延長サポートも見据えたAmazon ElastiCacheのコスト最適化戦略

延長サポートも見据えたAmazon ElastiCacheのコスト最適化戦略

2026年2月から始まるElastiCacheの延長サポート料金を回避し、ValkeyとRI/SPを活用して最大44%のコストを削減する方法
2026.01.29

2026年2月から、Amazon ElastiCache Redis OSS 4/5に対して延長サポート料金が発生します。

この変更により、何も対策を取らなければ 利用費が最大で2.6倍に跳ね上がる可能性があります。 Valkey移行やRI/SPの購入により、逆にコストを削減することが可能です。

本記事では、 「AWSパートナー7社合同 re:Cap2025 in 九州」 で発表した内容をもとに、ElastiCacheのコストを削減する方針を解説します。

ポイントは以下です

  1. ElastiCache Redis 4/5を使用している場合は、速やかにメジャーアップグレードしましょう
  2. Redisはバージョン間の互換性が高いため、RDBと比較にならないほど多段のメジャーアップグレードが容易です
  3. Redis OSSを互換性のあるValkeyに変えると、性能が向上し、さらに、コストも安くなります
  4. 長期契約による割引は、Reserved Instanceだけでなくデータベース系サービス全体に適用されるDatabase Savings Plansも選択可能です
  5. Database Savings PlansはServerlessと相性が良く、Aurora v2は35%引き、ElastiCacheは30%引きと割引率も高いです

スライド

Amazon ElastiCacheとは

Amazon ElastiCacheは、AWSが2011年から提供しているフルマネージドのインメモリデータストアサービスです。セッション管理やキャッシュとして広く利用され、マイクロ秒レベルのレイテンシを実現します。

ElastiCacheには以下の2つのプロトコル系があります

  • Redis プロトコル系
    • Redis OSS
    • Valkey
  • Memcached プロトコル系

本記事はRedis系にフォーカスしています。

Valkeyという選択肢

Valkeyは、2024年に登場したRedis 7.2互換のオープンソースソフトウェアです。Redis 7.2をフォークして開発され、Linux Foundationの後援を受けています。

Amazon ElastiCacheでは7.1まではRedis OSSを、7.2以降はValkeyを採用しています。

※ AWS re:Invent 2025 DAT458 から

Valkeyの性能メリット

項目 Redis OSS比
スループット 最大230%向上
レイテンシー 最大70%低減
メモリ使用量 最大41.4%削減

Valkeyの価格メリット

構成タイプ Redis OSS比
ノードベース 20%低価格
サーバーレス 30%低価格

つまり、Redis OSSを互換性のあるValkeyに移行するだけで、高性能で早くなって、更には大幅なコストダウンにもなります。

Amazon RDS 延長サポート(Extended Support)とは

Amazon RDS延長サポートは、標準サポート終了後も最大3年間、セキュリティパッチと不具合修正を提供し続けるAWSの仕組みです。RDS/Aurora向けには2024年から提供されています。古いバージョンを継続して利用し続けられる一方で、この延長サポートには追加料金が発生します。

https://dev.classmethod.jp/articles/how-to-manage-amazon-rds-extended-support/

ElastiCacheの延長サポート開始

2025年の夏に、ElastiCache for Redis OSSにもこの延長サポートが適用されることが発表されました。

https://dev.classmethod.jp/articles/2026-1-31-elasticache-for-redis-oss-4-5/

ElastiCache for Redis OSS 4/5系の場合、2026年2月から延長サポートが適用され、3年後の2029年2月には、強制的にメジャーアップグレードが実行されます。

ElastiCache Extended Support Timeline

AWSアカウントで影響を受けるリソースが存在する場合、AWSから通知が送付されており、コンソールのサービスアップデートからも確認できます。

redis-eol-v4-5-service-update

延長サポート料金

延長サポートモードになると、最初の1-2年はオンデマンド利用料金の80%が追加で発生し、3年目には160%が追加で発生します。

elasticache-extended.drawio

料金ページでの見え方

以下は AWSコンソールの「Billing and Cost Management」での見え方です

$0.014 per Hr for ExtendedSupportYr1_Yr2-NodeUsage:cache.t3.micro in US East (N. Virginia)

$0.017 per T3 Micro Cache node-hour (or partial hour) running Redis

オンデマンドの利用単価($0.017)の 0.8倍の $0.014 が1-2年目の延長サポート(ExtendedSupportYr1_Yr2)として計上されています。

延長サポートとの向き合い方

延長サポートの対象となるリソースが存在する場合、取るべきアクションは2種類あります

1. 現状維持

クローズ間近なサービスの場合、静観するのは有力な選択肢の一つです。

戦略的に静観することで、メジャーアップグレード対応するはずだったエンジニアのリソースを他のタスクに振り分けられます。

一方で、請求額が増えていることに気づかないケースも散見されます。
サービスの利用状況や利用費は定期的にチェックしましょう。

2. メジャーアップグレードする

おすすめは、バージョン6以上にメジャーアップグレードすることです。

Redisはバージョン間の互換性が高いため、RDBと比較にならないほど多段のメジャーアップグレードが容易で、AWSも最新バージョンへのアップグレードを推奨しているほどです。
メジャーアップグレードするのなら、エンジンバージョンをValkey 7.2以上にアップグレードしましょう。

放置すれば、延長サポートで利用費が8割増しだった利用費が、バージョンを変更するだけで、2割削減になります。

長期契約(RI/SP)による利用費の割引

AWSには年単位の契約で安く利用するReserved Instance(RI)やSavings Plans(SP)という仕組みが存在します。

re:Invent 2025ではSPの一種としてデータベースサービス群を対象としたDatabase Savings Plansが発表されました。

個人的なおすすめポイントは次の3点です

  1. RI はDBエンジンやリージョンやインスタンスタイプまで細かく指定したのに対して、Database SPはデータベース系サービス全般に対して適用される
  2. RIはサーバーレス系が対象外だったのに対して、Database SPはサーバーレス系も対象で、割引率も高い
  3. SPは割引率が高いものから優先的に適用される

次の点にはご注意ください

  1. 第7世代(r7g)より古い世代やT系(T3やT4)は対象外
  2. ElastiCacheの場合、Valkeyのみが対象。Redis OSSは対象外

Database Savings Plansはデータベース系サービス全体が対象

Database SPは以下の9つの主要データベースサービスがカバーされています

  • Aurora and RDS
  • Aurora Serverless v2
  • Aurora DSQL
  • DynamoDB
  • ElastiCache for Valkey
  • Amazon DocumentDB
  • Neptune
  • Keyspaces
  • Timestream
  • DMS

ElastiCacheのRI/SPの割引率

ElastiCacheにRI/SPを適用する場合の考え方は以下です

  • RedisをValkeyにすると20%安くなる
  • RIはノードベースが32%安くなる。サーバーレスは対象外
  • SPはノードベースが20%、サーバーレスが30%安くなる

Valkey化とRI/SPの組み合わせにより、以下の割引率が実現可能です

オンデマンドとRIとSPの割引率比較:ノードベース編

elasticache-node

オンデマンドとRIとSPの割引率比較:サーバーレス編

elasticache-serverless.drawio

Savings Plans購入の考え方

RI・SP購入時は以下の指標が大事です

  1. 全体コスト:RI/SP購入前後の総額削減が最優先
  2. カバレッジ:利用量のうちSP/RIでカバーされている割合
  3. 利用率:コミットメントの消費状況

全体コストの削減を最大化するために、カバレッジと利用率のパラメーターを最適化することが重要です。

コスト最適化のコンソール機能

AWSのコンソールでは、購入分析や推奨機能が提供されています。上記指標を参考にしながら、購入しましょう。

※ AWS re:Invent 2025 DAT326 から

いきなり大量購入するのではなく、段階的に購入量を増やしていくことをおすすめします。

※ AWS re:Invent 2025 DAT326 から

まとめ

ノードベースユーザー向けの戦略

ElastiCache Redis OSS v4/v5を使っている場合、2026年2月から延長サポート費用が発生します。
今すぐメジャーアップグレードしましょう。

Redis OSSと互換性のあるValkeyに切り替えるだけで2割もお得です。
RIの有効期限が切れたタイミングでValkey化も進めましょう。

RDS/Aurora/ElastiCacheといったデータベース系マネージドサービスの場合、エンジンのメジャーアップグレードはともかく、インスタンスタイプの変更は非常に安全です。新しい世代にアップデートしたり、x86系をarm系に変更することも容易です。

古いインスタンスタイプを使っている場合は、cache.r7g等、第7世代以降の新しいインスタンスへの移行を検討してください。以下のメリットを享受できます。

  • 性能改善によるコスト効率向上
  • 将来的なSP購入の選択肢確保

サーバーレスユーザー向けの戦略

これまでRIではコスト最適できなかったサーバーレスの割引が、Database Savings Plansの登場で可能になりました。

Database Savings Plansをはじめて活用するなら、まずはサーバーレスサービスがオススメです。

Aurora v2は35%、ElastiCacheは30%のように割引率が高い上に、これまで長期割引できなかった領域のため、既存のRIとの干渉を考慮する必要もありません。

Valkey化 と Database Savings Plans のコンボにより、Redis OSSサーバーレスであれば、ランニングコストはほぼ半額(-44%)になります。

参考資料

この記事をシェアする

FacebookHatena blogX

関連記事