#awssummit AWS Summit Tokyo 2014 参加レポート Day 1 [EA-04] [オリックス・バファローズの挑戦!AWSを活用したファンビジネスのご紹介]
ウィスキー、シガー、パイプをこよなく愛する大栗です。先日開催されたAWS Summit Tokyo 2014に参加してきました。参加した中で興味を引いたオリックス・バファローズの事例についてレポートを書きたいと思います。
セッション概要
開催日時:2014年7月18日 16:20 - 17:00
西投手や糸井選手などの活躍が期待されるオリックス・バファローズ。
球団では、3万人を超えるファンクラブ会員のチケット購入や試合への来場などのファンの行動に関するデータ分析を行い、それぞれの嗜好にあったサービスを提供するOne to Oneマーケティングを実現しています。日立ソリューションズが提供する「ファンビジネス向けトータルCRMソリューション」を採用し、2012年稼働開始以降、順調にファンクラブの会員数は増加しております。オリックス球団がO2Oマーケティングによりどのようにお客様をバファローズファンに醸成するか、その秘策をご紹介します。
講師
- 湊 通夫 氏(オリックス野球クラブ株式会社 専務取締役 事業本部長)
- 藤原 英哉 氏(株式会社日立ソリューションズ 産業・流通ソリューション事業部 サービス・インテグレーション本部第2部 主任技師)
オリックス・バファローズの取り組み
まずオリック・バファローズの取り組みについて、湊氏から紹介がありました。
オリックス・バファローズでは以下の様な課題が有り 2011年10月からCRMの導入プロジェクトを開始したそうです。
- コアファン・ライトファンの行動履歴がほとんど把握できていない。
- 既存ファンに新たなファンを連れてきてもらいたいがファンの愛着を高めるツールがない。
以前はチケット部門、ファンクラブ、宣伝等がそれぞれ独立して施策を行っており、対応する各システムも連携をしていなかったようです。それを解消するため、データに基づくPDCAサイクルを回し「CRMは経営戦略」としてポイント制度を軸とした、ファン活性化システムを構築する事になったそうです。
パ・リーグでは遅い方の取り組みだったそうですが、その遅れのおかげで以前のようにフルスクラッチではなく、クラウドを活用したサービスを導入する事ができ初期投資をおさえ、システム拡張にも対応する事が可能になったそうです。 そこで導入したサービスが、日立ソリューションズの「ファンビジネス向けトータルCRMソリューション」サービスでした。 下の方に「FLP -FanLifePlatform-」と書いています。サービスのWebサイトのURLにも「flp」とありますのでコードネームでしょうか。
「ファンビジネス向けトータルCRMソリューション」を活用し様々な施策を実施する事で、「前年同期と比べて、動員数120% ファンクラブ会員137%を記録」したそうです。
2013年度のファンクラブ会員情報29,000人分について、様々な角度から分析を行ったようです。 データの見える化、クラスタ分析、仮説検証、予測分析等の分析手法を行っているようです。本セッションでは以下の分析について紹介していました。
- 購入金額による会員ランキング
- 球場の違い(商圏の見える化)
- 来場×チケット購入からみた会員セグメント
- 来場回数×ポイントからみた会員セグメント
「ファンビジネス向けトータルCRMソリューション」と日立ソリューションズの取り組みのご紹介
最後に、日立ソリューションの取り組みについて、藤原氏から紹介がありました。ここではオリックス・バファローズが導入した「ファンビジネス向けトータルCRMソリューション」の内容をシステム構成を含め紹介していました。 詳細なシステム構成図を公開していたので、推測を交え詳しく見て行きたいと思います。
サービス・アーキテクチャはこの様になっているそうです。 フルAWSで構成してOSSを活用しています。この構成を考察してみましょう。
構成を見て、以下の様な事に気が付きました。
- 全体をMulti-AZ構成にしている。
- 一般ユーザ用Webサーバクラスタ(Front Web)と管理用クラスタ(Back Web)とWeb API用クラスタ(Web API)を分けている。
- Webサーバクラスタは、管理用も含めて全てAuto Scaling構成にしている。
- Chefを利用したBootstrapパターンやCloud DIパターンを利用している。
- CDPに2.0候補(Log Aggregation パターンやHigh Availability NATパターン)を使用している。
- BIツール(Pentaho)を導入しているが、DWHはRDS(MySQL)を使用している。
AWSネイティブでモダンな構成になっているようです。この内容から推測される内容を書いてみました。
- 全体のMulti-AZ化によりAWSの大規模障害に備えている?
- 各Webサーなクラスタを分けているのでアクセスのスパイクが別の機能へ伝播しにくいと考えられる。
- 一般ユーザ用WebサーバがAuto Scalingなのでアクセス増大に対応しやすい?
- アクセス増大が少なそうな管理用WebサーバにAuto Scalingを導入することで、障害時の自動復旧(Auto Healing)運用コストを低下させている?
- Chefを活用しているので運用の自動化を図り、運用工数を削減している?
- 2013年度からサービスを利用しているので2012年秋から会員入会を行っているはず。だが、CDP2.0候補のほとんどが2013年以降にWebサイトに記述されている。積極的にAWSの情報を収集してシステム構成に取り込んでいる?
- DWHがRDSでありRedShiftを使用していない様なので、まだ大量のデータは無いと思われる。(2013年度からの導入との事で1年分のデータしかないから当然か)
AWSの特性やInfrastructure as Codeの考え方を生かし、運用を楽にする構成になっているようです。
AWSを使いこなす事により「サービス運用経費を低減」、「機会ロスを最小化」、「稼働率99.9%を実現」という効果が得られたそうです。
この「ファンビジネス向けトータルCRMソリューション」は、他の公開事例としてヤクルトスワローズ、ジュビロ磐田があるそうです。試しにバファローズとスワローズのファンクラブサイトに入会(ジュビロ磐田には無料会員が無いため断念)して画面を見てみたら、メニューやポイント表示部分がそっくりでした。
最後に
先日のサッカーワールドカップで優勝したドイツやNFLでもデータ分析を活用しており、スポーチ界もデータ分析を本格的に活用する気運が高まっています。その中でCRMからデータ分析までサポートするサービスは面白い試みだと思います。「ファンビジネス向けトータルCRMソリューション」は公開事例だけで3社もあるので、導入済みのファンサイトは結構あるのかもしれません。
参考情報
O2Oマーケティングを実現する「ファンビジネス向けトータルCRMソリューション」をクラウドで提供開始 カスタマープロファイリングで「見込み客」を「ファン」に育成