
帳票の成り立ちを調べたら、作るべき画面が変わった話
製造業のお客様から相談をいただくとき、作りたいものがすでに決まっていることがあります。長く使われてきた帳票をシステムにしたい、項目も並びも決まっている、そんな始まり方です。
先日担当した案件も同じでした。最初にいただいたのは、業界規格に沿って社内で運用されてきたExcelのフォーマットでした。私たちもそれに近い形をアプリにする方向で進めていましたが、結果その形で作りませんでした。
きっかけは実装の重さ
方向が変わったきっかけは、社内のエンジニアからの指摘でした。
Excelのようなセルの操作感をそのまま実装するのは、工数も時間も相当かかるとのことでした。
そこで表への直接入力以外の方法を検討する必要がありました。しかし私は表の形が規格で決まっていると思い込み、アプリ上で形を変えてよいのか判断できませんでした。
規格が決めていたのは、表の形ではなかった
まずは、その帳票がそもそもどういう考え方で成り立っているのかを調べ直すことにしました。
調べてみると、規格が求めているのは検討の中身のほうで、それをどういう並びで記入するかまでは決められていませんでした。今現場で使われている表は、検討結果を記録するものとして、運用の中で定着してきた形だったということです。
さらに調べていくと、帳票の中身は表とは別の構造で成り立っていることも見えてきました。例えば、表で横並びだった数項目が、実は原因列と結果列に分かれている、という具合です。
構造に沿った形にしてみる
そこで入力は帳票の構造に沿った画面で行い、結果はこれまでどおりの表の形でプレビューできる、という方向で提案しました。構造に沿った形にすると、どこまで考えて次に何を考えるのかが画面の並びに表れます。
作り替えてみると、帳票内で同じ内容を書いている箇所も見えるようになり、マスタとして持っておけばよい箇所もあわせて提案しました。
お客様自身は日々この帳票を使っているからこそ、なぜこの形なのかを問い直す機会は少ないと思います。本来の構造に立ち返ったことが功を奏し、お客様からは「自分たちでは思いつかなかった」と言っていただきました。
見せる形は守り、考える形は作り直す
今回の経験から、既存の帳票やフォーマットをシステムにするとき行ったのは次の3つでした。
1つ目は、「決まっている」の出どころを確かめること です。そのフォーマットが規格や法令で決まっているのか、社内ルールなのか、運用の中で定着した慣習なのかを遡ります。今回は、規格が決めていたのは検討の中身で、表の並びは慣習でした。動かせない制約と動かせる制約を分けるだけで、打てる手が変わります。
2つ目は、器と中身を分けて見ること です。フォーマットは中身を載せる器にすぎません。案件当初は器と中身の関係はあらためて確認されないままでした。日々きちんと回っているものを、わざわざ解きほぐす理由がなかったのだと思います。器を外したとき、中身がどういう構造をしているかを取り出すと、画面をどう組み立てればよいかが見えてくることに気づきました。
3つ目は、入力と出力を分けて設計すること です。見る・共有するための形は既存の表を守り、考える・書くための画面は中身の構造に合わせる。こうすると、現場の運用を壊さずに使い勝手だけを変えることが可能です。

そして、こうした問い直しのきっかけは、今回のように「作りにくさ」から来ることもあります。実装の壁にぶつかったときは、前提を見直す合図だと捉えてみると、別の道が見つかるかもしれません。
決めて渡さず、一緒に検討する
今回のように、一見決まっているような前提でも、見直すことで別の方向に落ち着くことがあります。そのきっかけは「作りにくさ」から来ることもあります。何らかの壁にぶつかったときは、前提を問い直す合図だと捉えてみると、別の道が見つかるかもしれません。
もちろん一切決まっていない状態から、何を作るか一緒に考えることもあります。どちらの場合でも、製造業を知るお客様とシステムを知る私たちが、お互いの持ち味を生かして頭をひねることで、最適解が見つかるはずです。








