
Claude Codeを使って大量の写真にIPTCキーワードを自動設定してみた
Claude Codeといえばアプリ開発で重宝するツールだが、名前に「Code」が付いているせいか、コーディングにしか使えないと思われがちだ。しかし実際には、小説執筆や作業自動化など、幅広い用途で活用できる優秀なツールである。
本記事では、写真にIPTCキーワードを自動登録する方法を紹介する。大量の写真整理に悩んでいる方の参考になれば幸いだ。
写真管理の現状
私は現在、Eagleというソフトウェアで写真を管理している。以前デザイン会社で働いていた頃はAdobe Lightroomを使っていたが、個人利用にはややオーバースペックに感じ、現在はEagleに落ち着いている。
Eagleには便利な機能があり、設定で 画像を追加する同時に自動的にIPTCキーワードをタグに追加する
を有効にしておくと、写真登録時に画像に設定されているIPTCキーワードを自動でタグとして読み込んでくれる。
ただし、大量の写真に対して手動でIPTCキーワードを入力していく作業は時間がかかる。数百枚、数千枚の写真がある場合、相当な作業時間を要することになる。
IPTCキーワードとは何か
IPTCキーワードは、IPTC(International Press Telecommunications Council:国際新聞電気通信評議会)が策定した画像メタデータの標準規格の一部だ。写真ファイルに直接埋め込める情報で、その画像の内容を表すキーワードやタグを記録するために使用される。
Exifに似た規格だが、Exifが主にカメラメーカー向けで撮影条件を記録するのに対し、IPTCは報道機関向けに開発され、膨大な写真を整理するために利用されている。
この規格は報道写真の分野で広く採用されており、Adobe LightroomやPhotoshopなどの主要な写真管理・編集ソフトウェアで標準サポートされている。
IPTCキーワードを活用することで、大量の写真から特定の内容を素早く検索できるようになる。また、被写体や撮影場所別での体系的な分類・整理が可能になり、ファイル自体に情報が埋め込まれるため、ファイルを移動しても情報が失われることがない。
従来は手動でのキーワード入力が必要だったが、AI画像認識技術の発達により、この作業を大幅に自動化できるようになった。本記事では、Claude Codeを活用したIPTCキーワードの自動化に挑戦した結果を紹介する。
ExifToolによる手動でのIPTCキーワード登録
まずは基本となる、ExifToolを使った手動でのIPTCキーワード登録方法を紹介する。
ExifToolのインストール
ExifToolは画像のメタデータを操作できる強力なコマンドラインツールだ。Homebrewを使って簡単にインストールできる。
brew install exiftool
基本的な使用方法
位置情報を設定する場合:
exiftool -GPSLatitude=35.7107818 -GPSLongitude=139.7953126 -GPSLatitudeRef=N -GPSLongitudeRef=E image.jpg
撮影日時を変更する場合:
exiftool -DateTimeOriginal="2025:07:22 12:00:00" image.jpg
IPTCキーワードの複数設定
IPTCキーワードも同様に設定できる。複数のキーワードを設定する場合は、-IPTC:Keywords
を複数回指定すると、それぞれのキーワードが個別に登録される。
exiftool -IPTC:Keywords="風景" -IPTC:Keywords+="山" -IPTC:Keywords+="自然" image.jpg
この方法でも手動でのタグ登録は可能だが、大量の写真では現実的ではないだろう。
Claude Codeによる写真解析とタグ自動生成
ExifToolでの手動操作を理解したところで、いよいよClaude Codeを使った自動化に取り組む。試行錯誤の結果、以下のワークフローが最も効果的だった。
ディレクトリ構成の準備
まず、作業用ディレクトリに以下の4つのフォルダを作成する。
before
:処理前の写真を格納progressing
:処理中の写真を一時保管after
:処理完了した写真を格納skipped
:エラーで処理できなかった写真を格納
Claude Code用の処理ルール(CLAUDE.md)
以下のルールファイルでは、画像を1件ずつ安全に処理するためのフローと、IPTCタグの設定基準を定義している。特に重要なのは以下の点だ。
- 4つのディレクトリ間での段階的なファイル移動
- 英語キーワードによる一貫したタグ付け
- エラー時の自動スキップ機能
- 人物、動物、食べ物など5つのカテゴリ分類
詳細な指示書(CLAUDE.md)が長くなったため、以下のGistで公開している。
処理手順
Claude Codeでの処理は以下の手順でおこなう。
- 作業ディレクトリでClaude Codeを起動
- CLAUDE.mdファイルを読み込ませる
- 「処理せよ」と指示する
- 自動的に
before
フォルダの画像が1枚ずつ処理される
処理中は各ディレクトリ間でのファイル移動が自動的におこなわれ、エラーが発生した場合は該当ファイルがskipped
フォルダに移動される。
処理した結果
処理が完了すると、after
ディレクトリにタグ付けされた写真が保存される。ExifToolで確認すると、以下のような結果が得られる。
% exiftool -IPTC:Category -IPTC:ObjectName -IPTC:Keywords -IPTC:Caption-Abstract image.jpeg
Category : ANI
Object Name : Dog in carrier
Keywords : dog, chihuahua, pet carrier, small dog, outdoor, street, travel, pet transport
Caption-Abstract : Small dog in pet carrier bag on street
この処理済み写真をEagleにインポートすると、IPTCキーワードが自動的にタグとして認識され、検索や分類が可能になる。
厳密にはチワックス(チワワとミニチュアダックスフントのMIX犬)なのだが、頭しか見えていないのでchihuahua
として認識されている。
まとめ
Claude Codeを活用することで、従来手作業で行っていた写真のタグ付け作業を大幅に自動化できた。この方法により、数百枚、数千枚の写真に対しても効率的にメタデータを付与することが可能になる。
Claude Codeは単なるコーディングツールではなく、ルールベースの作業を自動化する強力なエージェントでもある。写真管理に限らず、様々な業務で活用できる可能性を秘めていると感じている。
大量の写真整理に悩んでいる方は、ぜひこの方法を試してみてほしい。きっと写真管理の効率が大きく改善されるはずだ。
注意事項とトラブルシューティング
API利用制限について
Claude Codeでの画像解析はAPIを多く消費するのか、コーディング作業よりも早く制限に到達してしまう。Proプランの場合、目安としては50枚程度の処理で制限に達することがある。大量処理をおこなう場合は、複数日に分けて実行した方がよいかもしれない。
他のAIツールとの比較
本記事ではClaude Codeを使用して検証をおこなった。Claude Codeは画像解析において安定した結果を提供している。他のAIツールについては、今回は検証対象外としている。
ファイル形式の対応
JPEG形式の画像ファイルで動作確認済み。PNG画像の場合、画像解析は可能だが、その後のExifToolでのIPTCメタデータ書き込みに制限がある可能性がある。
カスタマイズの可能性
CLAUDE.md
ファイルは用途に応じてカスタマイズできる。特定の業界や用途に特化したキーワード体系を定義することで、より専門的なタグ付けも実現できるだろう。