延長サポートも見据えたAmazon ElastiCacheのコスト最適化戦略
2026年2月から、Amazon ElastiCache Redis OSS 4/5に対して延長サポート料金が発生します。
この変更により、何も対策を取らなければ 利用費が最大で2.6倍に跳ね上がる可能性があります。 Valkey移行やRI/SPの購入により、逆にコストを削減することが可能です。
本記事では、 「AWSパートナー7社合同 re:Cap2025 in 九州」 で発表した内容をもとに、ElastiCacheのコストを削減する方針を解説します。
ポイントは以下です
- ElastiCache Redis 4/5を使用している場合は、速やかにメジャーアップグレードしましょう
- Redisはバージョン間の互換性が高いため、RDBと比較にならないほど多段のメジャーアップグレードが容易です
- Redis OSSを互換性のあるValkeyに変えると、性能が向上し、さらに、コストも安くなります
- 長期契約による割引は、Reserved Instanceだけでなくデータベース系サービス全体に適用されるDatabase Savings Plansも選択可能です
- Database Savings PlansはServerlessと相性が良く、Aurora v2は35%引き、ElastiCacheは30%引きと割引率も高いです
スライド
Amazon ElastiCacheとは
Amazon ElastiCacheは、AWSが2011年から提供しているフルマネージドのインメモリデータストアサービスです。セッション管理やキャッシュとして広く利用され、マイクロ秒レベルのレイテンシを実現します。
ElastiCacheには以下の2つのプロトコル系があります
- Redis プロトコル系
- Redis OSS
- Valkey
- Memcached プロトコル系
本記事はRedis系にフォーカスしています。
Valkeyという選択肢
Valkeyは、2024年に登場したRedis 7.2互換のオープンソースソフトウェアです。Redis 7.2をフォークして開発され、Linux Foundationの後援を受けています。
Amazon ElastiCacheでは7.1まではRedis OSSを、7.2以降はValkeyを採用しています。

※ AWS re:Invent 2025 DAT458 から
Valkeyの性能メリット
| 項目 | Redis OSS比 |
|---|---|
| スループット | 最大230%向上 |
| レイテンシー | 最大70%低減 |
| メモリ使用量 | 最大41.4%削減 |
Valkeyの価格メリット
| 構成タイプ | Redis OSS比 |
|---|---|
| ノードベース | 20%低価格 |
| サーバーレス | 30%低価格 |
つまり、Redis OSSを互換性のあるValkeyに移行するだけで、高性能で早くなって、更には大幅なコストダウンにもなります。
Amazon RDS 延長サポート(Extended Support)とは
Amazon RDS延長サポートは、標準サポート終了後も最大3年間、セキュリティパッチと不具合修正を提供し続けるAWSの仕組みです。RDS/Aurora向けには2024年から提供されています。古いバージョンを継続して利用し続けられる一方で、この延長サポートには追加料金が発生します。
ElastiCacheの延長サポート開始
2025年の夏に、ElastiCache for Redis OSSにもこの延長サポートが適用されることが発表されました。
ElastiCache for Redis OSS 4/5系の場合、2026年2月から延長サポートが適用され、3年後の2029年2月には、強制的にメジャーアップグレードが実行されます。

AWSアカウントで影響を受けるリソースが存在する場合、AWSから通知が送付されており、コンソールのサービスアップデートからも確認できます。

延長サポート料金
延長サポートモードになると、最初の1-2年はオンデマンド利用料金の80%が追加で発生し、3年目には160%が追加で発生します。

料金ページでの見え方
以下は AWSコンソールの「Billing and Cost Management」での見え方です
$0.014 per Hr for ExtendedSupportYr1_Yr2-NodeUsage:cache.t3.micro in US East (N. Virginia)
$0.017 per T3 Micro Cache node-hour (or partial hour) running Redis
オンデマンドの利用単価($0.017)の 0.8倍の $0.014 が1-2年目の延長サポート(ExtendedSupportYr1_Yr2)として計上されています。
延長サポートとの向き合い方
延長サポートの対象となるリソースが存在する場合、取るべきアクションは2種類あります
1. 現状維持
クローズ間近なサービスの場合、静観するのは有力な選択肢の一つです。
戦略的に静観することで、メジャーアップグレード対応するはずだったエンジニアのリソースを他のタスクに振り分けられます。
一方で、請求額が増えていることに気づかないケースも散見されます。
サービスの利用状況や利用費は定期的にチェックしましょう。
2. メジャーアップグレードする
おすすめは、バージョン6以上にメジャーアップグレードすることです。
Redisはバージョン間の互換性が高いため、RDBと比較にならないほど多段のメジャーアップグレードが容易で、AWSも最新バージョンへのアップグレードを推奨しているほどです。
メジャーアップグレードするのなら、エンジンバージョンをValkey 7.2以上にアップグレードしましょう。
放置すれば、延長サポートで利用費が8割増しだった利用費が、バージョンを変更するだけで、2割削減になります。

長期契約(RI/SP)による利用費の割引
AWSには年単位の契約で安く利用するReserved Instance(RI)やSavings Plans(SP)という仕組みが存在します。
re:Invent 2025ではSPの一種としてデータベースサービス群を対象としたDatabase Savings Plansが発表されました。
個人的なおすすめポイントは次の3点です
- RI はDBエンジンやリージョンやインスタンスタイプまで細かく指定したのに対して、Database SPはデータベース系サービス全般に対して適用される
- RIはサーバーレス系が対象外だったのに対して、Database SPはサーバーレス系も対象で、割引率も高い
- SPは割引率が高いものから優先的に適用される
次の点にはご注意ください
- 第7世代(r7g)より古い世代やT系(T3やT4)は対象外
- ElastiCacheの場合、Valkeyのみが対象。Redis OSSは対象外
Database Savings Plansはデータベース系サービス全体が対象
Database SPは以下の9つの主要データベースサービスがカバーされています
- Aurora and RDS
- Aurora Serverless v2
- Aurora DSQL
- DynamoDB
- ElastiCache for Valkey
- Amazon DocumentDB
- Neptune
- Keyspaces
- Timestream
- DMS
ElastiCacheのRI/SPの割引率
ElastiCacheにRI/SPを適用する場合の考え方は以下です
- RedisをValkeyにすると20%安くなる
- RIはノードベースが32%安くなる。サーバーレスは対象外
- SPはノードベースが20%、サーバーレスが30%安くなる
Valkey化とRI/SPの組み合わせにより、以下の割引率が実現可能です
オンデマンドとRIとSPの割引率比較:ノードベース編

オンデマンドとRIとSPの割引率比較:サーバーレス編

Savings Plans購入の考え方
RI・SP購入時は以下の指標が大事です
- 全体コスト:RI/SP購入前後の総額削減が最優先
- カバレッジ:利用量のうちSP/RIでカバーされている割合
- 利用率:コミットメントの消費状況
全体コストの削減を最大化するために、カバレッジと利用率のパラメーターを最適化することが重要です。
コスト最適化のコンソール機能
AWSのコンソールでは、購入分析や推奨機能が提供されています。上記指標を参考にしながら、購入しましょう。

※ AWS re:Invent 2025 DAT326 から
いきなり大量購入するのではなく、段階的に購入量を増やしていくことをおすすめします。

※ AWS re:Invent 2025 DAT326 から
まとめ
ノードベースユーザー向けの戦略
ElastiCache Redis OSS v4/v5を使っている場合、2026年2月から延長サポート費用が発生します。
今すぐメジャーアップグレードしましょう。
Redis OSSと互換性のあるValkeyに切り替えるだけで2割もお得です。
RIの有効期限が切れたタイミングでValkey化も進めましょう。
RDS/Aurora/ElastiCacheといったデータベース系マネージドサービスの場合、エンジンのメジャーアップグレードはともかく、インスタンスタイプの変更は非常に安全です。新しい世代にアップデートしたり、x86系をarm系に変更することも容易です。
古いインスタンスタイプを使っている場合は、cache.r7g等、第7世代以降の新しいインスタンスへの移行を検討してください。以下のメリットを享受できます。
- 性能改善によるコスト効率向上
- 将来的なSP購入の選択肢確保
サーバーレスユーザー向けの戦略
これまでRIではコスト最適できなかったサーバーレスの割引が、Database Savings Plansの登場で可能になりました。
Database Savings Plansをはじめて活用するなら、まずはサーバーレスサービスがオススメです。
Aurora v2は35%、ElastiCacheは30%のように割引率が高い上に、これまで長期割引できなかった領域のため、既存のRIとの干渉を考慮する必要もありません。
Valkey化 と Database Savings Plans のコンボにより、Redis OSSサーバーレスであれば、ランニングコストはほぼ半額(-44%)になります。
参考資料
- Database Savings Plan
- 【注意】 2026年1月31日で ElastiCache for Redis OSS の 4 系と 5 系の標準サポートが終了して延長サポートが開始されます | DevelopersIO
- Deep dive into AWS Database Savings Plans
- Better, faster, cheaper: How Valkey is revolutionizing caching
- AWSパートナー7社合同 re:Cap2025 in 九州 - connpass
- 一年かけてNewsPicksで利用しているAWS ElastiCache for RedisをAWS ElastiCache for Valkeyに移行しました - Uzabase for Engineers







