【レポート】AI/ML を活用し、害虫・ネズミと戦う IoT ソリューション ~害虫駆除業界のゲームチェンジャー~ #AWSSummit
こんにちは、青柳@福岡オフィスです。
AWS Summit Osaka 2019 のセッションレポートをお送りします。
セッション情報
- セッションタイトル
- AI/ML を活用し、害虫・ネズミと戦う IoT ソリューション ~害虫駆除業界のゲームチェンジャー~
- スピーカー (敬称略)
- 環境機器株式会社 経営企画部 副部長 亀本 達也 氏
- 株式会社アジャイルウェア プロダクトマネージャー 平川 隆二 氏
- 株式会社アジャイルウェア エンジニア Kevin Fischer 氏
- セッション概要
防虫コンサルティング商社の環境機器株式会社は、害虫駆除業界において AI/IoT 技術を活用した新サービスを開発、サーバーレスアーキテクチャで構築したシステム「ペストビジョン」を実用化。害虫・ネズミの生息調査業務の自動化・遠隔監視化により、問題発生時の早期発見・早期解決が可能、害虫駆除サービスを受ける側とのデータ共有も可能になる等、防虫管理の品質向上と大幅な省力化を実現。今回は、昨年秋の AWS Solution Days での発表から、よりテクニカル部分にフォーカスする。
レポート
環境機器株式会社 亀本氏: 会社、業務の紹介
- 会社スローガン
- 害虫駆除の仕組みをITで変える!
- 害虫防除業界のビジネスにイノベーションを!!
- アジェンダ
- 会社紹介
- 害虫駆除業界とモニタリングの課題
- ペストビジョン紹介
- アーキテクチャ
- まとめ
会社紹介
- 環境機器株式会社
- 害虫駆除を行う業者向けに、資材や薬剤などを販売する (B2B)
- ITとは全く無縁の企業
- ITでビジネスの在り方を変えていきたい
- 害虫・害獣駆除/予防
- 一般には「ペストコントロール」と呼ばれる業務
- 一般家庭における害虫駆除
- 飲食店などの小型店舗の害虫駆除
- 公共施設や大型工場等における害虫防除: 昆虫などの異物混入リスクを低減
- 昆虫媒介の感染病対策: 蚊(マラリア)、マダニなど
- 外来種害虫の侵入防除: ヒアリ、セアカゴケグモなど
- 本セッションでは3にフォーカス
- 一般には「ペストコントロール」と呼ばれる業務
害虫駆除業界とモニタリングの課題
- 害虫駆除業務における「モニタリング」とは?
- 対象施設における、害虫・害獣の定期生息調査のこと
- モニタリング業務
- 各種トラップの設置&回収 (誘虫ランプや粘着シートなどを使用)
- 捕虫紙検定 (捕獲した虫の種類、数を検定する)
- 報告書提出 (結果と対処策の提示)
- ネズミなどの活動を確認するためにビデオ録画・解析なども行う
- モニタリング業務の問題点
- より精度が求められ、設置するモニタリングトラップが増加傾向
- 虫の多い夏場の同定(種類の識別)に時間がかかる
- モニタリング頻度が不十分 (リアルタイムでない)
- 技術者の確保が困難
ペストビジョン紹介
- 問題点をITで解決「ペストビジョン」
- IoT技術をフル活用した遠隔モニタリング
- 人工知能(AI)による害虫のカウント・同定、独自プログラムによるネズミの活動検出
- モニタリング結果が時系列にデータベース化される
- モニタリング結果を共有可能 (害虫駆除業者、品質管理者)
- ペストビジョンのビデオ紹介
- 画像から虫の種類・数を自動判別する様子
- 24時間録画された動画を解析して、ネズミが発生した時間帯だけを切り出す
- ネズミが隙間から顔の一部だけを出しているような場面でも、ネズミだと判定することができる
- 当社がAWSを採用した理由
- AWSを使えるベンダーが多い
- 充実したマネージドサービス (やりたいことを実現するためのサービスがだいたい揃う)
- グローバル展開を視野に
- サーバーレスアーキテクチャの実現 (インフラエンジニア、保守作業が不要)
株式会社アジャイルウェア 平川氏: アーキテクチャ解説
システム概要
- 解析システム
- センサーからの入力をサーバーレスアーキテクチャ(API Gateway、Lambda、DynamoDB、S3)で処理
- バックエンドはEC2(解析エンジンが動作)
- 利用者向けサイト
- Vue.jsによるSPA(Single Page Application)で構築: CloudFront、S3
各コンポーネントの説明
- CloudFrontによるコンテンツ配信
- 月間30万リクエストを滞りなく処理
- Lambdaによるサーバーレスアーキテクチャ
- Serverless Frameworkを採用
- 採用の理由
- ツール群の充実
- 設定ファイルのみでAWSリソースを定義できる
- デプロイまでを開発者ベースで一気通貫で行える
- Serverless Framework
- 設定ファイルによるAWSリソース定義
- 現在は設定ファイルが1000行を超えている
- メンテナンス性、可読性に問題 → リファクタリング中
株式会社アジャイルウェア Fischer氏: 技術詳細解説
課題と解決策
- CloudFrontとLambdaにより高可用でスケーラブルなシステムを実現したが、技術的な課題が発生
- API Gatewayの6MBの壁
- 解析エンジン(EC2)の「過労死」
- API Gatewayの6MBの壁
- 当初: センサーから静止画・動画のデータをAPI Gateway経由で受け取っていた
- 改善後: S3への署名付きアップロードを使用することで大容量データがAPI Gatewayを通らないようにした
- まず、センサーは送信リクエストをAPI Gateway→Lambda(リクエスト処理用)へ送る
- LambdaはS3の署名付きアップロードURLを返す
- センサーは返されたURL(S3)に対してデータ本体を送る
- S3格納をトリガにLambda(データ処理用)が実行される
- 解析エンジンの過労死
- 当初: EC2に対して直接処理要求、解析エンジンの限界値を超えても処理が投げられる
- 改善後: SQSによるキューイングにより解決
サーバレスアーキテクチャへのパラダイムシフト
- 従来のEC2上で動作するアプリケーション
- 例: オブジェクト指向で設計、Ruby Railsなどで実装
- コードベースの肥大化、密結合
- サーバーレス(FaaS)
- 従来の設計・実装の考え方は、サーバーレスでは「アンチパターン」
- SNSを使ったメッセージングモデル、分散システム化
- これからの課題
- モノリシックなデプロイパッケージ(40MB)をどうするか
- コードベースの分割、デプロイ方法の改善 (Lambda Layersなど)
株式会社アジャイルウェア 平川氏: 今後の取り組み
- SageMaker
- EC2の解析エンジンをSageMakerへ移行
- SageMakerを利用することで、学習~デプロイまでのスパンを短くする
- より高精度なAIを、より簡単に実装可能にし、サービス品質を向上する
- IoT Greengrass
- エッジ側でのコンピューティングを行う
- 現在はAWSと常に接続された環境が必要 → 通信環境が不安定な状況でもサービスを継続したい
- 推論をエッジ側で行うことでクラウド側と通信するデータを圧縮する
- より安定したサービス提供を可能とする
感想
IoTとAIを組み合わせて現場の問題を解決するソリューションの実例を聞くことができ、これからのIoTとAIの重要性を改めて感じました。
また、サーバーレスアーキテクチャの開発における問題やその解決手法について、実際にシステム開発されている方の解説を聞くことができ、大変勉強になりました。