[レポート] Amazon QuickSight で BI 環境を統合する (AWS-08) #AWSSummit

2023.04.21

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

いわさです。

AWS Summit Tokyo 2023 が開催中です。
私は現地参戦出来なかったのですが、一部セッションはライブ配信されていました。

セッション内容や所感をレポートしたいと思います。

セッション視聴

AWS Summit Tokyoの登録を行うことでオンデマンドで視聴可能です。(現地参加された方は改めての登録は不要です。)

登録済みの場合、以下から直接遷移できます。

セッション概要

スピーカー

アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
データ事業本部 QuickSight ソリューションアーキテクト
ヴィルキャン坂下 和香奈 氏

詳細

現在、BI サービスをご利用いただいているお客様は全体の20−30%と言われています。
BI の利用をさらに加速させ、データドリブンなカルチャーを作るために、Amazon QuickSight はあらゆるニーズに対応したモダン BI サービスとなるべく、革新を続けています。
その Unified BI サービスについて、デモを交えて、インタラクティブなダッシュボード機能、業務ポータルへの埋め込み、整形されたマルチページのレポート定期配信機能などを紹介します。

セッションレポート

前半で BI ツールを取り巻く現状と課題から QuickSight がどのように進化してきたのかを解説しています。
後半ではユースケースごとに最適な機能を紹介し、デモを交えながら詳細な利用方法を解説しています。

前半:統合&一体化へのアプローチ

まず、セッション内では QuickSight を Unified BI サービスであると定義しています。
私は QuickSight をよく使いますが、実は Unified BI サービスという意識をあまりしたことがなく、聞いたこともありませんでした。

BI ツールでの課題

QuickSight が Unified BI サービスとして進化した理由として現状次の理由があると分析されています。

  • データが増え続けているが、BIツールの利用率はまだ少ない
  • それぞれのニーズにあわせてデータレイヤーを実装しがち
  • それぞれデータ接続を行って可視化や計算を行い、ガバナンスや学習のためのコストが発生してしまう
  • 様々な関係者ごとに要件が多岐にわたっており複雑化している
    • アナリスト:分析した結果を手軽に共有したい
    • リーダー:機械学習を使用した予測や異常検知を行うなど、追加の価値提供を簡単に導入したい
    • オペレーター:ダッシュボードでドリルダウンやレポート配信などを簡単に使いたい
    • エグゼクティブ:KPI など必要な情報だけをレポートで受け取りたい
    • アプリケーションユーザー:分析のためにアプリケーションと別のものへアクセスしたくない

上記のように複雑化した問題から次のような課題例が紹介されていました。

  • 管理者・ITエンジニアの課題例
    • システムが複雑だと問い合わせばかり発生する
    • 問い合わせの調査をするとアドホッククエリが必要になる
    • その構築やメンテナンスのせいで、データドリブンなタスクづくりに集中出来ないという悪循環が発生してしまう
  • BI 利用ユーザーの課題例
    • A さんは EXCEL、Bさんはとある BI ツール、Cさんはさらに別の BI ツールなど統一されていないことがよくある
    • また、そのそれぞれに同じような分析が存在しているが、表示内容は微妙に違うという状況になってしまい次のような問題が起きてしまう
      • 重複した作業が発生している
      • 異なるデータバージョンが存在しどれが正しいかわからない。それを解決するために非効率で無駄な時間が必要になってしまう

課題に対する QuickSight でのアプローチ

BI ツールを導入しても様々な課題が発生することがあるという説明がされていました。
続いて、それらの課題に対処するために QuickSIght が Unified BI サービスとして次のような機能を備えてきたと解説されています。

  • 特徴
    • クラウド上でインフラはサーバレス
    • 基本的な分析とダッシュボードを備えている
    • その延長でページレポート機能で作成・配信も出来る
      • 同一の UI で、追加の学習コストが不要
    • 高額なライセンス支払う必要なく使用した分の従量課金制
    • 自然言語クエリを使える
  • 課題の解決
    • 管理者やIT部門・エンジニアは複数のバージョンが存在しないので、クラウド環境のみ管理すれば良い
    • サーバーレス BI サービスとしてシステム管理者として必要な次のようなタスクを、AWS が管理してくれる
      • 自動スケーリング
      • 自動アップデート
      • セキュリティ・コンプライアンス
      • 高可用性
      • バックアップ・リカバリ
      • システムメンテナンス

Q については現状日本語が対応していないので日本国内で使用されるケースは少ない気もしますが、昨今登場したページレポート機能については確かに従来の分析・ダッシュボードの作成からそのままレポートの要件に対応することが出来るようになったものなので Unified だなという感じはしますね。

また、私は AWS インフラを普段よく使うので、サーバーレスという点はとても魅力を感じます。
もし QuickSight が仮想マシンへプロビジョニングするタイプだったらここまで使ってなかったかもしれないですし、とりあえず安いので使ってみようという現状のニーズに反しているような気もします。

後半:QuickSight の代表的なユースケースとそれぞれのデモ

前半では BI ツールの課題に QuickSight がどのように対応出来るものなのか、基本的な機能と併せて紹介されていました。
後半は主要な 3 つの機能のデモとなっています。

このデモではエンタープライズレポートや埋め込み機能など、QuickSight の高度な使い方が含まれるデモなので、通常の分析+ダッシュボードのデモよりもおもしろいかったです。

インタラクティブダッシュボード

最初はインタラクティブダッシュボードのデモです。
これは通常の分析からダッシュボードの作成と共有までのデモになっています。

デモの前に機能の解説がされていました。
初めて QuickSight を学ぶ方でも理解しやすい進行になっています。

インタラクティブダッシュボードの特徴

  • 誰でも簡単に作成可能
    • ブラウザ上でドラッグ&ドロップで直感的に作成
    • 様々な形式のグラフを配置して、ドリルダウンやフィルタリングが使える
    • 数クリックで簡単に他ユーザーへも共有
  • 様々なデータへ接続可能
    • オンプレミスからクラウド、サードパーティアプリケーションまで
  • 組み込みの機械学習機能も利用出来る
    • 異常検知、時系列予測、自動ナラティブ
  • 高速な動作
    • SPICE で高速なダッシュボードを実現
    • 1 データセット 10 億行
  • 従量課金
    • 作成者:月額定額で 18 ドル
    • 閲覧者:1 セッション 0.3 ドルで月額最大 5 ドル(1 セッション 30 分)

デモ内容

スライド共有出来ないので、デモ内容は動画公開時に確認してみてくださいという感じですが、以下の基本的な使い方が網羅されたデモでした。

  • 取り込み済みのデータセットを使って、新しい売上分析を作成
  • 時系列折れ線グラフとクロス集計のピボットテーブルを設置
  • 予測機能も追加
  • インタラクティブなフィルターも設置
  • 詳細なデザイン調整を行う
  • ダッシュボードとして簡単に公開して共有

エンタープライズレポート(Paginated Reports)

続いてエンタープライズレポートです。
エンタープライズレポートって呼ばれてるのかと気が付きましたが、これは re:Invent 2022 で登場した Paginated Reports 機能のことです。

次のような特徴を備えています。

  • レポーティング:ダッシュボードと同じインターフェースで用紙サイズや向きを指定して定型化されたレポートを作成出来る
    • 1 ページに収まらない場合も複数ページとしてレポートを生成することが出来る
  • こちらもインタラクティブダッシュボードと同様に使用した分だけの課金
  • 作成日付やページ番号など自動付与してくれる
  • レポート配信機能:定期的にレポートをEメール送信することができる。PDF と CSV のファイルを送ることも出来る
    • 生成された PDF や CSV をいつでもダウンロード出来る。

使用した分だけの課金と解説されていましたが、最小で 500 レポートの料金が含まれていたと思うので、厳密にはインタラクティブダッシュボードと同じような従量課金とちょっと違ってるかもと思いました。

ちょっとおもしろいなと思ったのが特定時点のレポートや CSV ファイルをスナップショットのようにダウンロード出来る機能です。
これはインタラクティブダッシュボードにはない機能だと思いますし結構需要もあるのではないでしょうか。

デモ内容

デモでは次の使い方が紹介されていました。
私はエンタープライズレポートをまだ使ったことがなかったので非常に興味深いデモでした。

  • ダッシュボードの特定の時点の状態を配信する。
  • エグゼクティブ向けにキーメトリクスだけわかるレポートをスケジュール配信する
  • スケジュール設定してEメール送信し、PDFとCSVファイルを添付する。ダッシュボードへのリンクと 1 ページ目のレポートプレビューが埋め込まれる
  • 特定時点の生成された PDF や CSV のスナップショットをダウンロードする

先程作成したダッシュボードを必要な情報のみ切り抜いて複数ページのレポートとして送信していました。
また、過去のスナップショットから特定時点のレポートを確認し CSV データをダウンロードする機能についても紹介していました。
Paginated Reports をまだ利用したことの無い QuickSight ユーザーは多い気がするので非常に興味深いデモです。

埋め込み

最後のデモは埋め込み機能です。
私も何度かブログで紹介させて頂いたことがあるのですが、QuickSight の分析やダッシュボードは外部アプリケーションに埋め込むことが出来ます。
ステークホルダーによっては QuickSight へのアクセスではなく外部アプリケーションから利用したいというユースケースがあるので、それを満たすことが出来るというわけで、こちらの機能もデモで紹介されていました。

実は多様な埋め込み方が出来るこの機能、次のような特徴を持っていると紹介されていました。

  • あらゆるニーズに対応した埋め込み分析
  • ダッシュボード、ビジュアル、レポート、分析コンソール、匿名ユーザー向けのパブリック埋め込みに対応
  • 1-Click 埋め込みで、簡単に社内認証基盤とSSO連携済みの社内ポータルであれば埋め込める
  • API や SDK も提供され、自由度の高いカスタマイズが可能
  • 動的に生成される埋め込み URL を使うことでよりセキュアな埋め込みも可能
    • ビルトインの独自認証にも対応している

デモ内容

デモではいくつかある埋め込みパターンがそれぞれ紹介されていました。
ユースケースによってどの手法を使うべきか異なってきますが、どれも参考になるデモだと思います。

  • 1-Click の簡単な埋め込みや、アプリケーション側で独自認証を使って動的 URL を生成する場合などいくつかの生成パターンを実施
  • ダッシュボードだけでなく、ビジュアルや分析コンソール埋め込みなどいくつかの埋め込みパターン
  • 埋め込んだアプリケーション上から QuickSight コンソール上の機能(スケジュール設定など)も操作

まとめ

セッションの最後では次のようにまとめられていました。
QuickSight はいいぞ!ってことですね。

  • QuickSight は 1 つのツールであらゆる BI 用途に対応できる
    • ダッシュボードからレポート、アプリへの埋め込み
    • 認証方法も様々
  • 高可用性でコストパフォーマンスが良い

参考

感想

これまで私は Unified という意識はあまりせずに埋め込み機能などを使っていたので、コストかけたくないなら QuickSight か?程度な認識を少ししてしまっていたのですが、多様なユースケースに対応する場合に統合的に管理出来るかどうかという点は説明を聞いていてなるほどと思いました。
他の BI ツールと比較する必要が出た際にはそのあたりも気にしてみたいと思います。

また、セッション内では Paginated Reports のデモを交えて様々な機能を紹介しており、私はまだ試すことが出来ていなかったので利用シーンや対応出来るユースケースなどがイメージ出来るようになりました。

QuickSight の基本的な機能を網羅しつつ、Paginated Reports や埋め込みなど高度な機能までデモで詳細な使い方が説明されており、とても参考になるセッションでした。