【レポート】レイトレ時代のゲームグラフィックス Vol.2 – ハイエンドタイトル制作向けゲーム実行環境とつながる制作環境の取り組み紹介 #CEDEC2023 #classmethod_game

ゲームグラフィックは、どんどんレイトレーシングベースになりつつあります。それにあわせたワークフローについての研究や成果について解説されているセッションとなります。
2023.09.02

こんにちは。ゲームソリューション部の出村です。

ここではCEDEC 2023で講演された「レイトレ時代のゲームグラフィックス Vol.2 - ハイエンドタイトル制作向けゲーム実行環境とつながる制作環境の取り組み紹介」について重要と思った解説を中心にまとめてみました。

セッションの概要

レイトレ時代のゲームグラフィックス Vol.2 - ハイエンドタイトル制作向けゲーム実行環境とつながる制作環境の取り組み紹介

本セッションでは、次世代のハイエンドゲーム制作を見据えて開発しているレイトレベースのゲーム実行環境と制作環境の取り組みを紹介します。

前回の講演、CEDEC 2020年 レイトレ時代のゲームグラフィックスVol. 1 でNVIDIA Falcor を使ったリファレンス環境構築を紹介しました。

今回は、リファレンス環境からゲーム実行環境の構築に進みました。その過程をご紹介します。

簡単な技術デモも予定しています。

具体的には、下記2点について説明します。

  1. ゲーム実行環境

NVIDIA Falcor からレイトレベースのゲーム実行環境へ

リアルタイムレイトレの利点と課題

ReSTIR ベースの綺麗な光と影を生み出すリアルタイム大域照明

  1. つながる制作環境

USD ベースのつながるゲーム制作環境

NVIDIA Omniverse を活用したグラフィックスデザインとレベルデザインの並行開発

内容について

今回のセッションの発表について、印象深いところを中心に取り上げてみました。

Omniverseについては、 メタバース アプリケーションを開発し運用するための Omniverse プラットフォーム|NVIDIAもあわせて参考にしてください。

つながる制作環境

ゲーム制作のワークフローは、データ形式を全てUSDで行い、社内Omniverseを用いてデータの保存、編集、リファレンスの確認を行っています。社内Omniverseは自社のサーバーで構築ができ、その後の表示は社内のゲームエンジンやUnityなどを使用しています。

USDフォーマットについて

USDフォーマットは3Dシーンを記述する新しい標準フォーマットとして現在普及段階にあります。このフォーマットは階層構造とレイヤー構造を持ち、共同作業に適した設計となっています。

NVIDIA Omniverseとは

アセットやシーンの共同制作が可能なプラットフォームは、DCCツールやゲームエンジン、各種アプリケーションと互換性があります。このプラットフォームはクラウドだけでなく、社内サーバーでの構築も可能です。

リアルタイム・トレーシング

デザインとゲーム実行環境がつながる制作環境を実現するための要素技術として解説しています。

開発の動機

開発のイテレーションを最大化するため、アーティストからは特定の環境に依存しないデザインや、慣れ親しんだDCCツールの利用を希望しています。

これまでと違う表現が求められているが、使い慣れたDCCツールが使える方が作業効率がよいので、これらの要望も確かに理解できます。

並行開発のメリット

ファイルベースの同期による待ち時間を避けるため、並行開発ができるようになっています。USDを利用することで、このような並行開発が可能となります。これにより、チーム間の待ち時間なく効率的に作業が進められます。

USDベースのワークフロー

USDのレイヤー単位でのデータ管理機能は、データの変更をそのレイヤー内で完結させることができます。この特性により、他のレイヤーに影響を及ぼすことなく、複数のチームや個人が同時に作業を進行させる並行開発が実現できます。

NVIDIA Omniverseの活用

USDベースのワークフローを試すには、まずUSDに対応しているプラットフォームやツールを導入するのがよいです。共同でのアセットやシーン制作をサポートしているプラットフォームを使うことで、チーム内での協力作業がスムーズになります。

NVIDIA Omniverseは既存のDCCツールやゲームエンジン、その他のアプリケーションがUSDに対応している環境です。セキュリティの観点から社内サーバでの構築を希望した場合であっても対応可能でした。

Omniverseを活用した並行開発ワークフロー

Omniverseを活用することでUSDを利用した並行開発のワークフローがあまり開発工数を裂くことなく構築することができました。

USD Layerを活用した並行開発

USDのレイヤーを活かして、非破壊でアーティストとプログラマーの並行開発を行う事ができました。開発効率が向上させるにはこれができるのがあった方がよいのは理解できます。

ゲームの実行環境について

ゲームの処理というのは、次のスライドのように行われます。とくにコンソールゲーム機などのメモリは有限なので、データの読み込みは、LODなどを行うためにもデータストリーミングでデータを読み込む必要があります。

データ指向設計

データ指向設計は、データストリーミングはデータを読み込む際に有利な設計手法となります。地形など何か決まっている位置にモノが配置されている場合は、とても有利な設計方法となります。

本ワークフローの利点と課題

メリットとしては、リファレンスの整合性が確認しやすい点があります。これによって、デザイナーが実際の映像をみながらデータを調整するといった事が行いやすい環境となりました。

また、デメリットとしてゲーム用のエフェクトやデカールには不向きとなります。

まとめ

今回の取り組みで分かった事を解説します。まず、メリットとしてUSDレイヤーで担当毎に非破壊の作業ができる点があげられます。デメリットとしては、USDをチームで扱うのはまだ不慣れな人が多いので、基礎概念の理解が必要となります。これについてはアーティストへの布教活動が必要だと感じています。

感想・雑感

ゲームのグラフィックスも進化し、どんどんレイトレーシングベースの画面になりつつあります。ただ、綺麗な画面を出力するだけではなく、ゲームとしてのインタラクティブ的な要素も満たす必要があります。こういった先行事例を公表してもらえるのは、業界的にはとても有意義な事だと重いながらセッションを視聴していました。