ミクシィ主催「Customer Support Tech Meetup #2」参加レポート(前半)
オペレーション部 江口です。
去る8月27日、ミクシィさん主催のMeetup 「Customer Support Tech Meetup」がオンライン開催されました。
最近当社オペ部メンバーでは「CRE」(Customer Reliability Engineering)に興味を持っています。このイベントではミクシィさんのCREへの取り組みのお話も聞けるとあって、オペ部有志でSlackでリアルタイムに実況しながら視聴させていただきました。というわけで折角なのでその模様をブログでレポートしたいと思います。
※1つ1つセッションの感想など書いていたら結構なボリュームになってしまったので、前半と後半の2回に分けて投稿します。
Customer Support Tech Meetupとは
以下、Conpassのイベントページ(下記参照)からの引用となります。
カスタマーサポート(CS)の現場には、プロダクトやサービスの内容によって異なる様々な課題があり、各社が個々に解決に取り組んでいます。しかし現場は違えど、共通の課題は多いかもしれません。
最近耳にする機会が増えてきた「CRE」は、ユーザーに寄り添いながら技術でCS課題を解決するエンジニアロールです。
Customer Support Tech Meetup では「CREがどのようにしてCS課題を解決しているのか?」その最新情報を事例とともにご紹介します。参加者の皆様にとってこのイベントが知見共有や情報交換のきっかけになれば幸いです。
今回はミクシィCREの事例に加え、ミクシィ健全化チームから、エンジニアでないCSメンバーが不正対策に技術を活用している事例をご紹介します。さらに、第1回でご好評をいただきましたカラクリ株式会社様の事例に加え、今回はトレジャーデータ株式会社様からも事例をご紹介します。
CRE(Customer Reliability Engineering)とは
先に、このMeetupで話題の中心となっているCREについて解説しておきます。
CREはCustomer Reliability、すなわち「顧客信頼性」を高めるため、カスタマーサポートの課題を技術で解決していく専門職です。Googleが2016年に新たな専門職として発表し、話題となりました。
上記のGooleの記事では、それ以前にやはりGoogleが提唱した「SRE(Site Reliability Engineering)」を引き合いに出しています。SREは、(とてもざっくり言えば)ソフトウェアエンジニアリングの技術をもってシステムの改善・運用していく役割ですが、CREはその考えをカスタマーサポートにも適用した役割といえます。
セッションレポート
以下、各セッションのレポートです。 なおセッションの様子はYoutubeで配信されています。
(1) mixi Customer Support Tech Meetup #2 - YouTube
また、セッションの資料は前述のConnpassのイベントページにまとめられています。
【オンライン開催】Customer Support Tech Meetup #2 - 資料一覧 - connpass
オープニング ミクシィCSとCREのご紹介(ミクシィ 豊川 弘樹氏)
オープニングでは、Meetupの目的と主にテーマとなっているCREについて説明がありました。
- Customer Support Tech Meetupの目的について:
- カスタマーサポートの現場には様々な課題がある
- そこには各社共通の課題が多いのではないか
- ミクシィCREの事例紹介を通して、CS業界の発展に貢献できればと思っている
- CSとCRE
- プロダクトを一手に支えるのがCS、CSを技術面から支えるのがCRE
- CREを設置する会社は増えている。CREの重要性、顧客満足度向上への理解の高まりが背景にあるのでは
- ミクシィCREのミッション
- CSスタッフのクリエイティビティを最大化すること
- 人に寄り添った対応や思いやりのある対応にはクリエイティビティが欠かせない
激録!!密着 健全化24時!! ~ CREとの関わり方 ~(ミクシィ 戸谷 栄一氏)
資料: 激録密着 健全化24時 - Speaker Deck
ミクシィCS部の「健全化チーム」がどうCREと関わって活動を行っているか、についての発表でした。 健全化チームは、サービスの不正行為の監視・対応や、ネット利用についての啓蒙活動などを行うチームとのことです。ユーザーが安心・安全に遊んでもらえるよう、サービスの健全化を図っているということですね。なかなかいいネーミングだな、と思いました。
発表は「for safety(安心・安全に遊んでもらうために考えていることと)」と「with CRE(CREとの連携)」という2つのテーマが掲げられました。
- for safery:
- モンストにおけるチートなどの不正行為を例に説明
- 何度もチートを行う悪質なユーザーに対しては、そうしたユーザーが「嫌がる」であろう対応を行うことを考えている
- 最大限の対応効果を発揮させるため
- 上記の対応として、「チートしてのプレイ中にクリアできないこと」が最も嫌がる行為であろうと想定
- CREと連携して悪質なユーザがプレイするタイミングやクエストのプレイ中にBANができる「BAN予約機能」を開発
- with CRE:
- 管理ツールのアップデートについて紹介
- 改善項目についてCREと定期的にMTGしている
- (モンストの場合)問い合わせそのものから改善のヒントを得ることは難しい
- 不正行為を行わないユーザーはあまり問い合わせをしてこないため)
- そのため改善項目を考えるうえでは直感や勘が重要
- 不正ユーザーが「見てほしくないデータ(不正がばれるため)」を考える
- CREには直感や勘を具現化してもらう
- 未知のデータの見える化、すでにあるデータを見やすくするなど。管理ツールに目に見える形で出してもらう
- 「すでにあるデータを見やすくする」例:キャラクター属性の可視化
- モンストは4,900種以上のキャラがいるため、キャラの属性が分かりづらくなっていた
- 属性が分かりやすくならないか、とCREに相談したところ「できるよ」と改善してくれた
- キャラの属性ごとに色分けして視認性UP
- 文字だらけの状態を改善
- CREがいることのメリット:
- フットワークの軽さ
- エンジニアならではの視点で直感や勘を具現化する力
感想
ミクシィのサービスの健全化への取り組みと、それに対するCREの貢献が分かる発表でした。 サービスの性質上「健全化」がチート対策に重点が置かれるのだなあ、ということがあらためてよく分かりました。
我々の提供しているメンバーズサービスはB2Bのサービスなので、お客様に安全に利用いただける「健全化」の意味するところはかなり変わってはくるのですが、ともあれ「サービスを健全にする」ということをミッションとするチームがあるというのは良いな、と勉強になりました。
管理ツール開発は問い合わせ対応のためだけではない!チート対策のための管理ツール開発とは(ミクシィ 上埜 かおり氏)
資料: チート対策のための管理ツール開発とは / Support Tools for Anti-Cheating Measures - Speaker Deck
続いては、ミクシィCREグループの方の発表。、前の発表で話の挙がっていた管理ツールの開発を通じて、モンストにおけるチート対策、それをどうCREがサポートしているかを紹介する発表でした。
- なぜチート対策をするのか
- ユーザーにゲームを楽しんでもらうため
- チートを行うユーザー(チーター)がいると、ゲームバランスが崩れる・不公平感が生まれるといった問題が生じる
- ユーザーにゲームを楽しんでもらうため
- なぜCREがチート対策のサポートをするのか
- 素早く正確なチート対策を実施するため
- チーターとのイタチごっこに対応するため
- アカウント停止という協力な操作のためミスが許されない
- CREによるサポートの取り組み
- 効率化
- 見える化
- ミスの発生しにくいシステムづくり
- 素早く正確なチート対策を実施するため
- 取り組みの実例
- 効率化
- チートログを抽出するツールの開発
- 以前は健全化チームがチケットでログ抽出を依頼する運用
- この方式では健全化チームのもとにデータが届くまで時間がかかっていた
- UIでパラメータを指定するだけでログを抽出できる機能を開発
- チートログを抽出するツールの開発
- 見える化
- チート対策専用のクエスト検索機能の開発
- 問い合わせ対応用のクエスト検索機能では、チート対策に必要な情報が表示されなかった
- チート対策に必要な情報を過不足なく表示できる機能を開発(ユーザーごとに必要な情報を表示)
- ミスの発生しにくいシステムづくり
- 手作業の排除
- 従来はBANアカウントの決定までに複数のツールを横断していた
- ツールを横断する際のコピペミスやサーバを間違えるなどのミスが起こる可能性があった
- 検索機能の充実、ツール同士の連携機能の開発を実施
- 効率化
- 今後やりたいこと
- 健全化チームの持つ知見をAI化する
- チートの手口を自動で発見する
- チートの抽出条件を自動で決定する
- AI化の方針:ミニマムな課題で確実に成果を出していく
- 例:クエスト毎のしきい値を自動で決定する
- 健全化チームの持つ知見をAI化する
感想
ミクシィさんによるCREチームによる具体的な開発事例が聞くことができて良かったです。
当社には現在CREというチームはありませんが、オペ部内部には「KAIZENチーム」というオペレーションの改善のための開発を行うチームがあります。このKAIZENチームでは、ここで掲げられた「効率化」や「ミスの発生しにくいシステムづくり」といった取り組みを行っています。見える化、というところはまだ弱いところで、いま有志で取り組みを進めているところなのですが、話を聞いていてやはり重要だな、と感じました。
急増中のVoCをリアルタイムで検出!次世代のCSに不可欠なトレンドアラート(カラクリ 吉田 雄紀氏)
このセッションはカラクリ株式会社のセッション。カラクリさんは「いままでにないカラクリで世界を豊かに」「世界中のユーザが「疑問やトラブル」を努力なく解決できるサービスをつくる」といミッションを掲げており、サポート向けのチャットボットサービス(KARAKURI chatbot)などをリリースしています。ただ「チャットボットの会社」というわけではなく、「CSをTechで豊かにする会社」である、と説明されていました。
- チャットボットの価値
- 即時解決 → ユーザー体験の向上
- 有人問い合わせ業務の緩和
- VoC(Voice of Customer=顧客の声)が集まる
- 見過ごされれがちな課題:ほとんどのカスタマーはコールセンターに問い合わせをしない
- 疑問・トラブルに遭遇したカスタマーのうちコールセンターに問い合わせする人は4%
- 96%は静かに離脱している
- チャットボットであれば気軽に問い合わせられる
- 結果、人に聞くほどではない/聞きづらい質問などが集めやすい
- VoCにはトレンドがある
- たとえばログインができない問題が発生すれば、「ログイン」というワードを含む問い合わせが増える
- ワードの急増をリアルタイムで検知する機能(トレンドアラート)の運用を半年前から開始
- トレンドアラートを半年間運用した知見
- 社内外から大好評
- 有用性
- 想定外の異常も検知可能
- インフラ障害
- 第三者起因の問題(「変なメールが届いた」など)
- 社会情勢の変化(リモートワークの普及に伴う関連ワードの急増など)
- ダウンタイムを最小化
- サービスの障害を早く検知できた事例がある
- 反響をもとに的確なUX向上
- 社内コミュニケーションの活性化
- Slackチャンネルにトレンドアラートを通知することで、内部での議論が活発に行われるようになった
- まとめ
- VoC + トレンド検知 = 次世代のカスタマーサポート
感想
チャットボットの効果として「サポート人員の対応負荷を軽減する」という点は興味をもっていたところですが、「チャットボットならば人より気軽に聞けるので、顧客の声を集めやすい」「その集まった声を分析して改善につなげる」という視点は「なるほど」と思いました。サポートでのチャットボット利用には以前から興味がありますが、こうした話を聞くとより魅力的だなと思えます。
つづく
以上、「Customer Support Tech Meetup #2」のセッション前半の紹介でした。 残りのセッションの紹介の後半に続きます。