
入社初日から、非エンジニアがAIで21名チームの約14,700時間の業務を3ヶ月で可視化するまで(全5回:第1回)
第1回:入社から「悪循環」の発見まで
32件の課題が導き出した「構造的な悪循環」
入社初日から、非エンジニア1名がAIを活用し、3ヶ月で21名チームの約14,700時間の業務を可視化。
改善プロジェクト開始時、32件だった課題はデータ分析により8件の課題を加え全40件に再定義。
40件×3案=120案の解決策と段階的な実行計画により、年間最大約3,400時間の削減見込みを算出。本連載では、その3ヶ月間のプロジェクト経過を全5回にわたって報告します。
全5回の連載内容について
このプロジェクト経過は以下の順序で報告予定となります。
| 回 | 内容 |
|---|---|
| 第1回 | *今回* 入社から「悪循環」の発見まで |
| 第2回 | 可視化の土台「タスクマスター」 —タスク×マニュアル×スキルマップの設計思想 |
| 第3回 | 5つのデータソースを統合する基盤設計と実装—既存運用をデータ源に変える |
| 第4回 | 約14,700時間の可視化結果による事実とAIとともに策定した40課題の解決策 |
| 第5回 | 再現性の検証——この手法はどこまで転用できるか |
着任時の状態:3つの「見えない」
2026年1月、私は業務改善担当としてクラスメソッドオペレーションズ株式会社の管理部門として入社し、別部門のアカウントチーム(21名)に対する業務改善プロジェクトの専任担当者と任命されました。
業務改善は以前の業務でも実施していましたが、分野違いかつエンジニア経験もコンサルティング経験もありません。
業界知識もゼロの状態からのスタートでした。
着任してすぐにわかったこと。
それはこのチームが改善に対して非常に積極的で、データ化や改善活動、属人化解消にも意欲的だということでした。
- 定型業務をタスクごとにマニュアル化
- 改善要望ボードによる個別改善は継続
- チケット管理ツールを用いた計測データの取得
- タイマーによるタスクデータの取得
- スキル表やタスク表の作成
業務管理上必要なデータ群や作業が揃っており、改善活動に必要なデータや仕組みの多くが、既にチームの中に存在している素晴らしいチームでした。
それでも3つの見えない
①全体構造が見えない。
課題が何領域・何件あるのか整理されておらず、どこから手を付けるべきか判断できない。
②業務量が見えない。
誰が何をどれだけやっているのか不明であり、人員配置や評価の根拠となるデータがない。
③分析基盤がない。
データはあっても統合・分析する仕組みがなく、改善の優先順位を決められない。
個別の改善活動が行われ、意欲的で非常に優秀な組織でも業務全体を横断的に把握・分析する基盤がなく、人手不足に苦しんでいる。
これが着任時の状態でした。
最初の1週間半:AIによる業務キャッチアップとフレームワーク設計
業務改善プロジェクトにおいて、外部から着任した担当者として最初に直面する問題があります。
業務を理解するためのヒアリングが、現場メンバーの通常業務を圧迫するという問題です。
特に人手不足に悩むチームに対して「改善のために時間をください」と依頼すること自体が、現場の負荷を増やす矛盾を生みます。
この問題に対し、私は以下のアプローチを取りました。
まず、既存の業務マニュアルや運用ドキュメントをAIに読み込ませ、業務の全体像を自己学習しました。
その上で、AIでは判断できない事項—現場固有の運用ルール、暗黙の判断基準、データ上に現れない課題感—のみをヒアリング対象として限定しました。
並行して、課題を収集・分析するためのフレームワーク設計もAIを活用して進めました。
(詳細は次セクションで解説します)
最初の一手:AIによる課題フレームワークの設計
着任直後、最初に取り組んだのは課題を収集・分析するための「器」を作ることです。
具体的には、課題一覧表・真因分析シート・課題方策決定シートの3点セットです。
ここで問題になるのは、私にコンサルティング経験がないことです。
課題管理のフレームワークにどのような項目が必要か、抜け漏れなく設計する知見がありませんでした。
そのため、ただ個別課題をヒアリングするだけでは、任命された業務改善において全体像を捉えられないのではないかという懸念がありました。
この問題をAIで解決しました。
AIに対して「業務改善のために課題一覧表・真因分析・課題方策シートを作成したい。どのような項目が必要か」と問いを投げました。
AIは課題管理に必要な項目案として、以下を提示してくれました。
- 課題名、グルーピング、具体的な課題内容
- 優先順位、真因分析(なぜなぜ分析)
- 解決策の複数案比較、工数・コスト・実現難易度・効果の評価軸
- 採用理由、完了基準
私の役割は、AIが提示した項目案をもとに現場の実情に合わせて取捨選択し、最終的なフレームワークを確定することでした。
この工程にかかった時間は約1日。
コンサルティング未経験者が業務改善といわれ『何からするべきか』という点を調査し、やり方を考え、実行に移していく。
本来であれば適切な手法選択から始める必要がありました。
それをAIが専門知識の参入障壁を大幅に下げてくれました。
このようにフレームワークが完成した時点で、即座にヒアリングを開始できる状態になりました。
このフレームワークは、3ヶ月後の真因分析・解決策策定(第4回で詳述)まで項目の追加・変更なしで使用し続けることができました。
初期設計の段階でAIが提示した項目構成が、プロジェクト全体を通じて過不足なく機能したことになります。
32件の課題収集:7領域・4グループへの構造化
フレームワークを用いて、チームのリーダー層へヒアリングを実施しました。
当初の段階で確認できた課題は6件でしたが、2週目の完了時点では32件に増加しました。
収集した32件の課題を分析した結果、以下の4グループに分類できました。
| グループ | 内容 |
|---|---|
| 作業量可視化 | 業務量の計測・管理に関する課題 |
| 育成・スキル移管 | 人材育成、属人化解消に関する課題 |
| 手順・マニュアル | 作業手順の整備・更新に関する課題 |
| その他 | ツール・環境・体制に関する課題 |
32件の課題を構造化する過程で、1つの重要な事実が浮かび上がりました。
課題の多くが「作業量の可視化不足」に起因しているという点です。
- 育成を改善したくても、誰がどのスキルレベルにあるのか定量的に把握できない。
- 人員配置を最適化したくても、誰が何にどれだけ時間を使っているのか分からない。
- マニュアルを改善したくても、どの業務に最も時間がかかっているのか特定できない。
すべての改善活動の前提として、業務量の可視化が必要と考えました。
悪循環の発見:なぜ課題は解決しないのか
課題の構造化をさらに進めると、このチームが抱えている問題は個別の課題の集合ではなく、1つの悪循環であることが明らかになりました。

このサイクルが回り続ける限り、個別の改善活動——マニュアルの整備、ツールの導入、研修の実施——を行っても根本的な解決には至りません。
改善活動自体が悪循環の中で消耗されるためです。
チームのメンバーが怠慢だったわけではなく、個別の改善は継続されていました。
しかし、この悪循環が続く限り、どれだけ改善を重ねても構造的に成果が蓄積されない状態でした。
方針の決定:「まず測る」という判断
悪循環を断ち切るには、サイクルのどこかに介入する必要がありました。
- 育成から着手する案もありました。
- 自動化から着手する案もありました。
しかし、個別課題の真因を分析するにも「何を」「どの程度」改善すべきかの判断にデータが必要でした。
育成対象を特定するにはスキルの可視化、自動化対象を特定するには工数の可視化が必要でした。
結論として、悪循環を断ち切るために業務量の可視化が必要と判断しました。
いきなり育成や自動化に飛ばず、まず現状を見える状態とすることにしました。
この判断が、以降3ヶ月のプロジェクト全体の方向性を決定しました。
ただし、可視化には1つの制約を設けました。
現場への追加入力をゼロとすることです。
幸いにも、それを可能にしてくれる構造がありました。
今までのアカウントチームの努力の結晶です。
チケット管理ツールやGoogleカレンダーの利用、作成途中のタスク表といったデータを使用することで、現場に新しい作業をさせない設計を前提として構築を開始しました。
第1回 まとめ
入社から「悪循環」の発見まで
- AIを活用した業務キャッチアップとフレームワーク設計
- 32件の課題収集と4グループへの構造化
- 悪循環の発見と介入点(業務量の可視化)の特定
- 「現場負荷ゼロ」を前提とした可視化方針の決定
次回からは、この方針に基づいて実際に何を構築したかを報告していきます。
次回以降の連載内容
このプロジェクト経過は次回以降、以下の順序で報告していきます。
| 回 | 内容 |
|---|---|
| 第2回 | 可視化の土台「タスクマスター」 —タスク×マニュアル×スキルマップの設計思想 |
| 第3回 | 5つのデータソースを統合する基盤設計と実装—既存運用をデータ源に変える |
| 第4回 | 約14,700時間の可視化結果による事実とAIとともに策定した40課題の解決策 |
| 第5回 | 再現性の検証——この手法はどこまで転用できるか |
第2回は、業務を漏れなく計測し、同時にスキル評価と意思決定の基盤となる「タスクマスター」の設計思想について報告します。
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