2018年7月1日よりヨーロッパのアカウントの請求元が変わります
Guten Abend! ベルリンより伊藤です。
AWS Summit Tokyo 2018が終わってしまったようですが、来週はベルリンでも開催予定で楽しみです!
こちらの会計を兼務しているのですが、今回のエントリは、AWS Europe FAQs に基づいたお知らせです。
このページを閲覧される方のほとんどは日本にある会社にお勤めで、関係のないお話ですのでご安心ください。ヨーロッパの個人ユーザの方にもほとんど影響はありません。
ヨーロッパに拠点を置く企業で AWS をご利用の皆さま!今回の変更によりきちんと課税設定ができているかご確認ください!!!
What's happening?
2018年7月1日より、ヨーロッパ・中東・アフリカの国々のアカウントに向けた請求・支払いに関しては、Luxembourg に拠点を置く "AWS Europe" よりサービスを提供します!
何が変わるか
AWSの6月利用分までの請求元は Amazon Web Services, Inc (アメリカの会社) でしたが、7月利用分からは AWS Europe (ルクセンブルクの会社) となります。
それで何が変わるのでしょうか。
ここからは、ドイツ会計をベースに記載します。一部のEU国やEU外の国では異なる場合がありますのでご了承ください。
ご利用のAWSアカウントが個人の場合
冒頭でも記載したように、個人の方であれば影響はなく、この変更に関わらずVATが徴収されます。ドイツ市民であれば、ご利用料金に19%が課税されます。
VAT税率は国により異なるので、Tax Help - European Union をご参照ください。
なお、この国の判別は以下の優先順位で判別されるようです。
1) 請求先住所(クレジットカードで登録されている国と同じ場合)
2) 連絡先住所(クレジットカードで登録されている国と同じ場合)
3) 請求先住所
4) 連絡先住所
例えば、フランスのクレジットカードでベルギーの請求先住所を登録し、連絡先住所はドイツとしている場合、アカウントの国はベルギーと判別され、21%のVAT税率となります。
VATが課税されると、請求書とは別にVATの額を計算するための税金請求書(VAT Invoice)というものが発行されます。この税金請求書の詳細は後述します。
...とは言っても個人の方にとっては特段必要なものではないので、ご参考までに。
ご利用のAWSアカウントが法人の場合
これまで
EUの法人でAWSをご利用いただく場合、大事なのは「課税設定」。
ここで正確にVAT ID・企業名・住所を提供しない場合や有効な VAT ID を持っていない場合、個人の方と同様にVATが課税され、還付もされません。
下記は、Classmethod (Europe) GmbHで入力した場合の例です。
Billing and Cost Management コンソール → [課税設定] → [税登録の管理]から[編集]を選択し、上記の画面で入力します。
これまではこの課税設定をしていると、EU圏外からのB2B請求のため VAT が控除されていました。
これから
上述した「課税設定」は変わらず大切です。
しかし、7月利用料(8月発行分)からは、AWS Europe から請求されることによりEU圏内のB2Bサービスとなり、 VATが課税されます。
6. AWS stopped charging me VAT when I added my Tax Registration Number. Will that change?
Yes, if your accounts are located in Belgium, Denmark, Finland, France, Germany, Ireland, Israel, Italy, Luxembourg, Netherlands, Poland, Portugal, Spain, Sweden, or the UK, we will charge applicable VAT.
参考: AWS Europe FAQs
上記にも記載がありますが、この対象となる国は以下の通りです。
適切にVATが課税されるように「課税設定」を見直すのはもちろんのこと、VAT 還付に必要となる請求書や税金請求書にも反映される請求先住所も正確に登録しましょう。
税金請求書(VAT Invoice)
税金請求書は、請求にVATが発生する場合に発行され、ルートユーザーを使用してのみ取得することができます。
これまで
現時点では、個人や課税設定をしていない法人の場合にこちらが発行されます。
私は最初にこの税金請求書を見たとき、利用料やVATの金額が誤っているのでは?とハマりました。もしかしたら同じように困った方がいるかもしれないので、以下の例を元に少し解説します。
こちらはVAT税率がドイツの19%ですが、こちらに記載の利用料で計算すると、
(1)23,54 × (2)19% =4,4726 ≒ 4,47 となるはずで、(3)4,50 はちょっと四捨五入しすぎというか、異なりますよね。
またこの時の実際の請求額は28,46 だったので、(4)28,04 とも異なります。
これは、VATの金額は単純に (利用料の総額) × (税率) ではなく、(サービスや課金内容の各利用料) × (税率) を四捨五入した結果の合計を示しているためです。
この月に受け取った請求書と税金請求書のSummaryはそれぞれ下表のような内容でした。この通り、税金請求書は正確なVATの税額を計算する証明だけのようで、請求書で請求される実際の税抜き利用料が各サービスの厳密な利用額(0,01 でなく 0,0088313 など)で合計されているのに対し、税金請求書では四捨五入済みの合計としているため、利用料も合計額も実際とは異なるようです。
請求書 | 税金請求書 | |
---|---|---|
利用料 | $ 23,96 | $ 23,54 |
税額 | $ 4,50 | $ 4,50 |
合計額 | $ 28,46 | $ 28,04 |
これから
7/1以降は、課税設定をしている法人の場合でも、先述の国々ではこちらが発行されます。
会計的には、ドキュメント手続きが増えるので面倒ですが、2つ良いこと(?)があります!
まず税金請求書が更新されるようで、随分見やすくなる気がします。
こちらから現時点でのサンプルを確認できますが、課税設定のTRNで登録したVAT IDもきちんと表示されます。
そして、これはConsolidated Billing(一括請求)の場合ですが、これまで税金請求書は各連結アカウントのルートユーザーを使用して取得する必要がありましたが、今後はマスターアカウントの請求ページでまとめて取得できるようです!
これは弊社のようなリセラーにとってはかなり嬉しいですね。
(2020年8月追記) "これまで"に記載した、請求書と税金請求書で四捨五入の段階が違うことにより表示される合計額が異なる可能性がある点は、移行後も同様でした。
Consolidated Billing の場合の補足
連結アカウントにTRN(VAT ID)が登録されていない場合、または連結アカウントが1つしかない場合は、連結アカウントの請求ページでも税金請求書が取得できます。それ以外はマスターアカウントからのみ税金請求書が取得できます。
リセラーの場合
AWSリセラーの場合は連結アカウントすべての課税設定を管理する責任があり、今回の変更についても連結アカウントには通知されないようです。支払いを代行されるすべての連結アカウントの課税設定に自社のVAT情報を登録しましょう。
AWSの請求元(AWS Inc か AWS Europe か)と適用される税金は、各アカウントごとに冒頭に記載した判別ロジックで決まるので、すべての連結アカウントの課税設定で自社の税金番号を入力(ヨーロッパでない場合は、税金番号は削除)、請求先住所に自社の住所を登録することが必要となります。
これを行わず連結アカウントで別の国の税金番号/住所が登録されていると、次に続くケースの例のように、そのアカウントの分だけ別の国の課税がされ、請求書が発行されます。ここで払った外国の消費税は還付もできないため、無駄に多くコストを払うことになります。
(2020年8月追記) 親アカウントの課税設定の画面から、連結アカウントの課税設定も一括で変更できるようになったようです。
連結アカウントが異なる対象EU国の場合
個人法人、国が異なる場合も、同様に請求書は1つ、税金請求書は連結アカウント分発行されます。
その際の税金請求書のサンプルがこちらから確認できます。これは、通貨をGBPに指定した下記のケースとなっています。
- AWS Europe の請求書 (pg. 1-8)
- TRNを登録しているイギリスのアカウントの税金請求書 (pg. 9)
- TRNを登録していないイギリスのアカウントの税金請求書 (pg. 10)
- TRNを登録しているオランダのアカウントの税金請求書 (pg. 11)
連結アカウントに対象EU国とそうでない国が混ざっている場合
AWS Europe から発行されるべきアカウントとAmazon Web Services, Inc. から発行されるべきアカウントがコンソリ配下で混在する場合は、それぞれの請求元から1つずつ請求書が発行され、さらにAWS Europeから税金請求書が連結アカウント分発行されます。
その際の税金請求書のサンプルはこちらから確認できます。これは、通貨をUSDに指定した下記のケースとなっています。
- AWS Europe の請求書 (pg. 1-8)
- TRNを登録しているイギリスのアカウントの税金請求書 (pg. 9)
- TRNを登録していないイギリスのアカウントの税金請求書 (pg. 10)
- TRNを登録しているオランダのアカウントの税金請求書 (pg. 11)
- Amazon Web Services, Inc. の請求書 (pg. 12-17)
おしまい
ちなみに、AWS EuropeのあるLuxembourgがどこだろうかと調べてみたところ、フランスとドイツの間、ベルギーの下にある小さな国でした。ヨーロッパ全体を眺めるとだいたい真ん中あたりにありますね。自然で覆われた美しい国らしく、ぜひ旅行に行ってみたいです。
以上、備忘録としてまとめましたのでどなたかの参考になれば幸いです。
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