
ゼロからBtoB広報を立ち上げるメンバーへの覚え書き
クラスメソッドもグループ会社が増え、これから独自に広報業務を立ち上げるという会社も出てきました。
本当にゼロからの立ち上げで、なにから着手すれば良いの?という相談を受けたので、その回答をメモとしてまとめておきます。
私見ではあるけれど、わりと一般的なアドバイスになったかなと思います。
広報の目的と目標
広報の大目標は、幅広いステークホルダーとの関係性構築とレピュテーション(ひらたくいえば「評判」「企業イメージ」)向上です。
これを、企業課題に沿って、ターゲットごとにもう少し具体的にしていったものが、採用広報や事業広報です。
よく、マーケティングとの違いを問われたりするのですが、私は次のように整理しています。
- 将来のお客様をターゲットにした情報発信&コミュニケーション: マーケティング
- 直接のお客様ではないけれど、企業になんらかの接点を持っている人たちに向けた情報発信&コミュニケーション: 広報
広報手段を整える
従来の広報を特徴づける、特に重要な業務はプレスリリース発信を中心とするメディアリレーションだったと思います。
しかし、近年はSNSはもちろん、ブログなどのオウンドメディア運営など、企業自身が情報発信と拡散の手段を持てるようになってきました。そのため、事業内容や方針によりますが、プレスリリース以外の手段の重要性も高まっています。
広報手段をざっと上げると
- プレスリリース
- (コーポレートサイトに掲載する)お知らせ
- 各種SNS(Xのほか、ブログ、動画なども)
- オウンドメディア
- 配布冊子
- オフラインイベント
- オンラインサロンなども含めたユーザーコミュニティ
など、多種多様な媒体・手段があります。
手軽に取り組めるものから、不特定多数へのリーチが可能なもの、コアファンづくりに効果的なものなど、それぞれに特徴があります。
ただ、これから広報に取り組もうというフェーズでは、情報拡散力の前に、企業の公式発表を行える体制、しくみを整えるのが先決です。
プレスリリースや、コーポレートサイトに掲載するお知らせは、 企業としての公式情報として信頼性や正確性、アクセスのしやすさ を担保する必要があります。
SNSやブログを通じた看板社員による情報発信は、注目されて企業名とともに取り上げられることもあり、手軽さと情報拡散力の点で魅力的です。
しかし、企業の透明性や説明責任などを担う媒体としては、やはりコーポレートサイトにきちんと公式発表を掲載しておく必要があります。
そのため、ゼロからのファーストステップとしては、まずは公式発表をコーポレートサイトに掲載する仕組みづくりをしたいところです。
同時に、PR Timesなどのプレスリリース配信プラットフォームへ、アカウント作成をしておくのが良さそうです。
広報資料を整える
情報発信のしくみを作ることができたら、その次は公式発表用の数字や情報について、リファレンスを整えておきたいところです。
これは、例えば、従業員数や取引社数、取得済みの認定情報など、企業の紹介に使用する情報です。
クラスメソッドの場合は、ブログ本数や事例数なども企業紹介に使ったりするのですが、実際にカウントしてみると、数え方によって数字が前後することもあります。
発表ごと、資料ごとにこれらの数字がブレないよう、カウントの仕方や棚卸しのタイミングなどを決めて、情報と合わせて参照できるようにしておくと便利です。
コーポレートサイトや採用サイト、営業資料などの体裁の統一についても相談を受けました。可能ならブランディングの観点から統一は図りたいものの、作業リソースが限られていることを考えると、優先度は落とさざるを得ないかなと考えています。
社内からの情報収集のしくみを作る
企業の事業活動がうまくいっていて、成長していることを伝えるためにも、できれば定期的に情報発信したいものです。
企業からの発表というと、新規事業・サービスの開始や、受賞・認定などがイメージされることが多いようです。こうした節目になる出来事に限らず、実際には切り口を変えることによって、情報発信の素材を作ることが可能です。
ここでヒントと注意点の両方になるのが、広報は”Public Relations”であるということです。
企業が事業活動で得たデータや、社会・市場の課題感に対する独自の取り組みなど、公共とつながる観点があれば、高いニュース性を持たせることができます。
一方で企業が伝えたい情報だけプッシュしても、社会・業界からの視点がなければ、それは広告と同様にとらえられてしまいます。
ニュース性を持たせるための切り口の作り方・考え方は、非常に難易度が高いのですが、まずは社内から情報を集められるしくみや関係性を作りたいところです。
意外と、受賞・認定などのお祝いごとの情報も、部内で完結してしまっていて、新設の広報部署には情報がわたってこなかったりします。
参考情報
最後に、広報業務の基本を学ぶのにおすすめの本、サイトのご紹介です。
プレスリリースを中心とした広報業務について、手っ取り早くざっくり作業内容を把握するために、まずは「広報・マスコミハンドブック PR手帳」がおすすめです。
また、プレスリリースをきちんとした文章で作成したい場合は、新聞用字用語集を手元に用意しておきたいです。
新聞を想定した縦書き文章向けの用字用語なので、クラスメソッドのようなIT業界や、ウェブメディア向けには少しアレンジしても良いかなと思う部分はありますが、読みやすく誤読されにくい文章作成をする上で、非常に参考になります。
業務を進めていくうちに、シチュエーションごとに具体的な疑問、困りごとが出てきたら、PR Timesのコラムに参考になる情報があったりします。
ただ、とにかく情報量が多いので、PR Times自らキュレーションしてくれている「広報PRパーフェクトBook」を手始めに読むのも良いです。
終わりに
広報は、その立ち位置のわかりづらさや効果測定が難しさから、過小評価されたり、その逆に過大な期待を寄せられたりと、不安定なポジションになることも多いです。
あまり意識されない点ですが、企業の中にあって、社会・業界とつながる客観的な視点を維持するのも重要です。
文章作成については生成AIがかなり使えるようになってきて、広報担当者はビジネスへの理解や、課題発見力、企画力、ストーリーテリングなど、情報に対する目利きや見せ方のスキルを磨いていく必要がますます高まっています。
情報が溢れる時代になったからこそ、社内外の情報のハブとなれる広報を目指したいところです。