[UPDATE] AWS Elemental MediaConvertでオンデマンド料金にボリュームディスカウントが適用されるようになりました![AWS値下げ]

[UPDATE] AWS Elemental MediaConvertでオンデマンド料金にボリュームディスカウントが適用されるようになりました![AWS値下げ]

東京リージョンの場合、ベーシック階層で月額$850、プロフェッショナル階層で$680を超えているとボリュームディスカウントの恩恵にあずかれます!そうでない場合でも、Normalized minutesという考え方が導入されている点は抑えておきましょう。
Clock Icon2024.10.05

はじめに

清水です。ブロードキャストグレードの機能を備えたファイルベースの動画変換サービスであるAWS Elemental MediaConvertで、オンデマンド利用の際のボリュームディスカウント料金が発表されました!2024/09/17付けでWhat's New at AWSにポストされています。

AWSではAmazon S3のストレージ料金やAmazon CloudFrontのデータ転送料金など多くのサービスで、ボリュームディスカウントという一定の使用量を超えると単価が安くなる仕組みが導入されています。使えば使うほど節約につながるかたちですね。そんなボリュームディスカウントがMediaConvertにもやってきました!他AWSサービスと同様、ボリュームディスカウントは自動的に適用されます。最大で定価から75%割引になるそうです。2024年9月の請求サイクルから有効になるということなので、一定以上の使用量があるユーザであれば自動的にAWS利用費の値下げということになります。嬉しいですね!

本エントリでは、このMediaConvertのボリュームディスカウントについて確認してみたのでまとめてみます。ボリュームディスカウントは階層(ベーシックまたはプロフェッショナル)とリージョンごとに計算されます。コーデックや解像度、フレームレートなどが異なってもボリュームディスカウントで集計される対象となります。これは新たに導入されたNormalized minutesという単位によって測定、集計されます。

MediaConvertのボリュームディスカウント価格について確認してみた

実際にMediaConvertのボリュームディスカウント価格について確認してみましょう。(英語版の)料金ページを参照します。(のちほど詳しく触れますが、本ブログエントリ執筆時点の2024/10/04、日本語版料金ページでは、まだボリュームディスカウントは適用されていないようでした。)

On-Demand pricingの項目を上から確認していくと、 「Normalized minutes」というこれまでになかったキーワードとその計算方法が記されています。Normalized minuteは使用する機能に応じて変化するサービス使用量を測定するために標準化された単位、とのことです。出力の解像度やフレームレート、品質レベルなどの属性によって、このNormalized minuteの2倍や3倍といった乗数が設定されるようですね。

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引用元: MediaConvert Pricing

そこから少し下にスクロールすると、Basic TierならびにProfessional Tierの料金が記載されています。使用量によって、例えばはじめの100,000 normalized minutesよりも、次の900,000 normalized minutesのほうが単価が安くなるボリュームディスクカウントな料金テーブルになっていますね!(なお、本エントリ中で特に明記しない限りは東京リージョンの料金を掲示しています。)

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引用元: MediaConvert Pricing

それぞれの価格帯で1-(ボリュームディスカウント価格÷価格)×100を計算して割引率としてまとめてみました。小数点以下第1桁を四捨五入しています。使えば使っただけ割引率は上がり、Basic tierでは最大で75%、Professional tierでも70%の割引率となっています!

Basic tier

Normalized Usage Pricing 割引率
First 100,000 normalized minutes/month $0.0085 0 %
Next 900,000 normalized minutes/month $0.006 29 %
Next 19,000,000 normalized minutes/month $0.0043 49 %
Over 20,000,000 normalized minutes/month $0.0021 75 %

Professional tier

Normalized Usage Pricing 割引率
First 50,000 normalized minutes/month $0.0136 0 %
Next 950,000 normalized minutes/month $0.0109 20 %
Next 9,000,000 normalized minutes/month $0.0082 40 %
Over 10,000,000 normalized minutes/month $0.0041 70 %

新たに導入されたNormalized minitesという考え方について

さて、ボリュームディスカウントの割引率などが確認できたところで、気になるのはこのNormalized minutesについてです。さらに下にスクロールするとベーシック階層(Basic tier)について各コーデックや解像度などに応じた料金がまとめられています。AVCコーデック、30fps以下のSD解像度ではNormalized minuteが1x(1倍)ですが、60fpsより大きく120fps以下で4K解像度の場合はNormalized minuteは6x(6倍)となっています。1分間の出力(トランスコード)でも、4K/120fpsであれば「正規化された分」としては6分間ぶんとして扱われることとなります。

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引用元: MediaConvert Pricing

ボリュームディスカウントならびにNormalized minutes適用前の料金テーブルとも比較してみましょう。本ブログエントリ執筆時点(2024/10/04)で日本語のMediaConvert料金ページには、まだこのボリュームディスカウントとNormalized minutesは適用されていませんでした。ベーシック階層の料金テーブルを確認すると以下のようになっています。(なお、こちらの料金としては2018年3月のベーシック階層導入以来、変更はなかったようですね。)

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引用元: 料金 - AWS Elemental MediaConvert | AWS

英語版の料金ページののNormalized minutesと乗数を元に、実際の単価を計算してみると以下のようになります。なおNormalized minutesあたりの料金はベーシック階層のFirst 100,000 normalized minutes/monthである$0.0085を適用しています。

Resolution <= 30 fps >30 fps and <= 60 fps >60 fps and <=120 fps
SD 1x $0.0085 = $0.0085 1.3x $0.0085 = $0.01105 1.5x $0.0085 = $0.01275
HD 2x $0.0085 = $0.017 2.5x $0.0085 = $0.02125 3x $0.0085 = $0.0255
4K 4x $0.0085 = $0.034 5x $0.0085 = $0.0425 6x $0.0085 = $0.051

日本語版料金ページで確認できた、ボリュームディスカウントならびにNormalized minutes適用前の料金とほぼ変わりありません。(違いがあるとすれば、小数点以下どこで四捨五入などするか、という点かと思います。)今回のボリュームディスカウント導入のアップデートでは単価自体の変更についてはアナウンスされていない認識です。ボリュームディスカウント前の料金テーブルの見せ方が変わった、さらにボリュームディスカウントをするための新たなNormalized minutesという考え方が導入された、というように認識しています。

プロフェッショナル階層(Professional tier)についても確認してみます。こちらもベーシック階層と同様に、AVCコーデックではSingle-passのSD/30fps以下を1xとして、解像度やフレームレートが上がるについれて正規化乗数が大きくなっていきます。またMulti-passとすることでも正規化乗数が大きくなっていますね。

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引用元: MediaConvert Pricing

参考として日本語版料金ページで確認できたボリュームディスカウントならびにNormalized minutes適用前の料金テーブルも引用します。プロフェッショナル階層のNormalized Usage First 50,000 normalized minutes/month の単価は$0.0136です。こちらもボリュームディスカウントが適用される前までの使用量の場合は料金は変わっておらず、見せ方だけが変わっているぐあいですね。

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引用元: 料金 - AWS Elemental MediaConvert | AWS

なお、コーデックによってこの正規化乗数(つまり実際の料金)が大きく変わることに留意しておきましょう。一例ですがAV1コーデックで60fpsより大きく120fps以下、4K解像度の場合は正規化乗数がx576となり、1分間の変換でもNormalized minutesとしては576分として計算されます。

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引用元: MediaConvert Pricing

これまでもAV1コーデック、60~120fpsで4K解像度であれば分あたり$7.834の料金でした。AVC/30fps以下/SD解像度の分あたりの料金$0.0136と比べると576倍の料金である、という点に変わりはありません。(念のため、ボリュームディスカウントならびにNormalized minutesが適用されていない日本語版料金ページのスクリーンショットも引用しておきます。)しかし個人的には、「576倍」と明確に記されていることで、そのインパクトに少しびっくりしました。

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引用元: 料金 - AWS Elemental MediaConvert | AWS

さてここで、MediaConvertのボリュームディスカウントでNormalized minutesが導入された意義を考えてみましょう。これまで(Normalized minutesの考え方が導入される前)、MediaConvertの料金は分単位を基準として考えられてきました。この考えのままボリュームディスカウントを導入しようとした場合、例えばAV1/120fps/4Kなど同一の条件(料金テーブルの同じ項目)で一定量(例えば50,000分)を超えたら次の割引単価に、ということになるでしょう。変換条件が常に同じであればこれでもコストメリットが出そうですが、コーデックやフレームレート、解像度など様々な条件で変換を行っている、というパターンがほとんどかと思います。例えばABR(Adaptive bitrate)を考えただけでも、複数の条件での変換となることが想像できますよね。また様々な形式や条件で変換できることがMediaConvertの利点のひとつでもあります。それらを考えたときに、どうやってボリュームディスカウントを適用しやすくするか、ということで導入されたのがこのNormalized minutesの考え方ではないかと個人的には思っています。なお、Normalized minutesの導入によりコーデックやフレームレート、解像度などは同一のボリュームディスカウントの集計対象となりますが、階層(プロフェッショナルまたはベーシック)が異なる場合は集計対象となりません。またリージョンについても同様です。階層とリージョンは別集計になる点に留意しておきましょう。

どのぐらい使っているとMediaConvertのボリュームディスカウントが受けられるのか

MediaConvert Pricingを眺めつつ、ボリュームディスカウントな料金テーブルと新たに導入されたNormalized minutesについて確認してきました。ところで、実際問題どのぐらいMediaConvertを使っていると、このボリュームディスカウントの恩恵にあずかれるのでしょうか。東京リージョンを例に、4つにわけられれている使用量に応じた単価のうち2つ目の料金単価が適用されるしきい値を確認してみます。

まずはベーシック階層(Basic Tier)です。「First 100,000 normalized minutes/month」では$0.0085、「Next 900,000 normalized minutes/month」では$0.006という単価ですね。月額利用料金として $850 を超えていればボリュームディスカウントが適用され、2024年9月以降、自動的に値下げになります!

プロフェッショナル階層(Professional Tier)についても確認してみましょう。「First 50,000 normalized minutes/month」では単価が$0.0136、続く「Next 950,000 normalized minutes/month」では単価は$0.0109となります。月額利用料金として $680 を超えていればボリュームディスカウントの恩恵にあずかれます!

なお、先に確認したNormalized minutesの考え方により、具体的に何分以上の動画変換をしていればボリュームディスカウントが受けられる、という表現がシンプルにできない点には注意しておきましょう。例えばプロフェッショナル階層で、正規化乗数が1xのAVC/Single-pass/30fps/SDという変換条件であれば50,000分以上のJob実行でボリュームディスカウントが適用されます。また確認した中で最も正規化乗数の大きかったAV1/120fps/4Kであれば、87分以上のJob実行でボリュームディスカウントが適用されます。AVC/Multi-pass/30fpsでHDと4KのABR変換をする、という条件であれば合計正規化乗数は10.5x(3.5+7)、4,762分以上のJob実行でボリュームディスカウントが適用される、というぐあいです。変換条件によって何分以上でボリュームディスカウントが適用されるか、というしきい値は大きく違いますよね。もし「何分以上でボリュームディスカウント割引が受けられるか」と考える際には、変換条件を固定して考えるとよいのかなと思います。

まとめ

AWS Elemental MediaConvertでオンデマンド料金にボリュームディスカウントが適用されるようになったアップデートについてお届けしました!東京リージョンでは、ベーシック階層で月額$850、プロフェッショナル階層で月額$680を超えているとボリュームディスカウントの恩恵にあずかれます!

ほかAWSサービスと同じく「使えば使うほど節約につながる」というボリュームディスカウントの考え方はそのままなのですが、新たに導入されたNormalized minutesという仕組みでボリュームディスカウントが適用されやすくなっているかと思います。ただし月間の合計使用量は階層(ベーシックとプロフェッショナル)ごと、そしてリージョンごとで計算される点に注意しましょう。また今回Normalized minutesが導入されたことで、ボリュームディスカウントが適用されない場合にもMediaConvertの料金テーブルの見せ方が変わりました。単価としてはこれまでと変わりありませんが、「ボリュームディスカウントが適用されるほど使用していない」といった場合でも、このNormalized minutesの導入については抑えておくとよいかと思います。

MediaConvertでは今回の割引対象となるオンデマンド料金の他にも、一定期間の使用契約などをすることでオンデマンド料金よりも安価に利用することができるリザーブド料金があります。ただリザーブド料金については定常利用向けであるということなどから、ユースケースとしてマッチしないこともあったかもしれません。ボリュームディスカウントであればシンプルに使用量だけで割引が受けられますね。このNormalized minutesという考え方含めて、ボリュームディスカウントがMediaLiveなどにも広まってくれると嬉しいなぁと思いました。

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