
プロジェクトアイディアを形にするAWSソリューションジェネレーター 「DevGenius」 をさわってみた
こんにちは。たかやまです。
AWS Sampleを眺めているとDevGeniusという何やら面白そうなリポジトリがありました。
ざっくり伝えると、作りたいAWSのソリューションを生成AIでコスト見積もり、アーキテクチャ作成、コード生成、技術仕様書作成までやってくれる夢のような体験ができるツールです!
今回はこちらのDevGeniusを触ってみたのでご紹介します。
さきにまとめ
- DevGeniusはプロジェクトアイディアからAWSソリューションを自動生成するAIソリューションジェネレーター
- チャットのやりとりや画像ベースで以下の情報を生成する
- コスト見積もり
- アーキテクチャ図
- CDK/CloudFormationコード
- 技術仕様書
- (免責事項にも書かれているが)作成されたコードは基本的にそのままでは動作しないため、手動での修正が必要
DevGenius とは
DevGeniusは、プロジェクトアイディアを、すぐにデプロイできるAWSソリューションにするAIソリューションジェネレーターです。
Amazon BedrockとClaude AIモデルを使ってAWS、アーキテクチャ図の自動作成や、コスト見積もりの算出、InfrastructureをコードとしてCDKやCloudFormationで提供してくれます。
Bedrockナレッジベースには以下の情報が取り込まれており、AWS Well-Architectedのベストプラクティスに沿って回答を生成するように調整されています。
AWS Well-Architected Analytics Lens
AWS Whitepapers on data streaming and analytics architectures
AWS documentation on data lakes
AWS architecture blog posts
AWS service announcements
2025/5月時点で提供機能は以下になります。
ソリューションアーキテクチャ生成
: プロジェクト要件に基づいて AWS アーキテクチャを作成アーキテクチャ図の作成
: AWS ソリューションの視覚的な表現を生成Infrastructure as Code
: AWS CDK と CloudFormation テンプレートの両方を生成コスト見積もり
: 提案されたすべての AWS サービスの詳細なコストの内訳を取得技術ドキュメント
: ソリューションに関する包括的なドキュメントを生成既存アーキテクチャ分析
: 既存のアーキテクチャ図をアップロードして分析
DevGeniusデプロイ
では、さっそく DevGeniusを展開していきます
前提条件
前提条件として以下を満たしていることを確認してください。
- 適切な権限を持つAWSアカウント
- 認証情報が設定された AWS CLI
- Python 3.12 以降
- Docker(コンテナビルドとローカル開発用)
- Amazon Bedrockモデルへのアクセス(Claude-3-Sonnet/Claude-3-5-Sonnet/Titan Text Embeddingsv2)
- GitHubで書かれている前提条件以外にBedrockナレッジベースで
Titan Text Embeddings V2
も使用していたのでこちらも追加が必要です。
- GitHubで書かれている前提条件以外にBedrockナレッジベースで
CDKのデプロイ
まずはDevGeniusのリポジトリをクローンします。
git clone https://github.com/aws-samples/sample-devgenius-aws-solution-builder.git devgenius
cd devgenius
次に以下のコマンドでCDKのデプロイを行います。
npm install
npx cdk bootstrap
npx cdk deploy --all --context stackName=devgenius
私の環境では初回デプロイにDockerイメージビルドとCDKのデプロイに約30分程度かかりました。
デプロイに完了すると以下のようなOutputが表示されるので、StreamlitUrl
からアクセスします。
Outputs:
dev-genius-stack.FargateLoadBalancerDNSA8D33CCB = devgenius-alb-XXXXXXXX.us-west-2.elb.amazonaws.com
dev-genius-stack.FargateServiceURL8C558CA1 = http://devgenius-alb-XXXXXXXX.us-west-2.elb.amazonaws.com
dev-genius-stack.StreamlitUrl = https://XXXXXXXXXXXX.cloudfront.net
Stack ARN:
arn:aws:cloudformation:us-west-2:XXXXXXXXXXXX:stack/devgenius/XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX
DevGeniusを触ってみる - Build a solution
さきほどのStreamlitUrl
にアクセスするとCognitoのサインアップ画面が表示されるので登録します。
ログインが完了すると以下のような画面が表示されます。
免責事項に同意したら ✅ し、 Let's Build AWS Solution
をクリックします。
免責事項の日本語訳
[概要]
DevGeniusは、AWS ソリューションアーキテクチャ向けのAI搭載コンパニオンツールで、クラウド開発プロセスを効率化し、強化するよう設計されています。この革新的なプラットフォームにより、特定の要件に合わせたAWSアーキテクチャを簡単に設計でき、クラウドインフラストラクチャがプロジェクトの目標と完全に一致することを確実にします。DevGeniusを使用すると、AWS CDK や AWS CloudFormation などの強力なツールを使用してインフラストラクチャをコードとしてシームレスに生成でき、より迅速なデプロイメントとクラウドリソースの管理の簡素化を実現します。また、AWSリソースの正確なコスト見積もりを提供し、予算の最適化と情報に基づいた意思決定を支援します。さらに、DevGeniusはAWS Well-Architectedのベストプラクティスに準拠し、ソリューションが効率的かつコスト効果的であるだけでなく、安全で信頼性が高く、運用面でも優れていることを保証します。
AWS の経験豊富なプロフェッショナルであっても、クラウドジャーニーを始めたばかりであっても、DevGeniusは堅牢でスケーラブルかつ革新的なAWSソリューションを構築するためのツールです。
[免責事項]
- AI生成コンテンツ: DevGeniusアプリは、Bedrock経由のClaudeを使用して応答を生成します。正確性を追求していますが、提供される情報が常に完全、最新、またはエラーフリーであるとは限りません。
- 専門的なアドバイスの代替品ではありません: DevGeniusによって生成される応答は、専門的、法的、医学的、財務的、または専門家のアドバイスとして考慮されるべきではありません。これらの分野での具体的なガイダンスについては、常に資格のある専門家にご相談ください。
- 潜在的なバイアス: バイアスを最小限に抑える最善の努力をしているにもかかわらず、AIはトレーニングデータやアルゴリズム設計に存在するバイアスを無意識に反映する可能性があります。
- プライバシーとデータ使用: DevGeniusとのユーザーインタラクションは、改善目的でログ記録および分析される場合があります。
- 可用性やパフォーマンスの保証なし: チャットボットへの中断のないアクセスやエラーフリーの動作は保証されません。
- 責任の免責: AWSは、DevGeniusが提供する情報の使用または依存から生じる損害や損失について責任を負いません。
- ユーザーの責任: ユーザーは、特定のニーズや状況に対するDevGeniusの応答の適切性と正確性を評価する責任があります。
- 知的財産:チャットボットの応答は、知的財産権を侵害するために使用されてはなりません。
- 免責事項の更新:この免責事項は定期的に更新される場合があります。変更について定期的にご確認ください。
- 提供されるソリューションは、一般的なアーキテクチャパターンに基づく推奨事項です
- 生成されたすべてのコードは、デプロイメント前にレビューする必要があります
- ソリューションを実装する前に、コストへの影響を評価する必要があります
- このツールはアーキテクチャ設計を支援することを目的としていますが、適切な計画とテストに取って代わるものではありません
このDevGeniusを使用することにより、この免責事項を読み、理解し、同意したことを認めるものとします。
チャットでは Build a solution
と Modify your exisiting architecture
の2つのモードがあるようです。
まず初めに Build a solution
のモードを試してみます。
Build a solution
では チャット形式で要件を入力することでソリューション設計が出来そうです。
裏ではClaudeのAPIを使用しているので大丈夫だとは思っていましたが、日本語でのチャットも可能です。
Web 3 層 アーキテクチャ作成について相談してみたいと思います。
相談すると以下のようにソリューション生成のために必要な要件をヒアリングされます。
(プリセールスをされている気分)
最終的には以下のような情報が提供されます。
- Cost Estimates
- Architecture diagram
- CDK code
- CloudFormation code
- Techinical documentation
Cost Estimates
まずはCost Estimatesを見てみたいと思います。
(このタイミングでセッションを更新してしまい、さきほどのやりとりと多少違う出力になっている部分はご了承ください)
Check this box to get the cost estimates
を ✅ すると以下のようなコスト見積もりが表示されます。
さきほどDevGeniusが提示してくれたAWSソリューションをベースに料金を見積もってくれています。
また、 Download artifacts
から今までのプロンプトの内容とコスト見積もりの内容をmarkdown形式でダウンロードすることができます。
プロンプト内容
Cost Estimates
DevGeniusの出力した料金を一部こちらでも計算してみましたが、単価がusリージョンベースではあるものの算出額は大きくずれておらず、まずは全体の費用感をつかむのに十分活用できるかなと思いました。
サービス名 | 構成 | 単価 | DevGenius | AWS Pricing Calculator |
---|---|---|---|---|
Amazon Aurora | マルチAZ構成、db.r6g.large、100GB ストレージ | USD 0.29/時間 (インスタンス) + USD 0.10/GB-月 (ストレージ) | USD 218.80 | USD 259.37 |
Amazon ECS (Fargate) | 4タスク、1 vCPU、2GB RAM、24/7稼働 | USD 0.04048/vCPU時間 + USD 0.004445/GB時間 | USD 129.92 | USD 179.94 |
Application Load Balancer | 2 ALB (東京・大阪)、24/7稼働 | USD 0.0225/時間 + USD 0.008/LCU時間 | USD 67.48 | USD 58.84 |
Architecture diagram
以前、生成AIでAWS構成図を作成させる試みをしましたが、DevGeniusのArchitecture diagramでは同様にdraw.io形式でAWS構成図を作成できるようです!
さきほどと同様にチェックボックスを ✅ すると、以下のようなアーキテクチャ図が生成されます。
作成された構成図はこちら
こちらもxmlでファイルをダウンロードすることができるので、DevGeniusで概要を作成させて手元で修正することもできます。
Architecture diagram
CDK code
また、CDKやCloudFormationのコードの生成も行ってくれるようです。
CDKはプロジェクト構造ごとに作成するべきファイルを生成してくれます。
CDK code
実際にファイルを配置してみると aws-cdk-lib
が 2.80.0
と古かったり、インポートまわりでエラーが出ているので修正は必要そうです。
CloudFormation code
同じくCloudFormationのコードを生成してみます。
CloudFormationはそのまま Launch Stack
でデプロイできるようになっていました!
CloudFormation code
Launch Stack
をクリックするとDevGeniusが生成したテンプレートを配置しているS3バケットを指定してデプロイを実施するようです。
特に手を加えずにデプロイすると、以下のようにAurora MySQLのバージョンが古いなどでデプロイに失敗しているのでこの辺りは手動で修正する必要がありますね。
Techinical documentation
最後は Techinical documentation です。個人的に一番面白いと思ったのはこの Techinical documentation です。
私もこういったアーキテクチャの仕様書を作るケースは多々あり、思いの外時間のかかる作業のため生成AIで自動で仕様書を作る試みは面白いなと思いました。
現場ではさらにパラメータシートという形式で作成するケースが多いので、この辺りはシステムプロンプトを工夫することでより良い仕様書を作成できるかもしれませんね。
Techinical documentation
DevGeniusを触ってみる - Modify your exisiting architecture
もう一つのモード Modify your exisiting architecture
では画像をベースに、さきほどご紹介したコスト分析 / アーキテクチャ作成 / コード生成 / 技術仕様書 を作成をしてくれます。
GitHubのデモでは以下のような手書きの図からアーキテクチャを作成していました。
まずはアイディアを簡単なポンチ絵で作成してDevGeniusを利用してより精度の高いアーキテクチャするなどの使い方に活用できそうですね!
最後に
今回はAWSソリューションジェネレーターのDevGeniusを触ってみました。
生成AIを活用したソリューションツールの1つのゴールのような形が見えた気がしました。
まだまだ、ソリューションの構築をすぐに実行できるような段階ではないですが、生成AIの進化を見る限り遠い未来ではないように感じました。
(デフォルトがClaude 3.5 Sonnetなので、Claude 4にすることでより精度があがるかも...?)
このDevGeniusの実装から学ぶことは多く、生成AIモデルやナレッジベースのソース情報やシステムプロンプトを調整することで組織に合わせたソリューションツールを作成できると思います。
生成AIソリューションツールを検討する際にはぜひ参考にしていただければと思います。
この記事が誰かのお役に立てれば幸いです。
以上、たかやま(@nyan_kotaroo)でした。