ITILについて楽しく学ぼう。”『アポロ13』に学ぶITサービスマネジメント”のeXtreme Readingを部内でやってみた
オペレーション部 江口です。
ITサービスの運用管理において、広く利用されているフレームワークとしてITILがあります。当社もこのITILをベースとした認証基準であるISO/IEC20000を取得し、この考えに沿ったサービス運用を実施しています。
最近、オペ部内で「あらためてITILを学ぼう」という機運があり、ITILの本について輪読会を行いました。ちょうど先日、輪読会が終了したので、題材としたテキストと輪読会の振り返りについて記事にまとめたいと思います。
輪読会を企画した背景
オペ部では最近、みんなで輪読会を行う試みをやっています。
前回は、ネットワークの基礎を学び直すべく「マスタリングTCP/IP」の輪読会を行いました。この際のレポートは同僚のttakaがブログにしています。
次の題材を何にするか、ということを考えていたタイミングで、私はちょうど新卒メンバーのオペ部での研修内容を検討をやっていました。研修内容を考えるにあたって、「ITサービスの運用を経験してもらうにはITILを知ってもらうのが良いだろう」という話が出てきました。それで研修内容にITILの勉強を組み込んだのですが、「新卒メンバーにITILを教える前に、我々現在のオペ部メンバーもITILの理解をあらためて深めるべきでは」と考え、ITILの本を次の輪読会の題材として提案しました。
テキスト
テキストとして選んだのは、"『アポロ13』に学ぶITサービスマネジメント"(技術評論社)という本です。
1995年に制作された映画「アポロ13」で描かれた、NASAによるアポロ13の打ち上げ、そしてそこで発生した「宇宙船の故障」という大きな事故への対応を、ITILによるサービス運用管理になぞらえて解説するというなかなかユニークな本です。ITILはこのアポロ13の事故のずっと後にイギリスで発表されたものなので、NASAが当時ITILを取り入れていたわけではないのですが、「宇宙船打ち上げ」という大事業を運用する組織だっただけに。ITILのベストプラクティスがそれほど違和感なく当てはまる、ということでしょう。
選んだ理由としては、「映画にもなった有名な出来事を題材としており、興味深く読めそう」という点が大きかったです。各章の冒頭で映画のエピソードを解説する -> そのエピソードに関連するITILの考え方の説明をする、という構成なのですが、この構成のおかげで、ITILの運用を学びつつ、説明されるアポロ13の状況にドキドキしながらみな楽しく読むことができたようでした。
輪読会の方式
今回、輪読会の形式は「eXtreme Reading(XR)」という方法を採用しました。私が前職で上司に教えてもらった方法です。
簡単にいうと、事前にレジュメなどを用意せずに指定した章をみなで黙読。その後内容についてみんなで話し合う、といった流れで行う輪読会の形式です。授業で実践された琉球大学の方が、方法について詳しくまとめてくださっています。
eXteme Reading (XR)まとめ | nakarx's blog
採用した理由としては、「事前準備がいらない」という点が大きいです。前回の輪読会では、参加者が順番に事前資料の作成を行っていたのですが、この資料作成が割と大変で、振り返り時にも「問題」として挙げられました。それをこの方法ならば解消でき、参加者の負担になりにくいかなと考えた次第です。じっさい、振り返りでも「事前準備がいらない」点は良かった、という声が挙がりました。
負担になりにくい輪読会の形式としては「もくもく会」もあります。もくもく会とeXtreme readingの相違点は、
- もくもく会は各自が自分のペースで読み進めるのに対して、eXtreme readingは皆でおなじ章を同時に読む
- eXtreme readingでは内容について話し合う時間を取り、その内容をまとめる
というところになるかと思います。今回は皆の理解を深めるために、話し合う時間をきっちり取りたい、という思いもありeXtreme readingを採用しました。もちろんもくもく会も良い形式なので、どちらが良いかは輪読会の目的や参加するメンバーなどを考慮して決めれば良いのかなと思います。
振り返り(KPT)
輪読会終了後に行った、KPT(Keep, Problem, Try)について軽くご紹介しておきます。
Keep(良かったこと、続けたいこと)
- あらためてサービスについて考えることができて良かった
- ITILとCMの取り組みについて知ることができた
- 事前に資料準備などが要らなかったので、参加のハードル低かった。本の選定とeXtrem Readingの相性が良かった!
- 1人だったら忙しいを理由に読むのやめてたかもしれない。輪読会という形がよかった
- 自分たちが提供しているサービスとは何か、提供先はどこかについて改めて知るいい機会になった
- (輪読会中に)同じディスカッションを自分のチーム内でもやってみて同様の気づきがあったので良かった。
- 普段意識することのない自分たちが提供するサービス(テクニカルサポート)について思いを馳せる機会になった
- 手順など作成する際にITILの考え方が役立った
Problem(問題だと思ったこと)
- (話し合う際の)前提の知識がなくてディスカッションに参加できないときがあった(聞くだけになってしまった)
- 映画見ておけばよかった…
- 進行役の人は内容を予習しておいたほうが議論を深められる気がする。
- 何かしらの改善のアクションに持っていくことまでできなかったので、もう少し深く考えたかったかも。 でも読んだだけでも価値はあると思うしそこはハードルの低さとのトレードオフという感じもする
- せっかくなので具体的に何かやりたい。みんなでITILの資格とるとか
- 自分たちのサービスがITILに基づいてデザインされていることについて、実際の設計資料とかと合わせて見てみることができたらもっとよかった
- 事前準備がいらない分、当日に読む時間が発生するので議論の時間は当然短くなった
Try(次から活かしたいこと)
- 輪読会参加前に一度テキストを読んでおく
- 話し合った内容だけでなく、各章の内容の要約も残すと振り返りしやすいなと思った
- 議論の時間をもう少し多くとって、「自分たちのサービスに当てはめてどうか」ということをもう少し掘り下げてやってみたい
- 改善のアクションにつなげたい
おわりに
以上、オペレーション部で行った輪読会について、テキストと、採用した輪読会の進め方(eXtreme Reading)について簡単にご紹介しました。
こうした部内での輪読会の取り組みは、これからもやっていこうと思っています。次のテキストはまだ選定中なのですが、次は技術的な話とは少し毛色の違う本を題材にするのがいいかな?などといったことを話し合っています。また輪読会を行ったらブログでご報告したいと思います。それでは!