Amazon GameLift Streamsの新たな可能性を探る:自動デバッグへの挑戦
こんにちは。ゲームソリューション部の出村です。
Amazon GameLift Streams(以降GameLift Streamsと記載)を活用されていますか?今回は、GameLift Streamsの新たな活用可能性を探るべく、自動デバッグ環境の構築に挑戦してみました。結果として多くの学びを得ることができましたので、その経験をシェアしたいと思います。
GameLift Streamsの特徴
まず、GameLift Streamsの特徴についてお話しします。GameLift Streamsには以下のような魅力があります:
- クロスプラットフォーム対応:Windowsのゲームをスマートフォンのブラウザからでもプレイ可能
- 実環境でのテスト:プレイヤーと同じ画面、同じ操作感でデバッグが可能
- クラウドの力:デバイス性能に依存しない、高品質なゲーム体験の提供
これらの特徴を活かして、新しい用途として自動デバッグ環境の構築を試みることにしました。
挑戦:自動デバッグ環境の構築
自動デバッグ環境とは、人間が手動で操作することなく、機械的にゲームを制御して不具合を発見する仕組みです。従来の手動テストでは発見が困難だった問題や、大量のテストケースを効率的に実行することが可能になるため、ゲーム開発の品質向上に大きく貢献できると考えました。
実験設計:イス巡りテストの実装
今回の実験では、マップ上に配置されたイスを順番に辿るようにキャラクターを移動させるというシチュエーションを設定しました。なぜイスを選んだかというと、YOLO(物体検出AI)では、イスは学習済みの物体として認識精度が高いため、画像認識による自動制御のテスト対象として最適だと判断したからです。
技術実装では以下の構成で進めました:
- キーボード操作・画面キャプチャ:pyautogui
- 画像認識:YOLO v8
基本的なアプローチとして、画面に表示されているイスを画像認識で検出し、検出したイスを順番に辿るルートを計算して、キーボード操作でキャラクターを自動移動させる流れを想定していました。
検証結果から得られた知見
この実験を通じて、非常に興味深い知見を得ることができました。
情報取得の限界と改善の方向性
まず、画面情報のみに依存することの限界が明らかになりました。具体的には以下のような課題が発生しました:
- キャラクターの奥にあるオブジェクト(イス)は画像認識では認識できない
- 遠くにあるイスも同様に認識が困難
- 結果としてイスを見失ってしまう状況が頻発
以下の画像は信頼度 50%以上の物体を抽出していますが、キャラクタ奥のイスや、遠くのイスは認識されてません。
この経験から、効率的な自動テストを実現するには、ゲームの内部データ(API経由でのゲーム状態取得など)を活用することが重要だとわかりました。画面に表示されている情報だけでなく、ゲームエンジン内部で管理されているオブジェクトの位置情報や状態データにアクセスできれば、より確実で効率的な自動テストが実現できるでしょう。
操作制御の課題と解決策
また、操作制御についても重要な学びがありました。キーボード制御を使用した場合、以下のような問題が発生しました:
- 実行中に他の操作ができなくなる
- そのため、スクリプトの実行中において強制終了が困難
この経験から、仮想的なゲームパッド入力(vJoyなどのWindows向けライブラリ)を活用することで、より安全で制御しやすい自動化環境を構築できる可能性を発見しました。
より良いアプローチの提案
今回の実験結果を踏まえ、改善されたアプローチを考えてみました。
ハイブリッド制御システムの採用
以下の組み合わせが効果的だと考えています:
- ゲームパッド入力:vJoyを活用した安全な自動制御
- 内部データ活用:内部ゲームデータを参照した確実な状態把握
適材適所の技術選択
用途に応じて実行環境としてGameLift StreamsとWindowsを使い分けることも重要です:
- 自動化部分:Windowsネイティブ環境での高速・精密制御
- 配信・共有部分:GameLift Streamsの強みを最大限活用
GameLift Streamsの真の価値と最適な活用法
今回の検証を通じて、GameLift Streamsの本当の強みが明確になりました。
GameLift Streamsが真価を発揮する場面
GameLift Streamsは以下のような場面で絶大な効果を発揮します:
- 人間中心のテスト環境:実際のプレイヤーと同じ環境でのテスト、様々な端末からの統一されたテスト体験
- 大規模展開での威力:大量のテスターへの効率的なゲーム配信、地理的制約の解消
- 開発効率の向上:複雑なセットアップが不要、リアルタイムでの問題発見と対応
推奨する活用シナリオ
具体的には以下のような用途で威力を発揮します:
- クロスプラットフォーム動作確認:複数デバイスでの一貫したテスト体験
- 大規模ユーザーテスト:数百人規模でのベータテスト実施
- リモート開発支援:分散チームでの効率的な開発・テスト環境
- デモンストレーション:クライアントや関係者への効果的なゲーム紹介
まとめ:技術の適材適所と新たな可能性
今回の挑戦を通じて、重要な価値を発見することができました。
技術選択の重要性を改めて実感し、それぞれの技術には最適な用途があることがわかりました。GameLift Streamsは人間中心のゲーム体験配信において圧倒的な価値を提供します。
自動化という切り口から検証することで、GameLift Streamsの真の強みをより深く理解することができたのも大きな収穫です。一見「失敗」に見える実験も、実際には貴重な知見と改善の方向性を提供してくれることを実感しました。
GameLift Streamsは、適切な用途で使用することで、ゲーム開発・テスト・配信において強力な武器となります。今後も様々な角度からその可能性を探求していきたいと思います。皆さんも、ぜひGameLift Streamsの新たな活用方法を見つけてみてください!