iOSエンジニアがAWS Certified AI Practitioner (AIF-C01)を受けてみた

iOSエンジニアがAWS Certified AI Practitioner (AIF-C01)を受けてみた

2025.08.12

これまで趣味でAWSを触ることはあったものの、自分の仕事に直接関わるものではなかったため、AWS認定資格を取得してこなかった。

7月中旬まで大学のレポートなど色々と忙しい日々が続いていたが、それも一段落し、9月上旬まで特にやることがない期間ができた。ゲームで時間を過ごすのも良いかもしれないが、ピクミン2にはロックオン機能がないため、ヘビガラスをうまく倒せずにストレスが溜まってしまい、あまり良い状態ではなかったのでゲームから離れることにした。

そうした中で周囲の環境も変化しており、AWS Certified AI Practitioner試験(以下AIFと記す)を受けることにした。理由について少し詳しく説明してみる。

モバイルアプリ開発にもAIコーディングの波が来ている

これまでChatGPTなどの対話型AIツールを補助的に使うことはあったが、AIの精度は低く、コーディングを全て任せることは現実的ではなかった。

Webアプリ開発の分野では、AIコーディングの登場当初から積極的に活用されていた印象がある。一方、iOSアプリのようなモバイルアプリ開発では、AIの学習データとなる開発記事の量がWebアプリに比べて少ないことから、なかなか実用的なレベルに達していなかった。

しかし、Claude Sonnet 4とClaude Codeが登場したことで状況が変わった。Claude Codeを使ってiOSアプリをゼロから作成できるか検証した結果、「Claude Codeなんもわからんので、AI縛りでiOSアプリを開発してみた」に詳しく書いたように、AIにコーディングを任せても良いと思えるレベルまで到達していることを実感した。実装においては「イマイチだな」と感じる部分もあるが、この進化のスピードを考えると、こうした課題もすぐに解決されそうだ。

近い将来、AIが開発の主役になる時代が来るかもしれない。モバイルアプリ開発者として、この変化に備えるためにAIに関する知識をつけるため勉強をすることにした。自分でAIを開発したり、AIサービスを提供したりする予定はないので、まずはエントリーレベルの資格取得から始めることにした。

本記事は、AIFの勉強をしながら受験のために必要な情報をまとめたものである。

執筆者について

  • モバイルアプリエンジニア 16年目
    • AWS認定資格の取得数はゼロ
    • 業務でAWSを使ったことはない
    • 趣味でRoute 53、S3、CloudFront をちょろっと使ったことがあるくらい
  • ChatGPT や Claude Code、GitHub Copilot は普段使いしている
  • 過去に Core MLとCreate ML (Xcodeの機能)を使って、画像識別をおこなうiOSアプリを開発したことがある

AWS Certified AI Practitioner とは?

AWS Certified AI Practitioner (AWS認定AIプラクティショナー)は、2024年9月に新設されたAWS認定資格の1つだ。この資格は、AI/MLの基礎知識とAWSのAIサービスに関する理解を証明するエントリーレベルの認定資格として位置づけられている。この試験は、試験コード「AIF-C01」から「AIF」と呼ばれる。

試験概要

項目 内容
試験時間 90分
問題数 65問(採点対象は50問、残り15問は今後の試験問題として評価される未採点問題)
合格ライン 700点(1000点満点)
受験料 15,000円
試験形式 選択問題、複数選択問題、順序問題、マッチング問題、ケーススタディ
受験言語 日本語 (その他の言語もあり)
受験方式 テストセンター または 自宅試験

上記は、2025年7月時点の情報である。

自宅試験は、不正行為の防止のために難易度が高いらしく、出不精の人でもテストセンターでの受験の方が楽なようだ。「テストセンターとリモートどちらがいいの?(AWS認定試験)」を読み、私はテストセンターで受験することに決めた。

試験内容(ドメイン別)

2025年7月時点の試験ガイドラインに掲載されていた出題範囲(ドメイン別)は以下の通り。

ドメイン 出題割合 主な内容
AI/MLの基礎 20% 機械学習の基本概念、AI/MLのライフサイクル、データの種類と品質など
生成AIの基礎 24% 生成AIの概念、基盤モデル、プロンプトエンジニアリングなど
基盤モデルの応用 28% Amazon Bedrock、SageMaker、Rekognition、Comprehendなどの具体的な使用方法
責任あるAIに関するガイドライン 14% 責任あるAIシステム開発
セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス 14% セキュリティ、ガバナンスなど

学習タイムライン

AWS認定試験は今回が初めてだったため、受験手続きの理解から始める必要があり、学習開始まで時間がかかった。

AIFの存在を知ったのは5月16日頃である。ベンダー試験を受けるのは約20年ぶりで、当時は当日に会場へ行って受験料を支払えば受験できたような記憶がある。しかし、現在は事前予約が必要となっており、AWSアカウントとは別の受験用アカウント作成や、ピアソンVUEでの予約・支払いなど、手続きが複雑で直感的に理解できず一度断念した。

7月16日:T&Cアカウントの作成

時間に余裕ができたため、本格的にAIF受験について調べ始めた。

APNとT&Cアカウントを作成し、いつでも受験申込ができる状態を整えた。この時点では学習開始前で、どれくらいで合格圏までいけるか不明だったので、実際の予約は見送った。

7月26日(1日目):学習開始・教材購入

複数のAIF受験体験記を調べたところ、「AIFはエントリーレベルの試験なので参考書は不要」という意見が多かった。AWS初心者の私は、体系的な学習のために「最短突破シリーズ AWS認定AIプラクティショナー 合格対策テキスト+問題集」を購入した。

https://classmethod.jp/news/250327-ai-practitioner/

この書籍は試験範囲を網羅的にカバーしており、AWS知識ゼロの状態でもスムーズに読み進められた。不明な用語やサービスの辞書的な参照にも活用でき、購入は正解だったと感じている。2日間で第1章から第6章まで完読した。

後述するように、私はどのサービスで何をおこなっているかの理解に最も苦労した。この書籍のおかげで必要十分なAWS知識を得ることができたと思う。

3〜4日目:現状の理解度を把握

AWS Skill Builderの無料模擬試験(全20問)を受験し、現在の理解度を確認した。

結果は正答率約50%だった。AI/MLの基礎知識は理解できていたが、AWSサービス名と機能の対応関係の暗記不足が明確になった。

5〜11日目:勉強お休み期間

眼精疲労の悪化によりディスプレイ作業が困難になったことと、連日のイベント参加により、この期間は全く学習できなかった。

12〜13日目:弱点をできるだけ潰していく

模擬試験の結果から、機械学習の基礎知識は十分だが、たとえばAmazon CloudWatchとAmazon SageMaker Model Monitorなど類似機能を持つサービスの区別ができていないことが判明した。

試験ガイドラインから出題範囲のサービスを抽出し、機能別に整理した一覧表を作成した(本記事の付録を参照)。この表を作成したことによって、正答率が劇的に改善した。

14〜16日目:模擬試験をこなす

AWS Skill Builderの模擬試験では満点を安定して取れるようになった。さらに実践練習として、Udemyの模擬試験を購入し、通勤時間(往復各30分)を活用して継続的に学習した。

15日目にして模擬試験でも90%を安定して取れるようになった。これ以上やると過学習になりそうだったこともあり、現在の実力を測る目的で受験予約を取った。AWS認定試験は予約から実施まで24時間以上空ける必要があるようだ。

16日目は2つある模試を1周ずつ実施し、いずれも90%を超える正答率であることを確認した。また、不正解となった機械学習用語をまとめて最終確認に備えた。

17日目:受験当日

テストセンター受験には身分証明書2点が必要なため、運転免許証とマイナンバーカードを持参した。

近隣のカフェでモーニングを取りながら、自作のAWSサービス一覧表と紛らわしい用語リストを最終確認した。テストセンターには試験開始18分前に到着した。

試験内容の詳細は割愛するが、これまでの対策が功を奏し、手応えを感じることができた。90分の試験時間に対し、40分で全問回答を完了し、20分かけて見直しをおこない退場した。

18日目:合格通知を受け取る

翌日の5時31分に合格通知を受け取った。初めてのAWS認定試験だったが合格できてよかった。

ふりかえり

いくつかの視点から今回のAIF受験について振り返った。

学習時間について

約11時間の学習で合格することができた。内訳は以下の通りである。

学習内容 時間
対策テキストを読む 3h
AWS Skill Builderの模擬試験 1h
Udemyの模擬試験 7h
合計 11h

これまでのAI/ML実務経験があったため、比較的スムーズに学習が進んだと思う。すでにAWSの基礎知識がある方であれば、さらに短時間での合格も可能だろう。

AWSサービスを覚えるのに苦労した

私は業務でCore MLを使った画像認識アプリを開発していた経験がある。当時は現在ほどAIが注目されておらず、Create MLでのファインチューニングやPythonでのモデル作成など、手探りで進めていた記憶がある。

そのため、AIや機械学習に関する問題は比較的スムーズに解答できた。一方で、最後まで苦戦したのがAWSのサービス名と機能を覚えることだった。似たような機能を提供するサービスが多く、正確な名称や使い分けを覚えるのに最も時間を費やすことになった。

受験で得られたもの

今回の受験を通じて、AI/MLの体系的な知識を整理できた。これまで実務で断片的に触れてきたAI技術を、AWSのサービス体系を通じて俯瞰的に捉え直すことができた。特に、責任あるAIやガバナンスといった観点は、開発者として今後ますます重要になる領域であり、学習できて良かったと感じている。

次のステップ

今回の受験でAWSの世界に触れることができた。私が開発しているアプリでも、周辺技術としてAWSが活用されている。次はAWS Certified Cloud Practitioner(CLF/クラウドプラクティショナー)を受験して、専門分野であるモバイルアプリ開発以外のサーバー技術についても学びを深めていきたいと考えている。

付録:AIFの出題範囲のAWSサービス

以下の表は、試験ガイドラインから抽出したAWSサービス一覧である。私が最も苦労したAWSサービス名の暗記対策として作成した。各サービスの役割を把握することで、問題文から適切なサービスを選択できるようになる。

カテゴリ サービス名 説明
Analytics AWS Data Exchange データ交換サービス
Analytics Amazon EMR 管理型Hadoop・Sparkクラスター
Analytics AWS Glue ETLサービス
Analytics AWS Glue DataBrew ビジュアルデータ準備ツール
Analytics AWS Lake Formation データレイク構築・管理
Analytics Amazon OpenSearch Service 検索・分析サービス
Analytics Amazon QuickSight BIサービス
Analytics Amazon Redshift データウェアハウス
Cloud Financial Management AWS Budgets 予算管理
Cloud Financial Management AWS Cost Explorer コスト分析
Compute Amazon EC2 仮想サーバー
Containers Amazon ECS コンテナオーケストレーション
Containers Amazon EKS 管理型Kubernetes
Database Amazon DocumentDB MongoDBコンパチブルデータベース(ベクトル検索対応)
Database Amazon DynamoDB NoSQLデータベース(ベクトル検索対応)
Database Amazon ElastiCache インメモリキャッシュ
Database Amazon MemoryDB Redis互換インメモリデータベース(ベクトル検索対応)
Database Amazon Neptune グラフデータベース(ベクトル検索対応)
Database Amazon RDS 関係データベース(PostgreSQL拡張でベクトル検索対応)
Machine Learning Amazon A2I 人間による審査サービス
Machine Learning Amazon Bedrock 基盤モデルAPI
Machine Learning Amazon Bedrock Guardrails 責任あるAI機能・コンテンツフィルタリング
Machine Learning Amazon Bedrock Agents マルチステップタスク実行エージェント
Machine Learning PartyRock (Amazon Bedrock Playground) Bedrockプレイグラウンド・プロトタイピングツール
Machine Learning Amazon Bedrock knowledge base RAG用ナレッジベース
Machine Learning Amazon Comprehend 自然言語処理
Machine Learning Amazon Fraud Detector 不正検知
Machine Learning Amazon Kendra エンタープライズ検索
Machine Learning Amazon Lex 会話型AI
Machine Learning Amazon Personalize レコメンデーション
Machine Learning Amazon Polly 音声合成
Machine Learning Amazon Q AIアシスタント・チャットボット
Machine Learning Amazon Rekognition 画像・動画分析
Machine Learning Amazon SageMaker 機械学習プラットフォーム
Machine Learning Amazon SageMaker JumpStart 事前構築済みMLソリューション
Machine Learning Amazon SageMaker Data Wrangler データ準備・変換ツール
Machine Learning Amazon SageMaker Feature Store 機械学習特徴量ストア
Machine Learning Amazon SageMaker Model Monitor モデル監視サービス
Machine Learning Amazon SageMaker Clarify MLモデルのバイアス検出・説明可能性
Machine Learning Amazon SageMaker Model Cards モデル文書化・透明性ツール
Machine Learning Amazon Textract 文書からのテキスト抽出
Machine Learning Amazon Transcribe 音声からテキスト変換
Machine Learning Amazon Translate 機械翻訳
Machine Learning AWS HealthScribe 医療会話の音声認識・臨床文書生成
Management and Governance AWS CloudTrail APIコールの記録
Management and Governance Amazon CloudWatch 監視サービス。リソースのメトリクスとログを監視する
Management and Governance AWS Config 設定変更追跡。リソース構成の監視をおこなう
Management and Governance AWS Trusted Advisor ベストプラクティス推奨。全体的なAWS環境の最適化を支援する
Management and Governance AWS Well-Architected Tool アーキテクチャ評価
Networking and Content Delivery Amazon CloudFront CDN
Networking and Content Delivery Amazon VPC 仮想プライベートクラウド
Security, Identity, and Compliance AWS Artifact コンプライアンス文書
Security, Identity, and Compliance AWS Audit Manager 監査管理
Security, Identity, and Compliance AWS IAM ID・アクセス管理
Security, Identity, and Compliance Amazon Inspector セキュリティ評価。脆弱性の管理
Security, Identity, and Compliance AWS KMS 暗号化キー管理
Security, Identity, and Compliance Amazon Macie 機密データ検出・分類サービス
Security, Identity, and Compliance AWS Secrets Manager シークレット管理
Storage Amazon S3 オブジェクトストレージ
Storage Amazon S3 Glacier 長期アーカイブ

覚え方のコツ:管理系サービスの連想記憶法

特に混同しやすい管理・ガバナンス系サービスは、以下のイメージで覚えることで区別できるようになった。

  • CloudWatch = 「時計」→ リアルタイム監視
  • CloudTrail = 「足跡」→ アクション記録
  • Config = 「設定」→ 構成変更追跡。コンプライアンス要件の評価に利用
  • Trusted Advisor = 「信頼できる助言者」→ 最適化提案
  • Inspector = 「検査官」 → 脆弱性の評価・検査
  • Audit Manager = 「監査マネージャー」 → 監査情報の追跡。コンプライアンス要件の評価に利用

付録:紛らわしい機械学習用語

試験直前まで混同していた類似用語をまとめた。

  • K 最近傍 (k-NN)
    • 教師あり学習
    • 分類・回帰。近傍データから予測
  • K-平均法 (k-Means)
    • 教師なし学習
    • クラスタリング。データをK個のグループに分割
  • 相関行列
    • データ分析・前処理時に利用
    • 変数間の相関関係を可視化する
  • 混同行列
    • モデル評価時に利用する
    • 分類モデルの性能評価(精度・再現率等)

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