【レポート】VISION-S プロジェクト:ソニーのモビリティに対する取り組みを聞いてSONYから生まれた新たな車両でモビリティの未来を感じてみませんか? #AWSSummit
みなさんどうも、新卒エンジニアのたいがーです?
ソニーという社名を聞いて、みなさんは何をイメージしますか?
"オーディオに強い!プレイステーション!"パッと思いついただけだと、私はこのようなイメージでした。
さて、皆さんの中に"車"のイメージがある方はいらっしゃいましたでしょうか?CES2020で知っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回はソニーが新たに始めたプロジェクト "VISON-S"に関するセッション、”VISION-S プロジェクト:ソニーのモビリティに対する取り組み”のセッションレポートを書いていきます。
セッション動画はこちらからご覧ください。
スピーカー
ソニー株式会社 AI ロボティクスビジネスグループ 執行役員 川西 泉 氏
CES2020で発表されたVISION-S プロジェクト
CES2020では、実際に走行可能なプロトタイプである車両が最初の試作車として公開された。
SONYが車を作る?!と非常に話題になった。
今回の試作車は、単なるコンセプトモックではなく、走行可能な車両として"クオリティ"、"リアリティ"、"完成度"にこだわり、一から開発された。
何故、SONYが本気の車両を作ることになったのか
かつて携帯電話業界において、携帯端末会社や通信会社は独自のプラットフォームとアプリケーションを搭載した携帯電話を販売し、固有のサービスを提供していた。
しかし"スマートフォン"の登場によって、その社会環境は大きく変化した。
プラットフォーマーにより、規格化されたハードウェア、OS、ソフトウェア、その上で動作する膨大なアプリケーションによって、人々は多様な情報、サービスに手軽にアクセスできるようになり、人々のライフスタイルも携帯電話メーカーの立ち位置も大きく変わっていった。
携帯電話業界は従来のものづくり的な垂直統合型のモデルから、IT業界の水平分業のモデルに変化したことにより、メーカーの勢力図が激変した。
一方、自動車業界は、"ケース"と呼ばれる100年に一度の変革期が訪れている。 以下の新規サービスの出現などにより、今までのハードウェアとしての車の位置付けが大きく変わろうとしているからだ。
- EV(電気自動車)の登場
- 自動運転技術
- クラウドやネットワークへの接続
- カーシェアリング
この2つの業界の流れから、モバイルに続くメガトレンドはモビリティではないのか。今後10年の変革の1つの要素として、モビリティは大きな役割を果たすだろう。
"従来のモビリティの進化"に向けて、ソニーはどんなことができるのか、もっと深く探索すべきではないか、というところから"VISION-S"プロジェクトが誕生した。
元々持っている技術を活かしつつ、安全を守った上で新しい感動体験を提供したい
コンシューマーエレクトロニクス商品、センシングデバイス、ゲーム、コンテンツなど、ソニーはいろいろな商品、サービス、技術を持っている。
これらのベースとなるテクノロジーを組み合わせることによって、モビリティという移動空間における新しいユーザー体験を提供できたらと考えられている。
安心・安全は保証した上で感動体験を届ける
ユーザー体験の中で最も大切なのは安心・安全だ。車にとって、セーフティは最も重要な機能であり、将来の自動運転に向けてもセンシングデバイスは重要な役割を果たすのではないだろうか。
その大前提の上で、ユーザーがエンターテイメントを楽しめる空間、リラックスできる移動空間を実現していきたい。元々オーディオビジュアルに強みがあるため、この領域に関しては、新しい感動体験を提供できると考えている。
車とIT技術を融合し、ソフトウェアを起点に車をデザインする
安全基準や法規制を守らなければ、公道を走ることはできない。高度な安全性を保ちつつ、ソニーらしい移動空間をいかに作り出せるかを深く話し合ってきた。
VISON-Sの開発の中で、IT業界のような"スピード感"と自動車に必要とされる"安全品質の実現”を両立することを目指してきた。
昨今自動車を構成する技術は高度化、複雑化している。ECU(Engine control Unit)の数も80個ほどある。ハードウェアの依存関係も深く絡み合っている。
しかし、半導体の集積化が進み、パフォーマンスの高いSoCを採用することで、ハードウェア構成をシンプル化し、ソフトウェアによって実現できる部分が増えてきた。
ソフトウェアのレイヤーがコード化すると、実装の自由度が増し、ネットワークへの接続も容易になる。クラウドとのコネクティビティを確保することで、ソフトウェアのアップデートも可能になり、購入後も進化を続けていくことができる。
これこそ、車とIT技術の融合であり、従来と異なるアプローチでソフトウェアを起点に車をデザインしてみたいという考えに至った。
しかし、ソニーのエンジニアにとって車の設計の経験は皆無に等しかった。そのため、自動車の設計プロセスなど学ぶ必要があった。
そのため2年前の春、実際に様々なメーカーの車を委託生産している、ヨーロッパのマグナ・シュタイヤー社に訪問した。自分たちのビジョンを共有、そのビジョンを実現するために、サポートを得て、新しいEVプラットフォームの開発を始めた。
VISION-S プラットフォーム
VISION-Sはバッテリー駆動の電気自動車であるため、下回りの車体についてはEV-Platformとして設計された。
EVの車種は、モーターとバッテリーなどの動力系統と、スペアリング、サスペンション、ブレーキなどの操舵系統で構成されている。
これをPlatformとして構築することで、今回のスポーティなクーペースタイル以外の車種でも適応できるようになっている。
ちなみにホイールベースは3000mm、エンジン、トランスミッションがない分、バッテリーをインキャビンのフロアに配置し、十分な車室内空間を実現している。
また、車載ソフトウェアとクラウドを統合したソフトウェアスタックを構築している。
ドライバーとの接点となるユーザーインターフェースやエンターテイメントコンテンツの配信、車を継続的に進化するためのシステムアップデート機能、クラウド上のAI、システムセキュリティなど様々なソフトウェア機能を準備している。
現時点ではLTネットワークで接続されているが、5Gへの対応を進めている。
スタイリング
デザインプロトタイプはソニーデザインによるもの。
これからのモビリティ社会のあり方、ソニーが繰り出す車はどうあるべきかを考え、コンセプトからエクステリア、インテリア、UXやUI、ボディカラーやマテリアル、コミュニケーションデザインに至るまで、デザインされた。
ソニーの商品の中で、これだけの体積、質量のものはそうそうなく、デザイン、スタイリングの全体感を掴むのも大変だった。
細部までデザインにこだわりに持ちながらも、安全性や各国のレギュレーション、法規制や衝突安全を満たさなければならないため、制約が大きかった。
走行可能な車両にするため、より現実的でリアリティのあるデザインが求められ、その中でソニーらしいデザインにできるかギリギリまで粘った。
車の全貌やデザインはこちらの動画がすごく分かり易かったので、よろしければこちらもご覧ください?
Design Concept - OVAL
OVAL:包み込む楕円をモチーフにしており、3つのOVAL(楕円)によって人を包み込むと定義。
- 1つ目のOVALは乗員を直接包み込む広い車室空間
- 2つ目のOVALは車外環境の安全を360度チェックするセンシング
- 3つ目のOVALは社会と車と常につながり、情報とエンターテイメントがビジョンへと包む社会全体
"乗る人を中心として、幾重ものOVALが人を包み込む"というコンセプトがデザインの基本になっている。
OVAL - Brand Identity
オーナーが車に近づくと、DRL(Daytime Running Lamp)にブランドロゴが点灯し、アニメーションしながら点灯する。ボディサイドからテールライトへ巡り、さらにインテリア内部へ続き、人を車の中へと迎え入れます。
OVAL - Interior Design
エンターテイメント演出には、フロントに水平基調で広がるパノラミックスクリーンを配置し、乗員を情報で包み込む。
360リアリティオーディオにより、アーティストが車を取り囲んで演奏しているかのような臨場感を演出。
また、各シートの首元にスピーカーが内蔵されており、それぞれの乗員がパーソナルな音の世界に没入することが可能。
VISON-S の 3つのコンセプト
- SAFETY
- モビリティにおいて、最も大切なのは人の安全・安心であり、ソニーのイメージセンシング技術を活用してこれらを実現。
- ENTERTAINMENT
- ソニーが長年培ってきたオーディオ/ビジュアルの技術により、車内に新たな感動空間を作り出す。
- ADAPTABILITY
- クラウドやAI、ネットワーク技術を活用することで、人に寄り添うモビリティの継続的な進化、機能のパーソナライズだけではなく、社会問題や環境問題への適応していくという大きな視点も入れている
Safety
Safety Cocoon
自動運転の快適さというものは、根幹を安心・安全が支える。日常の様々なシーンで360度を見張りつつ、乗る人や周囲に安心をもたらすことを目指している。
ソニーの車載向けイメージセンサーを中心に、合計33台のセンサーを社内外に搭載。自動運転++相当を目指して開発中であり、将来的にはアップデートにより特定の場所において自動車に運転を任せることができることへの発展を見据えている。
車内モニタリング ToFカメラ
ToFはTime of Flightの略。物体との距離を測ることができる。
顔認証機能を使用し、ドライバーごとの最適なドライビング環境やハンドジェスチャーを認識し、視線を動かさずに各種機能が呼び出せるようにする予定である。
ENTERTAINMENT
VISION-Sでは、360 REALITY AUDIOを搭載。
オブジェクトベースの空間音響技術を活用し、ボーカルや楽器などのパートごとの音源データに位置情報を追加し、仮想的な球場の空間に配置。
再生時には、それぞれの音が各方向から鳴り響くことで、臨場感を体験することができる。
またタッチパネルになっている、パノラミックスクリーンを配置されている。
車内のUXは先ほどの"OVAL"の概念が活きている。
全てが水平方向に配置され、線移動を最小限に治めるように配置されている。
サイドミラーはカメラが表示され、パノラミックスクリーンに表示されるようになっている。
車内は、これまでソニーが培ってきた技術が活かしやすい場となっている。
その中核となるSoCには、Qualcomm Snapdragonを使用。
メーターなどのクラスタ表示はOSにはQNXを使用、センターと右側のアプリケーションはAndroidで開発。それぞれをHypervisorで仮想化している。この辺りはスマートフォン技術を活かしている。
ADAPTABILITY
車の構造がIT化していくということは、電気部品の増加やソフトウェアの比重が高まってくるということを意味している。
ソフトウェアによって車を再定義すると、ネットワークやクラウドの重要性が増していく。
VICION-Sはユーザーに寄り添いながら成長することを目指している。
持続可能な社会を目指すという意味のサスティナティビティも含んでいる。
進化、成長するシステム
5Gは車載用の普及はもう少し時間がかかるかもしれないが、実験を進めている。
Cloudでは様々な走行データを学習し、ユーザー体験の向上を図る。
OTAではソフトウェアのアップデートを行い、継続的な進化につなげる。
SensingではADASや自動運転の学習をエッジだけでなくクラウドに関しても行う。
Securityでは車のIT化が進むとハッキングなどが顕著化されるだろう。ユーザー認証やドアロックも含め、セキュリティを向上させ、この辺りもプラットフォーム化していく。
VISION-SにおけるAWS クラウド
VISION-S クラウドにおいて、データ分析、AI学習、ユーザー管理、車両管理などの基本基盤をAWS上で構成している。
証明書の管理や車両デバイス認証はAWS IoTを使用。
ADASやHMIからの情報、その他のキャンのデータの更新、クラウド側での車両挙動を把握する処理においてはAmazon Kinesisを利用している。現状ではある程度の遅延を許容する利用だが、ミリ秒単位での低遅延も視野に入れ、リアルタイム性能も視野に入れて行きたい。
また、車-クラウド-アプリのデータ操作や同期にはAWS AppSyncを使用。AWS AppSyncはaiboをはじめとする他のロボティクス商品で採用されており、一部のクライアントソフトウェアはソニーで開発しており、GitHub上で公開されている。
データ集計・分析・BIはAmazon Redshiftを利用している。
このように、AWSのマネージドサービスがフルに活用されている。
VISION-S 今後の取り組み
ソニーはモビリティのIT化を推進。移動空間における新しいユーザー体験が広がる。モビリティの安心安全の追求に終わりはない。センサーから情報を取得し、学習することで、ADAS、自動運転の進化に貢献していく。と、同時に車内空間をユーザーの好みに合わせたリラックスできるエンターテイメント空間へ変えていく。環境問題低減に向けた社会活動も行っていく。
当面の目標は、今年度中に公道で走行をできるようにし、テスト走行を始めることだ。
こちらは、実際に東京のソニー本社に試作車を運んできたときの映像だ。
モビリティの進化は自動車というハードウェアの変化にとどまらず、人々のライフスタイルや社会の在り方も変えていく力を持つ。
モビリティはEV化、サービス化、グリッド化の流れを加速することで、環境へのポジティブなインパクトをもたらすという点において影響力はモバイルよりも大きいのではないかと考えている。
コロナウイルスの影響で新しい生活スタイルが求められる中、移動求められる価値は変わるかもしれない。
これからの移動の価値を見つめ直し、高めることを目指していく。
移動にどのような感動をもたらすことができるか、いかにより良い安心安全を提供できるか、より豊かな社会環境につなげられるか、クリエイティビティとテクノロジーの力で新たなモビリティの世界を切り開いていきたい。
感想
ついに自動運転も実現に近づいてきたのかと、とてもワクワクしました。今回、ソニーという様々な分野で活躍している企業ならではの強みを総動員されたのだなと感じられました。
個人的に360 REAL AUDIOを体感してみたいです。パート分けされた音源が各方向から聞こえる、凄すぎませんか・・・?ただの移動手段としての車から、本当に"エンターテイメントの場"としての車に見られるようになってきたのだなと実感の湧くセッションでした。
またプラットフォームとして提供されるため、今回のスポーツカーでの形以外でも活用できるという点もとても興味深かったです。
発売されたら、ぜひ一度は乗ってみたいです!!!以上、たいがーでした?