「ぜひうちをかえてほしい!」「うちのやりかたはこう」というすれ違いが起こる理由
こんにちわ。従業員体験( EX ) の向上がミッションのエンジニアリング統括室に所属しているてぃーびーです。
変化が激しく、計画をもとに長期間をかけて物事を進めていくようなやりかたが通じにくくなっている昨今、「変化に強い組織づくり」を目指すケースは多いように思います。そんなとき、変革人材の採用時に
- 面接官「ぜひあなたにどんどん変革をしてほしい。うちをかえてください!」
- 候補者Aさん「はい!業務の効率化や、新しいノウハウの活用は得意です!」
のようなやりとりをしたにも関わらず、いざ入社すると
- 入社したAさん「ここの業務をこうすると効率化できます!」
- 既存社員のBさん「いや、このままでいいから。私達が作った業務に問題があるっていうの?」
- 入社したAさん「いや、前職ではこの方法がうまくいっていて」
- 既存社員のBさん.oO (そんなに前職がいいなら転職しなければいいじゃないか……)
というのは、あるあるではないでしょうか。 この行間に存在するものを詳細化し、すれ違いの原因を把握しやすくしようと思います。
変革が起こるまでのプロセス
まず、前提として変革が起こるまでのプロセスを細分化します。 変革と一言でいっても、そこには以下のようなプロセスがあります。
- 現状のプロセスの問題点を発見し、明確にする
- 問題点を改善する意思決定をする
- 解決策の検討, 選定
- 解決策の実施
- フィードバックの取得
- フィードバックを元にした改善
この全体を推進するには、それぞれ異なる能力が必要です。特に、 1 と 2 と 3 〜 6 のそれぞれは大きく性質が異なります。それぞれに必要な能力は以下のようになります。
- 1 - 問題発見能力、問題定義能力
- 2 - チェンジ・エージェントとしての能力
- 3 〜 6 - 施策遂行能力
- 既知の施策で解決できる - 既存施策の適用能力
- 既知の施策で解決できない - 新規施策学習能力
各能力の説明
プロセスで紹介した各能力を説明します。
問題発見能力、問題定義能力
問題発見能力について。必要な情報を収集し、 Expected と Actual を整理し、そこに Gap があることを発見します。 Gap の対象としては業務の質や効率などです。TDDっぽい。
Actual については、現状に関して情報を拾い集めます。業務プロセスの資料、作業手順書、個別ヒアリングなどが材料となります。 次に Expected はその領域に関するもともと持っている知識です。例えば、前職で類似する領域を担当し、現職よりも質や効率のよい方法をとっていて、相対的によりよい状態を知っているということです。知識元は過去の経験以外にも書籍やウェブで知ったノウハウということもあるでしょう。
これらの情報を整理して問題が解決するに値する重要なものであることを定義するのが問題定義能力です。 以下のような構造で問題をまとめることができるのがゴールです。
# 背景 問題の背景。現在の状態になっている経緯など
# 問題 問題の内容。 Expected と Actual の Gap
## 要因 * 問題を引き起こしている個別の要因1 * 問題を引き起こしている個別の要因2
# 理想の状態 Expected の状態
ここまでいくと、問題を解決する意思決定の場に進む準備ができます。
チェンジ・エージェントとは?
チェンジ・エージェントとは、組織に変革をもたらすことができる人。触媒的な存在です。
明確化した問題が自分の中で納得感があってもステークホルダーの協力がなければ解決の意思決定や実際の解決がうまくいきません。 そこで、チェンジ・エージェントは衝突の解決、改善に対する納得感の醸成、協力者の獲得など、変革時に発生する人に関する障壁を取り除いていくことになります。そのため、個別の解決策に関する知識、スキルというよりは対人関係のソフトスキルが重要になってきます。心理学、プレゼンテーション能力、交渉力、コンフリクト・マネジメントなどです。
施策遂行能力 / 既存施策の適用能力とは?
既存施策の適用能力は任意の解決策を知っている、やったことがある、できる能力です。
例えば、採用業務の効率化として ATS や、日程調整のツールの導入・活用経験のある人が転職先で1から導入するようなケースです。
施策遂行能力 / 新規施策の学習能力とは?
新規施策の学習能力 は対象の問題に関する解決施策の手札を持たず、ゼロからリサーチして、有効な施策を選択したり、場合によっては自ら編みだすの能力です。
例えば、問題・課題に関する典型的な解決策を見つけたが、自分は実施したことがないため、必要な学習元となる情報を見つけ、理解し、施策の前提となる学習段階からすすめるようなケースです。学習元としては、教科書的にまとまった情報の他に、実際にそれを実施したことがある人からのヒアリングで得る情報などがあります。
組織の期待の細分化
組織の期待としては以下のバリエーションがありえます。
- 1 - 問題発見・問題定義、チェンジ・エージェント、施策遂行すべてやってほしい
- 2 - 問題発見・問題定義、施策遂行をやってほしい。チェンジ・エージェントは既存メンバーがサポートする
- 3 - お膳立てはするので施策遂行をガンガンやってほしい
- 4 - 問題発見・問題定義、チェンジ・エージェントをやってほしい。解決施策は他の人につなぐところまで
問題発見・問題定義のみをひたすらやってほしい、というケースはなさそうなので除外しています。 組織が求める頻度として多そうかな、と思う順に並べてあります。実際は 4 ってけっこう有効な選択肢だと思うのですが、ここだけを求めているケースはあまりきいたことがありません。問題発見・定義とチェンジ・エージェントの両方を質高く行うのが一番むずかしいと思うので、ここに集中してもらうと価値がでやすいよね、という話です。
候補者さんの経験、能力の細分化
候補者さんの経験、能力としては以下のバリエーションがありえます。
- 1 - 施策遂行をできる
- 2 - 問題発見・問題定義をできる
- 3 - 問題発見・問題定義、施策遂行をできる
- 4 - 問題発見・問題定義、チェンジ・エージェントをできる
- 5 - 問題発見・問題定義、チェンジ・エージェント、施策遂行すべてできる
チェンジ・エージェントができる人は問題発見・問題定義ができるだろう、という前提でまとめています。 能力を持っている人が多そうな順にまとめています。
任意の領域に関して施策をやったことがある、問題を見つける・明確にできる人はある程度いそうです。自分で問題を発見、明確化し、改善施策をやり遂げるところまでいくとぐぐっと減りそうです。さらに人の問題をうまく取り扱ってなんとかしていけるチェンジ・エージェントもできる人はごくわずかでしょう。
すれ違いの典型パターン
組織が求める役割と、入社者が持っている能力や期待されていると思っている場所について、おそらくこのパターンが一番多いでしょう。
- 組織の期待
- 問題発見・問題定義、チェンジ・エージェント、施策遂行のすべてをやってほしい
- 入社者の能力 / 期待への認識
- 施策の立案・遂行の経験があり、施策の立案・遂行のみをやればいい
この場合、入社者は新しい取り組みの導入を期待されて入社したと認識しているので、施策を導入できる前提で物事を進めようとします。すると、現場の既存メンバーからの反発にあい、改善策を取り入れる意思決定すら取り付けることができずに終わります。ガンガン新規施策で業務を改善する経験を積むことができると考えて入社したはずが、結局レガシーな業務プロセスで不満を持ちつつ仕事をするしかなくなる、という結果があるあるでしょう。
まとめ
変革人材の採用に関するすれ違いを詳細化しました。採用する相手にどこまでを求めるのか、どこの部分は既存メンバーが持つのかなど整理しておくとよいでしょう。