![[レポート]「Automotive Supply Chain Optimization using AI 」に参加してきました#PEX305 #AWSreInvent](https://images.ctfassets.net/ct0aopd36mqt/4pUQzSdez78aERI3ud3HNg/fe4c41ee45eccea110362c7c14f1edec/reinvent2025_devio_report_w1200h630.png?w=3840&fm=webp)
[レポート]「Automotive Supply Chain Optimization using AI 」に参加してきました#PEX305 #AWSreInvent
はじめに
こんにちは、おおはしりきたけです。3回目のre:Invent 2025に参加しております。
今回は、Automotive Supply Chainをどのように実現しているかが気になったので、本セッションを受けてきました。セッション概要は以下になります。
セッション概要
Discover how cutting-edge AI technology is advancing supply chain management in 2025. This lecture style session demonstrates how AI-powered analytics can decode complex patterns in backlog fluctuations, dwell times, and transit metrics across your supply chain network in near real-time. Partners will learn how to leverage these advanced capabilities to deliver unprecedented visibility and predictability to their customers' supply chain operations. By implementing these solutions, you can help your customers achieve significant improvements in operational efficiency, reduce costs, and maintain a competitive edge in today's dynamic marketplace.
日本語訳
最先端のAIテクノロジーが2025年のサプライチェーン管理をどのように進化させるかをご覧ください。この講義形式のセッションでは、AIを活用した分析によって、サプライチェーンネットワーク全体のバックログ変動、滞留時間、輸送指標における複雑なパターンをほぼリアルタイムで解読する方法を実演します。パートナーは、これらの高度な機能を活用して、顧客のサプライチェーン運用にかつてない可視性と予測可能性を提供する方法を学びます。これらのソリューションを導入することで、お客様は業務効率を大幅に向上させ、コストを削減し、今日のダイナミックな市場における競争力を維持できます。
登壇者
- Perminder Singh, Global Industry Growth Leader (AutoMFG, Energy & Utilities, Retail), Amazon
- Jorge Malibran, Sr. Partner - US Manufacturing Leader, IBM
- Travis Washington, Principal Engineer - Digital Innovations, Toyota Motors of North America (TMNA)
セッションレポート
1. イントロダクション (AWS: Perminder氏)
まずは、AWS Perminder氏から「サプライチェーンと自動車業界」をテーマに、この分野における課題についてお話しをしてくれました。
主なアジェンダは以下の通りです

サプライチェーンの混乱(ディスラプション)に伴うコストについて。
この課題に対するソリューション構築(論理アーキテクチャ、物理アーキテクチャ、AWSサービス)について、私が再び登壇して解説します。
そして最も重要な、トヨタ様のケーススタディについて、担当のTravis氏より詳しく解説していただきます。
最後にいくつかのアクションアイテムと、推奨セッションをご紹介します。 それでは、IBMのJorge Malibran氏をお迎えしましょう。
2. 自動車業界の課題とアプローチ (IBM: Jorge Malibran氏)
IBMのJorge Malibra氏から。自動車業界は過去20年間、電動化からモビリティサービス、そして最近では自動運転へと、絶え間ない変革とディスラプションが続く魅力的な業界です。しかし、業界が直面している課題があります。

- 主な4つの課題
- 製品の複雑化
- 消費者にとって選択肢が増えた。
- ハイブリッドモデルからアクセサリーに至るまで、過去5年間で車両構成(コンフィギュレーション)の数は倍増しており、これがサプライチェーンへの圧力となっているそうです。
- 顧客の期待値の上昇
- Amazonのワンクリック購入や、Uberの手軽さに慣れ親しんでいる。
- 自動車メーカーに対しても同様の透明性と体験を期待しており、これが企業にとって大きなプレッシャーとなっている。
- 関税とコスト
- 経営幹部にとって最大の関心事。
- 2025年だけで、主要自動車メーカー6社は関税の影響で利益予測を250億ドル以上下方修正した。
- サプライチェーンの混乱
- ストライキ、半導体不足、自然災害など、混乱が常態化している。
- 損益(P&L)と顧客体験の両方に悪影響を与えている。
- 製品の複雑化
結果としてディスラプションの影響がでており、企業の94%がサプライチェーンの混乱の影響を受けている。
- 物流コストの増加、誤配送、発売遅延、収益機会の損失などが発生し、結果として車両価格を高騰させている。
- 9月には米国の新車平均取引価格が初めて5万ドルを超え、購入のしやすさの問題を引き起こしている。

プロセスの複雑性
- 注文
- オンライン設定
- ディーラー訪問
- 在庫確認(なければ注文)
- スケジューリング
- 生産能力
- 輸送コスト
- 工場の空き状況などを最適化する複雑なプロセス
- 製造
- 海外工場やレガシーなPLM技術が残る環境
- 品質検査
- 目視検査や紙ベースの記録など、手作業が多い
- 輸送
- 複数の第三者機関が関与する複雑なプロセス
- 納車前検査 (PDI)
- ディーラー到着前の手動チェック
- ディーラーへの納車
- 最終的な顧客への引き渡し場所

解決へのアプローチとして、これらをつなぐために、以下の4点を重視して解決に取り組みました。
- リアルタイム処理
- イベント駆動型プラットフォームで即座に対応。
- エンド・ツー・エンドの統合
- プロセスとデータのシームレスな統合
- AI主導
- プロセスの核心にAIを据え、人間は例外処理のみを行う「Human-in-the-loop」を目指す
- 顧客中心
- すべては顧客体験の向上と迅速な納車のために。
3. AWSによるアーキテクチャ解説 (AWS: Perminder氏)
これを実現するためのアーキテクチャを、概念と物理の両面から分解してみましょう。
概念アーキテクチャ

- 1.Data Sources
- データの発生源。
- Mainframe
- AS/400
- Port
- Vehicle(車両データ)
- Dealers(ディーラーシステム)
- Apps(各種アプリ)
- データの発生源。
- 2.Data Ingestion(データ取り込み)
- データをクラウドへ移動させる層
- Real-time CDC
- Event Streams
- Batch
- データをクラウドへ移動させる層
- 3.Data Storage
- 用途に応じてデータを保存する「Polyglot Storag」の層
- Raw Data
- Flat files
- Data Warehouse
- Data Lake
- Event Store
- Data Marts
- 用途に応じてデータを保存する「Polyglot Storag」の層
- 4.Data Fabric
- データの管理・処理を行うバックボーンとなる層
- Metadata Management
- Data Lineage
- Workflow
- Business Rules
- Event Processor
- Data Quality
- データの管理・処理を行うバックボーンとなる層
- 5.Domain Store
- ビジネス概念ごとにデータを整理した層
- Dealers(ディーラー)
- Vehicles(車両)
- Model(車種モデル)
- Order
- Shipments(出荷)
- Supplier
- ビジネス概念ごとにデータを整理した層
- 6.Data Access and Service
- データを外部から利用可能にするためのインターフェース層
- GraphQL(AppSync等)
- REST、Streaming
- Enterprise Search
- Data Product APIs
- データを外部から利用可能にするためのインターフェース層
- 7.Supply Chain Apps
- データを消費・活用するダウンストリームのアプリケーション層
- Intelligent workflows
- Enterprise Apps
- AI/ML Models
- Analytics Dashboard
- Exception Handling
- データを消費・活用するダウンストリームのアプリケーション層
- 8.Operations and Governance
- システム全体を支える基盤とルール
- Cloud Infrastructure
- Security and Access
- Compliance
- Observability
- Monitoring and Operations
- Performance(パフォーマンス管理)
- システム全体を支える基盤とルール
物理アーキテクチャ(AWS)
このアーキテクチャは、レガシーシステムや車両からのデータをリアルタイムに取り込み、加工・分析して、アプリケーションへ届けるまでの一連の流れを表しています。

- データソースと取り込み
- データの発生源からクラウドへデータを取り込むフェーズとしては以下があります。
- 1.Data Sources (データソース)
- 2.Ingestion(リアルタイム取り込み)
- 3.Ingestion (バッチ取り込み):
- データの発生源からクラウドへデータを取り込むフェーズとしては以下があります。
- イベントハブと処理
- データの交通整理とリアルタイム加工を行う中心部がこちらです。
- 4.Event Hub (イベントハブ)
- 5.Real-Time Transformers (リアルタイム変換)
- 6.Rules Engine (ルールエンジン)
- 7.Data Quality (データ品質)
- データの交通整理とリアルタイム加工を行う中心部がこちらです。
- データストア (Data Storage)
- 用途に合わせて最適なデータベースを使い分ける「ポリグロット・ストレージ」構成です。
- 8.DataCore ODS (運用データストア)
- 9.DataCore Ops Reporting (運用レポート)
- 10.Event Store (イベントストア)
- 11.Archival (アーカイブ)
- 用途に合わせて最適なデータベースを使い分ける「ポリグロット・ストレージ」構成です。
- アクセスとデリバリー (Access & Delivery)
- 整理されたデータを外部やアプリへ提供する層です。
- 12.Data Access and Delivery (データアクセス)
- 整理されたデータを外部やアプリへ提供する層です。
- インテリジェンスと活用 (Intelligence & Apps)
- 最終的にデータを価値に変える層です。
- 13.Intelligence Layer (インテリジェンス層)
- 14.Analytics Layer (分析層)
- 15.App Layer (アプリ層):
- 最終的にデータを価値に変える層です。
機械学習 (ML Ops):
ML Opsは以下のサービスを使って実現しているとのことでした。
- Amazon SageMaker: 特徴量エンジニアリングとモデル学習
- Data Wrangler: データのクレンジング、欠損値処理、外れ値の除去。
- 学習と推論: 回帰分析や時系列予測(XGBoostなど)を使用。SageMakerの「Instance Recommender」で最適なインスタンスを選択しコストを削減
- バッチ変換 (Batch Transform): 4時間ごとに推論を実行してデータを事前準備(Pre-inference)することで、ニアリアルタイムな応答速度を実現しています。
- ドリフト検知: Model Monitorでモデルの精度低下を監視。
推論では、車両が各ノード(工場、港、鉄道、トラック、ディーラー)に到着する時間を計算・集計し、最終的なETA(到着予定日)を算出します。
4. ケーススタディ:トヨタの挑戦
トヨタのTravis Washington氏から、まず強調したいのは、システムがいかに複雑でも、それを統合し成功させるのは「人」であるということです。AIや機械学習も重要ですが、同じ目標に向かって団結するチームこそが成功の鍵です。
トヨタの物流ネットワーク

- 工場、港、鉄道ヤード、中継地点など多数の拠点があります。
- 約1200の輸送リンク、数千通りの配送ルートが存在します。
- 車両はそれぞれ日本、米国各地などの各拠点から、ディーラーへ向かいます。
ビジネスケースと「ジャーニーマップ」
「Digital Innovation」グループの一員として、単なるシステム移行ではなく、変革を目指しました。 車両の輸送ジャーニーにおける主要なマイルストーン(製造、品質検査、出荷待機、輸送、納車)を定義し、それぞれの所要時間を予測します。

- 影響要因としては以下がある
- 各拠点にある車両台数
- 輸送中の台数
- 曜日(日曜休みなど)
- ルートの安定性
- 天候
- キャリア(輸送業者)の容量など
- ETA(到着予定時刻)への挑戦
- 「Dealer ETA」と呼んでいる
- この精度を高めることは非常に重要
- しかし、単に良い数字を出すのではなく、現実的であることが重要
- 遅れがあれば正直に伝え、常にカイゼンを続ける

こちらの画面はデモ画面です。ドミノピザの追跡画面のように、車両が今どこにあるかを可視化するインターフェースを構築しました。
- ステータス表示: 「製造中」「輸送中」「鉄道出発」「トラック積載」などのマイルストーンを表示。
- スケジュール状況: 当初の予定に対し、オンタイムか、遅延リスクがあるかを表示。
- パーソナライズ: 車両ごとのユニークなジャーニーマップを作成し、予測と実績を対比させます。
生成AIを活用したチャットボット(エージェント)を導入し、「私の車の現在のステータスとETAを教えて」といった自然言語での問い合わせに対応できるようにしています。
5. 今後の展望とまとめ
最後にAWSのPerminder氏からエージェンティックAIへという形で、Travis氏が見せてくれたチャットボットの裏側では、AWSの新しい「Agent Core」のような概念が動いています。
- オーケストレーター・エージェント: 全体を指揮するエージェント。
- ETA計算エージェント: 特定の計算を行うエージェント。
- データ検索エージェント: システムに問い合わせるエージェント。
これらが連携して回答を生成するようになっており、以前はモデルが限定されていましたが、現在は様々なLLMや独自モデルも組み込めるようになっています。今回ご紹介したのは自動車業界の事例ですが、このアーキテクチャは小売、消費財、エネルギー、化学など、あらゆる業界のサプライチェーンに応用可能です。 このシステムは、過去3年間にわたるトヨタ様の「顧客満足への執念」と、IBM様の数十年にわたるドメイン知識、そしてAWSの技術が融合して完成した「ロケット」です。
感想
Supply Chainという様々なところからデータが来て、そのデータを管理していくという流れを説明していただきました。アーキテクチャもかなり複雑ですが、トヨタのTravis氏が言っていた「それを統合し成功させるのは「人」であるということです。AIや機械学習も重要ですが、同じ目標に向かって団結するチームこそが成功の鍵」という言葉も非常に大切だなと感じました。








