
2026年のローカルLLM事情を整理してみた
はじめに
こんにちは、クラスメソッド製造ビジネステクノロジー部の森茂です。
2025 年から 2026 年にかけて、ローカル LLM 界隈の動きが激しすぎて追いつけなくなってきました。DeepSeek-R1 のインパクト、Ollama の機能拡充、Qwen2.5 の日本語性能向上、そして Claude Code がローカル LLM で動くようになったという話題。「そろそろちゃんとキャッチアップしないと...」と思い、自分の整理も兼ねてこの記事を書いてみました。
この記事では、普段 Claude Code や GitHub Copilot、Cursor などのコーディング AI を使っている開発者向けに、2026 年 1 月時点でのローカル LLM の選択肢を整理していきます。「どのモデルを選べばいいのか」「ライセンスは大丈夫なのか」「どれくらいのスペックが必要なのか」といった疑問に答えていきます。
API ユーザーがローカル LLM に移行する理由
オープンソース LLM の性能向上
2026 年に入り、オープンソース LLM の性能が急速に向上しています。特にコーディング領域では、一部のベンチマークで商用モデルに匹敵するスコアを出すモデルも登場しています。「オープンソースは商用モデルに比べて精度が低い」という認識は、徐々に過去のものになりつつあるかもしれません。
コスト構造の違い
API 課金と自前 GPU への投資では、コスト構造が大きく異なります。
API 課金は使った分だけ支払う形式で、利用量が少なければ安価です。一方、自前の GPU 環境は初期投資が大きいものの、利用量が増えるほど単価が下がります。月間のトークン処理量が一定を超えると、自前環境の方がトータルコストで有利になるケースもあります。
どちらが良いかは利用パターン次第ですが、「API 一択」ではなく「選択肢がある」という状況は嬉しいですね。
データ機密性への対応
「外部に出せないデータ」を扱う場合、ローカル LLM は有力な選択肢です。医療データ、金融データ、社内の機密情報など、コンプライアンス上クラウドに送信できないデータでも、ローカル環境なら安心して処理できます。
2026 年の主要モデル比較
ここからが本題です。2026 年 1 月時点で注目されている主要モデルを用途別に整理しました。
用途別おすすめモデル
| 用途 | 推奨モデル | 選定理由 |
|---|---|---|
| コーディング補完 | Qwen2.5-Coder | JSON 出力が安定、Apache 2.0 ライセンス |
| 汎用チャット | Llama 3.3 | 128k コンテキスト対応、幅広いサイズ展開 |
| コスト効率重視 | Mixtral 8x22B | MoE 構造により推論コストを大幅削減 |
| 軽量・エッジ | Phi-4 | 14B でラップトップでも動作、品質も良好 |
| 推論タスク | DeepSeek-R1 | 長文・ツール利用に強み、API 料金が 20〜50 分の 1 |
| 総合性能 | GLM-4.7 | 複数ベンチマークで高スコア、推論に強み |
モデル詳細比較
| モデル | 得意領域 | サイズ | ライセンス | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| GLM-4.7 | 推論・コーディング | 355B(稼働 32B) | MIT | SWE-bench 73.8% |
| Qwen2.5-Coder | コード生成・JSON | 0.5B〜32B | Apache 2.0 | 29 言語対応 |
| Qwen3-Coder | Agent・コード生成 | 480B(稼働 35B) | Apache 2.0 | 256K コンテキスト |
| DeepSeek-R1 | 長文・ツール利用 | 中〜大 | フリー | API 料金 20〜50 分の 1 |
| Llama 3.3 | 汎用チャット | 1B〜405B | Meta 独自 | 128k コンテキスト |
| Mixtral 8x22B | コスト効率 | 141B(稼働 39B) | Apache 2.0 | MoE で高速 |
| Phi-4 | 軽量エッジ | 14B | フリー | ラップトップ動作 |
Qwen3-Coder について
2025 年 7 月にリリースされた Qwen3-Coder は、480B 総パラメータのうち 35B のみをアクティブにする MoE 構成で、SWE-Bench Verified で Claude Sonnet 4 に匹敵するスコアを記録しています。ただし、現時点では個人でローカル実行するのは現実的ではありません(要 290GB VRAM)。Qwen3 の汎用モデルは 0.6B〜32B が既にリリースされていますが、Coder 特化の小型バリアントについては今後のリリース待ちです。
GLM-4.7 が海外で話題になっている?
2026 年 1 月、清華大学発の GLM-4.7 が海外の AI コミュニティで大きな話題になっています。355B 総パラメータ(稼働 32B)の MoE 構成で、SWE-bench Verified 73.8%と高いスコアを記録しています。
注目されている理由は、完全オープンソース(MIT ライセンス)であること、OpenAI/Claude API と互換性があり既存ツール(Cursor 等)で即利用可能なこと、そして「三層思考メカニズム」による高度な推論能力です。
ただし、ローカル実行には 165GB 以上のメモリが必要なため、個人環境では API 経由での利用が現実的です。
日本語環境での注意点
ここで気になるのが日本語性能です。上記のモデルは英語中心で学習されているものが多く、日本語での利用には向き不向きがあります。(日本語性能については私の主観多めです・・・)
| モデル | 日本語性能 | 備考 |
|---|---|---|
| Qwen2.5 系 | ◎ | 業界最高クラス、GPT-4 を超えるスコアも |
| Qwen3-Coder | ◎ | Qwen3 ベースで 119 言語対応 |
| DeepSeek-R1 | ○ | 日本語コーパスで学習、文脈理解が良好 |
| GLM-4.7 | ○〜◎ | 中国語・英語が中心だが日本語も対応 |
| Llama 3.3 | △ | 英語中心、日本語で質問しても英語で返答も |
| Mixtral 8x22B | △ | 多言語対応だが日本語は弱め |
| Phi-4 | △ | 英語中心、日本語性能は未検証 |
日本語で使う場合は、Qwen2.5 系を軸に検討するのが現実的です。「汎用チャット」用途で Llama 3.3 を挙げましたが、日本語環境では Qwen2.5-14B や Qwen2.5-32B の方が良い結果を得られそうです。
また、Llama 系を使いたい場合は、ELYZA-Llama-3-JP-8B や Swallow などの日本語追加学習版も選択肢になります。Hugging Face で公開されており、Ollama でも利用可能です。
ライセンスで気をつけたいポイント
オープンソース LLM を商用利用する場合、ライセンスについても気をつけておきたいところ。「フリー」と言っても条件が異なるため、整理しておきましょう。
ライセンス分類
| ライセンス | 代表モデル | 商用利用 | 改変・再配布 |
|---|---|---|---|
| Apache 2.0 | Qwen、Mistral 系 | 完全フリー | 自由 |
| Meta 独自 | Llama 系 | 基本 OK(条件付き) | 条件付き |
| その他フリー | DeepSeek、GLM 等 | 基本フリー(規約確認推奨) | 規約による |
迷ったら Apache 2.0(Qwen/Mistral 系)を選んでおけば間違いないです。Llama も実質問題ないケースが多いですが、将来大規模化する可能性があるなら最初から Apache 2.0 ライセンスのモデルが安心ですね。
ハードウェア要件と選定の目安
「自分の環境でどのモデルが動くのか」は気になるポイントだと思います。VRAM 容量別に動かせるモデルの目安を整理しました。
VRAM 別モデル選定ガイド
| VRAM | 動かせるモデル | 量子化 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 8GB | Phi-4、Qwen 7B | 4bit | 軽い用途、実験 |
| 16GB | Llama 8B、Qwen 14B | 8bit | 個人開発、コード補完 |
| 24GB | Llama 70B、Mixtral | 4bit | 本格利用、RAG |
| 48GB+ | Llama 405B | 8bit | 大規模プロダクション |
| 150GB+ | Qwen3-Coder-480B(量子化) | 4bit | エンタープライズ |
量子化について
「量子化」は、モデルの精度をある程度犠牲にして、必要なメモリを削減する手法です。4bit 量子化を使えば、本来 48GB 必要なモデルを 24GB で動かせることもあります。品質への影響は用途次第ですが、コーディング支援程度なら 4bit でも十分実用的です。
ツール選定ガイド
ローカル LLM を動かすためのツールはいくつかありますが、2026 年時点でのおすすめを整理しました。
主要ツール比較
| ツール | おすすめ度 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| Ollama | ★★★★★ | 1 コマンドで動く、API 互換 | まず触ってみたい人 |
| vLLM | ★★★★☆ | 高スループット、プロダクション最適化 | 大量リクエスト処理が必要な本番環境 |
| LM Studio | ★★★★☆ | GUI で視覚的に操作可能 | 非エンジニア、GUI 好きな人 |
| llama.cpp | ★★★☆☆ | 軽量でカスタマイズ性が高い | 上級者、エッジデバイス向け |
Ollama をおすすめする理由
初めてローカル LLM を試すなら、Ollama が簡単です。本格的なプロダクション環境で大量の同時リクエストを捌く必要がある場合は、vLLM が選択肢になってくると思います。
# インストール(Mac/Linux)
curl -fsSL https://ollama.com/install.sh | sh
# モデル取得と実行
ollama pull qwen2.5-coder:7b
ollama run qwen2.5-coder:7b

ollama run を実行するとモデルの取得も自動で行われます。日本語での応答もスムーズ。
これだけでローカル LLM が動きます。Homebrew でのインストールにも対応しています。
# Homebrew でインストール
brew install ollama
Ollama は OpenAI 互換の API エンドポイントも提供しているため、既存のコードからの移行も容易です。「まずは Ollama で感触を掴む」というアプローチがおすすめですね。
API 互換性について
Ollama は OpenAI API 互換のエンドポイント(/v1/chat/completions)に加えて、Anthropic API 互換のエンドポイント(/v1/messages)も提供しています。v0.15 以降では ollama launch claude コマンドも追加され、Claude Code との連携も試せるようになりました。
ただし、Claude Code との連携については、現時点では課題もあります。詳細は関連記事「Ollama v0.15 で Claude Code をローカル実行できるか試してみた」で検証結果をまとめていますので、参考にしてみてください。
まとめ
最後に、ローカル LLM を始めるための具体的なステップをまとめます。
ステップ 1:モデルを選ぶ
| 用途 | 推奨モデル |
|---|---|
| コーディング | Qwen2.5-Coder |
| 汎用チャット(日本語) | Qwen2.5-14B |
| 汎用チャット(英語) | Llama 3.3 |
| 軽量・お試し | Qwen2.5-7B |
ステップ 2:ハードウェアを確認する
VRAM 16GB 未満の場合は、4bit または 8bit 量子化モデルを選びましょう。MacBook の統合メモリでも動きますが、推論速度は専用 GPU に比べると遅くなります。
ステップ 3:Ollama で始める
# インストール
curl -fsSL https://ollama.com/install.sh | sh
# 汎用チャット(日本語)を試すなら
ollama pull qwen2.5:7b
ollama run qwen2.5:7b
# コーディング補完を試すなら
ollama pull qwen2.5-coder:7b
ollama run qwen2.5-coder:7b
今年は、オープンソース LLM が「趣味の実験」から「実務ツール」に移行するタイミングだと感じています。API 経験があれば、ローカル LLM への移行は想像より簡単です。
日本語環境では Qwen2.5 系が現時点ではおすすめです。まずは Ollama で Qwen2.5-7B を動かしてみて、感触を掴んでみてはいかがでしょうか。コスト削減やデータ機密性の確保など、ローカル LLM ならではのメリットを実感できるかもしれません。








