重たいゲームもURLで共有できる!GameLift Streamsが変える「開発とQA」の現場
こんにちは。ゲームソリューション部の出村です。
今回は、Amazon GameLift Streamsの具体的な利用用途について解説していきます。これまでハードルの高かったクラウドゲーミング環境を、誰でも手軽に構築できるようにしたのがこのGameLift Streamsです。具体的にどのような活用シーンが考えられるのか、見ていきましょう。
GameLift Streamsとは
まず最初に、GameLift Streamsの概要について解説します。 GameLift Streamsは、AWSが提供するクラウドゲーミング環境構築サービスです。(詳細なセットアップ方法等は、こちらの記事で解説していますので、併せてご参照ください)
仕組みとしては、ゲーム自体の処理(実行)をすべてサーバー側で行い、その映像と音声を動画ストリームとしてクライアント(プレイヤー)のブラウザに配信します。プレイヤーはブラウザ上で映像を見ながら、キーボード、マウス、ゲームパッドを使って操作を行い、その入力がサーバーに送られる形になります。

主な特徴としては、ハイスペックPCが不要な点です。重たい処理はすべてサーバー側で行うため、クライアント側のハードウェアスペックに関係なく、最大1080p/60fpsの高品質なゲームプレイが可能です。また、通信量の考慮も必要です。というのも、画面の結果を常に動画として受信するため、通常のオンラインゲーム(座標データ等のやり取り)と比較すると、ネットワーク通信量は多くなる傾向があります。
GameLift Streamsの用途について
クラウドゲーミングという仕組み自体は新しいものではありません。過去にはGoogleのStadiaのようなサービスや、家庭用ゲーム機における過去のゲームをプレイする環境を提供するのに、採用されていたりします。
これまでは自前でクラウドゲーミング環境を構築しようとすると、サーバーインフラの整備や配信システムの開発など、非常に技術的ハードルの高い作業が必要でした。GameLift Streamsの最大のメリットは、この環境をAWSのマネージドサービスとして手軽に構築できる点にあります。
では、どのような活用方法があるのでしょうか。私が思いつくもので3つの用途が考えられます。
1. ゲームのチェック・QA環境としての利用
最も即効性のある用途が、QA(品質保証)や動作チェック環境としての利用です。
開発中のゲームについて「知人に意見をもらいたい」「QAチームにテストしてもらいたい」という場面を想像してください。ハイスペックなゲーミングPCを要求するタイトルの場合、これまでは相手にも同等の環境を用意してもらう必要がありました。また、ビルドを配布してインストールしてもらう手間も発生し、「今すぐちょっと見てほしい」という要望に応えるのは困難でした。
GameLift Streamsを利用すれば、URLを共有するだけですぐにプレイ環境を提供できます。相手のPCスペックが一般的なノートPCでも動作可能ですし、インストール不要でブラウザでプレイできます。
このように、ハードウェアや場所の制約を取り払ったチェック環境を瞬時に用意できる点は、開発効率を大きく向上させます。
2. デモゲーム(試遊)環境としての利用
次に、デモ版の配布や展示において非常に有効です。
開発途中のゲームを外部に見せる際、実行ファイル(exe等)として配布する方法には、「流出」や「解析」のリスクが伴います。未完成のデータが意図せず拡散してしまうと、将来の売上に悪影響を及ぼす可能性もあります。
GameLift Streamsを利用すれば、以下のメリットがあります。
- セキュリティ : ユーザーの手元には動画データしか届かないため、実行ファイルそのものが流出するリスクがありません。
- バージョンの管理 : サーバー側のアプリケーションを更新するだけで済むため、ユーザーに「パッチを当ててください」と依頼する必要がありません。
- 利用時間の制御 : サーバーの稼働時間を管理することで、デモが遊べる期間や時間を提供者側で完全にコントロールできます。
そのため、デモゲームの配信にも向いています。
3. 自社ゲーム提供プラットフォームとしての利用
最後に、自社ゲームを配信するプラットフォームそのものとして利用するケースです。
OSやハードウェアスペックを問わず、ブラウザさえあれば高品質なゲームを届けられる点は、ユーザー層を広げる大きな武器になります。
ただし、大規模な商用サービスとして展開する場合、コスト設計には十分な注意が必要です。 GameLift Streamsは、他のAWSサービスと同様に従量課金制(ストリーミング時間に応じた課金)です。「基本プレイ無料(F2P)+アイテム課金」というビジネスモデルの場合、ユーザーが長時間遊べば遊ぶほどサーバーコストが膨らむため、収益構造によってはサーバー代すら賄えないことも考えられます。
月額定額制(サブスクリプション)や、パッケージ購入型の特典として提供するなど、コストに見合ったビジネスモデルの検討が必要です。(詳細な料金体系については、こちらをご確認ください。)
まとめ
GameLift Streamsは、これまで構築が難しかったクラウドゲーミング環境を身近なものにしてくれます。今回紹介したメリットとしては以下の通りです。
- 開発効率化 : インストール不要・スペック不問で、QAやチェックを迅速に行える。
- セキュリティ : デモ版の配布において、ソースコードや実行ファイルの流出を防げる。
- 新しい体験 : ハードウェアの制約を超えてユーザーにゲームを届けられる。
まずは社内のチェック環境や、限定的なデモ展示などで利用を開始し、その利便性を体感してみてはいかがでしょうか。






