【書評】カスタマーサクセス・プロフェッショナル ―顧客の成功を支え、持続的な利益成長をもたらす仕事のすべて

【書評】カスタマーサクセス・プロフェッショナル ―顧客の成功を支え、持続的な利益成長をもたらす仕事のすべて

カスタマーサクセスマネージャーの指針となる、実用的なガイドブックです!
Clock Icon2022.07.05

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カスタマーサクセス部のゆっこです。 「カスタマーサクセス・プロフェッショナル ― 顧客の成功を支え、持続的な利益成長をもたらす仕事のすべて」を読み終えたので、各章の概要と感想をまとめました。

著者紹介

アシュヴィン・ヴァイドゥヤネイサン

カスタマーサクセス企業ゲインサイト(Gainsight)CCO。カスタマーサクセス、プロフェッショナルサービス、エデュケーション、テクニカルサポートの各チームを統括している。カスタマーサクセスマネジャーとして同社に入社した当初はカスタマーサクセスマネジャー向けの新規プロセス策定を担当。入社前はマッキンゼー・アンド・カンパニーでマーケティング、営業、カスタマー体験のトランスフォーメーションについてのコンサルティングに従事。

ルーベン・ラバゴ

ゲインサイトのチーフストラテジスト。世界各国でのカンファレンス、CxOサミット、地域別のカスタマーサクセス担当者の交流会、講演など、同社のカスタマーサクセスプログラム「パルス」の技術顧問を務める。世界最大のカスタマーサクセス担当職の教育および資格認定プログラムの後継版である「パルス+」を立ちあげ、複数の大学の関連カリキュラム監修にも携わる。カスタマーサクセス担当職の多様性拡大を目的として、ゲインサイトが立ちあげたコミュニティアウトリーチのリーダーも務める。ゲインサイトの最初のカスタマーサクセスマネジャーのひとりであり、20年以上にわたって、従来型およびSaaSベースの企業向けに、カスタマーチームやプロダクトチームを組織し率いてきた。

第1部 カスタマーサクセスとは何か、なぜそれは素晴らしい仕事なのか

第1章 カスタマーサクセスマネジメント――新たなプロフェッショナル職の登場

第1章では、「カスタマーサクセス」が登場した背景の説明があります。 ビジネスの前提が変わり、取引が無難に完了すれば満足するカスタマーは減り、みな結果を求めるようになったためカスタマーサクセスの重要性を書いています。

デロイトの調査によると、カスタマーサクセスを戦略的優先事項とする企業は、契約更新率が2桁パーセント改善した企業が2倍にのぼるそうです。

第2章 カスタマーサクセスマネジャーの役割とは

第2章では、カスタマーサクセスマネージャーの役割について説明しています。 サブスクリプションが主流の現代、ワンクリックで解約ができてしまうため、簡潔に言えば「サービスを継続して使いたい」そう思わせることに尽きます。

カスタマーによって、プロダクトの利用方法がわからなかったり、自社の業務プロセスを変更できなかったりすると実際に提供できている価値の違いが『コンサンプションギャップ』として生まれてしまうため、カスタマーとカスタマーのビジネスがプロダクトから最大限のメリットを享受できるようにすることが必要です。

第2部 優れたカスタマーサクセスマネジャーの必須スキル

第3章 あるカスタマーサクセスマネジャーの1 日

第3章では、カスタマーサクセスマネージャーが通常行う業務の主要なものを紹介しています。 立場上、クライアントの声に比重を置いてしまいがちですが、カスタマーサクセスはクライアントだけでなく、「社内」と「プロダクト」のCSでもあるということを考えさせられました。

第4章 変わり続けるビジネス界で求められるカスタマーサクセスマネジャーのスキル

第4章では、自社のいる業界、カテゴリー、プロダクトに精通すること、を含めた、ナレッジを蓄積して使いこなすスキルについて書かれています。 カスタマーサクセスマネジャーの仕事はプロダクトをそのままの状態で最大限活用してもらうためにプロダクトに精通していることの重要性を説いています。

第5章 カスタマーに共感し関係を構築する方法

第5章では、カスタマーサクセスマネージャーとして身につけるべきスキルの中で最も重要な「カスタマーに共感し関係を構築する」能力について書いています。

カスタマーサクセスマネージャーとクライアントの関係がスタートするのは取引が開始してからのオンデマンド型。放り込まれた形でのぎこちないジョインからできる限り早く信頼関係を築くための「7つの原則」を解説しています。

第3部 カスタマーサクセスの実践

第6章 準備で信頼を勝ち取り、課題解決コンサルタントのように質問する

第6章では、カスタマーの情報が社内に収集されているのに、データが部署ごとに分散されいるため、活用がしきれていないことを指摘しています。

カスタマー関連のデータを一元管理して、カスタマーの全体像を把握し、社内横断で協力し合うことの重要性を書いています。

第7章 カスタマーを成果へ導くジャーニーを定義する

第7章では、データを活用しカスタマーが目指す成果へと導く方法を「カスタマーライフサイクル」、「ジャーニーマップ」、「カスタマージャーニー」3つの言葉を使って説明しています。

今まで同義語として訳されていた似た名称の定義を明確化しており、とてもわかりやすかったです。

第8章 「真実の瞬間」によりカスタマージャーニーを現実化する

第8章では、「真実の瞬間」を効果的にマネジメントしてカスタマージャーニーを現実化するための具体的な手法を紹介しています。

「真実の瞬間」とはカスタマーが感情面から成果にコミットし、サービスの価値を判断する瞬間となるため、ジャーニーマップ上には、しかるべき「真実の瞬間」を設定する必要があります。

第9章 ヘルススコアを活用してカスタマーを管理する

第9章では、ヘルススコアを用いてシグナルをキャッチし、意味を理解して、カスタマーをうまくマネジメントする手法を紹介しています。 特に、いくつかのタイプや自社のニーズに合わせる枠組みについて詳しく解説しています。

第10章 カスタマーの声(VoC)とテックタッチを活用する

第10章では、カスタマーからのフィードバックを傾聴して対策に反映する手法を紹介しています。

また、最小の手間で広範囲なカスタマーにリーチできる、自動配信メールとプロダクト内蔵型のコミュニケーション手段を活用したテックタッチ戦略についても触れています。

第11章 カスタマーのビジネスの目標達成を支援する

第11章では、カスタマーが目標を達成できるよう導くために、具体的な目標をカスタマーと一緒に立て、適切な利用方法やベストプラクティスをふさわしいタイミングで発信する方法について解説しています。

中でも、アダプションに応じてとるべきステップは細かく書かれていて、自分のカスタマーは今ここのステップだなと想像することができました。

第12章 収益を拡大する――エンゲージメント、積極的リスクマネジメント、チャーン分析、契約拡張、推薦獲得

第12章では、複数の利害関係者が関与する状況をマネジメントする時の成功事例や、早期リスクに対処して解約を阻止する戦術に関しても実例をまじえて解説しています。

残念ながら解約になってしまった際には、「チャーンの真の理由を解明する」ステップが7つ紹介されていて、新しいチャーンを生まないためのヒアリングやチャーンになった中での成功事例を見つける、転んでもただでは起きない姿勢は勉強になりました。

第4部 優れたカスタマーサクセスマネジャーを育成し、流出を防ぐ

第13章 カスタマーサクセスチームの運営

第13章では、カスタマーサクセスのリーダーに視点を移し、優秀な人材育成に必要な3つの概念を説明しています。 担当するセグメンテーションごとに求める資質が書かれており、様々なタイプのカスタマーサクセスマネージャーがチームに必要だということを理解しました。

また、業務量など個人レベルの内容からチームを効果的に管理、把握できるタイプ別ダッシュボードの紹介もされています。

第14章 カスタマーサクセスマネジャーのキャリアパスをつくる

第14章では、ゲインサイトのカスタマーサクセスで「チームメイトサクセス」を担当するディレクター、ナダフ・シェム=トーブが登場し、カスタマーサクセスのキャリアパスについて語っています。 実務者職と管理者職の2つのキャリアトラックがあり、どちらを極めたいかにより身につける能力やレベルが変わり、参考になりました。

感想

第14章から成る充実した情報量は圧巻...! 各章読み切りなので、自分の読みたいところからすぐに手を付けられ、見返しやすく、昨日からカスタマーサクセスに従事した人や、マネージャークラスの方まで幅広い方が読める実践ガイドとなっています。

各会社やサービスによって、真似しやすい部分とそうでない部分もあると思いますが、カスタマーサクセスの存在意義は近しいのではないでしょうか。

カスタマーが求めることと、ベンダーが提供することとのギャップを埋めながら、カスタマーの成果にコミットする部門が「カスタマーサクセス」だと考えています。

なかなか簡単な仕事ではありませんが、カスタマーや課題と向き合った先の成功が事業の成長に繋がる、素敵な職業だなと改めて思いました。

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