CEDEC 2025 レポート:『Faaast Penguin』で実践!クラウドゲーミングによるゲーム開発効率化

CEDEC 2025 レポート:『Faaast Penguin』で実践!クラウドゲーミングによるゲーム開発効率化

自社で開発された『Faaast Penguin』を元にクラウドゲーミング技術を実践し、ブラウザからプレイテストできる環境を構築しました 。Amazon GameLift Streamsを開発やチェックなどに利用する開発プロセス効率化についてや、今後の展望を紹介するセッションです 。
2025.08.04

こんにちは。ゲームソリューション部の出村です。

ここでは、「『Faaast Penguin』で実践!クラウドゲーミングによるゲーム開発効率化」というセッションに焦点を当て、その内容をレポートします。このセッションで紹介されているAmazon GameLift Streamsがどのようなサービスであり、実際のゲーム開発・運用においてどのような利点があるのか、について解説がありました。クラウドゲーミング環境にご興味のある方はぜひ読んでください。

セッション内容

『Faaast Penguin』で実践!クラウドゲーミングによるゲーム開発効率化

『Faaast Penguin』では、クラウドゲーミング技術を活用し、ブラウザからすぐにプレイテストできる環境を構築しました。Amazon GameLift Streams を用いてビルドチェックや開発外のチームメンバーとの共有を行うことで、現場の手間を最小化し、開発における意思決定のスピードを高めることができました。本セッションでは、ハイスピードなアクションレースゲームの開発現場で実際に導入してみた経験から得られた知見と、今後の活用に向けた展望をご紹介します。

内容について

本セッションは、株式会社ヒストリアの佐々木氏と同社のマルチプレイアクションゲーム『Faaast Penguin』での実例を交えながら、AWSの小森谷氏がクラウドゲーミングサービス「Amazon GameLift Streams」の技術的な利点や活用法を解説する形で進行しました 。

ゲーム開発における共通の課題

セッションの冒頭では、多くのゲーム開発現場が直面するであろう共通の課題が提示されました 。まず1つめが、開発チーム外のメンバーとの実行環境の違いによる問題です 。例えば、プロデューサーやプロモーションチーム、中間ROMのレビューチームなどが使用するPCは、必ずしもゲームを快適に動作させるスペックを持っているとは限りません 。多くの場合、ノートPCが使用されるため、実機でのプレイフィールを確認してもらうのに手間がかかるという課題がありました 。

さらに、『Faaast Penguin』のクローズドベータテストの際には、ビルドの配布方法も大きな課題であったと述べられました 。テスト参加者に実行ファイル(.exe)を直接配布することのセキュリティ的な懸念や、ストアページを介して配布するための設定の煩雑さが、開発の負担になっていたのです 。

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これらの課題に対し、解決策として期待されたのが「Amazon GameLift Streams」でした 。

課題解決の切り札、Amazon GameLift Streamsとは

通常のゲームは、実行ファイルをPC等にインストールして実行することでプレイする環境が整います。Amazon GameLift Streamsは、アプリケーションをサーバー上で実行し、その映像と音声をWebブラウザ経由でユーザーにストリーミングするAWSのクラウドゲーミングサービスです 。これにより、ユーザーはPCスペックやOSを問わず、ブラウザさえあればどこからでもリッチなアプリケーション体験を得ることができます 。

この技術がもたらす価値は大きく、主に以下の4点が挙げられました 。

  • スムーズでリアルタイムなゲーム体験をグローバルに提供できます 。
  • ユーザーは面倒なインストール作業なしに、すぐにゲームをプレイ開始できます 。
  • 独自の配信チャネルを構築することで、多くのプレイヤーに直接アプローチが可能です 。
  • 実行ファイルを配布することなく、セキュアなプレイテスト環境を構築できます 。

導入と設定の手軽さ

クラウドサービスをつかった環境構築と聞くと、設定が複雑で時間がかかるイメージがあるかもしれません。しかし、GameLift Streamsの導入プロセスは非常にシンプルであると説明されました 。主な手順は、「ビルド(実行ファイル)のアップロード」「Runtimeの選択」「サーバーの設定」「ゲームセッション開始」の4ステップで、AWSアカウントがあれば数時間程度で設定が完了するとのことです 。

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実際の使用感とパフォーマンス

セッションでは実際の『Faaast Penguin』の動作デモも紹介されました。クラウドゲーミングでありながら、アクションゲームでも問題なく「サクサク動く」と評価されており、実機と比較してわずかな遅延は感じるものの、プレイに支障はなく十分に許容範囲内であるとの感想が述べられました 。

環境構築が手軽にできる

環境構築が手軽に行える点も評価されていました。AWSアカウントがあれば、AWSの操作に慣れてないクライアントエンジニアであっても数時間で環境を構築できるということでした。

気になるコスト面

導入のハードルとして気になる費用面についても、非常に魅力的であると報告されました 。例えば、5人が2時間ずつビルドチェック(合計10時間)を行った場合の費用は、約$22.5(約3,300円)と、コストを抑えながら環境を運用することが可能です 。また、アクセスがない待機時間中のコストは1日1ドル以下と、非常に低く抑えられる点も強みです 。

今後の展望と活用事例

ヒストリアでは、今回の好感触を受け、今後のプロジェクトでビルドチェックに本格導入することを検討していると表明しました 。スペックの低いノートPCでも安定したグラフィックで確認できるため、ヒストリアさんにとっても、クライアント(発注者)さんにとっても環境構築の手間が大幅に削減される点が評価されています 。

さらに、ユーザーテストでの活用も有力な選択肢として挙げられました 。実行ファイルの配布が不要になるためセキュリティが向上し、テスト環境の準備も非常に楽になります 。仮に500人規模のユーザーテストを2時間実施した場合でも、コストは一人あたり$4.50(約663円)、全体で$2,250(約331,500円)と、十分に許容範囲であるとの試算が示されました 。

感想・雑感

クラウドゲーミング技術が単なるゲームの新しい提供方法に留まらず、開発プロセスそのものを効率化し、品質を向上させるための強力なツールとなり得ることがよく分かるセッションでした。

特に、開発者以外のスタッフや外部テスターとの連携においてボトルネックとなりがちな「実行環境の差異」や「ビルド配布の手間とリスク」といった普遍的な課題に対し、Amazon GameLift Streamsが低コストかつ手軽に導入できる有効な解決策であることも理解できました。

今後のゲーム開発において、Amazon GameLift Streamsが有効な手段であることを多くの人に知ってもらい、使ってもらうとうれしいです。

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