「アラート対応をAIエージェントでどこまでできるか試してみた」というタイトルで DevelopersIO 2026 Nagoya に登壇しました #devio2026

「アラート対応をAIエージェントでどこまでできるか試してみた」というタイトルで DevelopersIO 2026 Nagoya に登壇しました #devio2026

アラート対応を AWS DevOps Agent と Claude Code でどこまで任せられるか。調べる・直す・決めるの線引きと料金を、DevelopersIO 2026 Nagoya の登壇内容からまとめました。
2026.10.23

こんにちは!製造ビジネステクノロジー部の石井です。

2026年10月9日(金)に開催された DevelopersIO 2026 Nagoya で、「アラート対応をAIエージェントでどこまでできるか試してみた」というタイトルで登壇しました。

イベントページには「AIエージェントで運用保守はどこまでラクになるのか試してみた」というタイトルで載っていたセッションです。準備を進めるうちに話す範囲をアラート対応に絞ったので、当日は今のタイトルに変えて話しました。

この記事ではスライドの流れはなぞらず、やったことと結論、それから実際に触ってみてどうだったかの要点をまとめます。登壇では時間が足りず話せなかったことと、登壇後に追加で試したことも入れました。

登壇資料

アラート対応をAIエージェントでどこまでできるか試してみた - Speaker Deck

やったこと

運用保守の作業の中から「アラートが鳴ったので原因を調べる」と「直して、リリースする」の2つに絞り、AI エージェントにどこまで任せられるかを検証用の環境で試しました。検知はとっくに自動化されているのに、鳴った後は人が調べている。今年 AI が入ってきたのは、まさにこの部分です。

構成はこんな感じ。

検証環境の構成図

  1. わざと壊した Lambda がエラーを出し、CloudWatch アラームが鳴る

  2. 転送用の Lambda が HMAC 署名を付けて、AWS DevOps Agent の Webhook に投げる

  3. DevOps Agent が自律的に原因を調べる

  4. 調査完了のイベントを EventBridge で拾って CodeBuild を起動し、Claude Code(Amazon Bedrock 経由)がコードを直してプルリクエストを出す

紫が AWS のサービスで、設定するだけの部分。オレンジが自分で書いた部分。登壇時点で、アラームを DevOps Agent に転送する Lambda が210行ほど、修正役を動かす CodeBuild のスクリプトとプロンプトが150行ほど。インフラ定義は CDK で550行ほどです(壊した Lambda やアラームの定義も込み)。

壊し方は5種類用意しました。原因がログに書いてある例外、メモリを無限に確保し続けるもの、WARN ログだけ出して処理は成功するもの(つまり障害ではない)、S3 の読み取り権限がないもの、存在しない S3 オブジェクトを参照するもの。コード・インフラ・データ・そもそも障害ではないもの、と原因の場所をばらしてあります。各シナリオ1回ずつ、人は追加の指示を出さない条件で回しました。

結論

どこまでできたか 何が要るか
調べる 原因と直し方が出る。人の介入ゼロ、十数分 設定するだけ(アラームから自動で始めるなら、転送用の Lambda を1本)
直す プルリクエストまで出る 配線を足す(150行ほど)
決める マージ・デプロイ・お客様への説明 人

調べるところは任せられる。直すところは配線すれば届く。決めるところは人。今回の検証で引けた線はここです。

実際どうなのか

調べるところ

5つの障害すべてで根本原因を正しく特定しました。各1回ずつなので正答率とは言いません。見てほしいのは当たり方のほう。

たとえばメモリを使い切るシナリオ。ログには Runtime.OutOfMemory、メモリ上限128MBを使い切った、と出ます。素直に読めば「メモリを増やせば直る」。

メモリ枯渇シナリオの調査結果

ところが調査結果に書かれていたのは「メモリ引き上げのみでは解決不可。コード修正が必須。」。コードを読んで、while(true) の中でメモリを無制限に確保し続ける実装を見つけていました。ログの記述を鵜呑みにせず、実装まで確かめにいく。5本中4本で、こちらが用意した判定基準より深いところまで調べてきています。

調査にかかった時間は10〜26分。わざと壊した Lambda を動かしてからプルリクエストが出るまでは、15分前後。いちばん速い回で14分24秒でした。

直すところ

DevOps Agent を設定するだけでは、プルリクエストまでは届きません。

検証した時点(2026年10月上旬)では、DevOps Agent の GitHub 連携で書き込めるのは Issue の作成と、プルリクエストへのコメントの2つだけでした。

AWS 側も同じ構造です。IAM でほぼ全アクションを許可していても、エージェントが変更に使えるのはコンソールに並ぶ厳選されたアクションだけ。Lambda のコード差し替え(UpdateFunctionCode)は入っていて、メモリや環境変数をまとめて変える UpdateFunctionConfiguration は入っていません。

なので、調査完了のイベントを拾って Claude Code に渡す配線を自分で書きました。
DevOps Agent が「調べる側」、Claude Code が「直す側」という分担です。

プルリクエスト

やりたかったこと

直す必要のないアラートで、修正のプルリクエストを出さずに済むか。

やったこと

障害ではないアラートを2種類用意しました。WARN ログを出すだけで処理は成功するもの(シナリオ3)と、呼び出し元が不正な住所を送り、コードがそれを正しく弾いたもの(登壇後に追加)です。

登壇後に、修正プロンプトへ「直す必要がなければ何も変えない」という判断の手順を足して、元のプロンプトと比べました。足したのは、修正の手順の前に置いたこの部分です。

1. 変更が必要かの判断
.investigation-summary.md を読み、このリポジトリのコードや設定を変更する必要があるかを、まず判断する。

次のどちらかに当てはまる場合は、ファイルを一切変更せず、.pr-body.md も作らない。
- 調査結果から、障害(処理の失敗や、利用者・データへの影響)が起きているとは言えない
- 直すべき箇所と直し方を、調査結果から根拠をもって決められない

変更しない場合は、その理由を2〜3文で出力して終える。変更が必要な場合だけ、2と3に進む。

結果(結論)

調査の結論 Claude Code の動き
障害ではないと判定しつつ、修正仕様も出す(実際の調査3回) どちらのプロンプトでも、修正仕様どおりに直す(9回中9回)
対応不要と結論する(レポートを作って確認) 元のプロンプトでは何かを直す。手順を足すと止まる(2回中2回)
直すべき障害と結論する 手順を足しても、ちゃんと直す(3回中3回)

修正役は、調査の結論に従います。そして調査は、障害ではないと判定しても、ほぼ必ず修正仕様を付けてきます。重大度 low や medium、「誤検知」「ユーザー影響なし」と書いたうえで、恒久対策としてコードやアラームの変更を出す。これまでの17件の調査で、「対応不要」で終わったものは1件もありません。

なので、プロンプトでは止められませんでした。重大度で分ける手も、呼び出し元の入力ミスは medium だったので効きません。しかも出てくる修正は、仕様どおりでもそのまま入れられないものがありました。入力の形を推測で作る、全関数のアラームに効く部分を書き換える、ログを WARN に下げても WARN も数えるアラームは鳴り続ける、など。

修正のプルリクエストは出るもの、と考えておく。マージは人が判断する形にしておく必要があります。

DevOps Agent がリソースの変更に承認を求めるのも、誤った修正が勝手に入るのを防ぐためのはず。外のコーディングエージェントに渡すなら、その歯止めは自分の配線の側で用意することになります。

気になったところ: 料金

DevOps Agent の料金は、エージェントが実際に動いていた秒数 × 0.0083ドル。待っている時間は数えないので、調査にかかった時間より少なめになります。1回あたり5〜9ドルで、10月8日までの検証で64ドルでした。CodeBuild は1回2分ほどなので数円。

自分が担当している案件だと、アラートは月5〜10件ほど。全部を調査に回したとして、単純計算で月25〜90ドルです。

この額をどう見るか。得られるものは大きく2つあると思っています。

  • 初動が速くなる。エンジニアが見に行く前に、一次調査が終わっている
  • 修正が速くなる。障害が起きてからプルリクエストが出るまで、15分前後

調査結果を読んで判断できる運用担当の方がいれば、エンジニアの工数を割かずに初動を回せます。アラートのたびにエンジニアが調べ始めて、直すまでにかかっていた時間。それと比べて月25〜90ドルが見合うかどうかが、判断のポイントになりそうです。

登壇後に検証: 調査結果の出力

登壇後に検証したのが、調査結果の出力形式です。

やりたかったのは、調査結果を運用担当の方が読みやすい形で出すこと。エージェントへの指示で、「影響を受ける機能」から「緊急性」までの8項目で出すよう指定しました。試したのは次の3回です。

時点 指示の内容 レポートの構成
登壇時点 インシデント向けの指示に8項目を指定 変わらなかった
10月21日 上に加えて、「組み込みの構成よりこの指示を優先する」と明記 変わらなかった
10月22日 上に加えて、全体共通の指示にも優先順位を明記し、チャット向けの指示も追加 変わらなかった

優先順位を明記するやり方は、AWS DevOps AgentのSlackの返答形式をAGENTS.mdで変えてみた を参考にしました。記事はチャットの返答の書式を変える内容で、10月22日は指示の置き方を記事と同じ条件にそろえています。

結果はどの回も、レポートは組み込みの構成(概要、原因、緩和策、コード修正仕様など)のまま。8項目の見出しは出てきませんでした。

試していないこと

  • 本番環境
  • 複数アカウントにまたがる調査
  • Lambda 以外のワークロード
  • リリース判定の機能(東京リージョンでは使えず、バージニア北部のみ)

最後に

実案件で使うならどうするか。ここは個人的な所感です。

原因を調べるところは、5つとも人の介入なしで当たりました(各1回)。ログを鵜呑みにせず、実装まで確かめにいく調べ方もしてくれます。一方で、料金は1回5〜9ドルとわりとかかりますし、レポートの構成は指示では変えられませんでした。

なので、いきなり導入するより、まずは試してみるのがいいと思っています。確かめたいのは次の2つ。

  1. 組み込みのレポートの形で、自分たちの欲しいアウトプットになっているか

  2. 料金に見合うだけ、調査の手間が減るか

この2つが合うかを見たうえで、導入するかを判断するのが良さそうです。

とはいえ、DevOps Agent は2026年3月に GA したばかりのサービス。レポートの構成を指定できるようになったり、リリース判定の機能が東京リージョンに来たりすれば、評価もまた変わってくるはずです。今後のアップデートに期待!

聞いてくださった方、ありがとうございました!

ちなみに、Claudeの導入・活用はクラスメソッドで総合支援しています。

おまけ

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