
【セッションレポート】全方位を録り、全空間を「実装、再現」する ~64chAmbisonicsマイクを用いた高精細・全方位IR収録の最前線と次世代の空間表現~ #CEDEC2026
はじめに
CEDEC2026 で聴講したセッションのレポートです。サウンドの空間表現の手法である Ambisonics に焦点を当て、その技術動向と、産学共同で取り組む 64ch マイクによる全方位の IR 収録が紹介されました。
セッションの概要は次の通りです。
- タイトル: 全方位を録り、全空間を「実装、再現」する ~64chAmbisonicsマイクを用いた高精細・全方位IR収録の最前線と次世代の空間表現~
- 登壇者: 広瀬 健治 氏 (ヤマハ株式会社)、齋藤 峻 氏 (洗足学園音楽大学)、加藤 裕幸 氏 (株式会社 Moonbow Music)
- 日時: 2026 年 7 月 22 日 18:00 から 19:00
- 会場: 第 6 会場

Ambisonics とその追い風
Ambisonics は、3 次元の音場を全方位にわたって一貫した形式で捉え、再現する音響技術です。1970 年代に理論的な基礎が築かれ、特定のスピーカー配置に依存せず音場そのものを記述できる点が特徴とされます。全方位の音を扱えるため、環境音のような空間表現の要素と相性がよいと説明されました。
一方で、これまでは収録機材の制約や計算負荷、制作環境の未成熟さから、導入は限定的でした。しかし近年は状況が変わり、Ambisonics への敷居が下がっているといいます。ワンデバイスで手軽に収録できるマイクの登場や、多チャンネルを扱える編集ツールの普及、Apple の空間音響フォーマット ASAF のように 6DoF を前提とした仕組みの広がりが、その追い風として挙げられました。

64ch マイク ViReal Mic による IR 収録
こうした流れの中で紹介されたのが、ヤマハが試作した 64ch 収録の Ambisonics マイク ViReal Mic です。理論上は最大 7 次までの Ambisonics で音場を収録でき、より高精細な空間の記録を狙います。

本セッションで焦点が当てられたのは、この ViReal Mic を用いた IR (インパルス応答) の収録です。IR とは、ある空間が一瞬の音に対してどう響くかを記録したもので、これを別の音に畳み込むことで、その空間の響きをまとわせられます。従来は 1 次の Ambisonics IR が使われることが多い中、64ch で測定した IR をモノラル音源に畳み込む試みが示されました。その結果、音の位置や距離、向き、空間の奥行き、さらには収録した場所とは別の空間までも、IR の畳み込みだけで表現できたのではないか、と報告されました。ただし、主観評価や音響理論的な厳密な検証はこれからとのことです。

感想
3D 空間をわざわざ組まずとも、IR の畳み込みだけで空間の響きや奥行きを再現できるというアプローチは、空間音響の作り方を変えていきそうだと感じました。マイクを動かしながら収録し、プレイヤーの移動を音の側から支える 6DoF 表現への発展も楽しみです。







