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FinOps & クラウドコスト関連ナレッジ - 2025年1月
近年、クラウドコストに関する課題が注目を集めています。私自身も注目してキャッチアップしているテーマです。そんな中で、同じ関心ごとをお持ちの方のお役に立てればと思い、個人的に参考になったナレッジや記事をシェアしています。
早速、2025年1月頃に見かけた記事を紹介していきます。
書籍 「クラウド FinOps 第2版 ―協調的でリアルタイムなクラウド価値の意思決定」 発売
FinOps 界隈でバイブルと言われている書籍 Cloud FinOps の日本語訳が 2025年3月19日 に発売されるとのことです!今まで、初版・第2版 ともに英語版のみでした。私も翻訳しながら読んでいましたが、微妙なニュアンスなどの理解が難しくて読み進めるのが大変でしたが、そんな心配も無用ですね。翻訳いただいた方々に感謝です。
[登壇レポート]「CFMフレームワークを活用したAWSコスト管理ガイドラインを策定した話」という内容で登壇してきました #jawsug_asa #jawsug
弊社のおつまみさんが、コスト管理ガイドラインを策定していく際の具体的なプロセスや勘所を紹介してくれています。実際に出来上がったガイドラインもとても気になります。他にもコストに関連する記事を書いてくれています。
Analyzing AWS Transit Gateway Data Processing charges with cost allocation tags
(コスト配分タグを使用した AWS Transit Gateway データ処理料金の分析)
昨年リリースされた Transit Gateway のデータ処理や転送料金に対するコスト配分タグ機能の解説ブログです。試したいけど、環境準備するのが...となっていたので、助かりました(が、こういうのは自分でやってみた方が理解が深まりそう)。「考慮事項と制限」も記載されているので要チェックです。
FinOps Foundation Japan Chapter Docs
FinOps Foundation の日本支部である FinOps Foundation Japan Chapter で、翻訳された FinOps コンテンツが提供されています。冒頭の書籍の件と同じく、ありがたいですね。
【開催報告 & 資料公開】AWS 秋の Cost Optimization 祭り2024
昨年、秋に開催された AWS コストに関するイベント内容と資料が公開されています。CFM の概要や Deep なアーキテクチャ最適化アプローチ、既にコスト最適化を実践されている会社さんのお話が聞けた貴重なイベントでした。
ECSとRDSをやめて、AWSコストを9割削減しました
ECS + RDS から Lambda + SQLite on EFS への構成変更の記事です。ユニークなアプローチで、巷でも社内でも話題になっていました。個人的には対象ワークロードにとって何が最適化なのかを考慮しながら、時にはトレードオフもあると思いますが、何より現行のパターンや既存の方法より、もっと良い・最適化なものはないかと継続的に検討する大切さを感じました。後日 EFS に関する検証ブログ記事も書いてくださっています。
AWS Sustainability Scanner を利用してサステナビリティやコスト最適化を意識してみた
弊社のたかくにさんが aws-labs で公開されている Sustainability Scanner (SusScanner) を試された記事です。AWS Well-Architected Sustainability Pillar を意識したチェックを実行出来るようで、チェック項目はコスト最適化にも効果のある内容になっているようです。
他にもコストに関連する記事を書いてくれています。
Cost Optim Slack Chatbot with AWS Bedrock Agent
(AWS Bedrock Agent を使用したコスト最適化 Slack チャットボット)
こちらは aws-samples で公開されている cost-optim-slack-chatbot-genai-agent を利用した Amazon Bedrock Agent と KnowledgeBase を利用した Slack チャットボットの紹介記事です。面白そうなので私もやってみました。
予測可能および動的なアクセスパターンに対する Amazon S3 のコスト最適化
アクセスパターン(予測可、予測不可)やビジネスニーズの観点から S3 のコスト最適化アプローチが紹介されています。例や判断基準なども記載されているので、わかりやすいです。
他にも S3 つながりで 小さなサイズで大量のオブジェクトへの対応として tar ファイルにして異なるストレージクラスへ移行してくれる Amazon S3 Tar Tool というソリューションや RDS から dump ファイルを取得して S3 へ保管するソリューションが別の記事で紹介されていました。AWS が提供するネイティブなサービスでは要件を満たせないケースでは、こういったソリューションを組み合わせることで補完できる場合があります。
The Power of Asking “Why” in FinOps: A Simple Question That Saves Big Money
(FinOps における「なぜ」の問いの力: 大きなコストを節約するシンプルな質問)
是正対象リソースの用途や要否などを明確にしていく際に、一回の なぜ(WHY)? ではなく問い続けるというアプローチの話ですが、トヨタのなぜなぜ分析を思い浮かべました。
記事と直接関係ないのですが、個人的に良いなと思ったのはツール紹介の画面で、所有者へ通知する中にアクションを確認するボタンが用意されているところです。
(FinOps プラクティショナーやCCoEのような)全体管理者から各利用者へ利用費状況や最適化機会を通知する取り組みを実施されている方もいるかと思いますが、通知した後の反応や管理は利用者任せになってしまうこともあるかと思います。通知の中にボタンでアクションを確認するようにして、その内容をスプレッドシートやタスク管理ツールで集約しておければ、少ないアクションで関係者が共通の場所で、状況を認識することが出来て良さそうだなと思いました。
AWSにおける横断的なログ分析とコストの管理【SRE Kaigi 2025】
SRE Kaigi 2025 で srest 山北さんが登壇されていた資料の中で「THE STATE OF OBSERVABILITY IN 2024: A PRACTITIONER PERSPECTIVE」から引用されていた内容が興味深かったです。
Building a Minimalistic, Cost-Conscious BI Infrastructure with PostgreSQL, FDW, Materialized Views, and Superset
(PostgreSQL、ForeignDataWrapper、マテリアライズド ビュー、Apache Superset を使用した最小限かつコスト重視の BI インフラストラクチャの構築)
コスト可視化や分析環境を構築する際に、最初から有償サービスを利用出来ないケースもあるかと思います。そんなシーンに近い下記シナリオが理想なデータ分析・BI 環境の構成要素・技術スタックの紹介記事です。スモールスタート時は、クラウドプロバイダーが提供するサービスを利用するケースも多いですが、要件が合わない場合に参考となりそうです。全部ではなく部分的に採用するのも良さそう。
- 中規模なデータ量
- コスト重視または初期段階
- 価値実現までの時間が短い
- SQL に精通したチーム
Determining the Right Threshold for Alerts in AWS Cost Anomaly Detection
(AWS コスト異常検出におけるアラートの適切なしきい値の決定)
受け取り手にとって、価値のある取り組みにするために、受け取る方の役割(例:アプリケーション、プロジェクト、FinOps、リーダー層)に合わせた粒度や閾値で複数のモニターやサブスクリプションを用意するアプローチが紹介されています。
確かにダッシュボードやレポートは見る方の役割に応じた内容を用意することが多いかと思います。異常検出においても分けて設定するのが理に適っているのかなと思います。
The Keys to AWS Optimization
AWS の Cost Optimization に関する Youtube チャンネルです。最近 re:Invetn2024 関連動画が公開されています。個人的に今はプレビューですが、マネジメントコンソール内で利用する Pricing Calculator に注目しています。
- re:invent 2024 - Advanced analytics with AWS Cost and Usage Reports
- re:invent 2024 - Proactive cost control strategies for AWS workloads
- re:Invent 2024 - COP306 - Elevate your cost allocation strategy with AWS Cost Categories
- re:Invent 2024 - COP354 - Estimating your AWS Cost using Pricing Calculator
FinOps for GenAI Overview
(GenAI 向け FinOps の概要)
昨今の生成 AI ブームの中で、生成 AI に対するコスト管理・最適化(FinOps for GenAI)をテーマにした記事を見かけることが増えている印象を受けています。今は海外の事例や記事が多いですが、国内でも近々(または既に)課題となってくるのではないかと思います。