ヒアリングは質問力より空気作りかもしれない

ヒアリングは質問力より空気作りかもしれない

ヒアリングでは「上手に質問する技術」が語られがちですが、本当に大切なのは相手が話したくなる空気を作れるかどうか、かもしれません。ヒアリングでの自分の空気の作り方をお伝えします。
2026.07.07

ヒアリングスキルは「上手に質問する技術」だと思っていました

ヒアリングと言われて何を思い浮かべますか?私がヒアリングスキルとして思い浮かべるのは以下のようなことです。
事前に質問項目を準備する。オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを使い分ける。相手の話を遮らずに傾聴する。5W1Hで漏れなく聞く。論理的に構造化しながら聞く…
私もヒアリングという場を設定した際は質問票を用意して半構造化的に聞きます。

でも、この「型」通りにやると、なぜか場が固くなることに気づきました。相手が身構えて、当たり障りのない答えしか返ってこない。整理された建前は聞けるけれど、その奥にある本音が出てこないのです。

本音は「聞き出す」より「こぼれ落ちる」

振り返ってみると、相手の本音が出てくるのは、きちんと質問したときではありませんでした。
例えば「業務効率を上げたい」という整理された答えの合間に、ふとこぼれる「まあ、正直めんどくさいんですよね」の方が本音です。本音は、整理される前の言葉の中にあります。「まあ」「正直」「なんか」の後に続く一言です。
これは狙って引き出すというより、相手が油断してこぼしてくれるのを拾う、という感覚に近い。だとすれば、大事なのは上手に質問することではなく、相手が油断して話せる空気を作れるか かもしれません。

「聞くモード=黙る」だと、空気は固まる

「相手の話を聞くぞ」と思うと、つい自分は黙って相手に喋らせようとします。でも、自分が黙って相手だけが喋る一方通行の場は、想像以上に固くなります。相手は「試されている」ように感じて、本音を引っ込めてしまう。
「相手の話を聞くぞ」と思うと、つい自分は黙って相手に喋らせようとします。でも、自分が黙って相手だけが喋る一方通行の場は、想像以上に固くなります。相手は「試されている」ように感じて、本音を引っ込めてしまう。
傾聴は黙ることでははなく、相手が話しやすい空気を作りながら聞くことではないでしょうか。そして空気を作るために一番効くのは、自分から先に隙を見せることでした。

明日から試せる、空気を作る3つの行動

「空気を作る」というと感覚的ですが、私が実際にやっている具体的な行動として試しやすいものを3つ挙げます。

1. 自分から先に隙を見せる

冒頭から自分であえて隙を見せに行きます。例えば、相手に質問する前に自分の無知を先に開示します。「すみません、詳しくないので教えてもらえますか」と正直に言います。完璧に見える相手には本音を言いにくいものですが、先に隙を見せられると相手も構えなくなります。これは心理学で 「自己開示の返報性」 と呼ばれており、こちらが開くと相手も開きたくなる、という働きがあります。

2. 挨拶の冒頭に、共通項を一つ入れる

私は名刺交換や自己紹介のときに、相手の会社の場所、名前、来るのに苦労した話など、何か一つ共通点を見つけて触れるようにしています。「〇〇にお勤めなんですね、私も昔その辺に住んでいて」くらいでも十分です。共通点を見つけるだけで、「私とあなたは同じ側にいますよ」というメッセージになります。これは 「類似性の法則」 といって、人は自分と共通点のある相手に安心感を抱きやすい、という原理に基づいています。

3. 相手の話に、一度大きめのリアクションを返す

相手の話に「えっ、そうなんですか」と、素直な反応を一回返してみてはいかがでしょうか。飾らない反応があると、相手は「ちゃんと聞いてくれている」と感じて話しやすくなります。これは会話研究で 『バックチャネル』 と呼ばれ、聞き手の相槌や反応が多いほど、話し手は安心して話し続けられる、とされています。もちろん無理に演じるのではなく、本当に興味を持ったところで自然に出しましょう。もし共通項を見つけたら大きめのリアクションで喜びつつ「私もですよ!」と言いましょう。

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この3つに共通しているのは、相手から教えてもらう立場として入るという点です。そしてそれができるのは、根底に相手への興味があるからだと思います。「この人がどんな仕事をしていて、何に困っているのか知りたい」という気持ちがあれば、隙を見せることも、共通項を探すことも、自然に出てきます。逆に興味がないと、どんな行動もどこか形だけになってしまう気がします。

単発か、継続かで戦略は変わる

ただ、この「空気を作って本音を引き出す」やり方は、場面によって効き方が変わります。

継続的に会える場(週次の定例など)では、時間が味方します。初回から本音を 聞けなくても、回を重ねるうちに雑談から本音がこぼれ出します。前回の発言を「先週おっしゃっていた〇〇って…」と引用すると、覚えていてくれたという信頼が、さらに本音を引き出します。

単発の場(一度きりのユーザーインタビューなど)では、信頼を育てる時間がありません。だから最初の数分に全力を注ぎます。すぐ本題に入らず、答えを求めない雑談から始めます。また、「良い悪いを判断したいわけじゃなくありのままを知りたいんです」と正解を求めていないことを明言します。

とはいえ、これがうまくいかないこともあります。一度きりのユーザーインタビューでは、お互いに全く知らない者同士なので、そもそも会話の糸口が見つけられないこともあります。焦って挨拶もそこそこに本題を始めてしまい、場を温められないまま終わってしまったことが何度もあります。継続的に会える場なら時間が解決してくれることが、単発では自分の準備と最初の一歩に全部かかってきます。単発のヒアリングが一番難しいと感じるのは、このためです。

言葉で引き出せないなら、行動を観察する

単発の場では、本音を言葉で引き出しきれないことも多いです。そんなときは、聞くことに頼りきらず観察で補います。
「このUIどう思いますか」と意見を聞くと建前が出ますが「昨日これを使ったとき、どういう順番で操作しました?」と過去の具体的な行動を聞くと、事実なので本音に近い言葉が出ます。さらに実際に操作してもらって、どこで迷ったか、どこで手が止まったかを見ます。言葉の本音は引き出せなくても、行動は嘘をつきません。

さいごに

ヒアリングがうまくなりたいと思ったとき、私たちはつい「上手な質問の仕方」を学ぼうとします。でも本当に問われているのは質問の技術より、相手が話したくなる空気を作れるかなのかもしれません。
「話したくなる空気」をつくるのは、小さな行動の積み重ねです。自分から先に隙を見せる。共通項を探して同じ側に立つ。素のリアクションを返す。すぐ本題に入らず雑談を挟む。意見ではなく行動を聞く。どれも意識すればできることです。

こうした行動の根っこにあるのは、結局「相手に本気で興味を持てるか」「自分を偽らずにいられるか」だと思います。特別なテクニックというより、相手とどう向き合うかという姿勢なのかもしれません。

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