MongoDBのAIソリューションについてre:Invent 2024のExpo会場で聞いてきた
「え?AWSのインダストリー展示にMongoDBブースがある?」
re:Invent 2024のExpo会場、非常に広大なスペースで開催されていました。その中でも中央にひときわ目立つ形でブースを出展していたMongoDB。re:InventのExpoのMongoDBブースは昔から非常に大きいことで印象深いのですが、何故かAWSのインダストリーブースにも小規模ですが、MongoDBのブースがありました。
「インダストリーカットからre:Invent2024を眺め、テクノロジーカットとは違う洞察を得る」の記事でも書いたとおり、AWSのインダストリーブースは非常に広大だったわけですが、そこにITテクノロジーの色合いが濃いMongoDBがブース出展しているのが非常に意外だったので、ブースの方と話した内容を、そのソリューションを紹介します。
ほな、いってみよ!!
ブース突撃して話した内容(相当意訳です)
というわけで、ブース突撃して話を聞いてみました。以下、かなりの意訳です。非常に丁寧に喋っていただき大感謝。
ハマコー:「Hi。真ん中に大きいブースがあるのに、こちらのインダストリー展示にもブースがあるのに驚きました。どうして、MongoDBがブースを出展しているんですか?私の印象だと、MongoDBはテクノロジーカットのソリューションのイメージだったので、すごく興味深いです」
担当の人:「HaHa、確かに意外かもしれませんね。もちろんこれは技術的なソリューションですが、このブースは、MognoDBの技術的な知識を業界のソリューションの枠組みで補完することです。例えば、製造業、テレコミュニケーション、自動車、小売、金融、ヘルスケアなどの業界横断的なソリューションをMongoDBは持っています。」
ハマコー:「なるほど、もう少し具体的に教えてくれますか?MongoDBのソリューションということは、リレーショナルデータベースでは実現できないことが、MongoDBを使うことで実現できるということでしょうか?」
担当の人:「そうですね。基本的には開発者向けソリューションなので、中心にデータベースがあります。リレーショナルデータベースとの違いは、ドキュメントモデルを使用していることです。つまり、あらゆる形式の情報をまとめて保存できます。そのため、構造データとは別にベクトル情報を埋め込むことができるため、AIを活用したプロジェクトでも高速に情報にアクセスし、適切な情報を返すことができます。データベースは、SaaS(MongoDB Atlas)として使うこともできますし、AWSなどのクラウドのセルフホスティングすることも可能です」
というわけで、1枚のパンフレットを渡してもらいました。これをみると、MongoDBのAIを活用したインダストリーベースソリューションの概要がなんとなくわかると思います。
以降、上記ソリューションについて、改めて公式ページで調べた内容を紹介します。
200ページをこえるeBookがダウンロード可能 "Innovate With AI: The Future Enterprise"
公式サイトはこちら。
MongoDB Atlas(MongoDBのSaaS版)には、AIを活用した機能も含まれていて、MongoDBを企業のAIによるデータ活用の基盤にすることで、業界内でのリーディングポジションを取りましょう!、という内容になってます。
知っている人にとっては常識だったかもしれませんが、自分は、MongoDBにAI周辺のユースケースがあるのを全く知らなかったので驚きました。
PDFがダウンロードできます。これが全部で227ページと非常にでかい。
MongoDBが発行している包括的なAIソリューションガイドで以下の内容が含まれています。
まず、冒頭、非構造化データをMongoDB Atlasのベクター検索で扱う方法について解説があります。そもそも、自分、MongoDBでベクター検索が扱えること自体全く知りませんでした。
その後、以下の見出しで内容が続いていきます。
- 産業別のAIソリューション活用事例:
- 製造業&自動車産業
- 小売業
- 通信・メディア
- 保険
- ヘルスケア・ライフサイエンス
- 金融サービス
- AIアプリケーションの現代化に関する内容:
- MongoDBのデベロッパーデータプラットフォームとAIの統合
- ベクトル検索やRAG (Retrieval Augmented Generation) などの最新技術の活用方法
- リアルタイム分析とダイナミックプライシングの実装
- AIパートナーシップに関する情報:
- クラウドサービスプロバイダー(AWS、Azure、Google Cloud)との連携
- システムインテグレーターとの協業
- SaaSソリューションの活用
- コンポーネントベースのAI開発
- 実際の導入事例:
- 様々な業界のリーディングカンパニーによる具体的な実装例
- AIを活用した業務改善や顧客体験向上の成功事例
このガイドは、企業がAIを活用してビジネス価値を創出するための実践的なガイドラインとして機能することを目的としており、特に MongoDB Atlas を活用したAIソリューションの実装に重点を置いています。
特徴的なのは、単なる技術解説に留まらず、各業界特有の課題やニーズに対して、具体的なソリューションと実装方法を提示している点で、オープンソースからエンタープライズレベルまで、様々な規模や要件に対応できる柔軟なアプローチが含まれています。
MongoDBのベクター検索(Vector Search)に関連するポイント
MongoDBのベクター検索(Vector Search)に関する部分について、重要なポイントをまとめると、こんな内容になっています。
- ベクター検索の基本概念と重要性:
- デジタルデータの80%以上が非構造化データである中、これらを効果的に検索・計算できるようにすることが重要
- あらゆる形式のデータ(テキスト、ビデオ、音声、画像、コード、表など)をベクター埋め込みに変換可能
- これにより、従来は計算機にとって不透明だった非構造化データに意味と構造を持たせることが可能に
- ベクター埋め込みのプロセス:
- データは適切なベクター埋め込みモデルで処理され、ベクターに変換
- 変換されたベクターはMongoDB Atlas Vector Searchに保存・インデックス化
- 類似ベクターの検索には近似最近傍(ANN)アルゴリズムを使用
- K近傍(KNN)検索には「Hierarchical Navigable Small Worlds (HNSW)」などのアルゴリズムを使用
- MongoDB Atlas Vector Searchの特徴:
- 単一のプラットフォームでベクターデータと従来のデータを統合管理
- データの抽出・変換・読み込み(ETL)が不要
- 単一のクエリAPIとドライバーで全てのデータにアクセス可能
- 検索ノードを独立してスケーリング可能
- 運用データベースノードとは別に、検索ノードを個別にスケーリング可能
- 実装上の利点:
- データパイプラインの簡素化
- システム全体の複雑性の低減
- エラーリスクの低減
- レイテンシーの削減
- コンパクトで俊敏な技術スタックの維持
このベクター検索の機能により、企業は非構造化データを効果的に活用し、より高度な検索や分析が可能になります。特に生成AI(Generative AI)と組み合わせることで、より正確で文脈に即した情報検索や処理が実現できます。
製造業と自動車産業での取り組み
製造業のセクションでは、主に以下の3つのユースケースにおける実装方法が、かなり詳細に記載されています。なんだこれ、普通のホワイトペーパーのノリではないすね。
- インベントリ管理と最適化 (Inventory Management and Optimization)
- サプライチェーン管理における課題とAIの活用
- リアルタイムでの在庫レベル監視と最適化
- 需要予測とシナリオプランニング
- MongoDBを活用したRAG(検索拡張生成)アーキテクチャの実装方法
- 合成データ生成による予測精度の向上
- 予知保全 (Predictive Maintenance)
- 機器の故障予測と保守計画の最適化
- センサーデータの収集と分析
- メンテナンス戦略の自動生成
- コスト削減効果:
- 新規設備コストの3-5%削減
- 労働生産性の5-20%向上
- 施設のダウンタイムの15-20%削減
- 在庫レベルの10-30%削減
予知保全は、製造業におけるデータ活用のユースケースとしてイメージしやすい分野ではありますが、MongoDBのホワイトペーパーでは、その実装上の仕組とそこから導き出されるコスト削減効果の具体例なども記載があります。
- ナレッジマネジメント (Knowledge Management)
- 熟練作業者の知識・経験の保存と活用
- 非構造化データ(手書きメモ、文書等)の有効活用
- マルチモーダルデータの統合と検索
- リアルタイムでの情報アクセスと共有
- シフトリーダー向けの意思決定支援システム
熟練作業者の技能継承も、非常によく出てくるユースケースですね。MongoDB Atlasでは、この用に現場オペレーターや品質管理者の自由入力インプットをエンベデッド化し、Gen AIを介したセマンティック検索で組織で蓄積した知見を返す仕組みが紹介されています。
ユースケース紹介
- Continental社の自動運転イニシアチブにおけるAI活用事例
- Eniの地下資源データ分析におけるMongoDBの活用
- Enelの従業員サービスデスク効率化事例
重要なポイント
- データの質と可用性が成功の鍵
- AIモデルの継続的な学習と改善の重要性
- セキュリティとコンプライアンスへの配慮
- 人間とAIの適切な役割分担
このセクションでは、各ユースケースについて、概念的な説明だけでなく、具体的なアーキテクチャ図や実装方法、使用するMongoDBの機能についても詳細に解説されています。成功事例もあるので、具体的にどのようなユースケースに刺さったのかなど、参考になる部分も多いでしょう。
クラウドプロバイダー(AWS)との連携について
「MongoDBをAWSで使う場合、実際どうやるの?」と疑問に思う人は多いんじゃないでしょうか。そのあたりも、Bedrockの兼ね合いの中で何点か紹介されていました。以下、DeepLによる翻訳です。
- 高速に構築
- MongoDB Atlasベクター検索とAmazon Bedrockを使用して、リアルタイムの運用データを使用したLLMを構築し、非公開でカスタマイズします。
- 効率的に構築
- MongoDB Atlas検索ノードを使用して、コアの運用データベースから独立したAIワークロードを分離して拡張することで、クエリ時間を最大60%高速化し、コストを最適化します。
- 簡単に構築
- 完全に管理されたRAGと、すべてのデータおよびアプリケーションサービス向けの統一インターフェイスおよびAPIをご利用いただけます。 追加のベクトルデータベースや特注のデータパイプラインは不要です。
- 安全に構築
- AWS PrivateLinkやその他のAWSサービスとの統合により、組織全体で独自データをGen AIと安全に利用できます。
AWS PrivateLinkとの統合機能があるんですね。とかく、AWSから外部SaaSへの接続はセンシティブな面が取り沙汰されますが、PrivateLink接続ができるのは使いやすい。
また、MonboDB Atlasは、Amazon Bedrockのナレッジベースとして機能するので、クリック一つで、Amazon BedrockがMongoDB Atlasをベクターデータベースとしてすぐに利用でき、マネージドなRAG環境を構築することができるとのことです。
ベクターサーチとしての確固たる地位を築きつつあるMongoDB Atlas
関連して調べている中で気になった記事がこちら。
ある調査で、MongoDB Atlasが、最も利用されているベクトルデータベースとして2年連続その地位についた、という記事です。
生成AIの広がりの中で、ベクトルデータベースは群雄割拠な時代かと思っていましたが、正直MonogoDBがそれほどの存在感を持っているとは全く知りませんでした。
ホワイトペーパを見ているだけでも、その文量やユースケースの多さ(製造業以外の他業種についても、非常に詳細に記述されています)に圧倒されます。AWSの中でのRAGでのベクトルデータベース利用というユースケースでも、上位の選択肢に入ってくるなと感じたので、今後、他の選択肢との比較も含め、候補にあげておきたいと感じました。
それでは、今日はこのへんで。濱田孝治(ハマコー)(@hamako9999)でした。