ハノーファーメッセ2025でみたAWSブースの本気

ハノーファーメッセ2025でみたAWSブースの本気

ハノーファーメッセ2025でみた、AWSブースの様子。パブリッククラウドベンダーが製造業でどう戦おうとしているのかがよく分かる充実した展示内容でした。
Clock Icon2025.04.17

「re:Invent2024のインダストリーブースもデカかったけれど、ハノーファーメッセの展示規模はさらにでかいな…」

2025年4月1日〜2日にかけて、ドイツのハノーファーで開催されたハノーファーメッセ2025に参加してきました。全体レポートは、以下にまとめてます。

https://dev.classmethod.jp/articles/hannover-messe-2025/

この記事では、上記記事でも一部触れたAWSの展示内容についてより詳細をお届けします。自分はラスベガスで開催されているAWSの年次イベントre:Inventにはもう6回ぐらい参加していますが、ハノーファーメッセでAWSを見るのは初めて。世界最大の製造業見本市の中でAWSがどのような存在感を示したのか、その全貌をレポートします。

AWSブースの全体感

Hall 15のD76に構えられていたAWSブースはその存在感もかなりでかい。SAPもかなり大きいなと思っていたんですが、それ以上の大きさですね。

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公式サイトより引用)

入口から見た様子。規模もでかいですが、自分が訪れた時は人も非常に多くごった返していました。AWS公式ブログ(ハノーバーメッセ 2025 で産業 AI の未来を体験)では、その大きさ1,400平方メートルとのこと。そりゃでかい。

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自分がざっと見た感じでは、展示に関するソリューションは、概ね以下に分類されている印象でした。

  • エンジニアリングと設計
  • スマートマニュファクチャリング
  • スマートプロダクト
  • サステナビリティ

この後、それぞれの分野で気になったところを中心に紹介していきます。

Built for Industrial AI

会場入口、すぐ左側に大きく展示されていたインダストリーでのAI活用デモ。おそらくここは、去年のハノーファーメッセにもre:Invent2024でも触れられていなかった一番新しいブース(新作!?)ということで、常に山盛りの人だかりができていました。やっぱりこの分野は常に多くの人の興味を惹く部分ですね。

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上記写真は、QC(Quality Control)をAmazon Novaで実現しているデモ。正常品として登録した製品(このLEGOの人形です)に対して、異物(ヘルメットかぶってなかったり、敵のマスクを被ったりしている)を瞬時にQCで判定して異常検知に利用してました。

このあたり、従来は正常品の事前学習が必須であったのが、マルチモーダルな生成AIの活用により正常品を登録したらすぐ生成AIが異常品を検知しているところがインパクト強い。実際に動作する様子をみてました。事前学習が無いということも有り瞬時に全品検査するユースケースではないため、検知動作も瞬時に行われるものではなく、体感数秒ぐらい?で動作していたように思います。基本的にはピックアップでの検査用途と説明されていました。

インパクトが強い! e-Bike Smart Factoryデモ

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去年re:Invent2024でその大きさに度肝を抜かれたe-Bike Smart Factryデモ。既に去年(2024)のハノーファーメッセでもこの展示はあったようですが、今年もお披露目。工場の生産ラインを一括してスマートファクトリー化しデータを連携させて可視化する総合ソリューションの展示になってました。

基本的にre:Invent2024の時と同様の展示ということであったので、内容はこちらを参考にしてもらえれば。

https://dev.classmethod.jp/articles/reinvent-2024-aws-expo/

願わくば、この展示が日本のAWSサミットに来てくれたら面白いのになぁとAWSの方に伝えてみたんですが、「輸送費だけでウン百万かかるので、なかなか難しいですね…」ということでした。残念!!

こういうダッシュボードみてるだけで、ご飯3杯はイケますね。ずっと見ていたい。

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マルチベンダーで実現する自律移動ロボット(AMR)デモ

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前述したe-Bike展示の存在感とデカさは相当なものでしたが、実はAWSブース全体の中では端っこに追いやられていて、今回のブース中心に大きく展示されていたのが、この自律移動ロボット(AMR)デモ。

これの面白いところが、ロボット自体は複数社(マルチベンダー)で提供されておりその統一コントローラーとして、SYANOSが採用されている点でした。

https://www.synaos.com/en

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公式ページより引用

SYANOS社メインソリューションは、倉庫内物流の調和にあるらしく、このロボットが複数社に対応しているのが特徴。実際の展示では、ロボットとしてKUKA社とSHERPA社が利用されていました。経路上でそれぞれのロボットがぶつかりそうになったときに、経路を譲り合うような動作をしていたのが新鮮。

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実際の倉庫における各ロボットの協調動作を表したディスプレイがこちら。ロボット対応パートナーは40以上あるらしいのがわかります。

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SYANOSとAWSの関係性と協調関係は、こちらにも詳細があるので参考にしてもらえれば。基本的な思想として、SYANOSをクラウド上(AWS)にホストすることで運用の効率化とともに拠点間の一貫性と効率化も確保することを狙っているようです。

https://www.synaos.com/en/post/how-synaos-and-aws-are-transforming-industrial-operations

産業データファブリック(IDF)関連

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製造業のデータサイロ化による機会損失を避けるため、製造現場のデータだけではない多様なソースからのデータ統合・管理概念としてここ数年急速に普及してきたのが、このIDF(インダストリデータファブリック)の概念。自分が昨年参加したre:Invent2024でもその展示はありました(参考記事:製造業のデータ統合の課題を解決する、Industrial Data Fabricの可能性)が、ハノーファーメッセ2025では、より展示ブースが拡大され、しっかりと概念として紹介されていました。

IDFのグラフィカル表現として提示されていたデモ。在庫不足の完成品とその部品との関連性、および、それぞれの部品の納品までのリードタイムが表示されています。

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工場設備内ダッシュボードの例。

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デモのアーキテクチャ図。

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従来に無い新しい点として、左側の工場側コンポーネントとして、OPCUAサーバーの先、AWS IoT SiteWiseとの間に、HighByte Inteligence Hubが存在している点。このHighByteがOPC UAサーバーから取得されたセンサーデータに意味づけを施し、それをAWS IoT SiteWiseに格納し、それが、AWS IoT Core経由で収集された製造設備のプロセスとデータとGrafanaで統合されて表示されています。こういうエッジ側での使い方ができるのはなかなか新鮮。

具体的なプレイヤーとしては、HighByteの他にLITMUSも紹介されていました。

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それぞれの製品の公式サイト。

https://www.highbyte.com/

https://litmus.io/ja

自分はまだ、正直具体的な実装にまで踏み込めていないので、どのような前準備が必要なのか、どのような実装になっているのか、他のサービスとの連携はどのように行うのか?など、わからないことだらけなんですが、このあたりも実際に製品を触ってみて、それぞれの製品について別途ブログ化を予定しています。

Smart Products

ブルドーザーにAWS IoT Greengrassを導入して、それぞれの動作状況をクラウド連携して可視化するデモ。自分想像したこと無かったんですが、やろうと思えば、確かにこういったブルドーザーにもセンサーを取り付けて一括管理することはもちろん可能。

下の画面では、ブルドーザーの各稼働状況とアラート情報(エンジンオイルの油圧、タンク容量)が一覧化できる展示となってます。

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さらに詳細を開いたところ。設備データとして、稼働時間、現在のステータス、最終メンテナンス日、油圧、電圧、クーラント温度などが一覧で確認できるのがわかります。

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同じ会場で展示されていたこれらデバイス一覧もテンション上がりますね!

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AWSのエッジ側ソリューションとして、IoT文脈では、やはりAWS IoT Greengrassが鉄板。それらエッジソフトウェアがこれらハードウェアで動作保証済みということを示す展示でした。こういうクラウド展示ブースでも、こういったモノがあると、それはそれで新鮮だし、実際の生産現場への導入のリアリティが湧きます。

Process Manufacturing

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プロセス製造業で非常に課題として上がっている技術伝承や人材不足課題に対するソリューションとして展示されていたのが、この技能伝承ソリューション。昨年のAWS Summitやre:Invent2024では、おそらくまだソースコード自体は公開されていなかったと思うのですが、今は具体的にGitHubで公開され誰もが試すことができるソリューションとして紹介されていました。

GitHubリポジトリはこちら。英語と共に日本語のREADMEもあるので、AWSアカウントさえアレば、だれでもこのソリューションを試すことができます。

https://github.com/aws-samples/knowledge-transfer-by-genai

現地で紹介されていたアーキテクチャ図。Bedrockや、検索に使うOpensearch Serverlessなど、AWSのマネージドサービスを上手く組み合わせて実現されているのがよくわかります。これらはあくまでサンプルなので、これに他の業務データを紐づけたりUIを独自実装するなど、そのあたりは自由に顧客ユースケースに合わせてカスタマイズできるのが、AWSの大きなメリットですね。

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AWSブース内にあったSIEMENS展示

ハノーファーメッセのボスキャラSIEMENSですが、AWS内にもブースが紹介されていました。

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Metaverseによる3Dモデルの遠隔での同時接続設計ソリューションの体験展示もあり。

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実際に試してみた様子がこちら。実際やってみたらめちゃくちゃ難しくて3分ぐらい試行錯誤しましたが、流石にモデリングを実際にやるところまではいかなかったんですが、未来を体験できるこんな展示もあり、めっちゃ楽しかったです。

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パブリッククラウドを主戦場としたAWSのブースに見る、クラウドインテグレーターの戦い方のヒント

基本的に製造業展示といえば、OT(機械)ソリューションが主流というのが一般的なイメージですが、改めてこれだけの大きさと存在感をもって、AWSが本気で製造業で勝ちにきているのがひしひしと伝わるブース内容になってました。

クラスメソッドはそれこそ業態としてはクラウドインテグレーターなので、製造業における戦い方も一般的な機械メーカーとは異なるのが現実です。そんな中、AWSがどのように製造業で戦っていくのかをがっつり把握できた展示で非常に楽しかったです。

ブース来場者も非常に多く、17時以降はなぜかビールと軽食まつりが始まるというお祭り感もあり、なんだかんだ2時間ぐらい滞在してしまいました。まぁ自分にとっては、異国の地で出会うよく知った庭みたいなものなので、そういった安心感もありましたね。

現地で非常に丁寧に各ブース案内してくれた、AWSの方々、改めてありがとうございました。それとともに、展示内容を咀嚼してうちの武器に変えていくとともに、うちなりの情報発信で、日本の製造業の顧客にも新しいヒントを提示できるようにやっていきますので、今後とも、よろしくお願いします!

それでは今日はこのへんで。濱田孝治(ハマコー)でした。

ハノーファーメッセ2025振返りイベントやります

ハノーファーメッセ2025に関連して、弊社日比谷オフィスで振返りイベントをやります。アルファコンパス代表 福本さん、AWSのシニアソリューションアーキテクト 山本さんをお迎えして、現地情報をあれこれお届けするので、興味あるかたは、下記よりお気軽に申し込んでいただければ。

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【5/14(水)東京】ハノーバーメッセ2025ふりかえり〜製造業のデジタル革新最前線とAI活用〜 | DevelopersIO

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