[レポート]CES 2026のSiemensのKeynoteを聞いてきました

[レポート]CES 2026のSiemensのKeynoteを聞いてきました

2026.01.07

こんにちは!おおはしりきたけです。CES 2026に参加しています。今回の記事は、SiemensのKeynoteのレポートとなります。昨日のAMDのキーノートの混雑具合を考えると朝から並ぶのが厳しそうかなと判断し、CESアプリで動画を見ましたので、現場のレポートではないのですが、ご了承ください。

1.Siemens CEO:Roland Busch氏の発表

AIを産業のインフラへ

Busch氏は、AIを単なるブームではなく、社会を支える不可欠な「基盤」として位置づけました。

  • 現代の電気としてのAIを表現
    • 150年前にSiemensが普及させた電気と同様に、AIは「機能」ではなく、産業を動かす「力」になると定義しました。
  • Digital Twin Composerの発表
    • 仮想空間でのシミュレーションを現実の工場制御に直結させる新ツールをローンチ。これにより、物理的な投資を行う前にデバッグを完了させる手法を提示しました。
  • 社会課題の解決
    • AIを活用することで、がんの新薬開発プロセスを最大50%加速させ、グリッドの容量を設備投資なしで20%拡大できる実績を紹介しました。
  • 透明なAIの実現
    • 私たちが電気を意識せずに使うように、AIが空気のように当たり前に存在し、人々の日常をより良くする「Invisible Fabric」になる未来を掲げました。

2. NVIDIA

革ジャンでおなじみのNVIDIAのCEO Jen-Hsun Huang氏が登場しました。
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Physical AIがもたらすシミュレーションの進化

Jen-Hsun Huang氏は、これまでの「AI=テキストや画像の処理」という枠組みを超え、物理法則を理解するAI(Physical AI)の衝撃を語りました。

  • シミュレーションからエミュレーションへ
    • 従来のシミュレーションは物理法則をゼロから計算していましたが、Physical AIは物理の「振る舞い」を学習します。これにより、複雑な物理現象の予測スピードが1万倍〜10万倍に加速し、リアルタイムでの検証が可能になるとのことです。
  • 設計の自動提案
    • 物理法則を熟知したAI Agentが、単なる検証役ではなく、エンジニアと共に最適な設計案を自ら提案するパートナーへと進化します。

巨大なロボットとしての製造の未来

Jen-Hsun Huang氏が描く未来の工場は、単に自動化された空間ではなく、工場そのものが一つの巨大な自律ロボットであるという話をしていました。

  • Outside-in AI
    • 自動車が内側にセンサーを持つAIなら、工場は無数のセンサーで全体を監視・制御する外側を向いたAI(Outside-in AI)として機能します。
  • ロボットの多層構造
    • 巨大なロボット(工場を御題なロボットと表現)が、内部の産業用ロボットたちを指揮し、AIで定義された次世代製品(ロボット的な製品)を組み立てるという、全プロセスがAIでつながる構想の話をしていました。

2. PepsiCo

PepsiCoからはAthina Kanioura氏が登場しました。
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既存インフラの最適化と驚異的な導入成果

PepsiCoのような巨大企業にとって、最大の課題は「古い資産」の活用です。

  • デジタル・ファーストの設計
    • 新たな生産能力を「建てる」のではなく、既存のインフラ(中には50年以上前の古い倉庫も含まれます)の能力を、デジタルツイン上でいかに最大化するかに焦点を当てましたという話でした。
  • 3ヶ月での劇的改善
    • 米国のゲータレード工場に「デジタルツイン・コンポーザー」を導入した結果、わずか3ヶ月で20%の効率向上を達成しました。これにより、全社レベルで10〜15%の設備投資削減が見込まれているとのことでした。

数ヶ月を数日に変えたデジタルツインのスピード

スピードが向上した理由は、単なる計算速度の問題ではなく、物理的な試行錯誤の撤廃」にあります。

  • 事前デバッグの徹底
    • 1$でも物理的な投資をする前に、仮想世界ですべての設計を確定させる」という手法を徹底したとのことで、この徹底がスピード向上の大きな理由かなと思いました。
  • 統一された環境
    • 膨大なデータを「フォトリアルな統一環境」に統合することで、何百、何千というレイアウト案のシミュレーションを並列で実行可能になりました。フォトリアルな統一環境とは、「物理的な正確さ」と「あらゆるデータの統合」が高度に融合した仮想空間です。
    • これにより、従来は数ヶ月を要した計画策定が、わずか数日で完了する圧倒的なリードタイム短縮を実現したとのことでした。

3. Microsoft

Microsoftからは、CEOのSatya Nadella氏がビデオメッセージで登場し、現地にはJay Parikh
氏が登場しました。
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Agentic AIへ

AIは、道具から自律した同僚へということで、Satya Nadella氏のビジョンをJay Parikh氏がステージで具体化したのは、AI進化の第3の波でした。

  • 3つの波の定義
    • 第1波:チャットボット
    • 第2波:タスク代行
    • 第3波:複数のAIが連携して複雑な工程を自律的に進めるAgentic AI
  • 産業界での効果
    • 例えばCAM(加工)のプログラミング時間を80%削減したり、工場の生産性を30%向上させたりするなど、AIが「指示待ち」ではなく「自ら最適解を求めて作業を完結させる」フェーズに入っているという話でした。

組織文化の課題

Jay Parikh氏は、AI導入における真のボトルネックは技術ではなく「組織文化」にあると深く踏み込みました。

  • 「個人」と「組織」の乖離
    • 多くの従業員は個人でAIを使いこなし、個人としてAI活用が洗練されている一方、職場ではコンプライアンス、リスク、セキュリティ、さらには「評価制度との不一致」といった制度的な逆風(Institutional headwinds)によって、AIの活用が阻害されていると指摘しました。
  • 野心のレベル(Level of Ambition)の引き上げ
    • AIの能力は、現在の私たちが使いこなしているレベルを遥かに上回っています。最大の課題は、リーダーシップがこのテクノロジーで「何ができるか」という野心の基準を、根本から引き上げることであると強調していました。

まとめ

Siemens のKeynoteを聞いて感じたのは、私の所属している製造ビジネステクノロジー部が製造業のお客様のソリューション開発で製造現場を支える立場として、日本の製造業にとって現実的な指針になると感じました。

まず、PepsiCoが50年前の古い設備をデジタルツインで最適化した事例は重要です。日本には多くのレガシーな工場がありますが、それらを壊して作り直すのではなく、クラウドやAIを使って既存資産の能力を最大化させるアプローチに大きな可能性があります。

また、AI導入の障壁が技術そのものではなく、組織文化や制度にあるという指摘も日本の現状と重なります。現場の個人がAIを使いこなしていても、組織としてのルールが追いついていないのであれば、そのギャップを埋める仕組み作りが急務です。

我々クラスメソッドとしても、製造業のお客様にAIを単なる追加機能として提供するのではなく、電気のように当たり前に使えるインフラとして現場に実装していくことが求められています。今回のSiemensの発表は、日本の製造現場が持つ緻密なデータを最新のAIにいかに流し込むかという現場の整理が非常に重要だと改めて感じたのと、現状の設備を維持したまま世界水準の効率を実現できることを示唆しており、非常に勇気づけられる内容でした。

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