AWSの本気を垣間見る製造業向け展示レポート #AWSSummit

過去類を見ないほどのインダストリーカット展示が充実した今年のAWSサミット。製造業ブースがめっちゃ面白かったのでその様子をお届けします。
2024.06.21

「まさかAWSサミットで、流量計や液面計(フロートスイッチ)圧力計をがっつり見るとは思わなかったYO」

今年のAWSサミットは、製造業向け展示がなんかやたら充実している!という噂を聞いていたので実際に行ってみたところ、めっちゃ楽しかったのでその様子をお届けします。

クラスメソッドには「製造ビジネステクノロジー部」という製造業の顧客に特化した部署があり、部員が45名ほど在籍しています。自分もその一人。普段クラウドだけを触っているとリアルな現場の製造業の課題解決が遠く感じるのですが、AWSを使ってどのような課題を解決できそうなのか?そのユースケースを沢山聞くことができて大満足です。

AWSでも製造業きたか…!!
  ( ゚д゚) ガタッ
  /   ヾ
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来たんちゃうかなぁ。本気度伝わってきたで。

製造業向け展示全体の内容

事前にAWSより公式ブログで展示内容について紹介されており、全体を把握するのはそちらが良いです。各展示の資料ダウンロードリンクもあるので、めっちゃありがたい。

(上記ブログより引用)

  • 製品設計エリア
    • CAD/CAE 端末の柔軟な管理機能 (Research and Engineering Studio on AWS )
  • スマート工場エリア
    • Software Defined Factory
    • 製造現場のIoTデータをパートナーとともに小さく早く製造DXを実現
    • 製造業の課題に挑む AI ソリューション
    • 生成 AI・映像・音声と外付けセンサーによるプラント保守支援
    • Amazon Monitron による工場群設備の不良予知保全ダッシュボード
  • サプライチェーンエリア
    • AWS Supply Chain/Catena-X
  • スマートプロダクトエリア
    • 仮想化で組み込みソフト開発・改善の高速化

という、てんこ盛りの内容です。今までAWSサミットでこれだけインダストリーカットで大きめの展示があったか?と思って、いく前から非常にワクワクしておりました。

以下、自分が実際に話しを聞いてみたところを中心に、内容を紹介していきます。

Software Defined Factory

製造現場のラインの実装や修正はソフトウェアに比べて時間がかかりがち。さまざまなテストを行いながら最適なラインを計画していく必要があるのですが、それを全部ソフトウェアでやってしましましょう!という意欲的な展示。

こんな感じのデモ用仮想水ボトリング工場を想定。

それをシステム構成としてこのように組みます。

ちょっとわかりにくいかもですが、工場側OTNetworkをVPCの中のECSの各タスクで定義し、IoT Gatewayのタスク経由でMQTTで、ネットワーク側のIoT Coreにデータを送り、Amazon TimeStream経由でGrafanaで可視化するという内容。

実際に、Grafanaで可視化した画面がこちら。GrafanaのCanvasやダッシュボードをつかって、生産ライン全体を可視化しています。

工場側のOT Network全体の製造ラインを、CDKからデプロイするVPCとECS一式で定義しているのが面白いですね。生産ラインの増設は、このVPCの増設でやってしまう感じになります。

実際の利用シーンとしては、製造ラインの可視化に課題を持っている顧客に対して、現場の製造ラインをECSのタスクとしてモデル化して構築し、可視化まで提供することで顧客に気づきを与えるという使い方ができそうです。製造ラインの機器の種類に応じたECSのタスクやコンテナイメージをあらかじめ複数用意しておくと、顧客のイメージに近いモデルが素早く構築でき、そこからさきの話にひろがりそうですね。

既存の製造ラインへのセンサーの追加なども、現状を一旦一通りモデル化してシミレーションしておきながら、追加するセンサーが製造ライン全体にどのような影響をあたえるのか?どのような運用が必要になるのか?など、実際に増設前に検討ポイントを洗出しするのにも使えそうです。

願わくば!このCDK、GitHubへの公開予定があるかどうか聞いてみたのですが、いろいろ外部公開するには敷居が高いらしく、もう少しそのあたりは先になりそうでした。そのうち、ECSで自分でタスク定義つくってやってみようと思います。

AIによるプラント保守の伝承

プラントに異常が発生したときの、障害原因の究明と対応をAWSマネージドサービスフル活用でやってしまうデモ。実際のミニチュアプラントがリアルで、めっちゃ面白かったです。これ見てるだけでも、ご飯3杯はいけるぐらい。

デモの内容としては、一旦正常系を流したあと、撹拌機の電圧を下げておき異常を発生。PLC経由で送られたエラー内容をAIが分析しその内容をみて保守員が原因究明する、という内容でした。具体的なエラー内容がリアルタイムで画面に表示されていたり、ChimeSDKを使った保守員と監視員とのやりとりと対応内容の録画など、様々な側面でAWSのサービスが活用されており、非常に面白かったです。

こちらのAWS公式ブログでも詳細な解説があるので、合わせてどうぞ!

サプライチェーン:全体の可視化と予測的オペレーションの実現

AWS Supply Chainってサービス、皆さん御存知でしょうか?おそらく実際に触っているってひとまでいくとだいぶ少ないのかな?というイメージです。

サービス内容的に実際に触ってみるのはハードル高いなという印象だったのですが、実際の画面をみせてもらいながら、どういったユースケースで使えるのか、顧客が求めているのは何なのか、これから日本でどのように広がっていくのかという話を、いろいろ聞かせてもらって面白かったです。

実際の導入には、SAPなど基幹システムに対するコネクターを使って業務データの吸い上げなどが必要になるんですが、なんと!AWS Supply Chainには、テストデータが用意されており、実業務データが特になくても、どのような使い心地になるかは動かして試してみることができるとのこと。

というわけで、近々触ってみたブログ、書いてみます!

仮想化で組み込みソフト 開発・改善の高速化

自分、組込みソフトの開発には全く疎いのですが、AWSのDeveloper系サービスをつかって、組込みソフトの開発も高速イテレーションで効率化していくという内容の展示でした。

組込みの機器も、どうしてもブツが関連する都合上、クラウドだけのWebアプリを扱っているときよりもデプロイやテストに時間がかかりがちなイメージですが、そこをAWSのDevOps周辺サービスを活用してやってしまいます。

構成として特徴的なのは、CodeBuildのところにあるThe Yocto Project。YoctoをベースとしたカスタムLinuxイメージをつかい、Greengrass経由で配信します。

テストでは、QEMUやAMIをベースとしたアーティファクトを作成することで、デバイスレスでのテストを可能にしているのもポイントですね。これでクラウド上で基本的なテストが完結します。

また、今回の展示は、可視化部分としてGrafanaと共にQuickSightが利用されている展示も多く、この展示でもユーザー動向と問い合わせ履歴の可視化に、QuickSightが利用されていました。

展示の詳細は、AWS公式ブログがあるのでこちらを参照してください。実際にパイプラインを作成するCDKなども紹介されているので、気になった人は実際に手を動かして体験することができます。

インダストリーカットで製造業に向けていくAWSの本気を見た

昔は、AWSはどうしてもインフラの提供という文脈で見られていた歴史があったと思います。ただそこから徐々にデベロッパー向けのソリューションやメッセージが強くなってきたのがこの数年と理解しているんですが、さらに、ここ一年ほどは、テクノロジーから先にある課題解決をインダストリーカットで見せていくことに注力しメッセージングしているのを非常に強く感じます。

今回の製造業向けの展示もかなり規模が大きく、それぞれの展示も練り込まれており、ブースのAWSの方も非常に熱心にそれぞれのソリューションを語ってくれて、めっちゃ充実した時間を過ごすことができました。昨日2時間ぐらいここの周辺にいたんですが、全然まだ話足りないぐらい。

クラスメソッドの製造ビジネステクノロジー部の立ち上げと共に、AWSのインダストリーカット展示が充実してきているのはすごく相性良いなと思って興奮しております。個人的に今後がめっちゃ楽しみになるAWSサミットでした。

それでは、今日はこのへんで。濱田孝治(ハマコー)(@hamako9999)でした。