ChatGPTに複数ロールを設定してリーンキャンバスを作ってもらった
こんにちは。CX事業本部Delivery部デザインチームの小峰です。
私も最近はAI界隈が気になっていて、MidjourneyやStable Diffusionといった画像生成系を試したり、ChatGPTも試しています。
今回はChatGPTのモデル GPT-4を用いてリーンキャンバスをつくってもらいました。
ただChatGPTさん「ひとり」に壁打ち相手になってもらうだけでは面白くありません。
それに壁打ちを進めることで気づきや発見を得てブラッシュアップをしたいのですが、何度もChatGPTさんから質問されるのも面倒です(笑)
そこで「ロール(役割)」をいくつか設定しそれを演じてもらうことで、リーンキャンバスを作ってもらうことができるか? を試してみました。
プロンプト
検討の元となるための材料として、簡単なプロンプトを組んでみました。比較的規模の大きい旅行代理店事業を有する企業が新しい事業計画を立てようとしている状況を想定しています。
読めばAirbnbを意識したものであるとお気づきの方もいらっしゃるはずです。
# 「ロール設定」パラメータ
A = これを書きました。新規事業責任者です
B = プロフェッショナルのWebプロデューサーです
C = プロフェッショナルのWebデザイナー兼フロントエンドエンジニアです
D = プロフェッショナルなIT関連の投資家であり起業家です#「自社情報」パラメーター
旅行代理店
1000名規模#「ユーザー層」パラメーター
40代から60代の男女
男女比率は50%ずつ
夫婦と子ども1人の核家族や子どもが独立した後の夫婦
比較的貯金に余裕があり旅行が趣味
ただし仕事が忙しくあまり遠出はしづらい
気軽に都会の喧騒から離れ、かつ、非日常感を味わいたい# 「自社の強み」パラメーター
主要な観光地から少し外れていて、かつ、都市部から近い地域の旅行プランやツアーが強み
大手と比較してニッチだが固定ファンが付いている
数万円から数十万円の価格帯#「自社の弱み」パラメーター
旅先での体験についての顧客満足度は高いものの、場所が場所だけに宿泊施設が充実しておらず、近郊のホテルや旅館が対象だが宿の確保でいつも困っている
宿に対するポジティブな意見が少なく、「狭い」「汚い」「不親切」といったネガティブな意見が見られる# 「実現したいこと」パラメーター
観光地の近くで空いている家や部屋を旅行者に使ってもらうサービスを展開したい
日本ならではの「おもてなし」を売りにして、日本を訪れる外国人利用者も増やしたい# 「サービス提供地域」パラメーター
日本の都市部から近い観光地# 「チーム規模」パラメーター
プロダクトマネージャー1名、システムエンジニア3名、フロントエンドエンジニア兼デザイナー2名、マーケター1名、バックオフィス1名の合計9名# コンテンツの詳細
各ロールごとに演じてください
これらのパラメーターを元に独自に考えてリーンキャンバスを作成してください
A、B、CはDに対しリーンキャンバスを提示してください
Dはそのリーンキャンバスに投資しても良いか否か判断してください
A、B、C、Dのメンバーで協議しリーンキャンバスをブラッシュアップしてください
わたしはファシリテーターとして参加します# 備考
リーンキャンバスをより効果の出るものとするために、ロール間で積極的に質問し合ってください
ディスカッション
期待通り、各ロールごとに役割分担したディスカッションがスタートしました。
D(IT関連の投資家・起業家):
このリーンキャンバスを拝見しましたが、全体的に良い方向性だと思います。ただし、いくつか懸念点や改善点があります。まず、競合他社との差別化を明確にする必要があります。また、運営コストや初期投資の見積もり、将来的な収益予測も詳しく提示してほしいです。A(新規事業責任者):
競合他社との差別化については、弊社の旅行プランやツアーの提案力を活かし、宿泊施設だけでなく、現地での体験もセットで提供することができると考えています。運営コストや初期投資、収益予測については、詳細を調査して改めて提示します。B(Webプロデューサー):
ウェブサイトやアプリの開発・運用コストや宣伝費用も考慮する必要があります。また、SEO対策やSNSマーケティングなどで集客力を高めることも重要です。C(Webデザイナー兼フロントエンドエンジニア):
デザインやユーザーエクスペリエンスの面でも、競合他社との差別化を図りたいと思います。特に、日本ならではの「おもてなし」を感じられるデザインで、観光客に魅力的なサービスになるよう取り組みます。A(新規事業責任者):
それでは、Dの意見を踏まえてリーンキャンバスをブラッシュアップし、再度提案します。どうぞよろしくお願いいたします。D(IT関連の投資家・起業家):
リーンキャンバスのブラッシュアップが完了したら、再度検討してみたいと思います。皆さんの積極的な取り組みに期待しています。A(新規事業責任者):
リーンキャンバスをブラッシュアップしました。競合他社との差別化を明確にし、運営コストや初期投資の見積もり、将来的な収益予測を追加しました。B(Webプロデューサー):
ウェブサイトやアプリの開発・運用コスト、宣伝費用、SEO対策やSNSマーケティングの費用も盛り込みました。これにより、集客力を高めることができると考えています。C(Webデザイナー兼フロントエンドエンジニア):
デザイン面でも競合他社との差別化を図り、日本ならではの「おもてなし」を感じられるデザインにしました。また、ユーザーエクスペリエンスにも力を入れています。D(IT関連の投資家・起業家):
ブラッシュアップされたリーンキャンバスを確認しました。競合他社との差別化や収益予測が明確になり、投資する価値があると判断します。ただし、定期的な進捗報告と共に、市場状況や競合状況の変化に対応するための戦略も準備しておくことが重要です。今後の成功に期待しています。
ちょっとだけ軌道修正
さて、ここで宿泊施設の改善という点について当初のテキストに書かれていた「観光地の近くで空いている家や部屋を旅行者に使ってもらうサービスを展開したい」という部分への考慮が含まれていないように感じました。そこでファシリテーターよりの提言として、気付いてもらうよう促してみました。
小峰からの入力:Aさんが作成した当初の資料には「観光地の近くで空いている家や部屋を旅行者に使ってもらうサービスを展開したい」という記載がありました。宿泊施設の改善についてはこちらを参考により強化できるのではありませんか?
A(新規事業責任者):
確かに、空いている家や部屋を活用することで宿泊施設の改善が期待できます。このアイデアをリーンキャンバスに反映させ、より魅力的なサービスにしていきましょう。B(Webプロデューサー):
ウェブサイトやアプリに、空いている家や部屋を探しやすくする機能を追加しましょう。また、利用者が安心して宿泊できるよう、品質管理やサポート体制も整えていくことが重要です。C(Webデザイナー兼フロントエンドエンジニア):
デザインやUIも、空いている家や部屋の検索や予約がしやすいように改良しましょう。利用者にとって快適なユーザーエクスペリエンスを提供することが大切です。D(IT関連の投資家・起業家):
空いている家や部屋を活用することで、宿泊施設の改善が期待できますし、新たな収益源も生まれるでしょう。このアイデアをうまく取り入れ、事業の成功に繋げていきましょう。
小峰からの入力:リーンキャンバスのブラッシュアップは必要でしょうか? 各役割の皆さん回答をお願いします
A(新規事業責任者):
はい、ファシリテーターさんからの提言をもとに、リーンキャンバスに「観光地の近くで空いている家や部屋を活用するサービス」の強化を盛り込むことで、より魅力的な事業にすることができると考えます。ブラッシュアップを行いましょう。B(Webプロデューサー):
同意します。リーンキャンバスに空いている家や部屋の活用を加え、宿泊施設の選択肢が増えることで、顧客満足度が向上すると期待できます。また、ウェブサイトやアプリの開発計画にも反映させるべきです。C(Webデザイナー兼フロントエンドエンジニア):
私も同意します。空いている家や部屋の活用がリーンキャンバスに反映されることで、デザインやUIの改善にもつながると考えます。ユーザーエクスペリエンスの向上が期待できるでしょう。D(IT関連の投資家・起業家):
ブラッシュアップが必要だと思います。空いている家や部屋を活用することで、宿泊施設の改善だけでなく、新たな収益源も期待できます。リーンキャンバスにこのアイデアを取り入れ、事業の成功に繋げていきましょう。
小峰からの入力:それではAさん、ブラッシュアップしたリーンキャンバスを他の皆さんへ提示し、フィードバックを得て、必要に応じて再度改善をお願いします。Dさんは改善されたリーンキャンバスを確認し、投資に値するか否か、再度ご確認ください。
A(新規事業責任者):
リーンキャンバスをブラッシュアップし、空いている家や部屋の活用を盛り込みました。これにより、顧客満足度の向上や新たな収益源が期待できます。皆さん、フィードバックをお願いします。B(Webプロデューサー):
リーンキャンバスを確認しました。空いている家や部屋の活用が明確になり、顧客満足度向上のためのウェブサイトやアプリの開発計画も具体的になっています。良い方向だと思います。C(Webデザイナー兼フロントエンドエンジニア):
デザインやUIの面でも、空いている家や部屋の活用が盛り込まれています。ユーザーエクスペリエンスを向上させるためのアイデアも具体的になっていて、効果的だと思います。D(IT関連の投資家・起業家):
ブラッシュアップされたリーンキャンバスを確認しました。空いている家や部屋の活用により、宿泊施設の改善や新たな収益源が見込めることから、投資に値すると判断します。ただし、運営や品質管理にも注意を払い、定期的な進捗報告と市場状況の変化への対応をお願いします。今後の成功に期待しています。
リーンキャンバスの完成
各役割の皆さん、満足しているようです。この後も私からいくつか質問や提案を盛り込み、最後にリーンキャンバスの出力をお願いしました。
小峰からの入力:ありがとうございます。Aさんリーンキャンバスの出力をお願いします。
- 問題:
- 旅行先での体験に満足するものの、宿泊施設が充実しておらず顧客満足度が低い
- 宿泊施設に関するネガティブな意見が多い
- 顧客セグメント:
- 40代から60代の男女
- 比較的貯金に余裕があり、旅行が趣味
- 仕事が忙しくあまり遠出はしづらいが、気軽に都会の喧騒から離れたい
- 独自の価値提案:
- 観光地の近くで空いている家や部屋を活用するサービス
- 日本ならではの「おもてなし」体験を提供
- ソリューション:
- ウェブサイトやアプリで空いている家や部屋の検索・予約が容易になる機能を追加
- 品質管理やサポート体制を整え、利用者が安心して宿泊できるようにする
- チャネル:
- ウェブサイト
- スマートフォンアプリ
- 既存の旅行代理店でのプロモーション活動
- SNSやインフルエンサーを活用したマーケティング
- 収益の流れ:
- 宿泊施設の提供者からの手数料
- 旅行者からの予約手数料
- 広告やアフィリエイト収益
- コスト構造:
- ウェブサイトやアプリの開発・運営コスト
- 品質管理やサポート体制の整備に関するコスト
- マーケティング活動費用
- 法的・保険費用
- 主要指標:
- 予約数
- 宿泊施設の提供者数
- 利用者の顧客満足度
- 宿泊施設に関する口コミ評価
- 繰り返し利用率
- 競合優位性:
- 主要観光地から少し外れた、都市部から近い地域の旅行プランやツアーが強み
- ニッチな市場に固定ファンが付いている
- 日本ならではの「おもてなし」体験を売りにする
と最終的な出力を得られました。リーンキャンバスでどういった項目が必要かは全く触れないまま、それっぽい内容を得ることができています。
HTMLとCSSも作ってもらってみた
ロールの中にWebデザイナー兼フロントエンドエンジニアも加えていましたので、出力をお願いしてみました。
とりあえず出力してもらっただけですから、このままで利用するのは厳しい状態です。ちなみに画像はStalbe Diffusionでサクッと出してきました。
ある程度キャッチーな文言は設置されています。さらに質疑応答や調整を加えていけばクオリティを上げられそうです。
総評
というわけで、「人」対「ChatGPT」ではなく、あえて「複数のロール(役割)を設定してChatGPTさんにディスカッションしてもらう」ということを試してみました。
新規事業計画や企画をつくったり、リーンキャンバスを作ったりしたことがある人からすると、さすがにまだまだ使い物にならないことは見て取れるかと思います。
試してみた印象としては、人からの提案は基本的に拒否されず「いいですね」「同意です」といった反応ばかりになると感じました。少なくともこんな甘い投資家さんや起業家さんはいないでしょう(笑)
ロールの設定などで改善できるかもしれませんし、もっとこちらからの質問や提案を厚めに行って、ChatGPT内での会話を進めていけば完成度を上げていくことも可能そうです。
とはいえ、初期アイデアを練ったり、気づきを得たり、各ロールがどういった視点なのかであったり、ベースとなる知識を得るといったことはスムーズに感じられました。全く知らない業界や領域の単語や文章を元にベースとなる情報を入力し、あとは質疑応答を繰り返していけば多くの気づきが得られそうです。ちなみに競合について質問してみたところではきちんと「Airbnb」を挙げてくれました。仮に競合について全く知らなかった場合、この気づきはその後の検討内容に大きな影響を及ぼすでしょう。
また、初心者、初学者にとっても有用に感じました。各ロール(役割)の人たちがどういった視点や専門性を持っているのか、リーンキャンバスとはどういったものかを垣間見ることは十分にできるものかと思います。これで雰囲気や基本を掴みつつ、Webで検索したり書籍を読んだりすることで理解が深まるでしょうし、そういった「何を学べばいいのか?」ということを探りやすいのではないでしょうか。
まだ改善の余地はたくさんあるものの「AIにディスカッションさせる」というのも可能性がありそうですね。
HTMLとCSSについては、時間の関係でそこまで試行錯誤はできていませんが、必要最低限のコードは出力できました。画像については記載の通りStable Diffusionで出力しています。シンプルなWebサイトであれば、近いうちに生成してくれるようになるかもしれませんね。
リーンキャンバスとサイト制作をものすごく高速に実現できれば、今まで以上に市場に出せるスピードが早まることになります。伴ってMVP(Minimum Viable Product)をつくってPMF(Product Market Fit)を探るサイクルも早まるでしょう。
おまけ
出力されたコードを念のため下記に貼っておきます。
<! -- HTMLファイル(index.html) -->
<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
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<meta charset="UTF-8">
<meta name="viewport" content="width=device-width, initial-scale=1.0">
<title>近郊びより - 都市近郊旅行サービス</title>
<link rel="stylesheet" href="styles.css">
</head>
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<h1>近郊びより</h1>
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<li><a href="#">プラン検索</a></li>
<li><a href="#">提供者向け情報</a></li>
<li><a href="#">お問い合わせ</a></li>
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<h2>忙しい日常からの脱出、非日常を楽しむ旅行プラン</h2>
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<a href="#">プランを探す</a>
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<h2>提供者向け情報</h2>
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<a href="#">もっと詳しく</a>
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<footer>
<p>© 近郊びより - 都市近郊旅行サービス</p>
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</html>
<! -- CSSファイル(styles.css) -->
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font-family: "Arial", sans-serif;
line-height: 1.6;
margin: 0;
padding: 0;
}
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justify-content: space-between;
padding: 1rem 2rem;
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