【iOS 27】iPhoneの中でAIが動くと、どの業界の何が変わるのか(Apple Intelligence 業界別活用マップ)

【iOS 27】iPhoneの中でAIが動くと、どの業界の何が変わるのか(Apple Intelligence 業界別活用マップ)

現場監督が黒板の写真を日報に手で書き直したり、薬局の受付が処方箋の画像を見ながら項目を入力したり、マニュアルから手作業で答えを探したり。こうした「読んで打ち直す」「探して答える」作業が業界に残っています。iOS 27で使えるようになったApple Intelligenceの4つの新機能が、こうした業務のどこに当てはまるか、業界ごとに整理しました。

こんにちは。リテールアプリ共創部で事業企画を担当しているかめだです。

建設の現場監督は、黒板を写し込んだ工事写真をiPhoneやiPadで撮っています。店舗の店員は、業務端末でバーコードを読んで発注や在庫を確認しています。薬局に行く患者は、処方箋をスマホで撮って薬局に送っています。

撮って送るところまでは端末で済んでいます。残っているのはその後の作業です。現場監督は写真を見ながら日報の様式に書き直し、薬局の受付は届いた処方箋の画像を見て項目を打ち、本部の担当者は送られてきた売場の写真を目で見て仕分け、客室乗務員は機内で聞かれたことを1,000ページのマニュアルから探しています。この「読んで打ち直す」「目で見て仕分ける」「探して答える」作業が、多くの業界に残っています。

アプリの中からiPhoneの中のAI(Apple Intelligenceの基盤モデル)を呼ぶ仕組みは、iOS 26からありました。iOS 27では、次の4つが加わりました。

  • 写真をそのままAIに渡せる
  • 文字を読む、バーコードを読む、端末内を検索する、という標準のツールをAIに持たせられる(ツールを持たせる仕組み自体はiOS 26からあり、標準のツールが加わった)
  • 端末内のモデルで足りないときに、Appleのサーバー側の大きいモデルへ切り替えられる
  • AIが作ったものの品質を、お手本と比べて数字で測れる

この4つを、上の3つの作業に使えます。この記事では、4つの機能を使える業界と作業を整理します。スタッフが会社の端末で使う場面と、お客さまが自分のiPhoneで使う場面の両方で整理しました。

Apple Intelligenceは自分の業界の業務で使える?

いま、スタッフかお客さまがスマホで撮って送っている手続きや、端末で調べている作業があり、そのあとに誰かが読んで打ち直す、目で見て仕分ける、探して答える作業が残っているなら、候補です。 4つの機能のどれを使うかは、残っている作業の種類で決まります。

Apple Intelligence でアプリづくりは何が変わるのか(AFM 3 の全体像)では、iOS 27で新しくできるようになったことが「見る・読む・探す・選ぶ・確かめる」と整理されています。これを業務の言葉に置き換えると、次の表になります。

新機能 業務で何をするか スタッフの端末で使う(toB) お客さまの端末で使う(toC)
写真を渡せる 撮った写真を、その場で報告書・点検票・申込の項目に変える。足りない写真をその場で指摘する 建設の日報、飲食の衛生記録、設備保守の点検票、売場写真の本部報告 薬局の処方箋、ホテルの事前チェックイン、損保の事故写真、生保の告知、電力・ガスの申込
ツールを持たせられる(OCR・バーコード・端末内検索) 文字とバーコードを読む。アプリの中の在庫・マニュアル・顧客情報を端末の中で探して答える 小売店舗の引継ぎと在庫の突き合わせ、客室乗務員のマニュアル検索、設備保守のマニュアル照合 処方箋の文字を読む、会員アプリの中の自分の履歴を探す
大きいモデルに切り替えられる 日常の案件は端末内で終え、判断が難しい案件だけAppleのサーバー側へ渡す(利用には条件がある。下の「共通の前提」) 電力・ガスの保安点検、設備保守の異常の見立て 家電サポートの写真付き問い合わせ、損保の事故写真の判定が難しいときだけ
品質を数字で測れる AIが作った記録・下書きの品質を、お手本と比べて数字で示す。稟議と運用で使う 全業界。企画・情シス向けの横断の話 お客さまの入力補助の精度を、どう見て、どう直すか

上の2行(写真を渡す、ツールを持たせる)が、現場の作業に直接当たります。下の2行(切り替え、品質を測る)は、企画を稟議に通すときと、運用を続けるときに役立ちます。

スタッフの端末で使う(toB): どの業界に、どんな作業が残っているか

スタッフの端末で使う場面の強みは、会社が端末をそろえられることです。 対応端末を配り、設定をそろえれば、全員が同じ機能を使えます。

スタッフが業務端末を持つ運用は、公開されている事例で確かめられます。ゼネコンでは施工管理アプリをiPadやiPhoneで使う運用が広がっていて、民間調査(MM総研、2025年12月)では利用シェア1位のアプリが19%でした。生活雑貨の大手チェーンでは、店員向けに3,000台以上のiPod touchを配り、バーコードリーダーを付けて発注や在庫確認に使っています。厚生労働省は、衛生管理の記録をスマートフォンやタブレットで付けるアプリを公開しています。端末はもう現場にあります。

業界 いまスタッフが端末でしていること 残っている作業(仮説) 使う機能 連載の記事
建設 電子小黒板を写し込んだ工事写真を撮る。施工管理アプリを使う 写真と黒板のメモから、日報・安全記録へ転記する 写真を渡せる 建設現場の写真を日報にする
小売店舗 業務端末でバーコードを読み、発注・在庫を見る 引継ぎメモ・納品書・棚札と、在庫データを突き合わせる ツールを持たせられる 店舗スタッフ全員に「毎回使っていいAI」を配る
飲食チェーン 衛生管理の記録をアプリで付ける 温度計の数字を読んで打つ。本部で記録を確認する 写真を渡せる 飲食チェーンの衛生記録を、温度計を撮るだけで済ませる
小売の売場管理 売場の写真を撮って本部に送る 本部の担当者が写真を目で見て仕分ける 写真を渡せる 売場の写真を本部への報告にする
設備保守 iPadで契約・障害・対応履歴・マニュアルを現場で参照する 点検結果を報告書にする。マニュアルの該当箇所を探す 写真を渡せる+ツール 設備点検で計器を撮って点検票に入れる
航空 客室乗務員がiPadでマニュアルと便ごとの情報を見る 機内で聞かれたことをマニュアルから探す ツール(端末内検索) 客室乗務員のiPadが、機内でマニュアルから答えを探す

同じ業界でも、上の条件に当たらない現場では見送ります。

このほか、医療・訪問看護(病院で医師・看護師にiPhoneを配る事例があり、写真から記録の様式への転記が残る)、不動産管理の退去立会、ホテルの客室清掃、自動車ディーラーの入庫受付、警備の巡回、介護施設の記録にも同じ作業が残っています。連載の中で順に扱います。

お客さまの端末で使う(toC): 入力が楽になると、受けた側の打ち直しが減る

お客さまが自分のiPhoneで撮って送る手続きにAIを導入すると、お客さまの入力が楽になるだけでなく、受け取った側のスタッフの確認と打ち直しが減ります。 これがtoCで狙うことです。

書類から読み取れる項目と、本人が決めて入力する項目は分けます。処方箋から読めるのは患者名・医療機関名・処方日・薬剤名の候補までで、受取希望や連絡先は本人が入力します。読み取った項目は本人が確認して直し、受けた側のシステムには画像と項目をそろえて届けます。

業界 いまお客さまがしていること 受けた側に残っている作業 AIが端末内で助けること 使う機能 連載の記事
薬局・ドラッグストア 処方箋を撮って薬局に送る。氏名・連絡先・受取希望は自分で入力する。原本は有効期限(発行日を含めて原則4日)内に持参する 薬局で処方箋の画像を見て受付情報を入力する 送る前に、処方箋から患者名・医療機関・処方日・薬剤名の候補を項目にし、患者が確認して送る 写真を渡せる+ツール 処方箋を撮って送る患者に、受付の項目まで埋めてもらう
ホテル 事前チェックインで、パスポートや免許証を撮って宿泊者名簿を作る フロントでの名簿の確認・修正、記入の補助 券面を端末内で読んで名簿の項目を埋め、本人が確認する 写真を渡せる 事前チェックインで、宿泊者がパスポートを撮って名簿を自分で埋める
損害保険 撮影ガイドに沿って事故車の写真を撮り、担当者に送る 担当者が写真を見て、不足や撮り直しを依頼する 撮った時点で必要な角度がそろっているかを判定し、その場で撮り直しを促す 写真を渡せる+切り替え 事故の写真を、契約者が撮った時点で「足りている」と分かるようにする
生命保険 申込と告知はスマホで本人が入力する。健康診断結果は画像で添付できる 査定部門で画像と入力内容を照合し、不備を差し戻す 健診結果票を端末内で読み、告知項目の候補を埋め、本人が確認して確定する 写真を渡せる 健診結果を撮って告知の項目を埋める。本人が確定する生命保険の申込
電力・ガス 切替の申込フォームに、検針票の供給地点番号などを手で入力する 申込内容の不備確認、供給地点番号の照合 検針票を端末内で読んで供給地点番号・契約種別を項目にし、本人が確認して申し込む 写真を渡せる 電力・ガスの申込で、検針票を撮れば供給地点番号を打たなくて済むようにする
家電・機器メーカー 自分のスマホから写真付きで問い合わせる 写真の内容を人が見て振り分ける 既知の表示は端末内で答え、判断が難しいものだけサーバー側、危険な症状は窓口へ 切り替え 家電の「写真付き問い合わせ」を、端末の中で答えるものと窓口に回すものに分ける

同じ業界でも、上の条件に当たらない現場では見送ります。

toCで気をつけることが一つあります。お客さまの端末はそろえられず、対応端末でない人が多いことを前提にします。そのため、toCでは常に2通りの設計が必要です。対応端末の人には送る前の確認画面で項目を埋めて見せ、対応端末でない人にはいまの手順(写真を送って項目は手で打つ)をそのまま残します。いまの手順に確認画面を足すだけなので、既存の手続きへの機能追加です。

医療や健康の情報を扱う手続き(処方箋、健診結果)では、AIの処理を端末の中で終え、Appleのサーバー側にも渡さない設計にします。外部に渡す審査を通さずに済むためです。読み取りの精度が要件に届かないときは、手入力と人の確認に戻します。1枚の書類から項目を起こす仕事が端末内で足りるかは、実物で確かめます。

どの業務にも共通する前提(対応端末・費用・人が確定する)

対応端末
iPhoneで動くのはiPhone 15 Pro/Pro MaxかiPhone 16以降です。iPhone 15とiPhone 15 Plusは対象外です。対応端末でも、利用者がApple Intelligenceをオンにしていないと動きません。iPadの対応条件は、AFM3の5モデルと対応端末を参照してください。スタッフの端末は会社がそろえられます。お客さまの端末はそろえられないので、上に書いた2通りの画面が要ります。

費用
端末の中で処理を終える機能には、呼び出すたびの課金がありません。処理をするのが利用者のiPhoneだからです。外部のAIサービスとの契約・APIキー・アカウントも要りません。ただし、アプリの開発と社内の稟議は要ります。変わるのは、「外部のAIにデータを送るのか」という審査項目で企画が止まらなくなることです。Appleのサーバー側の大きいモデル(Private Cloud Compute)を使えるのは、App Store Small Business Programに登録していて、その開発者のどのアプリも累計の初回ダウンロードが200万件未満で、Appleから利用権限を割り当てられた開発者です。条件に当たればクラウドの費用はかかりません。条件を外れるとAppleから通知があり、6か月以内に別の仕組みへ移る必要があります。利用者ごとに1日の上限があり、対応端末が必要で、オフラインでは動かず、プロンプトは保存されません。自社が条件に当たるかは、企画の最初に確認します。PCCの仕組みと保証は、Private Cloud Compute とは何かにまとまっています。

ツール
文字を読むOCR、バーコードの読み取り、端末内の検索は標準のツールとして用意されています。端末内検索の対象は、アプリが登録したデータだけです。詳しくはAI にツールを持たせる(OCRTool・バーコード・端末内検索)を参照してください。

人が確定する
AIが作るのは下書きと候補までです。誰が、どの画面で、何を見て、確定ボタンを押すかを、業務ごとに決めます。店長、現場監督、薬剤師、契約者本人などです。確定した内容だけを次の業務で使います。

品質を数字で測る
AIが作った下書きの出来は、お手本(この入力ならこの答え、の組)と比べて数字にします。お手本は数十件から始め、実際の使われ方の幅を足していきます。測り方はEvaluationsフレームワークで品質を測るに、企画側の使い方は連載の「品質を数字で測る」の記事に書きます。数字は、後述の進める・見送るの表に当てて使います。

端末内AIが向いている仕事と向いていない仕事は?

端末内AIは、1件の記録、1枚の書類、1画面にある情報を扱う仕事に向いています。 大量の情報をまとめて扱う仕事や、複雑な判断そのものを任せる仕事には向いていません。

端末内で処理できても、AIそのものの能力が急に高まるわけではありません。上の表に並べた業務は、どれも「1枚撮って、項目にする」か「1つ聞かれて、端末の中から探す」のどちらかです。月次の集計、複数の記録の横断、与信や査定の判断は、この連載では扱いません。クラウドのAIですでに同じことをしていて困っていないなら、置き換える必要もありません。

対応端末を持つ人(またはスタッフの支給端末)の比率が低い、読み取りの精度が試作で要件に届かない、1件の処理に待たせられない時間がかかる、一度に渡す量が上限を超える、のいずれかに当たるなら、端末内は選ばず、いまの運用かクラウドの処理を続けます。

自社の1業務を選んで、この表に当てる

  1. いまスタッフかお客さまがスマホで撮って送っている手続き、または端末で調べている作業を、1つ選びます。
  2. その手続きのあとで、誰が何を読んで打ち直しているか、目で見て仕分けているか、探しているかを数えます。件数と、1件にかかる時間だけで足ります。
  3. 上の表で、4つの機能のどれを使うかを見ます。「撮って項目にする」なら写真を渡す機能、「端末の中から探す」ならツール、「難しい案件だけ人か大きいモデルへ」なら切り替え、です。
  4. 確認して確定する人と画面を決めます。ここが決まらない業務は、まだ始めません。
  5. お手本を数十件用意します。「この写真ならこの項目」の組です。既存の記録から匿名化して抜くのが早いです。品質を数字で測る話は連載の中で別に書きます。
  6. 1店舗、1現場、あるいは対応端末を持つお客さまだけで始めます。

進めるか見送るかは、次の表で確かめます。

見るもの 進める 見送る
確認して確定する人と画面 誰が確定するか決まっている まだ決まっていない
1件で完結するか(1枚・1画面) 1件の記録・1枚の書類・1画面の情報で足りる 複数の記録をまたぐ、または月次の集計が要る
対応端末(toBはそろえられるか、toCは利用者が十分いるか) そろえられる、または十分いる そろえられない、または少ない
回数課金・外部送信の審査・通信のどれかが当たるか いずれかに当たる どれも当たらない
お手本を数十件用意できるか 既存の記録から集められる 集められない

見送りの列に当たる項目があれば、その条件を先に満たしてから始めます。

対応端末をそろえられるスタッフの業務から始めるか、いまの手続きに機能を足せるお客さまの手続きから始めるかは、自社のアプリの状況で選んでください。どちらも、既存のアプリに確認画面を足せば作れます。開発と稟議は要ります。

よくある質問

Q. すでにクラウドのAIやOCRで読み取っている手続きがあります。端末内に置き換える意味はありますか?
費用も審査も問題になっていないなら、置き換える必要はありません。置き換える理由になるのは、全員が毎日使う機能で利用料金を予測できないとき、電波の弱い場所で撮った場で処理したいとき、外部送信の審査で企画が止まっているとき、そして、お客さま本人が送る前に確認できるようにしたいときです。

Q. Private Cloud Compute(Appleのサーバー側モデル)を使えば、この制約はなくなりますか?
扱える情報量は増えますが、対応端末は引き続き必要で、通信も必要になります。データを端末の外に出すことについて、Appleは「プロンプトは保存されず、独立した研究者が検証できる」と説明しています。情報システム部門や法務部門には、端末から出さない場合と、外に出るが保証がある場合を分けて説明する必要があります。医療・健康の情報を扱う手続きでは、この連載では端末の中で終える設計を前提にしています。

Q. 対応端末を持っているお客さまが少ないうちは、toCで始める意味がありますか?
あります。いまの手順(写真を送って項目は手で打つ)をそのまま残し、対応端末の人にだけ確認画面を足すなら、対応端末でない人の体験は変わりません。対応端末の人の送信で、受けた側の打ち直しがどれだけ減るかを数えるところから始められます。

参考

では、おつかめ!

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