
【セッションレポート】コールセンターだけじゃない!エネルギー業界に学ぶ、Amazon Connect の活用パターン(AWS-34) #AWSSummit
はじめに
AWS Summit Japan 2025 に参加しました。
「コールセンターだけじゃない!エネルギー業界に学ぶ、Amazon Connect の活用パターン」のセッションレポートです。
セッション概要
Amazon Connect は手軽にスケーラブルなクラウドコンタクトセンターを構築できるサービスですが、実はエネルギー業界の様々な業務局面での活用が可能です。本セッションでは、AI 活用によりエージェントの生産性を最大限に引き出す仕掛けや、突発的な災害時の迅速な受付、遠隔地の設備拠点で生じたトラブルをトリガーにしたオンコール対応、電力容量市場でのデマンドレスポンスへの迅速な応動手段としての利用など、通常の「コールセンター」とはちょっと違った使いこなしパターンをご紹介します。他の製造業やインフラ事業者様にも応用可能な、運用現場の DX 推進に向けた知見にご期待ください。
セッションスピーカー: 橋井 雄介 氏
所属:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
エンタープライズ技術本部 エネルギー&ユーティリティ部 ソリューションアーキテクト
セッションレポート
- 本日のゴール
- エネルギー業界でのConnect活用ユースケースを通じて、Connectが幅広い業務に応用可能
- 対象者
- Connectを利用することに興味がある方
- Connectの深い前提知識は不要
アジェンダ
- 背景
- Connectの概要
- エネルギー業界におけるユースケース4例
- まとめ
- 関連ブース
背景
エネルギーサービスの特徴3つ
- ライフライン
- 素早い復旧が必要
- 物理的な設備
- 多数のヒトモノ
- 発電所などの設備
- 多数のヒトモノ
- ユニバーサル
- 幅広い顧客に対応
素早く誰でも使える連絡先として、電話が広く利用されている。
- 方式:音声会話
- すぐに応答を得られる
- 経路:電話回線
- ユニバーサルサービス
Amazon.comのカスタマーサービスでは10万名のエージェントが利用している。
Connectの概要
Amazon Connectは、Amazon.comのカスタマーサービスから生まれたクラウドベースのコンタクトセンター。
- お客様の利用に応じた従量制料金
- AWSのLambdaなどと連携可能
- 利用者が増えてもインフラの保守不要
- エネルギー業界のお客様も利用している
エネルギー業界におけるユースケース4例
ユースケース
- 顧客向けコールセンター
- 災害時の電話急増への対応
- 契約手続き時の自動チェック
- 社内でのオペレーション
- 設備事故情報の速やかな通知
- オンコール対応時の確実なアサイン
災害時の電話急増への対応
- 災害に伴う停電で一時的に多くの電話が集中
- 短期間に電話受付キャパシティを増やす必要がある
- 課題
- 電話回線数をオーバーし電話が繋がらない可能性がある
- 日常的に増やすとコストが上がる
- 解決策
- Connectは通話数に応じて自動でリソースを増やす
- 既存のコールセンターからConnectに転送しておくことも可能
- 既存のコールセンターとConnectに振り分けることも可能
- Tips1 電話回線の混雑対策
- Web通話機能を利用することでインターネット回線で通話可能
- 通話を受けるエージェントは電話と同じようにWeb通話を利用可能
- Tips2 同時呼び出し数の引き上げ
- 同時呼び出し数はデフォルト10通話のため、引き上げを行う
契約手続き時の自動チェック
- 電話で受付の場合、名前や住所を忘れずにチェックしつつ、お客様に対応する必要がある
- 課題
- 電話対応しながら、チェックリストを確認するため、電話対応に集中できない。
- 応答時間の増加、応答品質の低下
- 生成AIを利用することで、通話内容をAIが分析し、PC画面にチェックリストを表示可能
- アーキテクチャ
- ConnectからKinesis Data Streamsに文字起こし内容などの通話記録が送信される。
- Kinesis Data StreamsからLambdaとBedrock、DynamoDBを利用する
- DynamoDBに通話文字起こしとチェック結果を保存する
- DynamoDBのチェック結果をPCに表示させる
- アーキテクチャ
- Tips3 アーキテクチャの注意点(生成AI呼び出しコストの節約)
- 対策1:Lambdaバッチウインドウを使用する。ウィンドウ期間を30秒に設定するなど
- 対策2:Bedrockの使用するLLMモデルを低コストモデルに変更する
- Tips4
- ビルドインされた生成AI機能の活用
- Contact Lens
- 会話内容の要約
- エージェントのパフォーマンス評価
- Q in Connect
- エージェント支援
- Q in Connectによる顧客課題の自動検知が可能。解決策を自動提示可能。資料リンクも表示可能
- Contact Lens
- ビルドインされた生成AI機能の活用
設備事故情報の速やかな通知
- エネルギーインフラで事故発生
- 関係者に情報発信し、迅速に対応してもらう
- 課題
- メールやチャットでは気付かない可能性がある
- 電話は、管理者に負担となる。
- 解決策
- 自動音声で各担当者に電話通知する
- アーキテクチャ
- 事故情報のドキュメントを作成し、Lambdaを呼び出し、Connectで自動発信する
- DynamoDBで関連拠点の担当者を保存。電話番号と氏名
- SQSに渡して、Lambdaを呼び出す
- 事故情報のドキュメントを作成し、Lambdaを呼び出し、Connectで自動発信する
- Tips5 同時実行数を制御した発信の実施
- 1秒間に2回までしかデフォルトで発信できない。
- SQSで1秒間に1回発信させるように制御する
オンコール対応時の確実なアサイン
- 猛暑によって、電力不足が発生し電力需給が逼迫
- 担当者を確実に決定し、追加の電力を供給させる必要がある。
- 課題
- 電力の逼迫状況を常に監視する必要
- 担当者に電話が繋がらない
- 解決策
- 電力の逼迫状況を常に監視
- オンコール担当者に順次電話しアサイン
- アーキテクチャ
- 電力の逼迫状況を常に監視
- EventBridge SchedulerでLambdaを定期的に呼び出し、監視する
- オンコール担当者に順次電話しアサイン
- 事前にオンコールリストをDynamoDBに保存しておき、Lambdaを呼び出し、オンコールリストを取得し、電話が繋がるまで発信する。
- IVRで対応可能か確認する
- DynamoDBには、対応結果も保存する。
- 事前にオンコールリストをDynamoDBに保存しておき、Lambdaを呼び出し、オンコールリストを取得し、電話が繋がるまで発信する。
- 電力の逼迫状況を常に監視
- Tips6 担当者を確実にアサイン
- コンタクトフローでは以下を容易に設定可能
- 担当者の名前を動的にアナウンス可能
- IVRで分岐させる。対応可能なのか、対応不可なのか。
- Lambdaを呼び出し、DynamoDBに対応結果テーブルへ書き込む
- コンタクトフローでは以下を容易に設定可能
まとめ
- エネルギーサービスの世界では、「素早く、誰でも使える」電話は広く利用されている
- Connectはエネルギー業界で様々な業務で活用できる
- 災害時の電話急増への対応
- 契約手続き時の自動チェック
- 設備事故情報の速やかな通知
- オンコール対応時の確実なアサイン
- Connectの特徴
- スケーラビリティ
- 生成AIの活用
- 他のサービスとの連携(APIによる自動発信やDBへの書き込み)
感想
Amazon Connectがエネルギー業界で従来のコールセンターの枠を超えて活用されている事例が非常に興味深く、特に災害時の自動スケーリングや設備事故時の自動通知など、インフラ事業ならではの課題解決に効果的に使われている点が印象的でした。
生成AIとの組み合わせによる契約手続きの自動チェックや、Q in Connectによるエージェント支援など、最新技術を活用した業務効率化の取り組みも参考になります。
オンコール対応での確実なアサイン機能は、電力逼迫時などの緊急事態に対する堅牢性を高める重要な仕組みだと感じました。
AWSの他サービス(Lambda、DynamoDB、SQSなど)との連携によるシステム構築の柔軟性も魅力的で、他の業界にも応用できる知見が豊富に含まれていると思います。
エネルギー業界のDX推進において、電話というユニバーサルなインターフェースを活かしつつ、Connect利用した事例として非常に学びの多いセッションでした。