デザインをより良くするためのデザイン批評

学生時代から今まで、幾度となくデザインを人に批評してもらう機会がありました。 批評によって辛い気分になったこと、逆にデザインをクライアントに提出する際の自信につながったこともあります。 納得感の高い批評とそうでない批評の差を知りたいと思い、デザイン批評について学ぶことにしました。
2022.03.08

批評の定義を正しく理解する

今回取り扱うデザイン批評は、デザインしたものに定められた目標を実現する機能があるかどうかを問うための批判的思考を用いた分析です。

何かをデザインするとき、脳はスイッチのような働きをして、創造的思考(アイデアを生み出し、アイデアの要素を形にする)と分析的思考(デザインしたものが実現しようとしていることに合っているかどうかを判断する)を切り替えています。プロのデザイナーはこの思考の切り替えの術を身につけているので、定期的に創造的な思考を停止して一歩離れたところから作業の批評を行なっています。批判の時に使うのは分析的思考になります。

idea_analysis

批評のタイプ

批評には3つのタイプがあります。

反応型ー感情に支配された直観型のもの。
指示型ー自分自身の期待にもっと沿ったデザインにしたいと思っていて、デザイナーに具体的な指示を伝えるもの。 良い批評は問題解決はしません。
批判的思考(クリティカルシンキング)型ー意見を聞き、適しているか否かを判断するプロセス。

批判的思考とは

  • 目的は何かをしっかり見定めること。根本的にどうしたらいいかと考えること。
  • 意識して自分の考え方を批判的に見る方法。人はどうしても主観や先入観があるものだということを認識し、それに囚われずに客観的に考えること。
  • つねに考え続けること。「なぜ?」を繰り返しながら物事を突き詰めていくこと。

批判的思考で批評することにより、分析的思考の精度も上がります。

指示型と反応型はデザインの側面や要素の有効性をきちんと把握するのには役に立ちません。批判的思考に基づいたデザイン批評を目指しましょう。

preconception

批評の枠組みはシンプル

批評によって知りたいのは、デザインが目的達成の役割を果たせているのかという機能としての有効性です。それを確認するためのシンプルな枠組みが以下のようになります。
デザインの目的は何か? → 目的に関連しているのはデザインのどの要素か? → そうした要素は目的を達成するのに効果的か → それはなぜか?
他に質問を加えるとするならば、次の2点です。

  • 提示されたデザインによって生じるかもしれない新たな問題もしくは成功は何か?
  • デザイナーが検討しなかった他の目的は何か?
  • あくまでも目的の外にある背景などは、事前に共通の基盤としてまとめて参加者に共有します。(後述)

    批評のルール

    指示型の話で「良い批評は問題解決はしません」と述べました。なぜ問題解決をしてはいけないかというと、批評セッションを失敗させる恐れがあるからです。元々批評しなければならないものがあるのに、議論の焦点が問題解決へ変わってしまうのです。
    先程、脳は創造的思考と分析的思考を行き来しているという話を出しました。これが参加者全員の頭の中に絶えず、しかも無意識に起こっているのです。ある人はアイデアを考え、またある人は解決しようとし…とそれぞれ別のプロセスにいることは往々にしてあります。問題解決を目指すために各々が色々考えることで、分析的思考ですらなくなり、適切な批判的思考での批評は生まれないでしょう。そのため、全員が同じ心理プロセスであり続けることが、すごく重要なのです。
    それから、批評においては誰もが平等であり、誰もが批評家です。社内の上下関係や経験の多さ少なさは関係ありません。批評のルールを押さえておけば、誰でも優れた批評をすることは可能です。

    デザイン批評前の準備

    ファシリテーションの準備をしましょう

    ファシリテーションとは、明確な意図を持って、結論を導くために会話をバランスよくコントロールすることです。ファシリテーターは批評を受ける人が望ましいですが、別の人が行う場合も準備を怠らないようにしましょう。まず、ディスカッションの目的を理解します。それから適切な質問をして参加者が自分の意見を述べられるようにします。
    最も優れた批評は会話から生まれるので、ファシリテーションは批評プロセスの不可欠な要素です。

    参加者を決めましょう

    誰を参加させるかは、批評の焦点にしたいデザインの要素に関連のある専門家を判断の基準にすべきです。ただし多様な人々に参加してもらい、異なる意見や思考を得ましょう。また、参加者の人数は5、6人ぐらいがベストです。批評はあくまでも会話なので、無関係な議論に発展することなく一つの会話を続けられる人数です。

    共有しましょう

    批評のディスカッションの形式や、ファシリテーション計画について、まず参加者に共有し話をしましょう。チームが批評セッションの流れを理解するほど、建設的な態度で参加の準備を整えることができます。
    批評をはじめる前に問題解決のための共通の基盤を共有しましょう。共通の基盤とは批評セッションの事前情報です。基盤にはペルソナ、シナリオ、目標、原則を(多くて)紙一枚に明記します。今回のデザインに関して、定めたペルソナが適切な状況で使用した時に適切な体験をできるような適切なデザインを作り、どんな目標を達成できるかを考えて作られているかという前提を認識してもらうためです。
    さらに可能であれば数日前に参加者へデザインを共有しましょう。初見から批判的思考に移るにはやや時間がかかります。事前にフィードバックを用意する必要はないのですが、初見で考える時間を少しでも減らせるメリットがあります。ただし、送るのは議論したいデザインの要素に限定しましょう。何に焦点を当てた批評が求められているのか、参加者に何を期待しているのかを明記したメモも添えておきましょう。

    advance sharing

    批判する側、批判される側の考え方

    批評する側

    とても大切なのは、デザインの改善に貢献したいと思うことです。 そしてそれを実行するためにはまず客観性を持ちましょう。人はどうしても主観や先入観があるものだということを認識し、それに囚われずに客観的に考えることです。そのためには質問をしましょう。 批評においてはネガティブなことばかりではなく、長所についても話しましょう。批評はあくまでも会話であり、時おり長所が述べられていた方がポジティブに捉えやすくなります。

    批評を受ける側

    批評中はアクティブリスニングを心がけ、焦点が個人の目標ではなく製品とその目的であることを自身で確認しましょう。
    批評を個人攻撃と受け止めてしまう場合があります。批評に神経質な人は、批評の意義をあっさり忘れてしまう傾向にあるので、常に自分はエキスパートであるという強い気持ちを持ちましょう。
    そして積極的に批評する側にもなり、批判的思考を行いましょう。自身が有効な批評を重ねると、次批評される側に立った際に目的の達成について考える場だと実感できると思います。

    no denigration

    さいごに

    建設的な批評が得られるのは両者の間で多くの質問が交わされる時です。良い批評は尊敬と信頼の上に成り立ちます。批評する側、批評受ける側両者ともに尊敬と信頼の念を持ちながら積極的にデザイン批評を取り入れたいです。
    またデザインに関して建設的な会話をする文化を構築するべく努力しなければなりません。文化が成立すると批評の機会が増え、チームメンバーの批評が上手くなり、コミュニケーション・スキル向上にもつながるはずです。
    私自身も、より積極的なデザイン批評ができる関係性を社内外で構築していきたいです。

    参考文献

    みんなではじめるデザイン批評