AWSの3つのAI・機械学習認定試験をこれから受ける人のためのガイド - プラクティショナー(AIF)/アソシエイト(MLA)/スペシャルティ(MLS)
2024年8月からAWSのAI/ML関連の認定試験には、従来の専門レベルに加え、初級および中級向けのベータ試験が新たに追加され、試験の種類は合計3つになりました。
- NEW:AWS Certified AI Practitioner(AIF)
- NEW:AWS Certified Machine Learning Engineer - Associate(MLA)
- AWS Certified Machine Learning - Specialty(MLS)
私は8月27日と9月1日に新しいベータ試験に合格し、現在取得可能なすべてのAWS認定資格を取得しました。この経験をもとに、AWSのAI/ML系認定資格の学習方法についてご紹介します。
AI/MLの需要の高まっているので、ぜひ挑戦してみましょう。 日本語での受験も可能です。
AWS認定試験について
AWSは技術スキルとクラウドの専門知識を検証する認定試験を提供しており、次の4つのカテゴリーが存在します。
- 初級(foundational)
- 中級(associate)
- 上級(professional)
- 専門(specialty)
※ キャプチャは公式ページから
クラウドプラクティショナー(初級) → ソリューションアーキテクト アソシエイト(中級) → ソリューションアーキテクト プロフェッショナル(上級)とステップアップして受験した人も多いのではないかと思います。
AWS AI/ML試験について
プロフェッショナルとスペシャリティの違いこそありますが、AI/ML系資格にも同様に3つのレベルが存在します。
- NEW:初級:AI Practitioner(AIF)
- NEW:中級:Machine Learning Engineer - Associate(MLA)
- 専門:Machine Learning - Specialty(MLS)
手を出しづらかったAI/ML分野にやさしいレベルが2つも追加されました。
試験名 | AI Practitioner | Machine Learning Engineer – Associate | Machine Learning – Specialty |
---|---|---|---|
レベル | Foundational | Associate | Specialty |
対象受験者 | AWS の AI/ML テクノロジーを使用するソリューションを熟知してはいるが、必ずしも構築するわけではないという個人 | Amazon SageMaker およびその他の ML エンジニアリング AWS サービスの使用経験が少なくとも 1 年ある個人 | 開発またはデータサイエンスの担当者で、AWS クラウドでの機械学習 (ML)/深層学習ワークロードの開発、アーキテクチャ設計、実行において 1 年以上の実践経験を持つ個人 |
経験年数 | 半年 | 1年 | 2年 |
試験時間 | 120(※) | 170(※) | 180 |
質問数 | 85(※) | 85(※) | 65 |
分野と試験比重 | 1. AI と ML の基礎 (20%) 2. 生成 AI の基礎 (24%) 3. 基盤モデルの応用(28%) 4. 責任ある AI に関するガイドライン (14%) 5. AI ソリューションのセキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス(14%) |
1. 機械学習 (ML) のためのデータ準備(28%) 2. ML モデルの開発(26%) 3. ML ワークフローのデプロイとオーケストレーション(22%) 4. ML ソリューションのモニタリング、保守、セキュリティ(24%) |
1. データエンジニアリング(20%) 2. 探索的データ分析(24%) 3. モデリング(36%) 4. 機械学習の実装と運用(20%) |
試験ガイド | https://d1.awsstatic.com/ja_JP/training-and-certification/docs-ai-practitioner/AWS-Certified-AI-Practitioner_Exam-Guide.pdf | https://d1.awsstatic.com/ja_JP/training-and-certification/docs-machine-learning-engineer-associate/AWS-Certified-Machine-Learning-Engineer-Associate_Exam-Guide.pdf | https://d1.awsstatic.com/ja_JP/training-and-certification/docs-ml/AWS-Certified-Machine-Learning-Specialty_Exam-Guide.pdf |
※AIFとMLAのベータ試験終了後は試験時間・問題数ともに減ると思われます。
AWS Certified AI Practitioner について
AWS Certified AI PractitionerはAWS の AI/ML テクノロジーを使用するソリューションを熟知してはいるが、必ずしも構築するわけではないという個人向けの試験です。
各分野の比重は以下の通りです。
- AI と ML の基礎(20%)
1.1. AI の基本的な概念と用語を説明する。
1.2. AI の実用的なユースケースを特定する。
1.3. ML 開発ライフサイクルについて説明する。 - 生成 AI の基礎 (24%)
2.1. 生成 AI の基本概念を説明する。
2.2. ビジネス上の問題解決に生成 AI を使用する場合の可能性と限界を理解する。
2.3. 生成 AI アプリケーションを構築するための AWS インフラストラクチャとテクノロジーについて説明する。 - 基盤モデルの応用(28%)
3.1. 基盤モデルを使用するアプリケーションの設計上の考慮事項を説明する。
3.2. 効果的なプロンプトエンジニアリング手法を選択する。
3.3. 基盤モデルのトレーニングとファインチューニングのプロセスを説明する。
3.4. 基盤モデルのパフォーマンスを評価する方法を説明する。 - 責任ある AI に関するガイドライン(14%)
4.1. 責任ある AI システムの開発について説明する。
4.2. 透明性の高い説明可能なモデルの重要性を認識する。 - AI ソリューションのセキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス(14%)
5.1. AI システムを保護する方法を説明する。
5.2. AI システムのガバナンスとコンプライアンス規制を認識する。
生成AIと基盤モデルの2分野だけで50%を超えている点は注目に値します。Amazon BedrockやAmazon Qも試験対象のAWSサービスです。
「第4分野:責任ある AI に関するガイドライン」のようにバイアスや信頼性や透明性などについても問われることに注意しましょう。
クラウドプラクティショナー(CLF)と同じく、AWS上のAI/MLの一般的な知識を検証するための試験であり、AWSの主要なサービスとして以下が挙げられています
- Amazon EC2
- Amazon S3
- AWS Lambda
- Amazon SageMaker
一方で、以下のようなAI/MLのエンジニアリングは問われません。
- AI/ML モデルまたはアルゴリズムの開発またはコーディング
- データエンジニアリング手法や特徴量エンジニアリング手法の実装
- ハイパーパラメータのチューニングまたはモデル最適化の実行
- AI/ML パイプラインまたはインフラストラクチャの構築とデプロイ
- AI/ML モデルの数学的または統計的分析の実施
- AI/ML システムのセキュリティまたはコンプライアンスプロトコルの実装
- AI/ML ソリューションのガバナンスフレームワークとポリシーの開発と実装
次の試験ガイドにある概念・用語・AWSサービスを説明できるようになりましょう。
Skill Builderでは AIF-C01 で検索しましょう。
AWS Certified Machine Learning Engineer – Associate について
AWS Certified Machine Learning Engineer – AssociateはAmazon SageMaker およびその他の ML エンジニアリング AWS サービスの使用経験が少なくとも 1 年ある個人向けの試験です。
各分野の比重は以下の通りです。
- 機械学習 (ML) のためのデータ準備(28%)
1.1. データを取り込んで保存する。
1.2. データを変換し、特徴量エンジニアリングを実行する。
1.3. データの完全性を確保し、モデリングに向けてデータを準備する。 - ML モデルの開発(26%)
2.1. モデリングアプローチを選択する。
2.2. モデルをトレーニングおよび改良する。
2.3. モデルのパフォーマンスを分析する。 - ML ワークフローのデプロイとオーケストレーション(22%)
3.1. 既存のアーキテクチャと要件に基づいてデプロイインフラストラクチャを選択する。
3.2. 既存のアーキテクチャと要件に基づいてインフラストラクチャを作成し、スクリプト化する。
3.3. 自動オーケストレーションツールを使用して、継続的インテグレーションおよび継続的デリバリー (CI/CD) パイプラインを設定する。 - ML ソリューションのモニタリング、保守、セキュリティ(24%)
4.1. モデル推論をモニタリングする。
4.2. インフラストラクチャとコストをモニタリングおよび最適化する。
4.3. AWS リソースのセキュリティを確保する。
公式の対象受験者の説明に「Amazon SageMaker」が含まれている通り、SageMakerに関する質問がたくさん登場します。
第1分野であるデータエンジニアリングが約3割を占めているため、AWS Certified Data Engineer Associateとの相性も良いと感じました。
AWS上のML・データエンジニアリング力が試される試験です。
Skill Builderでは MLA-C01 で検索しましょう。
AWS Certified Machine Learning – Specialty について
AWS Certified Machine Learning – Specialtyは開発またはデータサイエンスの担当者で、AWS クラウドでの機械学習 (ML)/深層学習ワークロードの開発、アーキテクチャ設計、実行において 1 年以上の実践経験を持つ個人向けの試験です。
各分野の比重は以下の通りです。
- データエンジニアリング(20%)
- 探索的データ分析(24%)
- モデリング(36%)
- 機械学習の実装と運用(20%)
データ分析とモデリングで6割を占め、アソシエイトに比べてより専門的な知識が求められています。
この試験は2019年の3月から存在し、ある程度の時間が経過しています。試験ガイド(2.4 MLS-C01版)を見ると、3.2に「 language models(LLMs)」が含まれていたり、Amazon QやAmazon Bedrockも試験範囲に含まれるなど、細かくアップデートされているようです。
Skill Builderでは MLS-C01 で検索しましょう。
AI/ML系資格試験の学習方法
3つあるAI/ML系試験の勉強方法はどれも同じです。
まず、AWS Skill Builderが提供する模擬問題集(Practice Question Set)を受け、求められる知識と自分とのギャップを確認しましょう。
- どのくらいAI/MLの知識が不足しているのか?
- どのくらいAWSの知識が不足しているのか?
AI/MLの知識が不足している場合は、 グーグルが提供する無償の「機械学習集中講座(crash course)」が圧倒的にオススメです。
AWS試験で必要とされる以上のコンテンツが盛り込まれているため、試験ガイドに載っている馴染みのない概念や用語のセクションをピックアップして学習するとよいでしょう。
AWS全般の知識が不足している場合は、 まずクラウドプラクティショナーやソリューションアーキテクト アソシエイトの取得を目指しましょう。急がば回れです。
AI/ML系のAWSサービスの知識が不足している場合は、 公式ドキュメント、AWS公式のサービス別資料、AWS公式のワークショップ資料、AWS Summit Japanやre:Inventといったイベントのセッション資料、DevelopersIOのような技術ブログを活用しましょう。
特に、たくさん種類のあるAmazon SageMakerは避けて通れない重要なサービスです。
AI/ML系資格試験を取得する順番
次に、AI/ML系資格試験の取得順について解説します。
繰り返しとなりますが、AI/ML系の試験は独自性が強いです。
AWSの一般論(ソリューションアーキテクト プロフェッショナル資格)をベースに、プラスアルファの学習でAWSの資格試験を受けている人の場合(私です)、このアルファの領域が大きいことを意味します。AWSの初級・中級の試験を受けるというよりも、AI/MLの試験を受けるつもりで望むのが無難です。
仮にAWSの資格をすべて取りたい場合、クラウド・プラクティショナー → AI プラクティショナー → ソリューションアーキテクト アソシエイト ... というように低いレベルから順に取得するよりも、どこかのタイミングでAI/ML系をまとめて取得したほうが学習しやすいと思います。
以下は、AWSが提供している学習パスを参考に独自にアレンジしたものです。
非技術職の場合
学習リソースが豊富なクラウドプラクティショナーやソリューションアーキテクト アソシエイトの取得をまずは目指しましょう。
ソリューションアーキテクト アソシエイトはスキップ可能です。
ソリューションアーキテクトの場合
普段AI/MLと無縁な仕事をしている人にとっては、Fundamental・Associate・Specialtyのレベルの違いよりも、AI/ML分野の独自性の壁を高く感じるのではないかと思います。
ソリューションアーキテクト アソシエイトやソリューションアーキテクト プロフェッショナルを取得した後に、3つのAI/ML系資格をまとめて取得しましょう。
AI/ML・データエンジニアの場合
事業会社でエンジニアリングをしていると、利用されている特定のサービス以外を触る機会が少ないかもしれません。
AWSの試験ではAWSの幅広い知識が求められるので、AI/ML系資格と一緒にオーバーラップするところも多いData Engineer Associateも取得すると、データエンジニアリングの引き出しが増えるでしょう。
AIプラクティショナー(AIF)は難しい?
「AIプラクティショナー(AIF)試験が難しい」という声をよく耳にします。
- プラクティショナーだからと準備不足のまま試験に臨んだ
- AIFでは当然ながらAI/MLの専門知識が求められる
- ベータ試験のため、試験時間が長く、問題数が多い(CLFは90分65問のところAIFは120分85問)
このような背景から、 クラウドプラクティショナー(CLF)と比べて AIプラクティショナー(AIF)が難しいと感じている人が多いように思います。
最初の2点は、いつもの試験通り、試験ガイドを読んで不足している知識を学習しすることで解決できます。
3点目についても、今回はベータテストの段階から日本語で受験できるため、ベータ試験固有の試験問題の多さが相殺されるかと思います。
まとめ
AWSのAI/ML関連試験は、AWSの一般知識だけでは合格できず、AI/MLの知識だけでも合格できず、AWSの特定の生成AI関連サービスを少し触っただけでも合格できない、興味深い位置づけの試験群です。
一度、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
2025年2月15日までにベータ試験に合格すると、アーリーアダプターのバッジをもらえます。