかは、次の表で判断します。

見るもの 広げる 直してもう一度試す 見送る(いまの運用に戻す)
「欠品なし」判定に欠品が残っていた見逃しの割合 従来の全件確認より少ない 従来と同程度だが、見逃す条件が特定できる 見逃しが人の全件確認より多い
本部が実際に開いた枚数の割合(送信した写真のうち欠品ありだった割合) 下がっていく 横ばい 上がる、またはほとんどが欠品ありになる
スタッフが送信前に見立てを直した割合 下がっていく 横ばい 上がる、または特定の売場でほぼ毎回直す
店舗と本部を合わせた総作業時間(撮影・確認・修正を含む) 従来より短い 同じくらい 従来より長い
支給端末の対応比率(対応端末を持つ店舗の割合) 十分にいる 少ないが増える見込み 少なく、増える見込みがない

この表は試す前に埋めておきます。結果を見てから基準を決めると、結果に合わせた基準になります。

アプリは、対応端末(iPhone 15 Pro/Pro Max か iPhone 16 以降)でApple Intelligenceがオンになっているかを確認してから、見立て結果の画面を出します。私は事業企画の担当でエンジニアではないので、試作は自社の開発部門か開発会社に、撮る、見立てる、スタッフが確認して送信する、という最小の画面を頼みます。

必要なものは、対応端末、そのカテゴリーの棚の写真と人の正解判定の組数十件、スタッフの確認画面の試作です。

導入前の確認項目として、次を使ってください。

  • 撮影時に「欠品あり/欠品なし」を見立て、スタッフが確認して送信する手順になっているか。
  • 本部が「欠品あり」の写真だけを優先して開けるか。
  • AIに渡すのは、その場で撮った1枚の写真だけに絞っているか。
  • 店舗端末の世代を確認し、対応していない店舗に従来の運用を残しているか。

よくある質問

陳列崩れも一緒に見つけられますか?

この仕分けは「欠品あり/欠品なし」の二択だけに絞ります。陳列の乱れまで見立てに含めると選択肢が増え、二択で得られるはずの分かりやすさが失われるためです。陳列崩れの見立ては、欠品の見立てで運用の見通しが立ってから、別の選択肢として検討します。

値札やPOPの文字も一緒に確認できますか?

値札やPOPの文字を読むのはAIモデルの範囲にしません。文字を読む必要がある確認は端末内の文字認識ツールの担当にし、AIモデルには棚の見た目の判定だけを担わせます。

AIの見立てが間違っていたらどうなりますか?

スタッフが送信前に確認する画面で、その場で直せます。確定するのはAIではなくスタッフなので、見立てが間違ったまま本部に送られることはありません。

全店舗に一度に配る必要がありますか?

その必要はありません。対応端末がそろい、Apple Intelligenceをオンにできる店舗と、欠品の影響が大きいカテゴリーを選んで始め、効果を確かめてから対象を広げる進め方で足ります。

参考

同じような確認業務に心当たりがある方は、ぜひ感想を聞かせてください!

では、おつかめ!

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